心も体もセンセー好みの女にされた俺

久保 ちはろ

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センセーの妹がまさかのレズな件 (後編)

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 俊がシャワーを浴びた後、佐野が用意した味噌汁と焼き鮭、きゅうりの漬物と炊きたてご飯の遅い朝食をすませると、正面で茶を飲んでいた佐野がおもむろに壁の時計を見上げて言った。
「あー、もうすぐ秘密兵器が来る頃だな」
「秘密兵器?」
 食器を重ねていた俊は思考を巡らせた。そういえば、譲のうちから帰って来て、「お仕置き」とかいう名目で散々ヤられまくったあとに、そんなこと言ってたな。
『……野中と遊ぶのは構わない。だけど、その時は必ず俺の秘密兵器、持っていけ』
 もうすぐ来る、ということは、ネット注文の類で今日それが届くということだろうか。だが、秘密兵器とは一体なんだ? メリケンサックか? スタンガン? 貞操帯? まさか中世騎士の甲冑とかじゃねーだろうな。
 そんなことを考えていると、部屋に訪問者を知らせる明るいチャイムの音が鳴り響いた。
「お、来た来た」
 湯呑みを置き、腰を上げて佐野は玄関へ向かう。その間に俊が布巾でテーブルを拭いていると、佐野と女の声が部屋に近づいて来た。 
「えー、なんで私がそんな子守しなきゃならないのぉ? いくらこうちゃんの頼みって言っても、ななか忙しいしぃ……」
「ま、そこをなんとか。お前、そうは言っても絶対引き受けると思うぜ? ほら、こいつが俊」
 名を呼ばれてパッと振り向くと、ちょうどリビングに入って来た佐野と、その後ろにやけにド派手な格好の若い女が立っていた。白の毛皮のショート丈コートから、太腿を半分しか隠していない赤のワンピースが覗いている。足首のキュッと締まった長い脚は、透け感のある黒のストッキングに包まれていた。
「わ、美人~。前言撤回。やる。ななか、守る。俊くん守っちゃう。ていうか、ななかにちょうだい?」
「ダメ。今のところ、俺のだから」
 呆気にとられて二人のやりとりを聞いていた俊は、佐野の即答に思わずどきっとした。どっちだ? 「今のところ」か? 「俺のだから」? ていうか、どっちも違うだろ。動揺するとか、なんなん? 俺。ていうか、この女、誰? 
 佐野の元カノ……? そんな言葉が一瞬頭をよぎり、即座に身構えている自分に気がつく。
「あー、俊、こいつ俺の妹、ななか。女子大生。ちなみに医学部だ」
「はーい。ななかでえす♡ この心配性のこうちゃんから、俊くんのボディーガード、頼まれちゃいました。時給三千円で。よろしくねっ♡」
「はぁ? い、妹? センセーの?」
 途端に俊は脱力する。そう言われてみれば、高そうな毛皮の襟の上に出ている目鼻立ちのはっきりした小顔は、佐野に似ていないこともない。栗色のゆるくウェーブした髪がアップにされていたが、計算された後れ毛がふわふわと顔の周りで揺れている。
 はっきり言って、可愛い。いや、違うだろ。
 我に返った俊だったが、一体どこから突っ込んでいいのかわからず言葉に詰まった。ボディーガード? 時給三千円? 高いのか? 安いのか? 微妙だな。
「そういうことだ。お前、男と会うときは絶対にこいつとスケジュール確認して、同伴させろよ」
「させろよ、って……、勝手に決めるなよ」
「えー、なんで反対なの? 俊くんは、ななかが嫌いなの?」
「いや、好きとか嫌いとかって問題じゃ……むしろ常に同伴って人権に……」
 つつつ、と迫って来たななかが俊の下から顔を覗き込む。頭一個分は背の低い彼女から、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐると、俊は戸惑い、言い淀んだ。
「人権? センセー、俊くん、なんか難しい事言ってます」
 ななかが佐野に向かって口を尖らせると、ジーンズのポケットに親指を引っ掛けた佐野が嬉しそうに口角を上げた。
「あー、こいつへそ曲がりだから、まず素直に人の言う事聞かねーのよ。これからそこ、調教していくつもりだけど」
「ちょ!?」
「それ、私がしちゃダメ?」
「ダメ」
「えー、ま、いっか。じゃあ、今日からよろしくね、俊くん」
 ななかはなぜか背筋を伸ばして敬礼した。佐野は「じゃあ、仲良く二人で買い物でも行けば」と早速財布から金を出している。
 おいおい、勝手に人の予定決めんなよ! 

