天の川の中心で

かないみのる

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十河詩織に好きな人がいたと知ったのは彼女が死んだ後だった。



曽祖母の家に遊びに行った時、たまたま見つけた大量の手紙。

それは十河詩織と、彼女の好きだった男性、 星川佳彦ほしかわよしひことの文通の手紙だった。

大量の手紙と、こっそり見つけた詩織の日記を読んでいくうちに、十河詩織と星川佳彦の悲しい別れを知った。



詩織の父は大企業である十河グループの親会社、十河ホールディングスの社長で、詩織は一人娘だった。



社長の娘と言っても、甘やかされることなく厳しく躾けられた詩織は、自分のことを一人でなんでもできるようになりたいからと、高校を出るとY大学の理学部に進学、一人暮らしを始めた。

そこで出会ったのが、大学教授になったばかりの星川佳彦だった。



詩織は四年生の時に、佳彦の研究室に配属された。

詩織は佳彦の優しさに惹かれて、恋心を抱いていた。

しかし佳彦には奥さんと子どもがいた。

幸せな佳彦の邪魔はしたくないと、詩織はずっと自分の気持ちを奥深く閉じ込めていたと、彼女の日記には綴られていた。



しかし佳彦の幸せは長く続かなかった。

詩織が修士課程一年の時、佳彦の奥さんが、佳彦と生まれたばかりの子どもを置いて不倫相手の元に行ったのだ。

佳彦と奥さんは離婚、佳彦は男手一つで子どもを育てた。



佳彦は分からないなりに育児を頑張っていた。

子供を保育園に預けられない時は大学に連れてきた。

しかし大学内で預ける場所もなく、子どもをおぶって講義をしたこともあった。

それを見て苦言を呈す学生もいたらしい。

それはそうだ。

高い授業料を払って勉強をしに大学に来ている学生にしてみれば、急に泣き出す幼児は邪魔にしかならない。

そのように佳彦は悩んでいたらしい。

佳彦は子育ても仕事も満足にできない自分に苛立っていた。



詩織はそんな佳彦の力になりたいと、子どもの世話を自ら進んで引き受けた。

佳彦に聞きながら、ミルクをあげたりオムツを変えたり。

次第に佳彦も詩織の献身的な優しさに惹かれていった。

いつしか二人は、詩織が卒業したら結婚する約束までしていた。



しかしその時は来なかった。



詩織が修士課程二年の時、詩織の父は会社を大きくするために、詩織を取引先の息子と結婚させることを決めた。

詩織の気持ちを一切考えない勝手な決定だった。

詩織の母は反対したが、取引先の社長がどうしても自分の息子と詩織を結婚させたかったらしく、圧力をかけられ、父と母は従うしかなかった。

詩織は大学院を中退させられ、仙台に連れ戻された。

詩織と取引先の息子はお互いを知る間もなく結婚させられた。

そして詩織は周囲から急かされるままに子どもを産んだ。



詩織の両親は「新婚の時は二人で過ごすべき」と言って自宅の豪邸を詩織と夫に譲り、自分たちは少し離れたところにある別荘で暮らした。

監視の目がない事をいいことに、夫は外に愛人を作り、頻繁に家を空けていた。

帰って来たら妻である詩織と子供に暴力をふるうような人間だった。



そんな詩織は、子供を連れて、現実から逃避するように山形にいた祖母の家に何度も通った。

祖母は詩織が可哀想だと思い、自分の家の住所を使って佳彦と文通をするように勧めた。

もちろん、詩織は結婚をしているのだから恋文ではなく近況報告としてだ。

詩織が佳彦に最初の一通を出したら佳彦もすぐに返事をくれた。



詩織と佳彦は文通を続けた。

それが詩織の生き甲斐だったのだろう。

自分の夫との苦しい生活、佳彦との思い出や手紙の事が日記にたくさん書いてあった。



祖母と佳彦に支えられた詩織は、子供を守るために夫の事を自分の両親に伝え、離婚するつもりだと打ち明けた。

父は時期に社長を譲ろうとしていたらしいが、大激怒して夫を窓際部署の平社員へ降格させた。

しかし離婚は踏みとどまるように詩織を説得した。

本当は解雇にして離婚させたかったらしいが、取引先の息子ということもありそれ以上は強く出られなかったようだ。



その頃、水面下では病魔が詩織の身体を蝕んでいた。

誰も知らないうちに癌がかなり進行していたらしい。



