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Part 24-2
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天井から射込む白い朝の光。
光を吸い込む白いシーツ。
その隙間から白い肩を覗かせて、まどかは大人しくルイに抱かれている。
ルイは後ろから回した腕に少し力を込めて、彼女の柔らかい体をさらに自分の方に引き寄せる。
うなじに顔を埋め、自分のと交わった香りを深く吸い込む。
「すごく……素敵でした。朝がきて欲しくないって思うくらい。……久々にこういうことをした、と言うだけが理由じゃないと思います」
朝一番に彼女が呟いたその言葉。
それを「戯れ」と言うにはやや激し過ぎ、明け方まで続いた情事後の、そして幸せボケしたルイの頭で理解するのに、やや時間がかかった。
ルイは反射的に体を起こし、まどかを見下ろした。
「……久々、って……おまえ、獅子とそういう……」
突然身を起こしたルイの顔を、まどかは何事かと驚きの目で見上げている。
そして、やはりやけに落ち着いた口調で答えた。
「そういうの、無いです。本当に。……まあキスとか、体が軽く触れあうとか、そういうのはありましたけど……」
白い光が、まどかを縁取っている。
それとも彼女自体が光を帯びているのか。まどかの言葉は、彼女をそんな風に見せる程、ルイを舞い上がらせるのに十分効果があった。
「マジ……なんか、ヤバい。……嬉しいかも。オレ、獅子と兄弟じゃないって……」
まどかも胸をシーツで押さえながら、むくりと起き上がった。今さら隠すなよ、とそれをはぎ取りたくなる。
きょうだい?
彼女が口の中で反芻する。ーーあぁ……。
「じゃないですね」
きっぱり言い切る彼女の眼差しが、心の中身を見透かすようで、ルイは相手を直視できずに顔を背けた。
手で緩んでしまう口元を覆う。
(ヤバい。かなり嬉しいんだけど)
次の言葉がでない。気のせいか耳が熱い。
目の端で捕らえた彼女は首を傾げてルイを見ていたが、やがておかしそうに顔を綻ばせた。
ルイはまどかにもう一度向き直り、腕を伸ばして胸に強くかき抱いた。
一糸纏わぬ彼女の柔らかな胸の感触で、今腕の中にいる存在が夢で無いと改めて知る。
まどかはどうしていいかわからない様子で、おずおずと背に手を回す。
ルイは鼻を彼女の首筋に、さらに深く埋める。
「教官と肌を合わせるのは特別に気持ちがいいけれど、その何倍も寂しいです」
ルイは正面から彼女の視線を捕らえた。奥二重の、切れ長の涼しげな目元。
それでも瞳に帯びた光に熱がこもっている。
「それは、オレがおまえに『好きだ』とか『愛してる』とか言わないからか? 言って欲しいのか?」
まどかは困ったように微笑んだ。
「そんな質問をした人は教官が初めてです。それに、女にせがまれて初めて言う、というものでもないんじゃないですか、そう言う言葉は。気持ちと一緒に自然と出て来てしまうものだと思いますけど」
「……だよな」
ルイは体を預けるようにしてまどかを押し倒す。彼女はルイの重みを受けながら、ゆっくりとベッドに体を沈ませる。
横になった彼女の体のラインに沿って、手を這わせる。
「おまえ、いつ帰るの……」
彼女の顔が曇った。
「どうして………?」
ルイは「帰るなよ」と言う言葉をぐっと飲み込んで、別の言葉を絞り出す。
「行けたら……なるべく見送りに行くから、さ………だから、わかったら教えてくれよ」
(まどかのまつげって意外と長いんだな……)
伏せられ、影を落とすそれを彼はただ見ていた。
まどかは、ルイが脱がせたものを拾い集め、バスルームへ向かう。
「オレの所に来ないの? ここで眠らないのか?」
ルイも手を伸ばしてベッドの脇に落ちていたシャツを拾い、羽織る。
彼女は振り向き、肩をすくめて言った。
「夢、見たんです。……でも、いつもの悪夢ではなくて……鳳乱は私をしっかり抱きしめて『さようなら』って言ったんです。私たち、ちゃんとお別れしたんです。だから、きっともう、大丈夫だと思います」
「そうか……」
それなら、彼女がここに来る必要も無いわけだ。
ーー夢を見ていたのはオレの方だったんじゃないか。いつもまどかがオレの腕の中で眠る夢を。
身支度を終えたまどかは、ルイの前で背筋を伸ばして立っていた。
「耳……ごめんな」
彼女は首を傾げて指を耳に持って行く。
あ……。
「すぐに塞がりますよ。跡も残らないでしょう。心配しないで」
清々しい微笑を口角に浮かべて、まどかは答えた。
ーー跡も残らない。全部、期待はずれだ。
「それでは、教官……」
ルイを見上げる瞳が、微かに震えている。
(そんな目で見るなよ)
ルイは堪らなくなって、彼女をきつく、抱きしめた。
(おまえになんて言えばいいか分からないんだ。言葉にできないんだ。おまえがオレの全てだと、どうやって言葉に表すことが出来るだろう)