 だが、俊は一時間後には、ななかに引きずられるようにして池袋のデパートに来ていた。ななかは速攻、下着売り場に直行する。もちろん、レディースフロアだ。
「ちょ、俺困るわ、ここ……」
「でも、いつまでノーブラとトランクスでいるつもり? 俊くん、そのトレーナーの上からでも揺れてるのわかるし、ノーブラってバレちゃうよ。あと、垂れておっぱいのかたち崩れたら嫌でしょ?」
 一蹴され、どこから突っ込んでいいのかわからず返す言葉を失うものの、視界一面色彩豊かな下着が飾れているのだから、まず落ち着かない。
 ブラジャー、パンツを始め、ガードルやガーターベルトそしてボンテージ……じゃなくて、なんていうんだっけ、あれ……と目先のセクシーな下着を見ていると、
「ボディスーツ、欲しいの? でもね、俊くんにはまだ必要ないと思うよ。それに、脱がすのかなり大変って知ってた? 補正下着だから、締め付けが半端なくてね、下手に脱がそうとすると相手が突き指することもあるんだよ。ま、こうちゃんならすぐにコツを覚えると思うけど」
「ち、ちが……なんで、佐野がっ」
 顔が熱くなるのを自覚しながら全力で否定する俊の言葉も終わりまで聞かず、ななかは近くにいた店員に「この子のサイズを測っていただきたいんですけど」と声をかけている。
 俊のが慌てている間に、自分の母親くらいの店員に笑顔でフィッティングルームに案内された。戸惑いがちに店員の後について、すぐに後ろを振り返るも、ななかは付いてくるどころか、「頑張ってね~」と手を振っただけで、自分の下着の物色に専念し始めていた。
「どんなタイプをお探しですか? 3/4カップ、フルカップ。ハーフカップ、モールドブラ、ノンワイヤー……。」
 サイズを測り終えた店員の口から出た言葉は、俊の理解を完全に超えている。なすすべもなく口をパクパクしていると、
「3/4か、ハーフカップがいいかな。あと、セクシー系と可愛い系両方」
 様子を見に来たななかがかカーテンから顔を覗かせ、助け舟を出した。早速店員が両手にごっそりブラを抱えて戻って来る。 
「こちらが今人気のタイプですよ。カラーも豊富でアジサイパープル、スイトピーピンク、アッシュグリーン、トゥルーホワイト……こちらは、軽量化にこだわって軽やかなつけ心地、こちらはプッシュアップ効果があって動いても谷間をキープ、ええと、これはマシュマロパッドで……」
 店員が次々と説明するが、それは俊の耳を右から左に軽快に流れて行く。
「ななか、俺、ギブ……」
 とうとう涙目で訴えると、ななかは満面の笑みを浮かべながら、手早くブラをピックアップして、それぞれ試着させた。 
 やっと決まった可愛い系、セクシー系ブラに合わせたショーツ八組の会計を見て俊は白目を剥いたが、ななかは「こうちゃんに請求行くから」とカードでさっさと支払ってしまう。
 そのあと「洋服も買おう」という誘いを、HPを完全に消耗しきっていた俊は全力で拒否し、デパート内のカフェでぐったりテーブルに突っ伏している、今ココ。
「下着ねえ、手洗いがベストだけど、普通は洗濯ネットか専用ネットに入れて弱水か、手洗い設定で五~六分洗って。干すのも、形を整えてからカップの下の部分を洗濯バサミで挟んで干すの。かたち崩れちゃうから。直射日光は厳禁」
「もー、それ、佐野に言って。あいつ、洗濯係だから」
 と言いながら、洗濯だけでなく家事のほとんどが佐野がしていることに今更ながらに気がついた。俊があの部屋で与えられている仕事は、食器洗いとゴミ出しだけだ。
 大事にされてるとか、って、それ、ねーよな。俺に自分のもを触られたくないだけだな。
 むくりと体を起こした俊は、血糖値を速攻上げるために頼んだガトーショコラをフォークに突き刺し、頬張った。頭痛がしそうなほど甘いが、うまい。女になって味覚まで変わった気がする。
 ななかは、そんな俊をじっと見ながら、ふっくらとした唇を尖らせてアイスコーヒーを飲んでいたが、唐突に切り出した。
「あのね、こうちゃん、昔いじめられっ子だったの」
「へえ、あいつが。いじめられても、悪質な嫌がらせで倍返ししそうだけどな。ジュースに下剤を投入とか」
 一瞬驚いたものの、俊の興味は強く引かれた。あのオレ様が。なんか弱みになるかもな。
 俊のそんな心中も知らず、ななかは伏し目がちにグラスの中でストローをくるくる回す。
「中学校の時、酷くて。こうちゃん、綺麗な顔してるでしょ。だから、女たちに嫉妬されたんだよ。こうちゃん、頭もいいから先生たちにも好かれててさ、褒められたりすると、『贔屓してる』って。ほら、ブスは性格もブスだからさ。何もかもが気に食わなくなるんだよね」
「ま、一概には言えねーけどさ……で?」
「本当に陰湿だったんだから。「男女おとこおんな」って言われて。主犯格の生徒の家に呼び出されて、服脱がされて写メ撮られてばらまかれたことあってさ。それでうちの親が学校に出てって、そいつら全員を退学にしたんだけど。うちのパパのバックは国家権力だから」
 そこで暗い顔をしていたななかは、初めて口を歪めて笑った。俊は見てはいけないものを見てしまった気がして、再びケーキを頬張った。
 バックは国家権力って……佐野の親父はどんな研究してるんだよ。でも、話は嘘じゃなさそうだ。
「収集はついたけど、こうちゃん、私と違って繊細だからさ、やっぱ、相当傷ついてね。それから、女嫌いになったんだよね。浜野さん以外は。浜野さんはいじめから唯一庇ってくれた人だから。何度かうちにもきてくれて、こうちゃんを慰めてくれたんだよ」
 浜野って、あの浜のっちか。俺のちんぽくわえた浜のっち……。
「でも、うちはその事件で引っ越したから、浜野さんとは離れ離れになっちゃって。だから、先生になってから、偶然でも再会はかなり嬉しかったみたい」
 それで、俺と乳繰り合ってるとこ見たら、そらー、ショックだわな……。「初恋の思い出」崩壊なわけだからな……。お怒りごもっとも……。
 俊はそんな佐野に少し同情した。だが、だけど、だからと言って、俺を女にするか?
