“ダメージはゼロだ”追放された最強タンクによる勇者育成記

あけちともあき

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帰ってきた勇者パーティー編

第89話 最後のトゲは試練付きか

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「神が、俺の中に先代魔王の血が流れてるとか言ってな」

「なんじゃとーっ!!」

 食事をしていたディアボラが、驚きの余りすぽーん!と椅子から飛び出した。

「ややややや、やっぱりそうじゃったかあー。魔王様、勇者どもと戦って崖の下に落ちたから、あれは生きてそうじゃなーとか思っておったのじゃー」

「魔王がやられるシーンで妙に冷静だったんだな」

「真の魔王様は、この星を狙って新たな魔王が来ることを予見しておったのじゃ」

「星? 星は空にあるものだろう。なんでこの星なんて言うんだ」

「そこはどうでもいいところじゃから聞き流すのじゃ。わしが冷静だったわけないじゃろ! 涙とか鼻水とか流して魔王様を悼んだわい! じゃが、わしは語り部として残ることを命じられておったのじゃ!」

「あ、確かにディアボラは語り部って感じですね! なるほど! 助かってます!」

「そうじゃろうそうじゃろう!」

 ディアボラが椅子の上に立って、えっへんと胸を張った。

「じゃが、魔王様が生きておられて血をつないだというのは良き知らせなのじゃ! わしも長く生き続けてきた甲斐が……うっ、あったというものじゃ……えっえっ」

 泣いてしまった。
 ぐわーっと掴みかかったエクセレンが、ディアボラを抱きしめてよしよししている。
 心温まる光景である。

 俺も空気が読めないわけではないので、ここは静かにしておいた。
 夕食の魚をパクパク食べながら、水で割った蒸留酒を飲む。
 うむ、美味い。

「こりゃあー! マイティ! 乙女が涙している時に平然と飯を食って酒を飲むとは何事なのじゃー!」

「マイティはどんな時でもどっしり構えてる壁役ですからね!」

「プライベートでまで徹底せんでよいじゃろうが」

 ディアボラにぶつぶつ言われてしまった。

「すまんすまん。涙も引っ込んだようだから、そろそろ魔法陣を使う話でもしようじゃないか」

「ドライじゃなーこやつ。魔王様とは全く違う……いや、あの御方もまあまあドライで自分の命もゲームの駒みたいに考えておったわ」

「そっくりなんじゃないですか」

「そっくりじゃな」

「おう、もうそれでいいぞ。で、いつ魔法陣を使う」

「定期連絡で、もうすぐジュウザたちが帰ってくるのじゃ。そうしたらでいいじゃろう」

 ディアボラの言葉通り、その日の夜半にジュウザたちが帰還した。
 ウインドの腕を引っ張ってサウナに連れ込むカッサンドラ。
 積極的である。

「ほう、ついに魔法陣が完成したか! めでたいな。マイティが魔王の血筋? そういうこともあろうな。でなくばあの異常な防御力の説明がつかぬ」

「なんか呆気なく受けて入れていくのじゃー」

 ディアボラが妙に不満げである。

「真の魔王様の血筋じゃぞ! もっと衝撃を受けるとか! 仲間としてやっていけるのか懊悩してやっと受け入れていく的なドラマをじゃなー」

「しかし、その先代魔王の家臣がお主ではないかディアボラ。お主を通じて、先代の人柄はよく理解できた。そして拙者らはマイティの人となりをよく知っている。今更揺らぐ信頼など無いわ」

 はっはっは、と笑うジュウザ。
 エクセレンが嬉しそうに、うんうんとうなずいた。

「ほえー、そんなもんなのじゃー? いや、現実はそんなもんかも知れないのじゃー。ああ、魔法陣の話じゃったか」

 やっと本題に戻った。

「明日の朝起動するのじゃ! 一晩寝て体力を回復させてからじゃな。どうせ世界はのっぴきならぬ状況とは言っても、こっちが焦っていいことなんか何もないのじゃ」

 世界を救うには万全の体調で、というわけである。
 それは同感だ。
 そういうことで、世界中で頑張っている人々にはあと一晩だけ頑張ってもらうことにし、俺たちは就寝したのである。

 翌朝。
 朝食を終えてから村人たちに別れを告げる。

「いよいよ、勇者パーティーとして仕事を果たす時が来た。世話になったな」

「マイティさん!」

 若者たちがうおーっと男泣きに泣く。

「鍛えてやってなんだが、お前たちがその実力を存分に振るう必要がない時代にしてやるからな。だが、万一俺たちが敗れたら次はお前らの番だ。一応腕は磨いておけ」

「押忍!!」

「マイティのお弟子さんがたくさんできましたねえ」

「おう。可愛い奴らだ。なんか、こいつらが戦いで死ぬような時代にしたらダメだなって思えてくる」

「そうですねえ。そういう時代にするためにボクたちが頑張るんですもんね!」

「うむ」

 俺とエクセレンのやり取りを見ている若者たち。

「やっぱりあの二人ってできてるよな」

「勇者とそれを守る戦士か」

「熱いぜー」

 妙な好奇心めいた視線が投げかけられているような。

「よーし、それじゃあ発動じゃぞー!! 最後のトゲを手に入れて、サクッとサウザーム大陸に殴り込みなのじゃー!」

 場の空気など気にしないディアボラ。
 魔法陣の描かれている穴の底目掛けて、どばどばと魚を注ぎ込んだ。
 魚を供物として魔法陣が発動するのである。

 湖周辺が、光り輝き出す。

「あ、資格なき者は弾き出されるって説明するの忘れとった」

 ディアボラがポツリと漏らした直後、

「ウグワーッ!」

 村人たちがまとめて魔法陣の外に弾き出されていった。
 いやあ、悪いことをしたな。

 残ったのは俺たち六人。
 つまり、全員が資格があるってことだ。

「資格ってなんの資格でしょう?」

 エクセレンが首を傾げた。
 ほんとだ。
 資格とはなんなのだ。

 その疑問はすぐに明らかになった。

 俺たちが立つ大地がまるごと削り取られ、それが空を目掛けて上昇していく。
 すると、眼前に巨大な雲が迫ってきた。

 雲は両手を開くような形に代わり、その中央にあるものを明らかにしたのである。

 それは白銀の教会だった。
 しかもでかい。

『ようこそ、資格を持つ者たちよ』

 教会の前に、翼を生やした騎士が二名立っている。

『ここは勇者の力を試す最後の試練。お前たちの強さが、世界を救うに値するかを示せ』

 どうやら、最後のトゲは試練を突破する必要があるようだ……!
 



 
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