ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

文字の大きさ
12 / 517
冴えない私の助走編

第12話 チャラ男のキャリー伝説

しおりを挟む
『お前ら~! こんにちきら星~! 今日はなんと、コラボがありまーす! 楽しみにしててね!』

 ツブヤキッターでツブヤキをする。
 概ね好意的な反応!
 よしよし。

 なんだかフォロワーも3,000人になってるし、そろそろ数字感覚が麻痺してきそう。
 引用ツブヤキで『勘違いしててほんとう不愉快』みたいなのが付いてるが、もしもし、ツブヤキする相手を間違ってますよー。

 私は鼻歌交じりでツブヤキッターを閉じた。

「鈍感力が高い」

 横合いからツッコミが入った。
 兄だ。
 今日は実家に帰省して来てる。

 落ち着いた声色の、ダークな雰囲気を漂わせたなかなかのイケメンだ。

「お兄ちゃんのイケメンの半分でも私に受け継がれれば……。陽キャめ……」

「俺はどっちかと言うと陰だ。それからお前は髪を上げて背筋を伸ばせば見れたものになると何度も言っているだろう。それにお前が使っているものは俺が私費で買い取ったAフォンだぞ。誰が新人冒険配信者のサポートや設定をしていると思ってるんだ」

「ははーっ、お世話になっておりますお兄様」

 私はひれ伏した。
 この楽しい生活は、兄が色々面倒な作業をサポートしてくれてるお陰だもんね。
 言うなれば兄は、冒険配信者きら星はづきの、運営スタッフということになる。

「分かればよろしい。しかし、鈍感力が高く、一見弱そうに見えて極めて打たれ強い。お前は才能がある」

「けなしてる?」

「褒めてる」

 本当~?
 この男、クールな顔で微笑みながら罵倒してくるからなあ!

「だが、お前のツブヤキについた引用はチェックした。万一に備えておく。お前は安心して配信をしろ」

「へいへい」

 私は配信の準備をする。
 この間のダンジョンコアは、衣装デザイナーさんのところに送ってある。
 発注した衣装ができるのは、もうちょっと後。
 それまでは、着慣れたジャージとリュックなのだ。

「いってきまーす」

「待て。俺も現場まで行く。そろそろお前一人でやらせるには規模が大きくなりすぎているからな」

「あら珍しい」

「タクシーで行こう」

「お兄ちゃん免許持ってないもんね」

「うるさい」

 今日の配信場所になるダンジョンまで急ぐ。
 そこは、普通に人が住んでいるマンションの前。
 ここの一室で殺人事件が起こって、事故物件になったんだそうだ。

 事故物件に住み着いた人は、何度も怪奇現象に遭って長く住んでいられない。

 湯船から顔が浮かび上がってきたり、鏡の中を見知らぬ人が何度も通過したり。
 ベッドで寝ていると、天井を這い回る何者かがいたり。

 そしてついにダンジョン化してしまったわけだ。

「おっ、君がはづきちゃん? ウィーッス!」

 チャラウェイTVの個人冒険配信者、チャラウェイさんだ!
 日焼けした肌と、腕に入れたドクロのタトゥー。
 ソフトモヒカンの髪はオレンジ色をしている。
 陽キャじゃん!
 こえー。

「ど、ど、ど、どうもよろしくお、お、お、お願いします」

「ウェイウェイ! 配信のまんまじゃん! いいねいいね。素に近いほど配信でボロが出ねえからさ! それに、髪上げて背筋伸ばしたら超カワイクね? ま、俺に任せてくれよ! はっはー!」

「は、は、はい」

 銀のアクセサリーを全身でジャラジャラさせるチャラウェイさん。
 彼は個人勢なので、使っているAフォンも非正規品。
 バーチャライズはできるけど、緊急脱出機能は持ってない。

