37 / 107
第37話 無観客でも頑張る道化師
しおりを挟む
「君に一つ聞きたい。まともに答えてくれるとは思わないが」
「何でしょうか? まともに取り合う義理はありませんが」
俺と司祭がにらみ合う。
俺の言葉は刺々しく、司祭の言葉にも棘がある。
「村人はどうしたのかね」
すると、司祭は鼻で笑った。
「それを我に聞くのですか? 腐敗神の元に下った人間の運命など、わかりきったことでしょう。神の力となるための糧として、その身を朽ち果てさせながら永遠の眠りにつくだけです!」
「この男は何を言っているんだ?」
イングリドが真顔で尋ねてくる。
ちょっと言ってることが難しかったものな。
「つまり、村人は腐敗神の生贄にするために地下で眠らせてるとかそういう話だよ」
「なるほどよく分かった」
「道化師の話は分かりやすいねえ」
言葉というものは、観客に届かねば意味がない。
俺が話す内容は、なるべくわかりやすく、そして期待を煽るように意識している。
このやり取りを聞いて、腐敗神の司祭はイラッとしたらしい。
「愚かなる人間たちは! いつも分かりやすく、そして安定した方向に逃げる! 退屈なのですよ、この世界は……! 我は退屈に停滞したこの世界に、動きを与えようと言うのです。腐敗神の教えは、そのためにとても都合がいい。さあ、神よ! 新たなる加護を! 我が手に眷属を! 毒の剣を──」
口上の後に、腐敗神に加護を願う祈りを始めたが、俺の前で長々と喋ったのはうかつだったな。
もう、声色は覚えたぞ。
「神よ、加護は返上奉る!」
俺は、司祭の声色をそのまま真似して、彼の手に現れようとしていた加護を打ち消した。
毒々しい輝きを手にするはずだった司祭が、一瞬止まる。
「なん……だと……?」
「この手でマンティコアの加護を無効化したのだが、君たちに横のつながりは無いのかね?」
「ああ、あのエルダーマンティコア……ッ」
司祭が話している隙に、イングリドが仕掛ける。
槍を抜き放ち、前進しながら一撃を繰り出す。
「うおおっ!? 眷属よ、我を守りなさい!」
司祭の足元から吹き出す、黄色い軟体の怪物。
昨日、冒険者をさらっていった粘菌だろう。
イングリドの槍は勢いを殺され、奪われそうになる。
「ぬおっ! なんのっ!!」
力づくで槍を引き戻すイングリド。
粘菌のパワーには負けない。
それどころか、槍をぐるぐる回して粘菌を巻き取っていく。
「なんですと!?」
これには司祭も驚愕。
驚いている暇があるのかな?
俺は既にナイフを投擲している。ギスカも詠唱を開始しているぞ。
「このっ! 眷属よ! 眷属よさらに! うおおおーっ!?」
ナイフが司祭の肩に、胸に突き刺さる。
惜しい。頭を狙ったものは防がれたか。
さらに、司祭の足元が爆発を起こし、彼を転倒させる。
これはギスカの魔法か。
司祭はゴロゴロと地面を転がって逃れた。
「馬鹿な……!? 立て続けに我の企みを食い止めるお前たちは何だ!? 何なのだ!?」
俺たちを睨みつけながら、周囲に現れた粘菌に覆われつつ、高速で後退を開始する司祭。
「名だたる冒険者の中に、お前たちの姿はない!」
「それはそうさ。俺とイングリドはつい最近組んだばかり。ギスカに至っては昨日仲間になったのだからな」
「おい、オーギュスト! 奴が逃げるぞ! 追わなくていいのか?」
「イングリド、焦らなくていい。全力で逃げの態勢に入ったあれは、簡単には止められないさ。そら、妨害してくるぞ」
俺の宣言と同時に、目の前に毒霧が発生した。
濃厚なそれが、司祭を見えなくしてしまう。
追いかけていたら、この霧に飲まれていたというところだ。
「おのれ! 覚えていなさい、冒険者ども! ガットルテ王国は国土の中に、多くの恨みを抱えている! まつろわぬ民と名乗る彼らが、また我の力を借りようとするだろう! これで終わりではない! 」
「芝居がかった男だなあ。さて、イングリド、ギスカ。これで腐敗神の司祭の接触は、しばらくないだろう。村人を救出するとしよう」
「いきなり切り替えたね。ま、後を追えないなら今できることをするだけさね」
「今日のオーギュストはテンションが低いな」
「無観客だからね。俺のテンションは、どうやら活躍を見てくれる人間がいないと保てないらしい。だが、低テンションなりに頑張ったつもりではある」
「その物言いすら覇気がない。大丈夫か? 本当に根っからの道化師気質なんだな……」
イングリドに心配されながら、次なる仕事を行うのである。
案の定というか何と言うか、村の家々には簡易地下室のようなものが存在し、そこに村人たちは閉じ込められていた。
ジョノーキン村と比べれば、準備は少々おざなりだな。
その後、俺の調査スキルで判明したことだが、俺たちを待ち伏せする準備を開始したのは、今朝のことだったらしい。
キャラバンとともにゆっくり来ていれば、もっと準備が整った状態で奇襲されていたわけだ。
こちらから仕掛けたのは正しかったな。
イングリドがふっ飛ばした冒険者も、回収されている。
あの司祭、冷静さを失っているように見せながらも、なかなか抜け目がない。
今度はもっと大勢の目があるところで戦いたいものだ……。
助け出した村人たちを、中央の広場に寝かせているうちにキャラバンも到着した。
ここで一休みできると思っていた冒険者たちは、力仕事をせねばならなくなり、ぶうぶうと不平を口にするのだった。
「何でしょうか? まともに取り合う義理はありませんが」
俺と司祭がにらみ合う。
俺の言葉は刺々しく、司祭の言葉にも棘がある。
「村人はどうしたのかね」
すると、司祭は鼻で笑った。
「それを我に聞くのですか? 腐敗神の元に下った人間の運命など、わかりきったことでしょう。神の力となるための糧として、その身を朽ち果てさせながら永遠の眠りにつくだけです!」
「この男は何を言っているんだ?」
イングリドが真顔で尋ねてくる。
ちょっと言ってることが難しかったものな。
「つまり、村人は腐敗神の生贄にするために地下で眠らせてるとかそういう話だよ」