 どんな女々しい奴なんだよ。
「ま、自分の学校の生徒の俊くんが突然変異で女体化した面倒を見てるって聞いたときは、こうちゃんも立ち直って来たのかなって思って。そうじゃなきゃ、パパの研究の手伝いばっかりして、他人に興味ない人だったから。むしろ避けてたからさ。だから、これはななか、全力で応援しなきゃ! って。今ココね」
 俊は飲んでいたコーヒーを吹き出した。なんだよ、突然変異って。大嘘つきじゃねえか!
「わ、お行儀悪い、俊くん」
 ななかは顔をしかめたが、すぐにチーズケーキの残りを食べ、二つ目のイチゴタルトに取り掛かる。
「そうだ、今からあたしの部屋においでよ。近くだし。下着のちゃんとした付け方、教えてあげる。間違った付け方してると、綺麗に形でないし」
 佐野に軽く裏切られた気がし、俊はやけくそになって頷いた。大事にされてると思っていたのも、単なる奴の罪悪感——それも気まぐれのーーでしかないと思い当たる。俊は、ケーキの最後の一口にフォークを思い切り突き刺した。
 下着選んでいるときに、佐野のことが頭に浮かんでいた。
 今なにやってるんだろう。、飯なに作ったんだろ。──早く、会いたい。早く、抱かれたい。これ着けたら、なんて言うかな。
 そう思って、少しでも胸をときめかせていた自分が可笑しかった。
 これも全部、薬のせいだ。胸糞悪い。

 夕方の、混み始めた有楽町線に乗ったが、東池袋駅は一駅なので苦にならない。徒歩十分もかからない住宅地にななかのアパートはあった。三階建てで、煉瓦色の外装、周りを手入れの行き届いた低木の生垣がエントランスの階段を飾っていた。
「ここ、女性入居者専用なんだ。セキュリティもちゃんとしてるんだよ」
 そう説明しながら三階の角部屋のドアを開けた。
 え、じゃあ、俺入っちゃやばくね? と思ったが、すぐに自分は女ということを思い出し、苦笑した。
「金、あるんだな。ななか……さん、も医大生なんだろ?」
「ななかでいいいよぉ。うん。パパがすごい研究者だし、ママは外科医なんだよ。二人ともあんまり家にいないから、あたしたちきょうだいがすごく仲良しなんだよね」 
 広めの1K。「適当に座って」、と指されたローテーブルの前に座ってミリタリージャケットを脱いだ。アイボリーのラグマットにはコーヒーのシミや髪の毛一本も落ちていない。クッションの上に、黄色と黒のチェックのひざ掛けが畳んで置いてある。小花柄のカバーが掛かったセミダブルベッドに小ぶりの本棚。その上に小さなサボテンの鉢植えと、ラップトップ。壁の引き戸の向こうがクローゼット。さっきななかがコートをしまっていた。
 ローテーブルの下にあったファッション誌をめくっていると、湯気の立つカップを二つ持って、キッチンからななかが現れた。
「玄米茶だけど、いい?」
「あ、全然。サンキュ」
 受け取った茶をふうふうと息を吹いて冷ましていると、向かいに座ったななかが、バッグから出したスマホ見てため息をついた。心なしか、さっきまでの元気がない。
「どうした?」
 俊の心配を声に聞きつけたのか、ななかは眉を下げて笑って見せた。
「彼女と連絡が取れないんだよね。三日前から出張で海外に行ってるんだけど、電源切ってるみたいで。昨日も丸一日連絡なかったし。もしかして、ななかのこと忘れちゃったのかな」
「えっと、彼女って、友達? 忘れるとかないでしょ、普通。単に忙しいんじゃねえの?」
 慰めのつもりで叩いた軽口に、ななかは目を瞬いた。
「あれ、こうちゃんから聞いてないの? 彼女って、彼女だよ。本命の。ていうか、ななか、女の子の方が好きなんだよ。この彼女とも二年目なんだけど」
 今度は俊が目を丸くする番だった。
「えっ」
 やっとそれだけ声が出たが、「まさか」が頭にこだまして、二の句が継げない。なんなんだ、こいつらきょうだい揃って。
 そんな俊を楽しそうに見ながら、ななかは隣にすり寄ってきた。右腕に、グッと柔らかな胸が押し付けられ、俊は軽く身を引いた。
「いいよね、俊くんはこうちゃんとラブラブでさ……」
 耳に息がかかり、ぞくっと悪寒が走った。なんか、これ、やばいんじゃないか? 
