ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき

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第三部:覚醒編

104・俺、団を合流させて進撃する

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「これがオクタマ戦団か。なるほど、全く統一感というものがないな」

 ファイナル皇帝はうちの団を見て、ちょっと笑った。

「だがつまりは、各々がエキスパートということだろう。軍を成し、戦略で戦いを推し進める余とは違い、そなたらは個の力で戦うわけだ」

「そういうことです。一応陣形とかあるんで、大群との戦いにも対応してますよ。軍隊は強いけど、人と人との戦いじゃないとなかなか厳しいでしょ。今回みたいなロボの軍勢とかは俺らの方が向いてると思うよ」

「確かにな。では、そなたらに先駆けを任せよう。天空の大盆が呪力を補充するための舞台がこの先にある。その地を守る結界と、鋼の巨人が厄介でな。倒すためには、インペリアルガードが全力を出さねばならん」

「山巨人並みかあ」

 少人数なら面倒かもだが、今の俺らはめちゃくちゃ数が多いからな。

「大丈夫でしょ。押しつぶしてくる」

「任せた」

 皇帝とそういうやり取りをして、俺達は先行するのだ。



「久々だな、オクノ。元気してたか? お嬢ちゃんたちも変わらねえなあ」

「ぶー! あたしはちょっと成長してますよーだ」

「年頃の女の子の成長を甘く見ないでほしいのです」

「分かった分かった! で、またお前、新しい仲間を増やしたのか。なんだこの筒」

『だみあんGデス。今後トモヨロシク』

 ダミアンGがピコッと手を上げた。

「かわいい」

「かわいいねえ」

 日向とロマが騙されている。

「ダミアンG……。その名前は初めてだが、この気配、どこかで感じたことがあるような……」

 人間の姿に戻ったエスプレイダーが、じろじろとダミアンGを見ている。
 ほほう、これはあれだな。
 ダミアンGの正体がばれるとエスプレイダーとのバトルが発生するやつだな。

「ダミアンGはぽんこつロボだぞ。おたくとは何の面識もない、初対面だ。いいね?」

「お、おう。あんたが団長か」

「その通り。オクノだ。よろしくなエスプレイダー」

「何っ……。どうしてそれを……!?」

 お前名乗ってたじゃねえか。

「俺は石神フロント。フロントと呼んでくれ」

「そうか。よろしくなフロント。古代文明時代のヒーローだったりする? 悪の秘密結社と戦ったり」

「何っ……! どうしてそれを……!!」

 フロントが身構えた。

「俺もそういう事には詳しくてな。俺がいた世界でもヒーローという概念は(特撮とかマンガとかで)一般的だったんだ」

「そうだったのか……!! 俺の事情は秘密だが、理解者がいることはありがたい。目的を果たし、抜け殻となっていた俺だがまだできることはあるようだな。この力、人々の平和と安全のために役立てて欲しい!」

 俺と固く握手を交わすフロント。

 嘘は言っていない。
 理解を深めるための方便というやつだ。

「……で、ダミアンG、お前こいつの敵だったんだろ。あれか。お前、悪の大首領だったとか」

『ギクギクッ! ナ、ナンノコトデスカネー』

 ダミアンGのモノアイが横を見て、口笛みたいな音を立てた。
 あ、これ、ケトルで湯を沸かした時になる音だな。
 もしやダミアンG、単体で湯沸かしができる……!?

 今度試そう。

「では、また用があったら呼んでくれ。俺は日向とともにいる」

「うむー。……日向と? なんで?」

 俺が首を傾げると、ロマがぐふふ、と笑った。

「まあ色々あったのさねー」

「なんだとぉー」

 大変興味があるぞ。
 だが、見ているとなんか、そういう関係ではないっぽい。

「フロントくん、いつまで正体を隠してる設定してるの」

「設定じゃなくてだな……」

「仲間なんだから、そういうのオープンにしていいんじゃない?」

「し、しかし俺の正体を明かすと、ダーク・ダイヤモンドの標的に……」

「それは何千年百合の話でしょー」

「ううう」

 姉弟のように見える……。
 フロントの方が明らかに年上だがな。

 だが、日向も前よりも受け身ではなくなっているようだ。
 これなら、別働隊の隊長として仕事をしてくれるようになるかも知れない。
 俺以外で唯一、陣形を選択して行使できるっぽいしな。