ーー「行くな」と叫びたい。でも、オレにはそんな資格は……無い。
光を吸い込む白いシーツ。
その隙間から白い肩を覗かせて、まどかは大人しくルイに抱かれている。
ルイは後ろから回した腕に少し力を込めて、彼女の柔らかい体をさらに自分の方に引き寄せる。
うなじに顔を埋め、自分のと交わった香りを深く吸い込む。
「すごく……素敵でした。朝がきて欲しくないって思うくらい。……久々にこういうことをした、と言うだけが理由じゃないと思います」
朝一番に彼女が呟いたその言葉。
それを「戯れ」と言うにはやや激し過ぎ、明け方まで続いた情事後の、そして幸せボケしたルイの頭で理解するのに、やや時間がかかった。
ルイは反射的に体を起こし、まどかを見下ろした。
「……久々、って……おまえ、獅子とそういう……」
突然身を起こしたルイの顔を、まどかは何事かと驚きの目で見上げている。
そして、やはりやけに落ち着いた口調で答えた。
「そういうの、無いです。本当に。……まあキスとか、体が軽く触れあうとか、そういうのはありましたけど……」
白い光が、まどかを縁取っている。
それとも彼女自体が光を帯びているのか。まどかの言葉は、彼女をそんな風に見せる程、ルイを舞い上がらせるのに十分効果があった。
「マジ……なんか、ヤバい。……嬉しいかも。オレ、獅子と兄弟じゃないって……」
まどかも胸をシーツで押さえながら、むくりと起き上がった。今さら隠すなよ、とそれをはぎ取りたくなる。
きょうだい?
彼女が口の中で反芻する。ーーあぁ……。
「じゃないですね」
きっぱり言い切る彼女の眼差しが、心の中身を見透かすようで、ルイは相手を直視できずに顔を背けた。
手で緩んでしまう口元を覆う。
(ヤバい。かなり嬉しいんだけど)
次の言葉がでない。気のせいか耳が熱い。
目の端で捕らえた彼女は首を傾げてルイを見ていたが、やがておかしそうに顔を綻ばせた。
ルイはまどかにもう一度向き直り、腕を伸ばして胸に強くかき抱いた。
一糸纏わぬ彼女の柔らかな胸の感触で、今腕の中にいる存在が夢で無いと改めて知る。
まどかはどうしていいかわからない様子で、おずおずと背に手を回す。
ルイは鼻を彼女の首筋に、さらに深く埋める。
「教官と肌を合わせるのは特別に気持ちがいいけれど、その何倍も寂しいです」
ルイは正面から彼女の視線を捕らえた。奥二重の、切れ長の涼しげな目元。
それでも瞳に帯びた光に熱がこもっている。
「それは、オレがおまえに『好きだ』とか『愛してる』とか言わないからか? 言って欲しいのか?」
まどかは困ったように微笑んだ。
「そんな質問をした人は教官が初めてです。それに、女にせがまれて初めて言う、というものでもないんじゃないですか、そう言う言葉は。気持ちと一緒に自然と出て来てしまうものだと思いますけど」
「……だよな」
ルイは体を預けるようにしてまどかを押し倒す。彼女はルイの重みを受けながら、ゆっくりとベッドに体を沈ませる。
横になった彼女の体のラインに沿って、手を這わせる。
「おまえ、いつ帰るの……」
彼女の顔が曇った。
「どうして………?」
ルイは「帰るなよ」と言う言葉をぐっと飲み込んで、別の言葉を絞り出す。
「行けたら……なるべく見送りに行くから、さ………だから、わかったら教えてくれよ」
(まどかのまつげって意外と長いんだな……)
伏せられ、影を落とすそれを彼はただ見ていた。
まどかは、ルイが脱がせたものを拾い集め、バスルームへ向かう。
「オレの所に来ないの? ここで眠らないのか?」
ルイも手を伸ばしてベッドの脇に落ちていたシャツを拾い、羽織る。
彼女は振り向き、肩をすくめて言った。
「夢、見たんです。……でも、いつもの悪夢ではなくて……鳳乱は私をしっかり抱きしめて『さようなら』って言ったんです。私たち、ちゃんとお別れしたんです。だから、きっともう、大丈夫だと思います」
「そうか……」
それなら、彼女がここに来る必要も無いわけだ。
ーー夢を見ていたのはオレの方だったんじゃないか。いつもまどかがオレの腕の中で眠る夢を。
身支度を終えたまどかは、ルイの前で背筋を伸ばして立っていた。
「耳……ごめんな」
彼女は首を傾げて指を耳に持って行く。
あ……。
「すぐに塞がりますよ。跡も残らないでしょう。心配しないで」
清々しい微笑を口角に浮かべて、まどかは答えた。
ーー跡も残らない。全部、期待はずれだ。
「それでは、教官……」
ルイを見上げる瞳が、微かに震えている。
(そんな目で見るなよ)
ルイは堪らなくなって、彼女をきつく、抱きしめた。
(おまえになんて言えばいいか分からないんだ。言葉にできないんだ。おまえがオレの全てだと、どうやって言葉に表すことが出来るだろう)
ーー「行くな」と叫びたい。でも、オレにはそんな資格は……無い。
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