「ら、ラブラブとかじゃねーよ……」
「ななか、寂しいなあ。彼女にほっとかれて、人肌、ちょう恋しいなあ……」
 顔を覗き込んできたななかの目は、狙いを定めた猫のように丸く、キラキラ光っていた。あぐらをかいている俊の体に上半身をほとんど預けている。
「幸せ少し、分けてくれたっていいじゃない?」
「いやいやいや、全然幸せじゃねーし、むしろ不幸のどん底だし」
 グッと肩を押し返した右手をななかに取られ、そのまま相手の胸に当てられた。条件反射で思わず指に力が入る。
 や、やわらけえ……。
 モヘアのセーター越し、ブラ越しからでも、指を包むような弾力が伝わってきた。その気持ちを読んだかのように、ななかはにっこり笑った。
「憂さ晴らし、付き合ってよ。ね、やろ。セックスしよ」
「やろって……、俺、そっちの趣味ねーし!」
 それを聞いてななかはプッと吹き出した。
「え、心が男の俊くんで全然問題ないじゃん。体は女だけど、男の俊くんが女の子の私とヤる。むしろそれが本来の健全な姿じゃない」
「え、まあ、そうだけど、佐野が……」
 野中にキスマークをつけられただけでこっぴどい目にあったのだ。
 それがもし、血の繋がった妹と乳繰り合ったと知られた日には……。それを考えただけで恐怖に鳥肌がたつ。
 そんな気も知らず、ななかは俊の手をさらに胸に押し付けた。
「大丈夫だって。女相手は浮気にカウントされません。それにあたしが相手なら、許してくれるって、you、兄弟になっちゃいなyo!」
 お前誰だ、と突っ込もうとしたところに、ななかの顔が迫ってきて、ちゅっ、とキスされた。啄ばむだけのキス。でも、すごく柔らかい。そうだ、これ、本当に女の唇だ。
 その感触に俊は一瞬呆然とした。
「ねね、女体化した体、見せて。女同士だからいいでしょ?」
 顔を離したななかは、耳に口を寄せて囁くと、ナイキのトレーナーの裾から両手を入れ、いきなり下のTシャツごと顎の下の方まで勢いよくまくりあげた。
「ちょ、何す……」
 隙を突かれたが、すでに遅し。
「うわ、すごい綺麗なおっぱい!」
 あらわになった胸を見た途端、ななかは感嘆の声をあげた。そのまま吸い込まれるようにじっと見つめている。同性(?)といえど、間近で、むき出しの乳房を見られるとさすがに恥ずかしい。俊は、とにかく相手を引き剥がそうと、彼女の細い手首を取った。だが、相手は無謀にもそのまま俊に全体重をかけてきた。
「わっ、あぶな……っ!」
 ラグマットの上にななかもろとも倒れる。その拍子にまともに後頭部をぶつけ、激痛が走った。
「ってえええ! おまっ、何考えて……っ、……ぁ」
 罵倒の言葉は、胸から伝わる妖しい刺激に飲み込まれた。俊に馬乗りになったななかが円を描くようにゆったりと乳房をこね回し、吐息を漏らす。
「俊くんのおっぱい、ふわっふわなのに、むっちりして気持ちいい……」
「ああっ、やめ……ろよ」
 キュッと乳首を捻られて、じん、と、下腹が痺れた。それだけで、抵抗する気持ちが一瞬で削がれ、代わりに快楽の期待値が跳ね上がってしまう。
「乳首の色もピンクで綺麗。小さいけど、敏感そうだし? ほらほら、もう硬くなってきてるよ」
 ななかは乳首を指先で弾いたり、乳頭をくすぐったりした。
 その焦れったいような刺激さえ、佐野に朝っぱらから犯された女体は即座に反応し始める。腰の後ろからむず痒いような疼きが沸き起こり、ななかの柔らかな尻の下で体を捩らせた。
「ぁ、ダメ……だって、」
 腰の上にまたがる体を押しのけようとする両手が、ななかのストッキングの上をするりとすべった。
「ぁん」
 相手も興奮しているのか、鼻にかかった甘い声をあげた。そして、そのまま倒れるように胸に顔を近づけ、乳首を口に含んで舌で転がしてきた。
「はぁん……」
 今度は俊が喘ぎ声を漏らす番だった。ななかは口に含んだ乳首に唾液を塗り込むように、佐野とは違う、小さな薄い舌でチロチロと擦り、吸い上げた。
 そうしながら、快感に脱力した俊の服を頭からするりと抜いてしまう。そして、自分も一度素早く身を起こしてセーターを脱ぐと、ブラ一枚になった。
「ね、ベッドの方がもっと気持ちよくなれるよ」
 ななかはニッコリ笑い、俊の上からおりると、両手を引いて起き上がらせ、そのままベッドに誘った。片手でカバーと掛布を外したそこへ、引っ張られるようにして倒れこむ。シーツの冷たさに、俊は一瞬我に返った。
 やっぱ、これ、やばいんじゃねーのか。
 相手は佐野の妹で、相手が誘ってきたからとはいえ、セックス(女同士ってできるのか?)したら、佐野にどんな顔で会えばいいのだろう。そりゃ、頼めばななかも秘密にしてくれるだろうが、それって、やっぱり騙すことになるわけで、俺があいつに隠し事をしたいかといえば、どちらかといえばノーで……。
「ねー、もしかして、こうちゃんのこと、考えてるの?」
 図星を指され、俊の見開いた目は、いつのまにか全裸になったななかが覆い被さってくる姿を捉えた。むき出しの四つの乳房がむにゅりと潰れる。
 やっぱ、スッゲー、やわらけえ……、じゃ、なくて!