 さて、そうこうしている間に見えてきたぞ。

 一見してなにもない空間。
 だが、なにもないはずの場所が陽の光に照らされて、時々きらりと反射する。

 結界だ。

「日向、この間とおなじやつだ」

「うん、分かった!」

 日向が進み出た。

「おっと、その前に」

 俺はこの間、ミルマスと話をして、彼の技を会得できないか試してみたところだった。 
 結果、俺のステータスにミルマスの技は増えなかった。
 誰かから俺に対して継承することはできないようだ。
 だが、宙に浮いた形でミルマスの技が俺の中にある。

 つまり……継承待ちの状態になっているということだ。

 人から人への受け渡しが可能なようだ。

「日向に継承する。これは、百手巨人拳。パンチを連打する技な。俺は自分で閃かないといけないみたいだ」

「あ、うん。もらうね」

 技を受け入れた日向。
 すると、百手巨人拳が日向のステータスの中で、その名を変える。


名前:日向マキ
レベル:41
職業:体術使い

力   :103
身の守り:72
素早さ :123
賢さ  :31
運の良さ:27

HP330
MP33

体術25レベル
精神抵抗10レベル
動物会話5レベル
☆体術
・浴びせ蹴り・裏拳・三角蹴り
・空気投げ・爆砕鉄拳・鬼走り
・千手観音


 千手観音!
 なるほどなあ。この世界に観音様はないだろうしなあ。

「この技……。凄い威力っぽい気がする……!」

「よし、使ってみよう。俺は斧で行くぜ」

「よかろう、手を貸す」

「なんだか分からんが、ここは出番だな!」

 イクサとフロントも前に出てきた。
 お前ら、結界が視認できないはずだが……?

 まあいいか。

「行くぞ! 高速ナブラ!」

 俺の突撃からの斧での斬撃。
 そして、

「裂空斬!」

 空を裂くイクサの斬撃。

「駆け抜け!!」

 疾走しながら、フロントが結界を斬りつける。

「千手観音!」

 そこへ日向の連続パンチが炸裂した。
 姿勢を正したまま、無呼吸での猛烈な連打だ。

『高速裂空抜け観音』

 抜け観音!!
 バチが当たりそうである。

 結界は澄んだ音を立てて、粉々に砕け散った。
 この音は、集まった全員に聞こえたらしい。

「結界を破ったか。さすがだ。我がインペリアルガードでは、これを破るために力を使っている間、鋼の巨人への守りが疎かになる。そこだけが弱点だったのだ」

 皇帝、そう言うと、手をかざした。

「陣形。インペリアルクロス!」

「御意!」

 皇帝を中心に、十字に配置されるインペリアルガード。
 余ったファルコンはうちに入れておく。

「来るぞ、鋼の巨人だ!」

 重いものが地面を蹴る音がする。
 向こうから、のしのしとやって来るのは……。
 巨大ロボである。

 キューブ状の物体を積み重ね、頭、肩、胴、足を作ったような怪物だ。 
 まあかっこよくないよね。

「オクタマ戦団、総攻撃!」

 俺は指示を下す。

「跳弾!」

「油地獄!」

「吹雪!」

「わんわん!」

「ピガガー! コレデモクライヤガレー!」

『跳油吹わんピガー』

 これはひどい。
 跳ね回る弾丸が鋼の巨人を穿ち、油の海が足を取り、吹雪が装甲を凍らせ、フタマタの炎が冷え切った装甲を一瞬で灼熱に変える。
 そこに、ロボから銃を回収したダミアンGが連射するのだ。

 鋼の巨人の表皮があっという間に砕かれていく。

「影矢!」

「双龍破!」

「アクアバイパー!」

「闇の雨!」

「ミヅチ!」

『影双龍アクアの雨ヅチ』

 途中まではかっこよかったんだけどなー。
 漢字とカタカナが合わさるとやっぱだめだな!

『もがー!?』

 強烈な攻撃に、鋼の巨人が揺らぐ。

 そこへ、皇帝率いるインペリアルガードが一斉に技を放った。

「ハヤブサ斬り!」

「トマホーク!」

「ジャベリン!」

「飛翔撃!」

 連携にはならないようだな。
 そして剣を抜き放つ皇帝。

「彗星剣……!!」

 皇帝の剣に光が集まった。
 その光は上空へと舞い上がり、鋼の巨人へとまるで彗星のごとく集中的に降り注ぐ。

『もががががーっ!!』

 こりゃすげえ。
 呪法技だが、かなり威力が高いやつだ。

 二回の連携でボロボロだった巨人は、この技を受けて限界を迎えたらしい。
 全身の結合部が破壊され、キューブ状になってばらばらと崩れ落ちていった。

 うーん、数の暴力!!

「私だけ何もしてない……!!」

 インペリアルガードのファルコンが頭を抱えていた。
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