ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第二部:彷徨編

81・幕間・デュエル・最強剣士vs七勇者

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『てめえーっ! この俺の口上の途中で攻撃してきやがって! 美学ってものがねえのか!!』

「裂空斬!」

『ぐうおおーっ!! くそ、てめえ、無駄口を叩かねえのか!? 遊びの無いやつめ! 剣よ、来い!』

 七勇者テレポートの手に、新たな魔剣が転送されてくる。

『これこそが俺の力。武器を自在に取り寄せる!』

 正式にはその能力はアポートである。

『死ね、イクサ!!』

 襲いかかる四本の剣。
 巨体から繰り出される大振りな動きと、同時に放たれる鋭い突き。そして逃げ場を塞ぐような斬撃に、死角から繰り出される斬り上げる動き。
 まさに回避不能の同時攻撃だ。

 これには、成すすべもなくやられてしまうことだろう。
 並の剣士ならば、だが。

「円月斬!」

 縦一文字に旋回した斬撃が、突きを跳ね飛ばす。
 そして前に進んだイクサの背後を、三つの斬撃が通過した。
 既に、イクサは懐にいる。

『ぬうおっ!!』

「望月!」

 後の先の強力な一撃が、テレポートの胴を断つ。
 だがその寸前で、テレポートの姿が消えた。

『あぶねえ!! へっへっへ、まさかこの俺の攻撃を同時に受けて、前に進んで躱すようなバカがいたとはな! 確かにあの連撃、突きをいなせば唯一の逃げ場所は前だ! それを一瞬で見抜くとは、さすがは元帝国最強の剣士だ』

 テレポートの声だけがする。
 姿は見えない。

「そこだ! 飛翔斬!」

『ウグワーッ!?』

 飛ぶ斬撃を受けて、テレポートが頭上から落下してきた。

『なぜわかった!』

「臭いがする」

『犬かてめえ!!』

 イクサは会話をしない。
 相手のペースには絶対に乗らないのだ。
 既に彼は走りながら、テレポートとの距離を詰めている。

『だが、俺の能力はもう一つあってな! この瞬間移動で、一瞬で相手の後ろに……!』

 またテレポートの姿が消えた。
 巨体が、イクサの背後に現れる。
 四つの剣は既に、イクサを全方向から断ち切る動作をしている。

 不可避の攻撃がイクサを襲い……。

「十六夜……!!」

『ウグワーッ!?』

 走りながら、モーションの遅い、だが強力無比な斬撃がすでに用意されていた。
 その射程距離に、テレポートは自ら飛び込んでしまったのだ。
 四本の剣がまとめてへし折られ、腕のうちの二本も斬り飛ばされた。

 イクサは未だに背を見せたままである。
 振り上げ、放たれる途中の動きであったから、テレポートは命拾いしたのだ。

『化け物……!!』

「お前はオクノに比べて打たれ弱すぎる」

 悠然とイクサは振り返った。
 その動きと同時に、次の剣が用意されている。

『なんで、ただの人間がそこまで強い!? 俺は人を捨てて七勇者になったってのに!』

 テレポートは瞬間移動した。
 イクサの攻撃を受けていない、と認識する。
 よし、まだ立て直せる。

『よし、こうなりゃ剣の間合いには頼らねえ! 遠距離から剣を飛ばして、てめえが疲れきるまで攻撃を続けてやる! ひひひ、人間の体力は有限だからな。疲れきったところで、俺がテレポートで近づいて一気に止めを刺してやるよ!』

「もう終わっている」

『は?』

 間抜けな声を出したテレポート。
 イクサの姿が斜めにずれていく。

「月影の太刀。既にお前は斬った」

 イクサの剣は、鞘に収まっていた。

『なんで……攻撃は受けてないはずなのに……』

 テレポートの頭が、胴が、何条もの袈裟懸けに断ち切られていく。

「お前は打たれ弱すぎる」

『こんな攻撃、受けて立ってるとか人間じゃねえだろ……!!』

 それがテレポートの最後の言葉になった。
 背を向け、デュエル空間から立ち去っていくイクサ。
 その後ろで爆発が起こる。

「月影の太刀……。一瞬、別の技の兆しが見えたような」

 あくまで、己のことしか見ていないイクサなのだった。
 その心は既に、戦場には無い。






 ということで!

