転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ

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第159話

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 魔王国とシャジャル帝国の丁度中間に位置する平原、時間はまだ朝のはずだか日は見えない程雲が濃く今にも雨が降りそうなほど暗かった。
「やっぱ魔王国の奴らきましたね」
「そりゃ大々的に宣伝したからな」
 ハクアは眼鏡をクイっと上げて位置を調整しながら派手な鎧の少年と話している。
「捕えた王子を処刑する。場所と時間も丁寧に教えてあげたんだから集まらなきゃ困る」
「魔王の息子だ、無視するわけにはいかないよ」
「しかもこっちはいろいろ仕込んで準備万端。面白いことになりそうだよな!」
「コウジ、気持ちはわかるけど油断はいけないよ。あれだけの数だ、ゴリ押しで突っ込まれたら多少はこっちも犠牲が出てしまう」
「NPCがいくら死のうが問題ないだろ」
「まぁね」
 少年たちは笑いあう。平原には魔王軍の兵士達が数えきれないほど集結している、迎え撃つ帝国側も負けない程の人数だがそれに加え魔法で地形を変えて作られた防壁に高台、そして高台に複数設置された布で隠されている怪しい兵器と準備万端。そして中心の一際高い台の上には拘束された魔王の息子、第一王子が見せしめのように立たされている。
「私を殺しても無意味だ、父上が……同胞たちが必ずお前達を打ち倒す……」
「……」
 王子の言葉に一切反応しない覆面で顔を隠したガタイの良い男性二人は巨大な斧を磨いている。
「くそっ……皆、すまない……」
「しっかしハクアもいい趣味してるよな、公開処刑で敵の戦意を削るなんてさ」
「正直僕達勇者が居ればこんな事しなくてもいいんだけど、念には念をってね」
「ゲームでもこういう作戦は効果抜群だしね」
 彼らは魔王軍に王子の死を見せて戦意を一気に削ぐ作戦を立案実行した、魔王軍としても王子を助けられるかもしれない最後のチャンスであり罠とわかっていても乗るしかない切羽詰まった状態に陥れている。勿論魔法封じも施しているし最近は対策されて負けることもしばしばあったが今回は完璧な準備を施して負ける要素の一切を排除している。完璧だ!
「そろそろ時間ですね、セイジお願いします」
 セイジと呼ばれた白と金に輝く派手な装備に身を包んだ少年が頷き大声を張り上げる。
「聞け、魔王軍! これより第一王子の処刑を開始する。そこから一歩でも踏み出した時点で貴様たちもタダではすまさん!!」
 彼は処刑人達に合図を送ろうと右手を上げた。その瞬間魔王軍の兵達が一歩を踏み出す。
「黙れ卑怯者!!」
「我らが王子を死なせてなるものか!! いけぇ!!!」
 ハクアはニヤリと笑ってみせる。
「計画通りだ」
「バカ共が……」
 セイジは振り上げた右手に合わせて処刑人も斧を振り上げる。それを振り下ろそうとしたその時、周囲が大きく揺れ始めた。
「なんだっ!?」
「地震!?」
 周囲の人達は突然の地震に困惑しまるで時間が止まったように停止した。あまりの揺れに処刑の一人が振り上げた斧の重さに負けて高台から落下してしまう程なのだから仕方のない。
「収まった?」
「みたいですね……」
 一瞬の静寂……しかし次の瞬間、セイジの正面。両軍の中央あたりの地面が裂けて土砂が宙を舞い雨のように降り注ぐ……それと同時に処刑場一帯に轟咆が響き渡る。それは一瞬で場を支配する。
「なんだぁ!?」
「黒い……大トカゲ?」
 裂けた地面から現れたのは十メートルほどの巨体をした黒い巨大なトカゲだった。
「トカゲじゃない! あれはドレイク、ドラゴンよ!!」
