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冴えない私の助走編
第11話 世界が彼女に気付いた
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※ 冒険配信者切り抜き動画のコメント欄
『この後転、CGモデルじゃなくて人間がやってるってマ!?』
『やっべ、不規則すぎて怨霊が追いきれないじゃん』
『すげえ。あと可愛い』
『なんか守りたくなっちゃうよね』
『リスナーとちょいちょい喧嘩してるの好き』
『あれ? なんかモデル、明星斑鳩(あかぼし-いかるが)のに似てね?』
『ないないない、頭身違うじゃん』
『だってさ、このバーチャル体の作りとか挙動とか……』
徐々に広がっていく、きら星はづきの切り抜き動画。
ファン視点では、ちょっと変わった……いや、かなり変わった配信をする可愛い新人配信者。
プロ視点では……。
「すげえじゃん。体を張って、野菜も武器も魔法も変わらないっての証明した人、初めてじゃない?」
とある有名配信者の配信枠で、言及される。
「それにあの同接数の移り変わりで、ゴボウの威力変わってるでしょ。これ、同接数何人からゴボウの強度が変化するかが分かるデータになってるのよ。すげえよこの子」
業界最大手冒険配信者グループ、なうファンタジーにおいて、男性配信者最高のチャンネル登録者数を持つ彼。
八咫烏と名乗る彼は、漆黒の瞳を輝かせ、きら星はづきについて語る。
「面白いんじゃない? 一緒にやってみたいもん。絶対あの子伸びるよ。うちのアカデミーの子とコラボしてんの? マジで? 帰ったらチェックしてみようかな……っと!」
八咫烏の体が動いた。
多くの同接によって強化された彼の肉体は、人間の限界を容易に超える。
襲いかかってきた巨大なモンスター、オーガの一撃を軽々と躱すと、カウンターでラーフというトイガンからスポンジ弾が叩き込まれた。
『ウグワーッ!』
粉砕されるオーガの首。
それと同時に、モンスターの肉体が光になって消え失せた。
華麗な彼のアクションに、チャット欄が沸き立つ。
流れ出す色とりどりの文章は、スーパーチャット。
投げ銭だ。
収益化した冒険配信者に送られる投げ銭は、その場で配信者が使用し、買い物を行える。
「八咫烏大好きさん、『八咫烏さんは新人さんにも優しくて、やっぱり懐が深いなって思います。そんな八咫烏さんが大好きです』スパチャありがとうね! ほら、俺らって危険と隣合わせの仕事でしょ。だから新人は大歓迎なんだよな。俺らが頑張らないと、ダンジョンハザードで大変なことになるわけだし。新人育成も先輩の仕事よ。将来有望な新人ならなおさら。俺も若い頃はさんざんやらかして、先輩にフォローしてもらったからねー」
スーパーチャットはスパチャと略され、金額によってチャットのカラーが変わる。
赤いスパチャは一定額以上であることを現し、上限は無い。
かつてはあったのだが、撤廃されている。
八咫烏はその場で、このスパチャで得た金を使用した。
彼の手に宿るのは、一枚の呪符。
※『ギャーッ私のスパチャ使ってもらえた! 嬉しいー!!』
誰かがスマホの向こうで叫んだ。
他のコメントは、八咫烏の言葉に、『うんうん、八咫烏もすっかり先輩だよねえ』『成長したもん!』と後方母親ヅラをする中。
スパチャを投げたその人物は、怒りを燃やしていた。
※『私の八咫烏に色目使いやがって、あの新人! 許せない……!!』
ガチ恋勢である。
今、きら星はづきに向けて、八咫烏ガチ恋勢が襲いかからんとしていた。
そして一方の本人は……?
「うおおおおおお登録者二千人!!」
私は興奮のあまり、校内で咆哮を上げるところだった。
実際は、「うおおおお」で止められた。
止まってない! 獣のような雄叫びが聞かれてしまっている!
陽キャ女子たちが振り返り、私を凝視した。
私は得意の寝たフリで対応する。
見たか、これこそ長年の熟練が生み出した珠玉の狸寝入り!!