「なるほどよく分かった」
「道化師の話は分かりやすいねえ」
言葉というものは、観客に届かねば意味がない。
俺が話す内容は、なるべくわかりやすく、そして期待を煽るように意識している。
このやり取りを聞いて、腐敗神の司祭はイラッとしたらしい。
「愚かなる人間たちは! いつも分かりやすく、そして安定した方向に逃げる! 退屈なのですよ、この世界は……! 我は退屈に停滞したこの世界に、動きを与えようと言うのです。腐敗神の教えは、そのためにとても都合がいい。さあ、神よ! 新たなる加護を! 我が手に眷属を! 毒の剣を──」
口上の後に、腐敗神に加護を願う祈りを始めたが、俺の前で長々と喋ったのはうかつだったな。
もう、声色は覚えたぞ。
「神よ、加護は返上奉る!」
俺は、司祭の声色をそのまま真似して、彼の手に現れようとしていた加護を打ち消した。
毒々しい輝きを手にするはずだった司祭が、一瞬止まる。
「なん……だと……?」
「この手でマンティコアの加護を無効化したのだが、君たちに横のつながりは無いのかね?」
「ああ、あのエルダーマンティコア……ッ」
司祭が話している隙に、イングリドが仕掛ける。
槍を抜き放ち、前進しながら一撃を繰り出す。
「うおおっ!? 眷属よ、我を守りなさい!」
司祭の足元から吹き出す、黄色い軟体の怪物。
昨日、冒険者をさらっていった粘菌だろう。
イングリドの槍は勢いを殺され、奪われそうになる。
「ぬおっ! なんのっ!!」
力づくで槍を引き戻すイングリド。
粘菌のパワーには負けない。
それどころか、槍をぐるぐる回して粘菌を巻き取っていく。
「なんですと!?」
これには司祭も驚愕。
驚いている暇があるのかな?
俺は既にナイフを投擲している。ギスカも詠唱を開始しているぞ。
「このっ! 眷属よ! 眷属よさらに! うおおおーっ!?」
ナイフが司祭の肩に、胸に突き刺さる。
惜しい。頭を狙ったものは防がれたか。
さらに、司祭の足元が爆発を起こし、彼を転倒させる。
これはギスカの魔法か。
司祭はゴロゴロと地面を転がって逃れた。
「馬鹿な……!? 立て続けに我の企みを食い止めるお前たちは何だ!? 何なのだ!?」
俺たちを睨みつけながら、周囲に現れた粘菌に覆われつつ、高速で後退を開始する司祭。
「名だたる冒険者の中に、お前たちの姿はない!」
「それはそうさ。俺とイングリドはつい最近組んだばかり。ギスカに至っては昨日仲間になったのだからな」
「おい、オーギュスト! 奴が逃げるぞ! 追わなくていいのか?」
「イングリド、焦らなくていい。全力で逃げの態勢に入ったあれは、簡単には止められないさ。そら、妨害してくるぞ」
俺の宣言と同時に、目の前に毒霧が発生した。
濃厚なそれが、司祭を見えなくしてしまう。
追いかけていたら、この霧に飲まれていたというところだ。
「おのれ! 覚えていなさい、冒険者ども! ガットルテ王国は国土の中に、多くの恨みを抱えている! まつろわぬ民と名乗る彼らが、また我の力を借りようとするだろう! これで終わりではない! 」
「芝居がかった男だなあ。さて、イングリド、ギスカ。これで腐敗神の司祭の接触は、しばらくないだろう。村人を救出するとしよう」
「いきなり切り替えたね。ま、後を追えないなら今できることをするだけさね」
「今日のオーギュストはテンションが低いな」
「無観客だからね。俺のテンションは、どうやら活躍を見てくれる人間がいないと保てないらしい。だが、低テンションなりに頑張ったつもりではある」
「その物言いすら覇気がない。大丈夫か? 本当に根っからの道化師気質なんだな……」
イングリドに心配されながら、次なる仕事を行うのである。
案の定というか何と言うか、村の家々には簡易地下室のようなものが存在し、そこに村人たちは閉じ込められていた。
ジョノーキン村と比べれば、準備は少々おざなりだな。
その後、俺の調査スキルで判明したことだが、俺たちを待ち伏せする準備を開始したのは、今朝のことだったらしい。
キャラバンとともにゆっくり来ていれば、もっと準備が整った状態で奇襲されていたわけだ。
こちらから仕掛けたのは正しかったな。
イングリドがふっ飛ばした冒険者も、回収されている。
あの司祭、冷静さを失っているように見せながらも、なかなか抜け目がない。
今度はもっと大勢の目があるところで戦いたいものだ……。
助け出した村人たちを、中央の広場に寝かせているうちにキャラバンも到着した。
ここで一休みできると思っていた冒険者たちは、力仕事をせねばならなくなり、ぶうぶうと不平を口にするのだった。
23
あなたにおすすめの小説
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
聖女の孫だけど冒険者になるよ!
春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。
12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。
ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。
基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。
異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト)
前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した
生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ
魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する
ということで努力していくことにしました
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる