ゴボウでモンスターを倒したら、トップ配信者になりました。

あけちともあき

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真夏な私の遭遇編

第250話 きら星はづき、(それなりに)西へ伝説

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 特急は久々なので楽しい。
 駅弁買おうかなと思ったけれど、カナンさんが「ラーメンを食べたばかりでハヅキが駅弁を食べているのを見ると胸焼けがする」と言うので、簡単なスナック菓子とお茶にしたのだった。

 カナンさんと一緒にいるとダイエットできちゃいそうだ。
 流れていく外の景色を眺めながら、カナンさんとぺちゃくちゃ喋る。

「ゴボウアースの景色はどこまでも街が続いているものだと思っていたけれど、私がやって来たイワテから来る道や、この辺りは普通に山の中を走るのね」

「そうそう。日本は山が八割だからねー」

 切り開かれた山の中の線路をもりもり走っていく特急甲府行き。
 スナックをパリパリと食べきって、それからまた二人でわいわいとお喋りをしていると……。
 あっという間に到着です。

 駅の改札を通ると、すぐそこにたくさんの人が詰めかけていた。
 あっ、バードマンとケンタウロスの人たち!!

「来たぞ! ハヅキさんだ!」「ハヅキさーん! こっちこっちー!」「待ってました、大英雄!」

 わあーっと盛り上がる。
 うおーっ、いきなり私の素顔を見て盛り上がらないで欲しい!
 慌ててバーチャライズする私なのだった。

「あっ、普通のかなりかわいい女の子がはづきっちになった!? しまった、元の顔を覚えてない!」

 危ないことを呟く人がいたな……。
 有名になると色々大変なのだ。

 ちなみにバードマンやケンタウロスの人たち、いわゆる異種族の方々は、その人が宿している精霊の力を見て誰なのか判断するんだそうだ。
 精霊力は、ラノベだと魔力とか呼ばれるし、ニンジャ作品だとチャクラとかカラテとか呼ばれるそういうやつ。
 だから彼らには変装が通じないのだった!

「ハヅキの場合は溢れ出す強大な精霊力があるから、近くに来たら誰だってすぐ分かる」

「そうだったの!?」

「私は慣れたけれども」

 カナンさんから意外なお話を聞いてしまった。

 ケンタウロスの人たちの中から、褐色の肌をした黒馬ボディな男性が進み出た。
 この人がブリッツさん。

「ハヅキ、来てもらって早々なんだが、事は速駆をせねば及ばない状況だ」

 彼らの言葉で、一刻を争うっていう意味ね。

「はあ、この間のダンジョンの残りとかです?」

「ああ。魔将スレイプニルが戻ってきた! あいつは街の一角を丸ごと闘技場型のダンジョンに変えてしまっている。スレイプニルに従う裏切り者どもが、力を蓄えて侵入者を待っているんだ」

「なるほど……。これは大変そうですね……。じゃあ配信を始めるので、ちょっと待ってて……」

 私はツブヤキックスで、配信開始の連絡をする。
 待機所を作ってっと……。
 おっ、どんどん人が集まってくる。

「それでブリッツさん、最近どうですか。町中だと色々大変じゃないですか?」

「空き家が取り壊された地域があるだろう? それにこの間のダンジョンだった場所も大きく開けている。ヤマナシ政府は俺たちにそこを提供してくれたんだ。仲良くやってるよ。普段は畑仕事を手伝ってる」

 馬のパワーを持つ人たちだもんね。
 集団で畑仕事をしたら、凄く捗りそう。

 そんな会話の途中で、十分に同接が集まった。

「よし、じゃあ配信始めまーす! お前ら、こんきらー!」

※『こんきらー!』『あっ、横にケンタウロス!』『この間のブリッツさんか』

「そうそう。そういうことで、いきなり甲府にダンジョンが出現したっていう話なんで、これから攻略してきます! なんだかちょっと変わった感じのダンジョンなんだとか……」

「ハヅキ! 俺に乗れ! 行くぞ!」

「あっはい。おおーっ、ブリッツさんの背中に乗れるように鞍がついてる!」

「ハヅキを乗せることがあるだろうと思ってな!」

※『はづきっちが接してきた男性の中で一番好感度高くない?』『誰よりも距離が近い男だよな……』『まさかケンタウロスとは……』

「えー。人間とケンタウロスは種族が違うので生殖ができなくてですね」

※『いきなりあけすけな話をするなw!』『きゃーはづきさんのえっち!』『一瞬でシモの話にぶっ飛んでいったな!』

 だってつまりそっちが気になるんでしょ……?
 違う……?

※たこやき『これはむっつり』おこのみ『むっつりはづきっちいいぞー』

「あひー、違う、違いまーす!」

 釈明しつつ、他のケンタウロスに乗ったカナンさんも連れて、ダンジョンへゴーなのだ。
 駅の北側、山が見える方向がダンジョン化している。

 だだっ広い平原になってて、たくさんの旗みたいなのが立っているような……。

 ダンジョンに踏み込んだら、一気に空気が変わった。
 いきなり、両脇に観客席みたいなのが出現する。

 右手側には、ぎゃあぎゃあと騒ぐモンスターたちがいっぱい。
 左手側には、ダンジョンに巻き込まれてしまった近隣住民の方々!

※『これは……闘技場……!?』『こういう形のダンジョンあるんだ……』『そしてはづきっちはケンタウロスの背中の上……これはつまり!』

『待っていたぞ、我らに抗うこの世界の住人よ』

 なんか声がした。
 会場アナウンスみたいな感じ?

「あ、はーい。えーと、住民の皆さんをすぐに解放しなさーい」

『それはできぬ相談だ。俺が設定したこの戦場をくぐり抜けてもらわねば、お前の要求は届かない。そしてお前たちが負けるたび、この世界の住人を一割ずつ殺していく』

 この宣言に、現地住民のみなさんがキャーッと悲鳴をあげた。
 後ろにいるカナンさんが、「おのれ、なんと卑怯な!!」と憤っている。

※『カナンさんの反応がストレートで凄くいい』『推せる』『くっころ系は一人絶対に必要だよな……』

 なんだかお前らが変な意味でカナンさんを推してないか?

『さあ、我が戦場で武を見せよ。だが、俺は寛大だ。お前たちが退くならば黙って見送ろう。その代わり、観客は殺す』

 現地住民のみなさんが、キャーッと悲鳴を上げた。

「あっ、ブリッツさん、前に進んでください。えーと、じゃあこれからこのダンジョンを攻略して行こうかと思います」

※『いきなりはづきっちが剛腕で話の進行をもぎ取ったぞ!』『これはあえて相手の挑発に乗らないスタイルだな……』『うむ、最後まで喋らせたもんな』

 実は馬の鞍が初めてなので、お尻の置き場所が難しくて苦心していただけなんだけど。

「さすがだなハヅキ! 心強いぜ。行くぞ! しっかり掴まってろ!」

「はーい!」

 私はブリッツさんの背中にむぎゅっとしがみついた。

※『あああああはづきっちが男に抱きついて!』『待て! あれは馬だ! 馬なんだ!』『ぐわあああ脳が破壊される』

「お前らは何を言っているのか。つまりですね、人間とケンタウロスは生殖できなくてですね」

※『男に抱きつきながら生々しいコト言うなw』『さらっと生殖とか言うところやぞw』『そんなことよりはづきっち、前、前ー!』

 なんかブリッツさんにしがみつきつつコメントに突っ込むのに夢中だったお陰で、気付いてなかったらしい。
 アナウンスの声が『おのれ! 段取りを無視しおって!! 行け! 行け我が騎兵たちよ! 話を聞かぬ者を踏み潰せ!!』凄く怒っていたのだ!

 で、向こうから真っ赤な鎧を着込んだ悪そうなケンタウロスが走ってくる。

「あいつらは敵に下り、魔族になったケンタウロスだ! くそっ、みんな槍を持ってやがる!」

「なるほど、長いもので勝負というわけですね。じゃあ私は……これ!」

 取り出しましたのは、ニューっと伸びるバーチャルゴボウです。
 3mくらいまで伸びる。

『ガアアアアアアアッ!!』

 なんか叫びながら、悪ケンタウロスといった感じの人が槍を突き出してきた。
 これを私は、バーチャルゴボウで受け流す。
 先端が伸びてるので、ビヨンビヨン揺れるんだよね。
 これがいい感じで槍を巻き取って、ポキっと折った。

『!?』

 びっくりしているところを、ビヨーンとバネで伸びたバーチャルゴボウで叩く。
 ぺちっ!

『ウグワーッ!?』

 悪ケンタウロスの大きな体が、空中で一回転しながら地面に叩きつけられるのだ。

 ウワーッと観客席から大歓声が上がった。

※『本当に闘技場みたいだ!』『これは新しいスタイルの配信だなあ……』『そしてまさか世界初騎馬戦配信をするのがはづきっちだとは……w』

 ほんとにね……!
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