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学校によっては、運動部の男子達が廊下で上半身を露わにしながら着替えるというのも、そう珍しくはない光景かと思う。
けれど、うちの高校では、そういう慣習はセクハラやジェンダー差別につながるということで、男子は女子同樣に必ず更衣室か部室内で着替えるよう厳しく指導をされている。余計なことしやがって。
そんなわけで、私達女子が男子の上半身裸姿を見られる機会というのは普段はほとんどない。
――しかし。おっぱいばかり描いてこの道五年目、中学三年間という貴重な青春時代を、おっぱいデッサンに費やしてきた私にしてみれば、脂肪の付き具合や周囲の筋肉の張り具合、上半身全体の量感などの情報があれば、たとえ服で隠れていようとだいたいのおっぱいの形が想像出来てしまうのである。
「大葉さんって、男子が体育やってるとこ見るの好きだよね」
体育の時間、私が男子のサッカーの試合を眺めていると、同じクラスの女子が隣にやって来ておもむろに言った。
当然おわかりかと思うが、私が見ていたのはサッカーではない、おっぱいだ。
「あー、うん。私、スポーツ観戦とか見るの好きなんだ」
これは嘘ではない。男子が不意にちらっと見せる筋肉は最高だ。これは多くの女子に賛同していただけるかと思う。
それから彼女はしばらく私と一緒に男子達がボールを追うのを眺めていた。
もっとも真面目に試合を見ている彼女と違い、試合展開には一切興味のない私の視線は一人の男子、……のおっぱいにあった。
同じクラスの野球部の敷島くん。
彼はクラスの女子の中でも、そこそこイケメンだと言われていて、明るくサバサバしていて人当たりの良い男子だ。彼は体を鍛えることが趣味らしく、時折シャツがめくれて見える腹筋はうっすらと割れ目が出来ている。
私は直接彼のおっぱいを見たことはない。
しかし、彼の全身の筋肉、上半身の肉感から察するに、彼は極上のおっぱいの持ち主であるに違いなかった。その証拠に、彼のおっぱいはTシャツ越しでも伝わるほどの崇高なオーラを放っていた。
描きたい。
敷島くんのおっぱいが描きたい。
私は敷島くんの上半身をガン見しながら、想像上の彼のおっぱいを頭の中でスケッチして欲望を必死に抑える。
その時、私は気付かなかったが隣で談笑をしていた他の女子達が、真剣な表情で敷島くんを見ている私に気付いて視線を向けた。
「ねえ、大葉さん、敷島のことが好きでしょ?」
「ふぁっ!?」
突然声をかけられて驚いた私は、キョドって変な声で返事をした。
「大葉さん、いつも敷島を見てるもんね。わかりやすすぎ」
「あ、赤くなった。可愛いー」
「え。ち、……ちがっ……」
顔を赤くして慌てる私を見て、女子達がクスクスと微笑んだ。
そして、不意に降ってわいた恋バナに、彼女達は目を輝かせはじめた。
私はなんとかして誤解を解こうと考えたけれど、見ていたのが敷島くん本人ではなく、彼のおっぱいなんてどう説明すればいいのか。……いや、頑張って説明したところで、理解してもらえるわけもなかった。
頬を赤く染めて黙ってしまった私。
そんな私の肩に、彼女達の一人が手を置いて優しく笑う。
「もし良かったら、敷島にそれとなく大葉さんのことを話して、脈がありそうかどうか調べてあげようか?」
完全に余計なお世話だと思った。
「いや、あの……その、本当にそんなんじゃないから!」
私はとりあえず否定をした。
けれど、どぎまぎしながら否定をした私の反応が、逆に彼女達にはリアルっぽく映ったらしかった。
その体育の授業があった日の一週間後、私が敷島くんのことを好きらしい、という噂がクラスのあちらこちらで広まっていた。
二週間が経った頃には女子だけでなく男子までもが、私が敷島くんのことを好きだと思い始めていて、私達をくっつけようとしているのか、いらない世話を焼き始めるようになった。
そして、その噂は当然、敷島くん本人の耳にも入っていた。
その頃くらいから、私は敷島くんとよく目が合うようになった。敷島くんは私と目が合うと、すぐにふっと視線を外す。
完全に脈はないようだった。
けれど、私はあまりショックではなかった。
やはり私が好きなのは、敷島くんのおっぱいの形であって、敷島くん本人ではなかった。
とはいえ、これ以上噂が大きくなると、敷島くんに迷惑がかかる。
私は敷島くんのおっぱいが好きだ。
でも、それが原因で敷島くんに嫌な思いをさせたり、彼を傷つけたりするのは絶対に嫌だった。
だから私はそれ以来、敷島くん(のおっぱい)を見ないようにした。
