転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ

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第155話

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「ルシエ、別に待っててくれてもよかったんだよ?」
「いえ、ついて行きます!」
 女性について行く時、アリッサ達と待っていてと伝えたのだがルシエは一緒に行くとついて来てしまった。まぁ護衛という意味なら俺の近くが一番安全なのは確かだけどね。
「結構歩くんだね」
「すみません、こういう場所でもなければ住むことすら難しくて……」
 街の中心、商業地区からだいぶ歩いてきた。外周に近づくにつれて家々がどんどんボロボロになっていく、前に来た農業地区とは丁度反対辺りだろうか?
「崩れそう……」
 ルシエがボソッと呟く。実際周囲は荒れ果て、崩れた家や家だったであろう残骸が目立ってきている。
「ホントにここに住んでいるんですか?」
「はい、私みたいな訳ありの人はここに行きつきます。放置されて家賃もかかりませんし隠れるのにも色々都合がいいんです」
 周囲にはボロボロの服で地面に座り込む人も増えてきた。多くはガリガリに痩せ細り今にも死にそうという感じだ、死んでも誰にも気づかれない気にもされないという感じかな? もしかしたら死人を糧としてる可能性もある……これ以上は考えないでおこう。
「着きました、ここです」
 女性が指差した家はボロボロで今にも崩れそうだが形はどうにか保っている。そしてなぜか周囲の家々からも隔離されたような違和感があるし何より人の気配がなかった。
「意外と大きいですね」
 ルシエに言われて気づいたが確かに周辺の家より大きく立て付けもしっかりしていたのかもしれない。
「ここは元々資産家の方が住んでいたらしいのですが一家皆殺しの事件があったらしくいろいろ噂があって誰も寄り付きません。おかげで助かってますけど」
 殺人事件の疑惑付き物件、それはそれは……
「汚いとこですがどうぞ」
「お邪魔します」
 女性に促され家に入る。ルシエは怖いのか俺の腕に抱きついてきた、少し震えてるみたいでどうやら怖い話は苦手らしい。
「薬草の匂いか……」
 外見から想像できない位中は片付いていて意外にもしっかりしていた。そして何より薬草のいい匂いが漂い安らぎすら感じるくらいだった。
「キュウ!」
 家の奥から何かの鳴声が聞こえたと思ったら何かが走り寄ってくる足音がしてくる。
「なに!? かわいい……」
 女性の足元にやってきたそれは小型の犬のような猫のようにも見える不思議な動物だった。
「クク、ただいま」
 女性はしゃがみそのククと呼ばれた動物を撫でている。
「この子はクク、私の家族、カーバンクルです」
「カーバンクル、確かマギレラ魔導国の宝獣ですね」
「この子は特別ですけどね」
 フードとローブを脱いだ女性がカーバンクルを抱き上げて撫でている。
「竜? ハーフ?」
 女性の右腕はさっき見た。そして右頬にも水晶のような鱗、そして右側頭部耳の上あたりから短いが角も生えている。全てが右腕のように宝石みたいな質感、俺とは別の感じだ。
「申し遅れました。私はティフォンと申します」
「初めまして、私はルシエと申します。そして……」
 ルシエが自己紹介し俺の事を紹介しようとした時、更にまた何かがやって来る。
「待っていました……黒鱗の魔竜皇……」
 何というか、俺の呼び名っていくつあるんだよ……
「誰だい?」
 敵意は全く感じない。むしろ優しささえ感じる程穏やかな声だ。
「僕はアルコ、貴方が来るのを待っていた者です」
 声の主を見て驚いた。彼は一言で言うと鳥だ、これまた宝石のような瞳にクチバシ、金色の羽毛に長い尾羽の大きな孔雀という感じだ。
「アルコ、動いて大丈夫?」
「平気だよ、それよりずっと待っていたお方がやってきたのだ……こちらから向かわなければ」
 よくよく見ると翼が片方無い、それに尾羽も所々切れてボロボロになっているし宝石と例えるには濁っているように見える、それはティフォンやククも同じだろうけど。
「それよりも竜皇様、貴方に見てもらいたい物がございます」
「見て欲しいもの?」
「はい、もう時間もあまり残っていない。急がなくては死んでしまう……」
 なぜかアルコは急いでいるようだ。彼はそう言うと俺を奥へと促す。ポーションを買ったらそれで終わりだと思ったんだけど、なんか巻き込まれた?
「ホントによかった、僕の命が尽きる前に来てくれて」
「アルコ、そんなこと言わないで……」
 確かに彼は弱ってる、しかし命を懸けてでもなすべき事があるというのだろう。強いね……本物だ。
「ここです……」
「こいつは!?」
 連れられて来た部屋。そこには藁が敷き詰められ中央には鳥の巣というべき物が作り上げられ、その上に一つの大きな卵が鎮座していた。
「卵?」
 不思議な卵だ……何かを呼んでいる? 呼ばれているのは俺か?