「ちょ、ま、待て」
 及び腰になった体にするりとななかの腕が回って引き寄せられた。そのまま、真顔で見据えてくる。 
「あのさ、俊くんは男に戻りたいんだよね? こうちゃんもそれに協力してるんだよね? ってことは男に戻ったら、こうちゃんとは関係なくなるんでしょ? だったら、そんな可愛い顔して、綺麗な体でいつまでもこうちゃんと一緒にいるって、こうちゃんのためにもよくないと思うよ? 俊くんが本気でこうちゃんの気持ちに答えないようなら、彼の気持ち、惑わすようなことしないで」
 あいつの気持ち? だって、あいつは、俺を憎んでいて、女体化した俺を見てあざ笑ってるだけで……。
「んんっ!」
 ななかの言葉に軽く混乱していた俊は、キスをされても咄嗟に抵抗できず、すぐに両手で頬を抑えられて唇を食まれた。マシュマロのような柔らかな唇が、何度となく唇をついばんでいる。
「まっ……な、な……」
 止めさせようと口を開いた拍子に、するりと濡れた舌が忍び込んできた。それが俊の舌に触れた途端、その舌が甘くて、俊は一瞬言葉を失った。薄くて柔らかい舌はそのままひらひらと動いて、すぐに舌に絡まってきた。
(そう、だよな……、佐野は、俺のこの女体に惑わされてるだけで……)
 マシュマロのような唇が軽く合わさった瞬間、そう思った。男に戻ったら、今みたいにあいつに抱かれることはありえない。なら、そういうのはきっぱり、それもさっさと終わりにした方がいい。
 クチュクチュと舌を擦り合わせながら、俊はぼんやりと決心した。
 ななかの体は佐野のたくましいそれとは違って軽く、柔らかい。彼女の乳房が自分の乳房に当たる。乳首と乳首が擦れ合い、新鮮な刺激が流れ込んでくる。
「ん、ぅん……ふっ」
 乳房を優しく円を描くように捏ねられると、たちまち心地よさが広がった。佐野の大きな手が鷲掴みで与えてくる強い刺激とは違い、勿体ぶるような妖しい手つきだったが、細い指に執拗に揉まれていると、その動きに呼応した体がじくじくと疼きだした。
「俊くん、目がとろんとして、顔がエッチになってる……かぁわいい……」
「そ、そんなこと……っ!」
 そう言うななかの顔もほんのり上気している。彼女は狼狽する俊を楽しそうに見下ろしながら、しこりきった乳首をひねり上げた。その痛いような、気持ちいいような峻烈な感覚に、俊は体を弾かせた。
「こんなに感じやすいなら、あそこはどんなことになってるでしょう……」
「やァ……」
 俊は体を起こそうとしたが、その瞬間、ジーンズの上からななかに強く股間ーーそれもクリトリスーーを擦られ、すかさず体から力が抜けてしまう。 
「すぐに気持ちよくしてあげる。ななか、上手なんだよぉ」
 俊は、下に体をずらしたななかがジーンズのボタンを外し、全て脱がせていくのを、腰を上げて助けていた。彼女が下半身に顔を近づけていく気配に、俊は自ら足を開いた。佐野によって開花させられた女の本能が、その先を求めている。
「俊くんのここ、見せてね」
 俊は逆らわなかった。それどころか、ななかの顔が埋まっている開いた脚の中心に自ら手を伸ばし、「くぱあっ」と襞を割った。とろりと中から露が滲み出る感触。
(あんまり恥ずかしくない……かも)
 なぜだろう。女同士だからか。それとも自分の本当の体ではないともう一人の自分が頑なに思っているからか。
「すごく綺麗よ……ピンク色で、ツヤツヤで……美味しそう……」
 ななかが感想を述べると、さらけ出された淫部に温かい息がかかる。濡れた舌が花弁を舐めあげた時、俊は声を零した。
「はぁ……」
 そこは自覚するほど潤って刺激を求めていた。さっきから、この瞬間を待ち望んでいた。
 足指の先まで快感が突き抜けていくと同時に、背中は勝手にのけぞっていた。シーツを掴み、ただ、ななかの行為に身を任せた。
「俊くん、ほんと感じやすいんだね……男の子の時も、そうだったの?」
 そう言ってななかは、充血してビンビンに張り詰めたクリトリスの周りを生温かい舌で巡り始めた。すぐにピチャピチャと水音が立つ。
(……ああ、気持ちいい……)
 切なくなるほどの快感だった。目尻に涙が滲んだ。小さな舌はねっとりと、満遍なく淫部を舐めまわしている。まるで栗色の毛の子猫が必死にミルクを飲んでいるような、そんな図がふと脳裏をよぎる。
「あ、ああ……」
 ななかが舐めていた割れ目から口を離した。その代わり、両脚をさらに派手に割ってくる。
「もっと……」
 ななかの手の下で俊は、依然自ら襞を広げたまま腰を揺らした。今まで舐められていた場所の、核心にはまだ触れられていない。そこは無視され続けた屈辱と、高まる欲望に、痛いほど疼きまくっていた。
 ななかが俊の手をそっとどかせ、指が秘裂を割った。それから、充血し、ズキズキと脈打つ小さな肉芽にいきなり吸い付いた。
「ひゃんっ!」
 稲妻が体を貫いた。肉芽はななかの口内で舌先にくるくると転がされている。それだけではなく、それを唇でそっと挟んでは、蜜と一緒に軽く吸い上げることを繰り返す。
「あっ……あっ、あぁ、あぁ……」