「寝言!?」
「ヤバ、マジでエグい叫び声だったんだけど!?」
「マジビビった……。あれは笑えないって」
「覇王色の雄叫びだったよね」
なんか好き放題言われてしまった。
くっそー。
だが、私は登録者二千人の冒険配信者だぞ。家に帰ったら二千人のリスナーが私を待っていてくれるんだ……!
グフフフフ……と突っ伏したまま笑った。
陽キャ女子たちが、ビクッとするのが分かってしまった。
こうして、休み時間は寝て、お弁当は教室の隅で気配を殺しながら素早く済ませ……。
そう、誓って便所飯などしない。私は美味しくご飯を味わう主義なのだ。
無事に学校を終えた私。
「きら星はづきってのがいてさ。俺の推し」
「マジで? へえ……エグい後転」
「な……?」
おっ、私が話題になっているな……?
フフフ、私は登録者二千人の女だぞ……?
ガチ恋させちゃったかな……。フッ。
私は余裕の笑みを浮かべながら帰宅した。
登録者は増えたけれど、最近は連続でダンジョン探索したりコラボしたりと生き急いでいたし、そろそろまったりしようかな……。
雑談配信メインで、私のガチ恋勢を増やすような魔性の女っぷりを……。
いやいやいや、勘違いはやめろ私?
コミュ障で、冒険配信者としての姿になっても挙動不審な私に、ガチ恋……?
ないないない。無いだろう……。
謙虚だ。
謙虚に生きるんだ、きら星はづき!
お前はあのキラッキラな兄とは違う……!
「お兄ちゃんのAフォン使わせてもらってはいるけどね……!」
落ち着いた私。
PCを開き、メッセージが届いていることに気付いた。
これは一体……?
『ちょりーっす! はじめまして! チャラウェイTVの冒険配信者、チャラウェイっていいます! マジパネェーッ新人冒険配信者のきら星はづきさん、コラボしませんか!』
「な、な、な、なにぃーっ!!」
私は吠えた。
まったりなんかしている場合じゃない!
新しいコラボのお誘いがやって来たのだ。
私はすぐに冷静な思考を放棄し、脊椎反射でお返事を書いた。
『よよろこんでお受けします! よろしくおねがいしまs!!』
完璧だ……!
『この後転、CGモデルじゃなくて人間がやってるってマ!?』
『やっべ、不規則すぎて怨霊が追いきれないじゃん』
『すげえ。あと可愛い』
『なんか守りたくなっちゃうよね』
『リスナーとちょいちょい喧嘩してるの好き』
『あれ? なんかモデル、明星斑鳩(あかぼし-いかるが)のに似てね?』
『ないないない、頭身違うじゃん』
『だってさ、このバーチャル体の作りとか挙動とか……』
徐々に広がっていく、きら星はづきの切り抜き動画。
ファン視点では、ちょっと変わった……いや、かなり変わった配信をする可愛い新人配信者。
プロ視点では……。
「すげえじゃん。体を張って、野菜も武器も魔法も変わらないっての証明した人、初めてじゃない?」
とある有名配信者の配信枠で、言及される。
「それにあの同接数の移り変わりで、ゴボウの威力変わってるでしょ。これ、同接数何人からゴボウの強度が変化するかが分かるデータになってるのよ。すげえよこの子」
業界最大手冒険配信者グループ、なうファンタジーにおいて、男性配信者最高のチャンネル登録者数を持つ彼。
八咫烏と名乗る彼は、漆黒の瞳を輝かせ、きら星はづきについて語る。
「面白いんじゃない? 一緒にやってみたいもん。絶対あの子伸びるよ。うちのアカデミーの子とコラボしてんの? マジで? 帰ったらチェックしてみようかな……っと!」
八咫烏の体が動いた。
多くの同接によって強化された彼の肉体は、人間の限界を容易に超える。
襲いかかってきた巨大なモンスター、オーガの一撃を軽々と躱すと、カウンターでラーフというトイガンからスポンジ弾が叩き込まれた。
『ウグワーッ!』
粉砕されるオーガの首。
それと同時に、モンスターの肉体が光になって消え失せた。
華麗な彼のアクションに、チャット欄が沸き立つ。
流れ出す色とりどりの文章は、スーパーチャット。
投げ銭だ。
