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第五部:伝説編
163・俺、クラスメイト達や皇帝と会う
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「日野シュウスケだ。武器は双剣」
「高尾マナミ。武器は双剣だよ」
クラスメイトの自己紹介。
日野シュウスケは実直そうな感じの男で、戦い方はパワー任せ。
高尾マナミは髪の長いちょっとギャルっぽい女で、戦いはテクニカル。
「オクノ、彼らはなかなかやるぞ」
イクサが珍しく、二人を褒めている。
そう言えば俺が戻ってきた時、イクサとこいつらはやり合ってたんだよな。
イクサと少しの間でも拮抗できるってのはとんでもないことだぞ。
「俺達は一人じゃイクサとは戦えない。だから、二人で挑んだんだ。俺とマナミは四本の魔剣を持ってる。どちらがどの魔剣を手にするかで、使える技が変わるんだ」
「だから、マナミとダーリンで武器を交換して戦ったんだよ」
「ダーリン!!」
すると、マナミが見せつけるように、シュウスケの腕を取った。
「だってこんな異世界に来て、日々五花になんか言われて頭おかしくなって、あのグループにいたら絶対ヤバいって思ったんだもん。だから、マナミは偵察に行くって言って、ずーっと帝国を巡ってたの。そしたらダーリンも同じことしててさ」
「俺の場合は、帝国の臣民で困ってる人が多かったからな。召喚されてすぐ、森の外で狼に襲われた馬車を助けてたんだ。戻ってきたら多摩川くんが追放されていたから驚いたぞ」
「お前あの場にいなかったのかあー」
クラスメイトに親しいやつはいなかったから、誰がいて誰がいないかとか全然意識してなかったぞ。
なるほどなるほど。
つまりこの二人は、見事に五花がばらまいた死亡フラグを回避したわけだ。
「で、あと一人は?」
「八王子のやつだな。あいつは軍師だ」
「軍師。そんなクラスもあったのか……」
「あいつも君を追放したことを後悔している。あれがきっかけで、クラスの崩壊が始まったとな。みんな死んだ。みんな死んでいった」
シュウスケが遠い目をした。
「そうだなー。ほとんどの奴らが冥府にいたし、五花とかあいつに従った奴らは消滅したもんなー」
「そう……なのか……」
「ダーリン」
ショックを受けるシュウスケと、寄り添うマナミ。
割といいカップルかも知れん。
ところで八王子氏はこの二人のイチャイチャを見せつけられているわけで?
「あ、ちなみにこっちでは、日向と明良川が普通に生活してるぞ。あと西府アオイは魂を失ったが代わりにシーマが入ってる」
「えっ!?」「えっ!?」
俺の話の情報量が多すぎたのか、シュウスケとマナミが固まった。
「そ……それはめでたいとういうのか、それとも何か邪悪な事が起きてると言うべきなのか……」
「おお、わしじゃわしじゃ」
シーマがトコトコやってくる。
「アオイ!?」
「西府さん!」
マナミが駆け寄り、シュウスケが目を丸くした。
「中身はシーマじゃが、西府アオイの実家に行って西府アオイとして過ごしてきたぞ」
「な、なんてことを……! 多摩川くん! こんな邪悪なことを許していいのか!」
「いや、でも西府死んだし」
「そうじゃぞ。そもそも西府アオイを殺したのはイクサじゃ。わしはその体を再利用したに過ぎん。最近はすっかり魂が馴染んで、元々の肉体と変わらぬように扱えるぞ」
「なかなか頼りになるんだよ、シーマが」
「わしも、メイオー様のところからヘッドハンティングしてもらった恩義は感じているのじゃ」
俺とシーマが仲良しなので、シュウスケとマナミがショックを受けている。
「もうやめてえー。新しい情報で頭がパンクしちゃうよう」
「くっ、モラルの崩壊が多摩川くんにまで……」
「俺は元々こんなだぞ」
面白い奴らだなあ、この二人。
戦場が静かになり、両軍の兵士がわいわいと帰っていく。
俺はシーマを引き連れて、帝国側に行くことにした。
「ラムハとアミラとカリナは戻ってなさい」
「どうしてー」
「お姉さん達もいきたーい」
「一緒につれていくのですー」
「連れて行かない理由はないけど、連れて行く必要もないでしょ。連絡要因でフタマタを活用して、
大人しく待ってなさい」
そう言うと、嫁達が猛烈にブーイングしてきた。
俺のハートは強いからブーイングされても全く効かないぞ。
「なんじゃ、ガツンと上下関係を教え込んでおるのか?」
「オクタマ戦団では俺がトップだろ? その場合、俺の決定は団の方針なんだから従ってもらわないとみんな勝手に動くことになる。情と規律は違うでしょ」
「言うようになったのう」
そんなわけで、俺達は帝国側の陣地へ。
皇帝が前線までは出てきてないから、そいつに会うには帝都まで行かねばならない。
シュウスケとマナミに案内され、シーマを連れての旅だ。
帝国内では、アオイの中身がシーマであることは黙っている事にした。
いらん諍いを生みそうだからな。
帝国内は、割と平和なもんだった。
貧しい村も多いし、あちこちに破壊された痕などが生々しく残っている。
だが、村人達の顔は総じて明るい。
「八王子がね、帝国の政治にも口出ししてるの。貧乏な人達が飢えないように、収穫が多い作物を作らせたり、仕事がない人たちは辺境で開墾の仕事を与えたりしてね」