詩織の癌が発覚し、かなり進行していると知った夫は、詩織のことよりも真っ先に生命保険の心配をしていた。

そんな夫を詩織はどんな気持ちで見ていたのだろう。



詩織が──母が最後に会いたかったのは、きっと夫ではなかったのだろう。様々な事を知った今、母の無念を考えると胸が引き裂かれるように苦しくなる。



今年一月の母の葬儀で、悲しみのあまり動けなくなっている母の両親──わたしにとっての母方の祖父母の隣で、悲しんでいたフリをしていた父に言いようのない怒りが芽生えた。

周囲の人が父を『妻に先立たれた可哀想な夫』として励ましの声をかけていたのをわたしは軽蔑の目で見ていた。

そんな悲しみと気持ち悪さが入り混じった葬儀の場で、一人の男性が葬儀に駆けつけてきた時、わたしは直感で何かを悟った。

当時のわたしはその人のことを知らなかったが、母の棺の傍で愛人に電話を掛けていた父よりも、涙を流しながら焼香させてほしいと願った彼の方が、母のことをずっと大切に思っていると感じた。



だから父と、父の父親──わたしにとっての父方の祖父が彼にとった態度が許せなかった。



焼香させるのを拒んだ祖父を突き飛ばし、彼を捕らえようとした佐渡と白岩を怒鳴りつけて、わたしは彼の手を引いて母の棺の前に連れていった。

父は愛人との電話に夢中だったから、その間に焼香してもらった。

わたしはあの時取った行動が間違っていたなんて微塵も思っていない。

母にとってそれが幸せだということが直感で分かっていたから。



後にその人が星川佳彦さんだと知った。

母の死後、わたしは以前にも増して山形の曽祖母の家に遊びに行くようになった。

ある時曽祖母は、「あなたのお母さんの物がいっぱいあるから、あなたが必要な物があったら持って行きなさい」と言って、和室に通された。

そこには母の学生時代の服や勉強道具などがたくさん置いてあった。

手紙と日記を見つけたのもそこで母の遺品を整理している時だ。



手紙と日記を読み、母と星川佳彦さんのことを知り、わたしの胸は重石を乗せられたように苦しくなった。

ずっと好きだった人と離れ離れになり、最期に会うこともできずに母は死んでいった。



佳彦さんの手紙には、佳彦さんの息子の成長がたくさん書いてあった。

写真もあった。

わたしは佳彦さんの息子、星川流君を知るに連れて、彼に惹かれていった。



曽祖母は佳彦さんと流君を実の家族のように可愛がっており、母が結婚した後も面倒を見ていたらしい。

流君が大きくなって遊びに来ることは少なくなったが、手紙のやり取りをしていたようだ。

曽祖母の老眼が酷くなり、わたしが代わりに手紙を読み上げ、返事を書くようになってからは、わたしはより流君の事を知るようになった。

英語が苦手な事、水泳を頑張っている事、学校でのちょっとした悩みなど、流君の人となりが手紙から感じられて、誠実な人だとわたしは思った。

返事を書く時は、本当はいっぱい書きたいことがあったのだけど、小学生が書いた文章なんて恥ずかしくて見せられないから、名言が書いてある日めくりカレンダーの中からいい名言を選んで書き写した。

それがどうやら流君にとってはプラスに働いていたみたい。



母の死後、父──いや、父と呼ぶのも忌々しい──あの男は相変わらず数人の愛人の元へ通い、家に帰ってきたら誰にも見えないところでわたしを殴った。

家に帰ってくる頻度が少なくなったから良かったが、そうでなければとてもじゃないけど身がもたなかったと思う。

執事の白岩とその部下の佐渡は、あの男に形式上の注意はするが、それ以上のことはしなかった。

きつく注意をしたのは家庭教師の青山先生だけだった。

青山先生だけはわたしを助けてくれた。



ある時、母方の祖父──十河ホールディングスの社長は、次期社長にあの男ではなく別の優秀な社員を指名しようとしているとの噂が会社に流れた。

そんな噂がどうやって流れたのかは不明だったが、かなり信ぴょう性が高いものだというのは誰でも分かる。

わたしは祖父から聞いていたから驚かなかったが、その噂を聞いてあの男は大慌てだった。



出世の道を閉ざされたあの男が利用したのは、娘のわたしだった。



あの男は地元で一番の銀行のとある支店の支店長と知り合いになったらしく──おそらくは夜の店で会ったのだろうが──そいつの息子をわたしと結婚させて、うちの会社に就職させると勝手に約束したらしい。