 水が砂にしみてゆくように、ななかが嬲っている場所から快楽の波紋がじわじわと広がっていく。刺激は優しいが、確実に追い詰めていくように絶妙な舐め方で攻めてくる。
 佐野の、無理矢理与えてくるような獰猛な刺激とは違い、ななかのそれは、物足りなさを感じつつも、心地よい刺激は体の細部と言う細部に行き渡るようだ。それでも、佐野とのセックスに慣らされた貪欲な体はさらなる、もっと強烈な快楽を求めていた。俊は、相手の舌の動きを追うように腰を小刻みに波打たせた。
「はぅ……っん!」
 いきなり尖らせた舌先を蜜壺に埋め込まれ、声が出た。むしゃぶりついたままかき混ぜられたと思うと、膣口に浅く挿入した舌先をピストンさせてきた。
 快感が届き切らない子宮が、物欲しげにキュンと震える。膣口からは新しい蜜液がトロトロと滴っている。ななかがそのまま秘裂に指を当てた。軽く前後に動かしながら、襞の中に埋めようとしている。
 ああ、指で中を擦られるーーその瞬間を想像しただけで、俊の背に悪寒が走り、乳首が痺れた。
 ヌプッと人差し指が埋まると同時に、舌先が肉芽をくすぐる。たっぷり蜜に濡れた指の動きはとても緩やかで穏やかだった。にもかかわらず、指が粘膜を数回こすっただけで、イってしまった。
「はぁああん! っあ、ぁ、ぁあああ……」
 それでも間断なくクリトリスを下方から上へと舐め上げられ、俊は浮遊感に陶酔しながら、体をブルブルと震わせていた。
「あん、あぁ、っふ……ん」
 自分でも驚くほど甘い喘ぎ声が出てしまうが、それを止められない。
 手マンで軽く達したが、佐野とのセックスではあんなものはまだまだ序の口だった。あともう少しでもっと大きな波がくる、体はその予兆を感じ取っているが、ななかはまったりと愛撫をよこして来るだけで、追い込みをかける気配がない。足元に打ち寄せる快感に身をよじらせるたびに、舐められている股間のぬめりを自覚し、それをななかがじゅるじゅると音を立てて吸い上げる。
(佐野……、佐野だったら、くれるのに……。俺がこんな風にしてたら、俺に「欲しい」って言わせて、いっぱい、激しいやつをくれるのに……。佐野は俺とはお遊びなのに、俺はあいつじゃなきゃダメで……。)
 佐野の強さと熱さが脳裏に蘇るだけで、胸が引き裂かれるように痛んだ。佐野とのセックスで本当に自分は変わってしまった……。佐野が欲しい。佐野の全部が欲しい。佐野のものにして欲しい。
 それに気づいた俊が軽く絶望していると、ななかの動きが変わった。
 蜜壺に入り込んでいる指がピッチを上げてヌプヌプと抜き差しされる。粘膜をリズミカルに、それも感じるところを連続で擦られ、強烈な刺激が突き抜けた。
「っ……あああんっ! あん、あんっ……」
「気持ちいいのね?」
 ななかが再び陰唇に舌を這わせながら囁いてくる。尖りきった肉芽を強く吸い、それから舌先で左右になぎ倒した。焦らされ、敏感になりすぎた体に刺激が、快感が倍増し、勢いよく膨らんでいく。
「あーっ! あっ、あっ、あううううっ! いくううう」
 俊はついに全身をぶるぶると戦慄かせた。

 ななかとのエッチは決して悪くなかった。
 壮絶なエクスタシーの後、目をつぶり呼吸を整えながら、俊は思った。だが、やはり、佐野にはかなわない。思わず自ら懇願してしまうような、強烈な劣情は、ななかとは生まれてこなかった。
 まさか、とは思ったがそれが真実で、現実で、最悪の答えだった。
 ふと唇に柔らかな感触が落ちてきて、目を開ける。少しアイメイクの崩れたぱっちり二重が顔を覗き込んでいた。それがニコリと細くなる。 
「俊くんのイキ顔、ちょういやらしくて、可愛くて、ドキドキしちゃった。それでね、なんだか私もエッチな気持ちになっちゃった……ねえ、今度は俊くんがこれで私を気持ちよくして?」
 俊は、ななかが手にしたものを見て目を丸くした。
(えっ、これ……って)
 ななかは、ベルト付きのディルドー、つまりレズビアン用のをいつのまにか出してきていたのだった。黒いベルトにシリコン製のペニスがついていて、それを腰に装着して相手で犯す、大人のオモチャだ。知識として知ってはいたが、実物を見るの初めてだった。
「ね? いいでしょ? 俊くん、ヤり逃げなんて男らしくないよぉ……」
 しなを作って見つめられ、しかも男らしくないと言われて、俊は逃げる言い訳を失った。むくりと起き上がり、向かい合う。
「い、いいけどさ……。ななかは、いいの? 俺でも? ほら、彼女とか……」
「うん。俊くんなら……したいな、ななか」
 ほんのりと上気した顔で覗き込まれ、相手を可愛いと思った瞬間、ドキッと心臓が跳ねた。
 な、なんだこの感じ。
 気のせいか、かなり縮小した元ちんぽ、クリトリスまでずくんずくんと疼き出している。
「じゃ……、これ、ど、どうすんだ?」
「あ、じゃあ膝立ちして。着けてあげる」
 ななかは嬉々として、慣れた手つきで俊の腰にベルトを装着した。 
 自分の股間から黒光りするシリコン製のペニスが勃っている。女体からペニスが突き出ているのは異常な光景だったが、それを見た瞬間、俊に懐かしい感情が込み上げてきた。それだけで、腰のあたりに重い欲望がうねり出した。