「ああ。彼は大したものだ。俺達は、目の前にある危険を取り除くことしかできない。だが、八王子は帝国という国そのものを救おうとしているんだ。今回の戦争だって、八王子は止めようとしただろう。だが、起こってしまった。皇帝はこっそりと軍を進めていたんだ。彼は正気じゃない」
正気ではない皇帝か。
「正気じゃないのを正気に戻すと言えば」
「オクノのビンタの出番じゃな」
その通り。
メイオーが放つ、“戦争するぞオーラ”的なものだが、あらゆる人間に平等に降りかかるらしい。
しかし、戦うよりも生存するほうが優先されるので、その場合は生きるための戦いを優先する。
これが上手く働いて、帝国の村々では開墾と新しい作物を育てる作業が急ピッチで進んでいるらしい。
何もかも安定すると、これが戦争に向かうわけだな。
準備がきっちり整った状態になってるから、戦争の規模だってでかくなるだろう。
メイオーが黙ってても大戦争が起きて、人がガンガン死ぬわけだ。
こりゃあいかん。
俺はあちこち見て回るのもそこそこに、速攻で帝都に行った。
2日ほど掛かった。
「オクタマ戦団の団長、オクノだ」
「あのオクタマ戦団の……!?」
帝国の騎士達が俺の名乗りを聞いて、緊張感を高める。
彼ら一人一人が、丘巨人の半分くらいの強さであろう。
つまり相手にならない。
間違っても突っかかってくるなよー。
騎士達に周囲を囲まれながら、城にやって来る。
そしてあっという間に謁見の間だ。
皇帝はいい年をしたじいさんで、しかしギラギラした目をしていた。
「その男の首を落とせ。余は王国と戦争をしているのだ。そこから来たものの話に耳を傾ける必要などない」
「ほうほう」
俺は頷きながら、時の呪法を使った。
「あ、いかん」
シーマが慌てて地面に這いつくばる。
よく分かってらっしゃる。
「クイックタイム!」
俺は再び、世界をぶっ飛ばして震撼させ、その隙に時間を操作した。
時間の流れが緩慢になり、俺だけが普段どおりの動きで騎士達の間を抜けた。
そして皇帝に辿り着くと、そこでクイックタイム終了だ。
「う、うおわあああああ」
世界が揺れる。
皇帝は悲鳴を上げ、玉座にしがみついた。
戦意を高揚させられると、精神的には不安定になるようだな。
よーし、では正気に戻してやろう。
「皇帝、歯を食いしばれ」
「は? 何じゃお前は、どうしてここに……!?」
「闘魂注入! 元気ですかーッ!!」
「ウグワーッ!!」
皇帝が玉座ごとひっくり返り、そのままゴロゴロ転がって壁に激突した。
周囲の連中は、何が起こったのかさっぱり理解できない。
だが、突然俺が皇帝に目の前に現れ、ビンタをしてぶっ飛ばしたことだけが分かったようだ。
「こ、皇帝陛下ーっ!?」
謁見の間全体で、あまりの衝撃に叫ぶ一同。
しかしみんな世界が震撼した後に腰が抜けており、立ち上がる事もできないのだ。
当の皇帝は、上下逆さになって壁に張り付いていた。
そして、ハッとする。
「あれ? 余はなんで今まで、あんなにカッカしていたのじゃ……? 頭の中が冴えておる……! 今まで、訳の分からぬ怒りに支配されていたというのに……」
上下逆さでシリアスな顔されてもなあ。
俺は近づくと、皇帝を抱っこして起こしてやったのである。
「高尾マナミ。武器は双剣だよ」
クラスメイトの自己紹介。
日野シュウスケは実直そうな感じの男で、戦い方はパワー任せ。
高尾マナミは髪の長いちょっとギャルっぽい女で、戦いはテクニカル。
「オクノ、彼らはなかなかやるぞ」
イクサが珍しく、二人を褒めている。
そう言えば俺が戻ってきた時、イクサとこいつらはやり合ってたんだよな。
イクサと少しの間でも拮抗できるってのはとんでもないことだぞ。
「俺達は一人じゃイクサとは戦えない。だから、二人で挑んだんだ。俺とマナミは四本の魔剣を持ってる。どちらがどの魔剣を手にするかで、使える技が変わるんだ」
「だから、マナミとダーリンで武器を交換して戦ったんだよ」
「ダーリン!!」
すると、マナミが見せつけるように、シュウスケの腕を取った。
「だってこんな異世界に来て、日々五花になんか言われて頭おかしくなって、あのグループにいたら絶対ヤバいって思ったんだもん。だから、マナミは偵察に行くって言って、ずーっと帝国を巡ってたの。そしたらダーリンも同じことしててさ」
「俺の場合は、帝国の臣民で困ってる人が多かったからな。召喚されてすぐ、森の外で狼に襲われた馬車を助けてたんだ。戻ってきたら多摩川くんが追放されていたから驚いたぞ」
「お前あの場にいなかったのかあー」
クラスメイトに親しいやつはいなかったから、誰がいて誰がいないかとか全然意識してなかったぞ。
なるほどなるほど。
つまりこの二人は、見事に五花がばらまいた死亡フラグを回避したわけだ。
「で、あと一人は?」
「八王子のやつだな。あいつは軍師だ」
「軍師。そんなクラスもあったのか……」
「あいつも君を追放したことを後悔している。あれがきっかけで、クラスの崩壊が始まったとな。みんな死んだ。みんな死んでいった」
シュウスケが遠い目をした。
「そうだなー。ほとんどの奴らが冥府にいたし、五花とかあいつに従った奴らは消滅したもんなー」
「そう……なのか……」
「ダーリン」
ショックを受けるシュウスケと、寄り添うマナミ。
割といいカップルかも知れん。
ところで八王子氏はこの二人のイチャイチャを見せつけられているわけで?