 防壁の後ろに待機していたシホが叫びながら走ってくる。
「は? じゃあこいつがヴリトラ!?」
「噂のヴリトラは同じ黒い体だけど羽があって上空から強力なブレスや魔法で攻撃しながら飛来するって言うし別個体だと思う……」
「確かに俺達の聞いてたヴリトラは二足で四足のこいつとは違う……」
 突然現れた四足体型の怪物に勇者達は困惑する。その姿は黒い鱗と甲殻で身を包み鼻先には鋭い一本の角に大きな顎、頭部から後方に伸びる二本角に灰色の髪のような体毛が背中にかけて無造作に伸びている。そして何よりその前足だ、体型に見合わぬほど大きく前腕部は異常なほど発達している。後ろ足も筋肉質で逆関節で瞬発力のあるだろう形、そして尾は全てを薙ぎ倒すほど太く長い。
「なんかドラゴンというよりあれだよな、モンスターを狩るゲームで見たことあるような見た目だな」
「あ~俺も思った!」
「だ~から~アイツは羽の無いドレイク! 同種族だけどドラゴンじゃないの!!」
 勇者達は集まってくる、正面に居る黒い怪物を倒さんと。
「で、あれは魔王軍の秘密兵器?」
「わからない……見てくれ」
「敵も怯えてる?」
「ホントに想定外なのかもしれない……」
 ドレイクも様子を窺っているのかまだ動いていない……どうなる?
「全員下がれ!!」
 セイジが叫んだ瞬間、ドレイクは動いた。尻尾振り回し最前線に居た魔王軍の兵士を一瞬で吹き飛ばしたのだ……最前線という事でタフネスのあるトロールやオーガなどの大型種も多く居た、それなのに一瞬だった。明らかに今まで戦ってきた敵とレベルが違う……
「な~にあれ!!!」
 その光景を見た女の子が嬉々とした声を上げ、勇者達は振り返る。
「エイミ、どうしたんだ?」
「セイジ! ハクア! あれ欲しい!! めっちゃ欲しい!!」
 エイミと呼ばれたウェーブかかったロングの金髪をした少し露出度高めな装備を身に纏った少女は正面で今も魔王軍を蹴散らすドレイクを見て興奮している。
「確かに、エイミは魔獣使いで勇者。あれをテイムできるならそうとうな戦力アップを見込めるかもしれない……」
「でしょ! でしょ!? あたしあれに乗りたい!! 捕獲しよ!!」
 勇者達は顔を見合わせる。
「わかりました、しかし可能であればです。シホ、ステータスはわかりますか?」
 ハクアの問いにシホは首を横に振ってこたえる。
「さっきから試してるんだけど、前に戦った竜人みたいになってる……画面がバグってるみたいに」
「どうやらこの世界、ネームドなど強力な敵はステータスが隠されているみたいですね……」
「ステータスから弱点は探せない、皆気を付けていこう!」
「「「おう!!」」」
 勇者達は各々武器を抜刀し構えていく。
「ま、待ってください!!」
 しかしそれをハクアは制止する。
「なにハクア、今になってビビってるの?」
「違います! 今アイツは僕達じゃなく魔王軍を襲っている。このまま戦わせて消耗を狙いましょう!!」
「それができるなら良かったんだけど……アイツ、すごく敏感みたいだよ?」
 武器を構えたせいか、殺気を感じたのかドレイクは魔王軍を襲うのをやめてこっちを睨みつけている。
「遅かった……」
 ハクアは失敗したと顔を歪ませた。
「大丈夫、俺達は勇者だ! 皆で力を合わせればあんなデカいトカゲ倒せるに決まってる!!」
「だから、捕まえるんだってば!!」
「はいはい、わかったから……っ来るぞ!!」
 ドレイクは狙いを俺達に変えて一直線に突撃してくる、圧はすごいが知能はそこまで高くないのかもしれない……
「力づくしか能の無いバカならどうとでもなる、皆行くぞ!!」
 勇者達は全員でドレイクを迎え撃つ!!
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