 ある意味では、私が守らねばならないかも知れない……!
 私は二重の意味で緊張した。

「じゃあ、領収証はきら星はづきで。はい。どうも」

 兄がタクシーから降りてくる。

「あ、はづきちゃんのマネージャーさんっすか? ちょりーっす! ま、ここはベテランの俺に任せてくれりゃバッチリっす……よ……?」

 兄を見て、今までウェイウェイ言っていたチャラウェイさんが凍りついた。

 いきなり姿勢がよくなり、「お、お、おーっ!? あっ!! あなたは!! 斑鳩さん!?」と声を張り上げるではないか。

「声が大きい。既に俺はなうファンタジーを卒業している。冒険配信者ではなく一般人だ。そのように接しろ。では、妹を頼むぞチャラウェイ」

「ウ、ウ、ウィッス! まさか、はづきちゃん、斑鳩さんの妹だったんすか……? エ、エリートじゃん。へえー、そう思うとどことなく威厳や気品や覇気が……ねえか」

 し、し、失敬な!?
 いや、だがその通りだ……。

「わ、私、ただの陰キャですよう、ふへへへ」

「その卑屈さ!! 配信のまんまじゃん……! いや、絶対前髪上げて背筋伸ばしたほうがいいって。損してるって……」

 チャラウェイさんに妙な感動と心配をされてしまった。
 それにしても、みんな私に前髪を上げて背筋を伸ばせと言うなあ……。

 ま、バーチャライズした私は背筋をピンっと伸ばしてるんだけど!

「じゃあ行きましょ! バーチャライズ!」

「おう! バーチャライズ!」

 私はピンクの髪にブルーの瞳のきら星はづきに。
 チャラウェイさんは、モヒカンに棘付き肩パットに上半身ムキムキのバーバリアンスタイルになった。

「ヒャッハー! 配信開始だぜえーっ!!」

「お前らー! こんにちきら星~!」

 配信開始。
 管理人さんに挨拶をして、目的地までの順路を聞く。

 これはチャラウェイさんがやってくれる。
 バーバリアンな見た目だけど、対人作業は凄く丁寧だ。

「あっはい。どうもありがとうございます。えっ、そのフロアは人が住んでないんですか? 上下の階も空いているから大丈夫と。ありがとうございます」

 いかにもならず者っぽい見た目なのに、ところどころ礼儀正しいのがチャラウェイさんの受けてるポイントみたい。

「あ、お前ら! 私のコラボ相手を紹介します! チャラウェイさんでーす!」

「ウェーイ! その時、世界はウェイの炎に包まれた!! 世紀末ヒャッハー系冒険配信者、チャラウェイTVから来たチャラウェイだぜーっ!!」

※『ぎえーっ、精神的NTR!』『美女(陰)と野獣(陽)』『はづきっちもそういう男が好きなのかあ!』

 うわーっ、チャット欄が凄い勢いで流れている!
 こ、これは炎上というやつでは!

※『なーんてな。チャラウェイなら大丈夫だろ』『俺たちの姫を頼むぞ……』『あいつウェイな外見なのにビジネス的には完璧ってギャップで売ってるもんな』

 おい!

「お前ら保護者ヅラすんな!」

「ウェイウェイ、任せろ! んじゃあ、俺がキャリーすっからよ! 目的のフロアへ移動だぜ、ヒャッハー!!」

「ひゃ、ひゃっはー……」

※『蚊の鳴くような声で草』『無理すんな』

 うるせー!
しおりを挟む
感想 189

あなたにおすすめの小説

マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴
ファンタジー
ホットランキング上位ありがとうございます😊  ストーカーの被害に遭うアイドル歌羽根天音。彼女は警察に真っ先に相談する事にしたのだが…結果を言えば解決には至っていない。途方にくれる天音。久しぶりに会った親友の美樹子に「──なんかあった?」と、聞かれてその件を伝える事に…。すると彼女から「なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」と、そんな言葉とともに彼女は誰かに電話を掛け始め… ※カクヨム様にも投稿しています ※イラストはAIイラストを使用しています

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...