「この子は竜の子です。マギレラで封印処理をされて保管されていたのを盗み出してきました」
 あ、トラブルのフラグが立った……絶対この先何かに巻き込まれる自信がある!! 掛けてもいい!!
「なんでそんなことを……?」
「この子は将来実験に使われ、ひどい目にあった挙句殺されるかもしれない……」
 実験……
「この子やククには僕やティフォンみたいな辛い目に会わせたくないんだ……」
「マギレラってそんな悪い国なの?」
「そうですね、基本的には未知を解き明かす知識と探求の国と呼ばれています」
「未知の探求といえば聞こえはいい。でも実際は知識のためなら手段を択ばない……どんな残酷な事でも平気でする化け物ばかり危険な国だ、知識のためなら平気で自分の子供すら売るんだから」
 ティフォンの声はすごく暗く重い、嫌でも何かあったことはわかる。
「ティフォンは元々医師の家に産まれ将来名医となるため勉学に励んだた普通の人だったんだよ……」
「何かあったのですか?」
「ティフォンの両親はね、新しい研究資金のために彼女を売ったんだ……」
 ですよね~……ティフォンは水晶の腕を左手でギュッと握りしめている。恨んでるだろうなぁ……
「あいつ等のせいで私は……」
「僕達が居た研究機関はこの卵意外にもう一つ希少な遺物を所持していました。それが宝魔竜ウィーヴィルの瞳」
 ティフォンの腕を掴んだ時に感じた竜の気配、どうやらそのウィーヴィルの物だったらしい。 
「あいつ等は私にその瞳を移植した……その結果がこのありさまだよ」
「ウィーヴィルは小型ですが宝石のように美しい体と異常なほど高い魔力を持つ大魔竜でした。特にその瞳は膨大な魔力を秘めていると言われています」
 確かにあれは強力な竜の気配だった、何よりドラゴンの自分だからこそその強さがわかる。
「その力を手に入れるために人体に取り込む実験が行われました。しかしウィーヴィルの瞳を取り込んで手に入るのは魔力だけではなかった、その竜の呪いも同時に刻み込まれ体を変異させたのです。結果、瞳は体に深く結びつき歪な竜の片鱗と膨大な魔力を与えましたが実験は失敗と判断され、彼女から瞳を引き剥がすことが決定しました」
 深く結びついているという事は同化しているということ? それを引き剥がすってことは……
「お察しの通り彼女の死を意味しています。僕は大切な友人を見殺しにできないし、そんな場所に心底嫌気がさして脱走を決意しました。ウィーヴィルの膨大な魔力にククの感知能力、そして仮にも虹孔雀と呼ばれた僕の力が合わされば研究機関の強固な警備を突破することができました」
「虹孔雀!? 貴方が……伝説上の聖獣だと思っていました……」
 ルシエが驚いている、彼はどうやら凄い存在らしい。俺は初耳だけどね、後で聞いてみよう。
「そして僕達はここにたどり着きひっそりと暮らしながらこの卵を助けてくれる人を待っていました」
「なんでその卵を持ちだした? それに卵に巻かれているその羽毛、君の翼じゃない?」
 そう、よくよく見ると卵には金色に輝く羽毛が巻かれていた、恐らく自身の翼を切り落とし保温のために使用していたのだと思う。
「奴らに一泡吹かせてやろうというのもありましたけど、実験の犠牲にしたくなかったんです。しかし封印を破ったせいで卵の成長が始まりました……ですが竜の子供は孵化するまで親から膨大な魔力を受けて力を蓄え成長します」
「その魔力が足りなかった?」
「いいえ、魔力の質が違ったんです。僕の力では死なないように維持するのが精一杯で成長に必要な竜の魔力が足りなかったんです……」
「それならウィーヴィルの瞳がつかえたんじゃ?」
 しかしアルコは首を横に振る。
「ティフォンは脱出の時とここでの生活。僕やククへの魔力供給でほとんど力が残っていないんです……」
 確かに貧しいギリギリの生活は想像できるしこんな生活では回復しないのもわかってしまう……
「なるほど、状況は理解した。俺にどうして欲しいんだ?」
「理解が早くて助かります。僕の魔力も残り少ない、命を維持できなくなる前にこの子を引き取って貴方の魔力で成長を促して欲しいのです」
 早い話がこの卵を育ててくれってことね……しかしその後彼らはどうなる? もう命が尽きるとか話していたしもしかしなくても……
「キュウ!! キュウ!!」
 考え事をしているとククが急に鳴き声を上げている、なんだか慌てているような気がした。
「いけない……危険が迫っている……」
 アルコはキッと扉の方を睨みつける。次の瞬間ドアをぶち破る音、複数の足音が迫ってくるのだった。
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