「おらぁ!! ドロップキーック!!」

「無双三段ー!!」

「連ね撃ち!!」

「闇の魔槍!」

「わんわん!(突撃)」

 潜水艦を下から連携でぶっ飛ばす俺達なのだぞ。
 なんか急に動きが止まったからなこいつ!

『ドロップ無双撃魔槍わんわん』

 フタマタが締めに来ると、連携名可愛くなっちゃうなー。

 てなわけで、上空まで打ち上げられた潜水艦、ひしゃげながら海上に落下してくるのだ。
 おお、すっごい飛沫が上がった。

「おう、オクノ! 無事だったか!」

 船の上からオルカが手を振っている。

「いよー! そっちはどう?」

「潜水艦から七勇者がいきなり出てきやがってよ。それでアミラがやられかけた」

「なにっ」

「だが、イクサがあっという間に割り込んでな。で、お前と七勇者がやったみたいなデュエルになった」

「そうかー。で、イクサどこ?」

「ここだ」

 イクサがひょこっと顔を出した。

「オクノ、イクサが勝ったって疑わねえんだな……」

 オルカが感心したようにうんうん頷いている。

「友情だな」

「ちがわい」

 ちょっと照れくさくなったので否定しておく。
 イクサはとてもむずかしい顔だ。

「どうしたの」

 船に上がりながら聞いてみたら、イクサは首を傾げた。

「奴ら、お前よりも打たれ弱くてな……。あちこちに移動してくるやつだったが、三度ばかり剣を浴びせたら死んだ」

「あ、テレポーテーション系? 回避特化なんだろ。それ、イクサが天敵なだけじゃん」

 こいつ、どこにテレポートしようと嗅覚で場所を嗅ぎ当てて、どんなところにも必殺の斬撃を飛ばしてくるからな。
 あと、飛翔斬や真空斬や円月斬はノーモーションから放ってくるから、回避の兆しみたいなのはない。
 自分の回避力に頼ったやつだと瞬殺だろうな!

 常にブロッキングしながら戦うのが定石だぞ?
 七勇者も、イクサが剣しか使えないと思って舐めてかかったんだろう。
 あれだぞ。
 こいつは剣を極めつつある、という次元なので、帯剣してる時点で超やばいんだぞ。

 まあ、イクサが無事だったのは予想通り。

「アミラー」

「うわーん! オクノくーん!」

 アミラが走ってきて、ぎゅっと抱きついてきた。
 ひゃーやわらか~い!

「むっ」

 ラムハが反応したが、今回は見逃すようだ。

「怖かったー! 七勇者、やばいよう」

「だなー。よしよし。一対一だと、俺とかイクサじゃないと厳しいよなあ。相性的にはルリアもいけるかなー」

 対人戦ならオルカは強いが、相手が化け物の七勇者となると少々分が悪い。
 ジェーダイは決め手が無いので、一対一だと勝つのは難しいだろう。

 それに対して、ルリアは戦闘スタイルがじゃんけんみたいなものなので、初撃さえ当たれば勝てる。
 無双三段もこれ、完成すればイクサの月影の太刀を超える火力になるだろうしな。

 とりあえず、アミラを片手で抱き上げて、首元に抱きつかれた格好で今後の話をする。

「でな、オクノ。俺とグルムルでちょっと潜水艦を探りたい」

「おっ、海賊行為」

「おうともよ。戦利品を取ってきて、換金する材料を揃えなきゃな」

「いいですねえ。村からはそこそこの報酬が得られますが、あくまで小さな村ですからね。別途、お金になるものは欲しいです」

 イーサワも同意か。

「じゃあ許可するね。いってらっしゃーい」

「行ってくるぜー」

 オルカは、グルムルとリザードマン一人を従え、マリーナスタンス3で海上を滑っていく。
 彼が戻ってくるまで少し待ちだな。

「多摩川くん、あれ、潜水艦じゃなくない?」

 休憩中に日向がやって来た。

「やっぱり? 日向もそう思う?」

「うん。何ていうか、すごく海の生き物みたいな潜水艦っていうか」

「手触りもな、硬いゴムみたいだった」

「うわー、想像しちゃう」

 日向が顔をしかめる。

「この辺り、古代人であるジェーダイから見てどうよ」

 向こうでボーッとしていたジェーダイに話を振った。

「我? えーと……。多分古代文明の船であるな」

 それは分かってる。
 つまりジェーダイもよく分からんと。
 これは、オルカが持ってくる戦利品を検分して確認しないとな。

 ということで。
 俺達は一休みするのだ。
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