「ね、立派でしょ……」
 ななかは極太の黒ペニスを目の前に、今にも舌なめずりをしそうな顔で見入っている。
「ま、まあ……俺のも、これくらいはヨユーであったし……」
「ふふ、そっかあ……じゃ、ななかはそんな俊くんに犯されちゃうんだね……」
 それを聞いた途端、俊の目の奥が赤く燃えた。
「あん……」
 俊はななかを抱き寄せ、ベッドに押し倒していた。広がった髪からふわりといい匂いが鼻先をくすぐる。
「優しく……してね」
 腕の中でななかが囁いた。 
 俊は相手の肌の上を撫で回し、どこもかしこも柔らかい体を堪能した。このずっと触っていたくなる感触、すっかり忘れていた。
「俊くん、恥ずかしい……あん」
 ななかは身を捩るが、俊はその感触をもっと味わうために腕にぎゅっと力を込めた。すると、相手も俊の首に腕を回してきた。乳房を乳房で愛撫するように、ななかは微かに体を揺らした。コリコリの乳首が相手をくすぐり合い、ペニスバンドの下の性器が息吹始めた。
「俊、くぅん……早く、挿れてぇ……」
 潤んだ瞳が、至近距離で見つめてくる。その恍惚とした、物欲しそうな眼差しが俊をさらに昂らせた。
「ななか……」
 俊は目の前の唇を夢中でついばんだ。待ちきれないように開いた柔らかな唇から舌を入れ、すぐに相手に巻きつき、相手も夢中で擦りたててきた。唇同士を密着させると、二つの舌はくちゅくちゅと口内で戯れ始める。
 体を押し付けてきたななかの下腹と俊の体の間に挟まれ、下をくぐらせたバンドが食い込み、俊の股間を盛んに刺激していた。その興奮に煽られるように、右手でななかの乳房を鷲掴みにした。
「ぁぁん!!」
 顎を上げて、ななかが仰け反る。
 相当な感度の良さだ。俊は、自分の胸より一回りほど豊満な、相手のおっぱいに指を食い込ませて乱暴に揉みしだいた。手に吸い付くような弾力のある胸が形を歪めるたび、先端の乳首はピンと立ち上がる。顔を赤く染めて喘いでいるななかを見ていると、もっとよがらせたいという嗜虐的な感情が沸き起こった。その瞬間、硬く張り詰めた乳首を左右同時に指先で潰していた。
「ああっ!!! や! それ、気持ちいい……もっ、と……」
 ななかは俊の腰に片足を乗せ、股間にペニスが当たるように腰を揺らし始めた。俊は絞り上げた乳首に吸い付き、ちゅぷちゅぷと吸い立てたり、根元を甘噛みしたりと責め続けた。
「あはぁ、んん、ファッ、……い、いい……俊くん、気持ち、いいよぉ……」
「へぇ? 俺と彼女とどっちがいい?」
 そう言いながら乳首をレロレロと舐める。
「そ、それは……」
「それは?」
 顔を覗き込みながら、乳首への愛撫を止めてしまう。
「え……」
 俊を見上げる目が泣きそうに潤んでいる。その素直さに打たれ、俊は人差し指と中指で乳首を挟みつつ、ゆさゆさとおっぱいを揺らした。
「んん……俊くん、好き……」
 そう言われながら、腰をくねらされ俊の脳内股間も膨らんできた。二人の密着した下腹は、ななかから溢れ出たもので濡れまくっていた。身体中の血が煮えたぎり、体の中心に集中するこの感じ。女を濡らし、俺が欲しいと哀願させるこの快感。
 俊はその濡れ具合を確かめるように、乳房を掴んでいた手をそっとななかの股間に移動させた。
「すげえ、ぐちょぐちょ……熱いし……」
「や……、言わない、でぇ……」
 胸元でいや、いや、と首を振るななかをさらに辱めるために、俊は割れ目に指を這わせると、その中へにゅるりと突き入れた。ほとんど力は入れずとも、軽く第二関節まで潜ってしまう。
「あっ、そこ……だめ……だめぇ……」
 ダメと言いながら、ななかは入口を探っている指をさらに奥に導くように前後に激しく腰を繰り出した。眉根を寄せ、相当感じ入っている。俊もそんなななかの様子にますます昂ぶりながら、二本の指で中をぐちゅぐちゅとかき混ぜ続けた。
 男の本能が蘇り、体が勝手に操られているようだった。女の体の、どこをどうすれば気持ちよくさせられるか。指は自然とそこを探り当て、微妙な力加減で蕩けきった柔らかな膣壁を擦る。
 佐野にされている時の受け身の自分と今の自分はは全く違う。相手を支配したい、追い詰めたい、屈服させたい、目的はその一つだった。
 そして、それが本来の自分なのだと、頭の中で声がこだましている。
「アーーーっ、 いいっ、イクーーっ」
 もっとも反応の激しい場所を集中的に攻め続けていると、激しく喘いでいたななかの膣がビクビクッと俊の指を食い締めてきた。
 奥から大量の蜜液を吐きながら、俊にしがみついたまま、ななかは体を硬直させた。
(ああ……イってる……すげ……、わかる……)
 硬く締まっていた膣が次第に弛緩してくる。
 肩で息をしているななかに、俊は「大丈夫?」と声をかけると、相手は幸せそうに顔を綻ばせ、擬似ペニスを握ってきた。
「早くぅ……」
 待ちきれないというふうに自ら脚を開き、握ったものを秘裂へと導く。絶頂を味わった直後の彼女からは、さっきの可愛さは消え、色香が増していた。俊は雄の本能に駆り立てられるまま相手に覆い被さり、シリコンの先端を襞の間に突き刺した。
 ジュププッーー。
