見つけた、いこう

かないみのる

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オレと健吾はお互いに調べた事を教え合おうと、大学の談話室に来た。

春休みという事もあり、談話室には俺たち以外に誰もいなかった。

廊下を歩く学生達は、おそらくすでに研究室に配属された学生達だろう。

実験ノートを持って忙しそうにしている。



いつもの定位置に座ると、可那人がいない事に寂寥感を抱いた。

いつものように三人でくだらない話をしたい。

おそらくもう叶わないであろう事を願わずにはいられなかった。


健吾は椅子に座ってすぐに聞いてきた。



「拓也、お前の聞き込みはどうだった?何かわかった事はあるか?」


「新しいことはわからないけど、可那人をよく知る人間は、可那人は絶対にやっていないって強い意思を持っている。オレ達と同じだな」


「不思議なヤツだな、可那人って」



健吾が懐かしむ様な顔で言う。



「健吾、再鑑定で分かったことがあるんだろう?」



「ああ。監察医の先生に再鑑定してもらって、それを警察に届けた。どうなるかはわかんねえけど」


「説明してくれ」


「まず検死で既に分かっていることを整理する。藤谷さんの死因は溺死だ」


「え?じゃあ、死んだ後に遺体が投げ込まれたわけじゃないのか?」


「ああ。それは再鑑定に出す前から分かっていた」


「そっか。ごめん、そんな事も知らなかったなんて」



オレは自分の不甲斐なさを情けなく思った。

調査をする上で藤谷さんの死因はきちんと把握していなければいけない事なのに、誤解していたことにバツの悪さを感じた。



「仕方ねえよ。テレビでは可那人が暴行して殺したような報道をしてるし」



健吾はフォローしてくれる。



「再鑑定で分かったことは?」



オレは尋ねた。

早く結果が聞きたい。



「身体中の痣は、どうにも暴行でつけられたものではないらしい」


「どういうことだ?」


「腕や身体を掴んだり抱き寄せた時に付くような跡だったらしい」



健吾はテーブルに肘をついて手を組み、その上に顎を置いた。



「じゃあ、掴み合って、藤谷さんは誤って川に落ちたってこと?」


「そう考えるのが妥当だろう」


「そっか、じゃあ可那人は意図的に藤谷さんを殺した訳ではないんだな……」


「ああ……」



しかし、殺したことに変わりはない。

オレ達が求めていたような真相ではなかった。

それでも再鑑定に出した意味はあっただろう。


しかしそれが真実だとして、誰が藤谷さんの遺体を岸にあげたのだろうか?

溺れた藤谷さんを、可那人は放っておいたのか?

可那人がまだ発見されていない理由は?



どうにも腑に落ちないところがあるが、俺たちにできることはこれが限界だろう。

可那人は意図的に殺した訳じゃないこと、藤谷さんは殺されるほど憎まれていた訳ではないことが分かっただけでも、オレ達のやったことは無駄ではなかったはずだ。



「ありがとう、健吾。可那人の両親と藤谷さんの両親にも報告に行かないとな」



おれは大きくため息をついた。

可那人の両親は、自分の息子の潔白を信じていたが、下手に動こうものなら周囲からの誹謗中傷に晒されるため身動きができずにいた。

だからオレ達が代わりに動いていたのだ。

可那人の両親はこの事実をどう受け止めるだろうか。



「そういえば、現場に不審な裸足の足跡があったって聞いたな」



健吾が切り出した。



「裸足の足跡?」


「うん」


「誰か他に人がいたってことか?」


「その人が藤谷さんの遺体を引き上げたのかもな」



新しい情報は嬉しいが、可那人の無実を示す様なものでは無さそうだ。

健吾には悪いが、オレはその情報を聞いても落胆した気持ちは上がらなかった。

俺と健吾が暗い気持ちで佇んでいると、談話室に誰かが入ってきた。

オレ達は同時に目を向ける。



「やっぱりここにいた」



入ってきたのは同じ数学科の恭平だった。



「お前らを探してた」



少し険しい顔をした恭平は、おれの隣に腰を下ろした。

あまり顔色が良くない。

恭平が藤谷さんに好意を持っていたのはオレも分かっていた。

プライドの高い恭平でも今回の事件は心理的ダメージが大きかったようだ。



「何の用?」



健吾がぶっきらぼうに答える。



「お前らが奈菜と橘の事件について調べてるって聞いてさ」



恭平がシニカルな笑みを浮かべた。



「今更どうこうしたって仕方ねえだろ?なのになんでそんな必死になって調べてんだよ」



オレは恭平の馬鹿にした口調に腹が立ち、立ち上がって掴み掛かりそうになったが、健吾に止められギリギリの所で自分を抑えた。



「お前らが橘の本当の姿、知らないだろう?」



「本当の可那人?」


おれと健吾が口を揃える。



「あいつ、バケモノだよ」
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