大手自銀とのコネクションを使って社長の座に返り咲こうとしたのだろう。



この息子というのが、大学に行ってもまともに勉強もせずに就職活動も一切しないで父親の金で女遊びばかりしていたどうしようもないやつで、そいつの父も流石に馬鹿息子を自分の職場で引き取りたくはなかったらしく、体良く他の会社に押し付けられて大喜び。

息子も何もせずにいい条件で大手の十河ホールディングスに就職、時期社長と思われる父の義理の息子の地位を得られて大歓喜。



そしてわたしの知らないうちに見合いの席が設けられた。

馬鹿息子と初めて会ったとき、悪い意味でわたしの心身は震えた。

金髪に染めた髪は傷んでおり、小太りの身体を包む服装は清潔感もなく、人を見下すような嫌な目つきをしており、小学生のわたしでもろくなやつじゃないと判断できる人間だった。

あいさつもそこそこに、わたしの父と向こうの両親は、面倒なことはしたくなかったのだろう、「あとは若い二人に任せて」なんて寒々しい台詞を吐いて早々に席を立った。

二人きりになった途端に相手の男はわたしに横柄な態度を取り、「肩を揉め」と命令して来た。

怖かったから嫌々従ったけど、そいつは頭を何度もわたしの胸に押し付けてきて、気持ち悪くて後頭部をぶん殴って逃げ出した。



苦しくて、悲しくて、わたしは電車に乗って山形の曽祖母の家に向かった。

家に入るなり泣き出したわたしを、曽祖母は優しく抱き止めてくれた。



しばらくして落ち着いたわたしは、母の遺品がある部屋に行った。そして母が昔着ていた黒いワンピースを見つけた。

見合い相手に触れられた服を脱ぎ捨て、母の服を着た。

身長がすでに成長が止まるくらいまで伸びていたためか、サイズはピッタリだった。

母の服を着ると、母の優しさに包まれているようで安心した。



ふと、わたしは流君に会いに行こうと考えた。

塾で夏期講習を受けていることは直近の手紙で知っていたし、一目見るだけでいいからと、わたしは曽祖母の家を飛び出した。



流君は几帳面で、塾の場所もしっかりと手紙に書いていてくれたから、わたしはスマホを片手に塾までの道を歩いた。

そんなに都合よく会えるわけないと思っていたけど、会える可能性が少しでもあるなら、と歩を進めた。



まさか本当に会えるとは。



自転車を押して歩いてきたのは、写真で見た流君だった。

遠くからでも分かった。

流君を一目見ることができ、涙が出そうになるほど嬉しかった。



怪しまれないよう、すれ違ってそのまま通り過ぎようとした時、流君がわたしを見ていることに気づいた。

流君と目が合ってしまった。

流君は不思議そうな顔でわたしを見つめて、夢でわたしに会ったと言った。

それで気づいた。

母が会いに行ったんだと。



きっと母は、勉強で行き詰まっている流くんのことが心配で、夢で会いに行ったのだ。

そして、わたしに流君の手助けをさせようと、出会わせてくれたんだと思う。



一日だけ彼と一緒に過ごしたいと思い、流君がわたしを母と間違えたことをいいことに、母のフリをしようと決めた。

母の名前を借りたら、驚くほど大胆になれた。

一緒にいようと誘うことも、手を引くことも、助けを求めることも、迷わずできた。



流君に素性を隠していることに罪悪感はあったけど、陥れてやろうとしたわけではないし、たった一日の関係で説明するにはわたしたちの関係は複雑すぎた。



それに、何よりも母の誤解を解いてあげたかった。



流君は、母と不倫した実のお母さんが同一人物だと思っていることは手紙から明らかだった。

だから、母のフリをして誤解を解くきっかけを探していた。

結局解けたかどうかは分からないけど、母が流君達と離れたかった訳ではないということは伝わったと思う。



流君は素敵な人だった。



一日だけでいいと思ったのに、もっとずっといたいと思った。

だから、一緒にいようと言ってくれた時は涙が出るほど嬉しかった。



