敷島くんのおっぱいが描きたい。

葉霧 星

文字の大きさ
3 / 6

しおりを挟む
「やっぱ上手いよねー。人物デッサンは先生より上手いんじゃない?」

 二年の先輩が私の背後からキャンバスを眺めながら言った。
 他の先輩方も、私の描いたマルス様を見つめながら、うんうんと頷く。
 ボルゲーゼのマルス様は正統派マッチョなので描きやすい。胸板の美しさには定評があり、多くのマッチョ好き女子を魅了しているとかいないとか。

「大場さんの石膏デッサンって、なんかリアルだよね。生々しいっていうか……」

 ……ぎくっ。

「そうそう。特に胸のあたりの筋肉の量感とか」

「あー、はい。そこはもう、中学の時の先生に、実際の筋肉を頭の中で想像しながらデッサンしろって、厳しく指導されたので……」

 へー、と納得したような納得していないような返事をする先輩達。
 とりあえず、なんとかごまかすことには成功できたようだ。

 その時、美術室の扉を誰かがノックした。
 近くでデッサンをしていた一年の女子が立ち上がり、扉を開けて応対する。

 現れたのは、制服姿の敷島くんだった。

 敷島くんは私と目が合うなり、軽く手を挙げて私に言った。

「大葉、部活中にごめん。ちょっと話があるんだけど、いま大丈夫?」

 私は先輩達に断りを入れ、敷島くんのところへ歩いていく。
 それから、敷島くんは私を美術室の近くにある人気のない水飲み場まで連れて行った。

「あの……、なんでしょう?」

 なぜか敬語で尋ねる私。
 そんな私に、敷島くんは少し目を泳がせながら言った。

「えっと……、あの……、大葉は、俺のことをどう思ってる?」

 いつも快活な敷島くんらしくない、たどたどしい口調だった。

 ――あなたのおっぱいを描きたいと思っている!
 私の脳は即座に返答した。

 が、私の理性がそれを口に出すことを阻み、私は首を横に振ってから違う答えを敷島くんに返した。

「えっと……、いつも明るくて、元気だなって、思ってる」
 私は言った。

 すると、敷島くんは突然、私の目をじっと見つめた。

 敷島くんが言う。

「大葉! あの、俺、お前のことが好きなんだ! 俺と付き合って欲しい!」

「……へ?」

 私に手を差し出す敷島くん。
 それはまるで、青春恋愛マンガとかでよく見るような光景だった。

 生まれて初めて告白されて、頭が真っ白になる私。
 敷島くんは手を前に出したまま、そんな私の返事を待った。

「えっと……、どうして、私なの?」

 私は顔を赤くしながら尋ねた。
 敷島くんも顔を真っ赤にして答える。

「正直言うとさ、四月の時はちょっと可愛いなくらいにしか思ってなかったんだ。けど、最近よく目が合うようになったじゃん。それで、いつの間にか大葉のことを目で追うようになって……、気付いたら声とか、仕草とか、そういうのも全部可愛いなって思うようになった」

「……そうなんだ」

 照れて私から視線を外す敷島くん。

 一方、私は敷島くんの言葉を聞いて、妙に頭が冷静になってしまった。

 ――結局は、私が敷島くんのおっぱいをガン見してたことがきっかけ、ってこと!?

 敷島くんは何も悪くない。
 むしろ、彼は被害者である。私のおっぱい好きの。

 正直、告白されたのはすごく嬉しかった。

 けれど果たして、こんな大きなすれ違いをしたまま……というか敷島くんを騙しているような形で、彼氏彼女になってしまっていいものなんだろうか。

「えーと……、答え、少しだけ待ってもらっていいかな?」

 私は溜め息をついてから、敷島くんにそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...