私が敷島くんのことを好きらしいという噂は、日々移ろい続ける話題の中にどんどんと埋もれて風化していった。
けれど、うちの高校では、そういう慣習はセクハラやジェンダー差別につながるということで、男子は女子同樣に必ず更衣室か部室内で着替えるよう厳しく指導をされている。余計なことしやがって。
そんなわけで、私達女子が男子の上半身裸姿を見られる機会というのは普段はほとんどない。
――しかし。おっぱいばかり描いてこの道五年目、中学三年間という貴重な青春時代を、おっぱいデッサンに費やしてきた私にしてみれば、脂肪の付き具合や周囲の筋肉の張り具合、上半身全体の量感などの情報があれば、たとえ服で隠れていようとだいたいのおっぱいの形が想像出来てしまうのである。
「大葉さんって、男子が体育やってるとこ見るの好きだよね」
体育の時間、私が男子のサッカーの試合を眺めていると、同じクラスの女子が隣にやって来ておもむろに言った。
当然おわかりかと思うが、私が見ていたのはサッカーではない、おっぱいだ。
「あー、うん。私、スポーツ観戦とか見るの好きなんだ」
これは嘘ではない。男子が不意にちらっと見せる筋肉は最高だ。これは多くの女子に賛同していただけるかと思う。
それから彼女はしばらく私と一緒に男子達がボールを追うのを眺めていた。
もっとも真面目に試合を見ている彼女と違い、試合展開には一切興味のない私の視線は一人の男子、……のおっぱいにあった。
同じクラスの野球部の敷島くん。
彼はクラスの女子の中でも、そこそこイケメンだと言われていて、明るくサバサバしていて人当たりの良い男子だ。彼は体を鍛えることが趣味らしく、時折シャツがめくれて見える腹筋はうっすらと割れ目が出来ている。
私は直接彼のおっぱいを見たことはない。
しかし、彼の全身の筋肉、上半身の肉感から察するに、彼は極上のおっぱいの持ち主であるに違いなかった。その証拠に、彼のおっぱいはTシャツ越しでも伝わるほどの崇高なオーラを放っていた。
描きたい。
敷島くんのおっぱいが描きたい。
私は敷島くんの上半身をガン見しながら、想像上の彼のおっぱいを頭の中でスケッチして欲望を必死に抑える。
その時、私は気付かなかったが隣で談笑をしていた他の女子達が、真剣な表情で敷島くんを見ている私に気付いて視線を向けた。
「ねえ、大葉さん、敷島のことが好きでしょ?」
「ふぁっ!?」
突然声をかけられて驚いた私は、キョドって変な声で返事をした。
「大葉さん、いつも敷島を見てるもんね。わかりやすすぎ」
「あ、赤くなった。可愛いー」
「え。ち、……ちがっ……」
顔を赤くして慌てる私を見て、女子達がクスクスと微笑んだ。
そして、不意に降ってわいた恋バナに、彼女達は目を輝かせはじめた。
私はなんとかして誤解を解こうと考えたけれど、見ていたのが敷島くん本人ではなく、彼のおっぱいなんてどう説明すればいいのか。……いや、頑張って説明したところで、理解してもらえるわけもなかった。
頬を赤く染めて黙ってしまった私。
そんな私の肩に、彼女達の一人が手を置いて優しく笑う。
「もし良かったら、敷島にそれとなく大葉さんのことを話して、脈がありそうかどうか調べてあげようか?」
完全に余計なお世話だと思った。
「いや、あの……その、本当にそんなんじゃないから!」
私はとりあえず否定をした。
けれど、どぎまぎしながら否定をした私の反応が、逆に彼女達にはリアルっぽく映ったらしかった。
その体育の授業があった日の一週間後、私が敷島くんのことを好きらしい、という噂がクラスのあちらこちらで広まっていた。
二週間が経った頃には女子だけでなく男子までもが、私が敷島くんのことを好きだと思い始めていて、私達をくっつけようとしているのか、いらない世話を焼き始めるようになった。
そして、その噂は当然、敷島くん本人の耳にも入っていた。
その頃くらいから、私は敷島くんとよく目が合うようになった。敷島くんは私と目が合うと、すぐにふっと視線を外す。
完全に脈はないようだった。
けれど、私はあまりショックではなかった。
やはり私が好きなのは、敷島くんのおっぱいの形であって、敷島くん本人ではなかった。
とはいえ、これ以上噂が大きくなると、敷島くんに迷惑がかかる。
私は敷島くんのおっぱいが好きだ。
でも、それが原因で敷島くんに嫌な思いをさせたり、彼を傷つけたりするのは絶対に嫌だった。
だから私はそれ以来、敷島くん(のおっぱい)を見ないようにした。
私が敷島くんのことを好きらしいという噂は、日々移ろい続ける話題の中にどんどんと埋もれて風化していった。
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