ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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フォローアップ! 私の春休み編

第199話 広がる!イカルガエンターテイメント伝説

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 春休みになった。
 私たち高校生は、追試や補習がないならば、普通はまったりモードで次の学年への進級を待つばかりなんだけど……。

 イカルガエンターテイメント所属になった研修生たちは大忙しだった!!

「ぐわあああああきつい」

 イノッチ氏が転がっている。
 連日のハードスケジュールで疲れ果てているのだ。

「大丈夫? イノッチ氏。私がもみじちゃんに習って焼いてきたマントウがここにある……。ミルクの甘みを生かしていて美味しいよ」

「た、食べるぅ」

 よろよろ起き上がるイノッチ氏。
 バーチャライズアバターとのマッチングとか、デビュー時に発表する楽曲の練習とかで大変なことになっている彼女なのだった。
 普通に暮らしてたら、絶対に経験しなさそうなことばかりだもんねえ。

 ……おや?
 私はどっちも経験していないが……?

 ちなみに既に、イノッチ氏とチョーコ氏のマネージャーが新たに雇われている。
 この人は精悍な感じの男性で、女子のマネージャーに男がつくはいかがなものかという説があるのだが、ちゃんと彼は旦那さんがいるので問題ない……。

「自分、今の夫と出会ってなかったら斑鳩さんに夢中になってたと思うんですよね」

「あー、わかりますー。斑鳩様はやっぱりかっこいいですよねー。陰の中にある美しさみたいなー」

 男性マネージャーさんがもみじちゃんと、斑鳩論を語り合っている。
 ヘビーな斑鳩ファンらしい。

 兄はどういう伝手でこういう人たちを見つけてくるんだろう……。

 他に、たこやきの知り合いと、イカルガの採用試験をくぐり抜けた人で、プログラム担当が五人くらい集まってきている。
 楽曲は外部に依頼をかけて、歌とダンスのレッスンも専門のコーチにお願いして……。

 がらんどうだったイカルガエンターテイメントビルが、めちゃくちゃ賑やかになってきているのだ!

 一階はサーバーとかが作られて、プログラムをバリバリやってる部屋。レクリーエーション用にエアホッケーと卓球が常備されてる。あとゲーム機多種。
 二階が事務所で、社長室も兼ねてる。さらに、レッスンのスタジオもある。
 三階が企画室。ここはこれから大きくなっていくらしい。

「あひー、人が増えてるー」

 行くたびに設備と人が充実していくので、私は目が回りそうだ!
 だけど、一年前ほど人が怖くないので、今はフヒヒと卑屈な笑みを浮かべてペコペコ挨拶するだけで大丈夫。

 だが、行き交うみんなは誰もが目に尊敬の色を浮かべて、私に凄くしっかりした会釈とか握手を求めたりしてくるのだ!
 なんだなんだ……!?

「憧れのはづきっちと同じ職場で働けるなんて……。最高です!!」

「はづきっちのアバター、改良任せて下さい! シームレスで様々な形態に変化できるようにしますよ!」

「はづきさん! 楽曲を提供したいってアーティストからのアポが……」

「あひー!?」

 大変だ。
 大変なことになっとる。

 私がスタジオを一歩出ると、そんな感じでめちゃくちゃ話を振られる。
 慌てて事務所に逃げ込んだ。

「お兄ちゃん! なんでいきなりあんなに人が増えたの……」

「お前の活躍で、イカルガエンターテイメントはビルがもう2つ買えるくらいの収益を得てしまった……」

「あひー」

 渋い顔で兄が凄いことを言っている。

「規模も拡大していることだし、人を雇わねばならないだろう。ということで、求人をかけた。俺とマネージャーと受付で試験をし、昨日採用したのが今のメンバーということだ」

「めちゃくちゃ増えてない……?」

「プログラマー五人、男性マネージャー一人、受付補佐二人、営業二人、管理一人。合計十一名増えたな。我が社の規模から考えるとそこまで多くない方だぞ」

「多い~」

 見知らぬ人がたくさん働いている環境になってしまっているではないか。
 いや、それはそれで、みんな生き生き仕事をしてくれているからいいかなーとは思うんだけど。

 ちなみに、求人の応募は凄く多くて、採用倍率は500倍くらいだったらしい。
 兄は最後はたくさん集めて、ガラガラポンとビンゴとブラックジャック大会で決めたと言っていた。
 たこやきが連れてきたコネの人も、このギャンブル試験は受けて、きちんと合格したらしい。さすが。

「一番運が良かったやつを集めた。これは重要だぞ。配信者をサポートすると同時に、我が社は世界を侵略する異世界との戦いの最前線にいる。運の良さが高いことは重要だ。三度の運任せの採用試験をトップでくぐりぬけた十一名、よりすぐりの運を持っていると言えるだろう」

 イカルガエンターテイメントの、全て運任せな採用試験は話題になったらしい。
 完全な運なので、極めてフェア。
 理由まで説明されて、割りとみんな納得してたとか。

 今後、会社の規模が拡大したら二次、三次の募集もあるという話だった。
 まだ増えるのかあ!

「それよりもだ。ビクトリアの登録者数が50万人に届きそうだ。記念イベントの企画が進んでいるが、お前の出演がだな」

「あの子いつのまに……」

 しれっとイカルガナンバー2の地位にいるじゃないか。

「それから、チョーコさんだがな。彼女の資質は高い。王道の配信者として俺が直々に指導していく予定だ。イノッチはお前の仲間みたいなものだな。デビュー前はしばらく連れ回して指導してやってくれ。別にバレても構わないぞ」

「はーい。もみじちゃんの時と一緒ね」

「そうなる。頼むぞ」

「頼まれた」

 ということで、春休みの仕事は忙しくなりそうなのだった。
 後日、チョーコ氏がなんか物凄く悔しがってたらしい。
 なんでだ。
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