でも、わたしがそれを受け入れたら、彼の人生を狂わせてしまう。

せっかく志望校合格を目指して勉強しているのに、その努力をわたしのせいで無駄にさせるわけにはいかない。



気持ちをこらえて別れを決めた。



わたしは流君と離れた後、母方の祖父母の家に行った。

そして青山先生を呼び出して、三人に父や婚約者の男にされたことを話すと、三人とも大激怒した。

きっと母の結婚相手を勝手に決めたことに罪悪感があったのだろう、わたしが生まれた際に祖母は「この子は絶対に好きな人と結婚させる」と断言したらしい。



父は解雇、父方祖父の会社との取引解消、自銀の親子は十河グループと接触禁止の措置が取られた。息子はきっと親から大目玉をくらっただろう。

父の愛人達は素性を調べられて十河グループと関係のあった人は会社を解雇された。

白岩と佐渡は父から色々とおこぼれをもらっていたらしく、祖父母からこっぴどく叱られた。

今は青山先生の厳しい指導の元、真面目に働いている。



愛人の中には、どうやら佳彦さんの元奥さんもいたらしい。

祖父母が興信所を使って徹底的に調べ上げた情報によると、元奥さんが佳彦さんと離婚した時に付き合っていた人は、どうやら既婚者だったらしく相手の奥様から慰謝料を取られ、一人で極貧生活をしていたらしい。

十河ホールディングスに清掃員として出入りしていたところを父に見染められて関係を持ったらしいが、今回の件で十河ホールディングスを出入り禁止になり、それから行方はわからない。



「あれから一年か……」



わたしは流君との思い出を胸に、昨年と同じ日に、昨年と同じ噴水の中で一人で空を見上げていた。



あれから曽祖母の家には流君の手紙は届くことはなくなった。

代わりに、よく遊びにきてくれるようになったらしい。

曽祖母の家に遊びにいったら会えるかな、なんて考えたけど、偶然なんてそんなに起こるわけがなく、流君と会うことは一度もなかった。

会ったら気持ちがおさえられなくなりそうだから、決して会ってはいけないと自分に言い聞かせていた。



わたしは今年、中学に上がった。



流君は高校一年生。うまくやっているかな?



ぱしゃぱしゃと水を蹴っていたら、滑ってバランスを崩してしまった。



頭が揺れ、後ろに倒れそうになる。


転ぶ!



しかし、すぐに身体は何かにもたれかかった。

誰かが支えてくれたようだ。



「やっぱり消えなかった」



後ろから独り言のような声が聞こえた。



「そうだよな、消えるわけない。だってあの日、しっかり手を握り合ったんだから」



わたしは体勢を立て直し、声の主を見た。



その顔を見て、涙がこぼれたのは言うまでもない。



「流君?」


「やっと会えたね、 十河妃織 そごうひおりさん」


「どうしてここに?」



幻でも見ているのだろうか。

今起こっていることを受け止められていない。



「君に会いたかったからだよ」



その言葉を聞き、わたしの胸は喜びで満ちた。

流君もわたしと同じ気持ちだったんだ。

流君の言葉で、わたしの気持ちの器から喜びが溢れ出した。



「あれから父さんとひいばあちゃんに全部聞いたんだ。君のことも、十河詩織さん──俺を大切にしてくれたお母さんの事もね」



流君は笑顔を見せてくれた。

優しい光のような素敵な笑顔だった。



「これでもう一緒だね」



流君はわたしの手を取って言った。

彼の人としての温もりが手のひらを通して感じられた。



「今日だけ?」



わたしは流君の顔を見上げる。


流君と会えるのは年に一度だけなのだろうか。

七夕の日の織姫と彦星のように。



「いや……これからずっと一緒だよ」



わたしたちは星の中で笑い合った。



この天の川の中心で。

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