 内部から愛液がペニスを伝って押し出され、卑猥な音を立てる。
「はぁああああっ!!」
 ななかの華奢な体が跳ね、弓なりになった。同時に、驚くことにペニスから快い締め付けが伝わってきた。
 この感触……。
 俊の腰から背中にかけて、ぞくぞくと官能の旋律が這いのぼる。
 ほんの少し前後に動かすだけで、突き刺したペニスにまといついた柔襞が、淫らに歪んだ。
「あああ」
 ななかのピンク色の唇から喘ぎが溢れる。俊は蜜による滑らかな動きをゆるゆると楽しみながら、女の中とはこんなにも心地よかったんだと、記憶を蘇らせた。
「ねぇ、ね……、いっぱい突いてえ」
 甘い声にねだられ、俊はななかの腰を両手で掴んで抽送を速めて最奥に叩き込んでいく。いや、すでに自然と腰が動いていた。
「あああっ、いいっ……おくっ、ズン、ズンって……、ぁ、あ……」
 ななかは頭を左右に振り、嬌声をあげた。擦れ合う性器の間で、溢れ出した蜜が白く泡立つ。
 ピストンの衝撃に、二つの乳房が揺れている。俊の乳首もビンビンに立っている。女が女を犯している。
 その異様な眺めに俊はますます興奮した。
 下半身同士を異物で結びつけるセックスに耽溺し、腰を絡ませ合う。
「ああん、あああんっ」
 ななかはほとんどすすり泣きしつつ、両足を俊の腰に絡みつける。俊は密着した腰をさらに強く繰り出し、子宮口を穿ち続けた。その度に先端から重い衝撃が響き、ベルトに刺激され続けた俊の股間からも、流れた蜜が太腿に伝い流れていった。
 これは思った以上に気持ちいい。思わず腰を抱えた手に力が入る。
「なっ、あっ、ぁ、ひゃあ……っんん、いい……違う、違うの……!」
 ただでさえ狭い膣内がぐっと締め付け、ペニスが引きずり込まれるようだった。膣からずちゅっとペニスを引くたびに、俊のクリトリスがベルトに圧迫され、そこから幾度となく微電流が突き抜けていった。
「すご……わかる、中が締まってるのわかるよ……」
「気持ち、いい? 俊くんも、気持ちい?」
「ああ、気持ちい……めちゃめちゃいい……」
 そう見上げてくるななかからは、さっきまでのお嬢様然とした様子はすっかり消え去り、今や彼女は快楽にすっかり溺れ、蕩けきった顔でよだれを垂らして腰を振り続けるただのメスと化していた。
 ぐちゅっ、じゅぽ、じゅぷっーー。
「どう? どっちがいい? 俺と、彼女と」
 一旦動きを止めて意地悪に見下ろすと、ななかは俊の腰に絡めている脚に力を入れ、ねだるように結合部を擦り付けてくる。股間がぬちぬちと音を立てた。
「ああ、俊くんっ……俊くん……」
「ちゃんと言ってよ」
「ああ、俊くんのちんぽが、気持ちいい……ちょうだい、もっと、激しいの、ちょうだい……!」
 ななかの露骨な言葉に、俊の理性が砕け散った。ななかの膝を合わせ、腰を浮かせたところに体重をかけて猛烈に打ち込んでいく。腰を激しく前後に動かす。俊の抽送は全く男のそれになっていた。
「あっ、あっ、奥、奥……、埋まって……ぁ、ぁ、それ、ダメ、ダメ、ダメェエエエ!!」
 パチュ、パチュ、パチュっと女の臀部と腰が打ち合う衝撃は甘美に俊の腰の裏を痺れさせた。
「ああ、いく、いく、いくいくいくぅぅぅっ!!!」
「……っ、俺も……!」
 膣が収縮し、痙攣する。最奥にペニスの先端を埋め込んだまま、突き上げた。相手の恥骨に押し付けられたペニスバンドにクリトリスが強く圧迫された瞬間、俊は射精感さえも錯覚した。
 二人は同時にガクガクと全身を揺らして壮絶なエクスタシーに呑まれた。

 軽く意識を飛ばしたななかの髪を撫でながら、自分もイクときにこんな風に激しく乱れるのだろうかと、ふと賢者タイムの思考で俊は思った。そして、今の自分は佐野と同じなのだと思い当たる。
 佐野は自分の快楽を最後の最後まで我慢して、いつも先に俊をイかせてくれた。
 乱れる自分を見て、あざ笑っているのではない。
 今こうして冷静に思い出せば、自分を抱いている時の相手の眼差しはいつだって、切なさと激しい欲望がないまぜになった熱く、真剣なものだった。
——だめなのか?
 佐野の低い声が耳に蘇る。
——お前の、心も体も欲しいと思うのは。
 本当にその言葉に嘘はないと俊は確信している。それも、昨日今日のことじゃない。自分はあいつからものすごく大事にされている。それは、わかっている。わかっているけど……。
 でも、それは受け入れてはいけないことだ。
 自分はゲイではないし、こうやって女とやって、普通に男の感情を持ってヤレる。
 体が女を欲しいと募る欲望、ペニスにこもる熱、柔らかな場所という場所を貪る興奮は、俺の中にまだちゃんと生きていた。
『俊くんが本気でこうちゃんの気持ちに答えないようなら、彼の気持ち、惑わすようなことしないで』 
 ななかはそう言った。でも、佐野の気持ちって?
 まさか、マジで好きとか? ありえねえ。そんなこと、今まで一度も言われてねえし。
 俊は苦笑し、ふと真顔に戻る。
 もし、もしあいつが本気で俺に「好きだ」と言ったら、俺は……?
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