収益化した冒険配信者に送られる投げ銭は、その場で配信者が使用し、買い物を行える。
「八咫烏大好きさん、『八咫烏さんは新人さんにも優しくて、やっぱり懐が深いなって思います。そんな八咫烏さんが大好きです』スパチャありがとうね! ほら、俺らって危険と隣合わせの仕事でしょ。だから新人は大歓迎なんだよな。俺らが頑張らないと、ダンジョンハザードで大変なことになるわけだし。新人育成も先輩の仕事よ。将来有望な新人ならなおさら。俺も若い頃はさんざんやらかして、先輩にフォローしてもらったからねー」
スーパーチャットはスパチャと略され、金額によってチャットのカラーが変わる。
赤いスパチャは一定額以上であることを現し、上限は無い。
かつてはあったのだが、撤廃されている。
八咫烏はその場で、このスパチャで得た金を使用した。
彼の手に宿るのは、一枚の呪符。
※『ギャーッ私のスパチャ使ってもらえた! 嬉しいー!!』
誰かがスマホの向こうで叫んだ。
他のコメントは、八咫烏の言葉に、『うんうん、八咫烏もすっかり先輩だよねえ』『成長したもん!』と後方母親ヅラをする中。
スパチャを投げたその人物は、怒りを燃やしていた。
※『私の八咫烏に色目使いやがって、あの新人! 許せない……!!』
ガチ恋勢である。
今、きら星はづきに向けて、八咫烏ガチ恋勢が襲いかからんとしていた。
そして一方の本人は……?
「うおおおおおお登録者二千人!!」
私は興奮のあまり、校内で咆哮を上げるところだった。
実際は、「うおおおお」で止められた。
止まってない! 獣のような雄叫びが聞かれてしまっている!
陽キャ女子たちが振り返り、私を凝視した。
私は得意の寝たフリで対応する。
見たか、これこそ長年の熟練が生み出した珠玉の狸寝入り!!
「寝言!?」
「ヤバ、マジでエグい叫び声だったんだけど!?」
「マジビビった……。あれは笑えないって」
「覇王色の雄叫びだったよね」
なんか好き放題言われてしまった。
くっそー。
だが、私は登録者二千人の冒険配信者だぞ。家に帰ったら二千人のリスナーが私を待っていてくれるんだ……!
グフフフフ……と突っ伏したまま笑った。
陽キャ女子たちが、ビクッとするのが分かってしまった。
こうして、休み時間は寝て、お弁当は教室の隅で気配を殺しながら素早く済ませ……。
そう、誓って便所飯などしない。私は美味しくご飯を味わう主義なのだ。
無事に学校を終えた私。
「きら星はづきってのがいてさ。俺の推し」
「マジで? へえ……エグい後転」
「な……?」
おっ、私が話題になっているな……?
フフフ、私は登録者二千人の女だぞ……?
ガチ恋させちゃったかな……。フッ。
私は余裕の笑みを浮かべながら帰宅した。
登録者は増えたけれど、最近は連続でダンジョン探索したりコラボしたりと生き急いでいたし、そろそろまったりしようかな……。
雑談配信メインで、私のガチ恋勢を増やすような魔性の女っぷりを……。
いやいやいや、勘違いはやめろ私?
コミュ障で、冒険配信者としての姿になっても挙動不審な私に、ガチ恋……?
ないないない。無いだろう……。
謙虚だ。
謙虚に生きるんだ、きら星はづき!
お前はあのキラッキラな兄とは違う……!
「お兄ちゃんのAフォン使わせてもらってはいるけどね……!」
落ち着いた私。
PCを開き、メッセージが届いていることに気付いた。
これは一体……?
『ちょりーっす! はじめまして! チャラウェイTVの冒険配信者、チャラウェイっていいます! マジパネェーッ新人冒険配信者のきら星はづきさん、コラボしませんか!』
「な、な、な、なにぃーっ!!」
私は吠えた。
まったりなんかしている場合じゃない!
新しいコラボのお誘いがやって来たのだ。
私はすぐに冷静な思考を放棄し、脊椎反射でお返事を書いた。
『よよろこんでお受けします! よろしくおねがいしまs!!』
完璧だ……!
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