「あ、ちなみにこっちでは、日向と明良川が普通に生活してるぞ。あと西府アオイは魂を失ったが代わりにシーマが入ってる」
「えっ!?」「えっ!?」
俺の話の情報量が多すぎたのか、シュウスケとマナミが固まった。
「そ……それはめでたいとういうのか、それとも何か邪悪な事が起きてると言うべきなのか……」
「おお、わしじゃわしじゃ」
シーマがトコトコやってくる。
「アオイ!?」
「西府さん!」
マナミが駆け寄り、シュウスケが目を丸くした。
「中身はシーマじゃが、西府アオイの実家に行って西府アオイとして過ごしてきたぞ」
「な、なんてことを……! 多摩川くん! こんな邪悪なことを許していいのか!」
「いや、でも西府死んだし」
「そうじゃぞ。そもそも西府アオイを殺したのはイクサじゃ。わしはその体を再利用したに過ぎん。最近はすっかり魂が馴染んで、元々の肉体と変わらぬように扱えるぞ」
「なかなか頼りになるんだよ、シーマが」
「わしも、メイオー様のところからヘッドハンティングしてもらった恩義は感じているのじゃ」
俺とシーマが仲良しなので、シュウスケとマナミがショックを受けている。
「もうやめてえー。新しい情報で頭がパンクしちゃうよう」
「くっ、モラルの崩壊が多摩川くんにまで……」
「俺は元々こんなだぞ」
面白い奴らだなあ、この二人。
戦場が静かになり、両軍の兵士がわいわいと帰っていく。
俺はシーマを引き連れて、帝国側に行くことにした。
「ラムハとアミラとカリナは戻ってなさい」
「どうしてー」
「お姉さん達もいきたーい」
「一緒につれていくのですー」
「連れて行かない理由はないけど、連れて行く必要もないでしょ。連絡要因でフタマタを活用して、
大人しく待ってなさい」
そう言うと、嫁達が猛烈にブーイングしてきた。
俺のハートは強いからブーイングされても全く効かないぞ。
「なんじゃ、ガツンと上下関係を教え込んでおるのか?」
「オクタマ戦団では俺がトップだろ? その場合、俺の決定は団の方針なんだから従ってもらわないとみんな勝手に動くことになる。情と規律は違うでしょ」
「言うようになったのう」
そんなわけで、俺達は帝国側の陣地へ。
皇帝が前線までは出てきてないから、そいつに会うには帝都まで行かねばならない。
シュウスケとマナミに案内され、シーマを連れての旅だ。
帝国内では、アオイの中身がシーマであることは黙っている事にした。
いらん諍いを生みそうだからな。
帝国内は、割と平和なもんだった。
貧しい村も多いし、あちこちに破壊された痕などが生々しく残っている。
だが、村人達の顔は総じて明るい。
「八王子がね、帝国の政治にも口出ししてるの。貧乏な人達が飢えないように、収穫が多い作物を作らせたり、仕事がない人たちは辺境で開墾の仕事を与えたりしてね」
「ああ。彼は大したものだ。俺達は、目の前にある危険を取り除くことしかできない。だが、八王子は帝国という国そのものを救おうとしているんだ。今回の戦争だって、八王子は止めようとしただろう。だが、起こってしまった。皇帝はこっそりと軍を進めていたんだ。彼は正気じゃない」
正気ではない皇帝か。
「正気じゃないのを正気に戻すと言えば」
「オクノのビンタの出番じゃな」
その通り。
メイオーが放つ、“戦争するぞオーラ”的なものだが、あらゆる人間に平等に降りかかるらしい。
しかし、戦うよりも生存するほうが優先されるので、その場合は生きるための戦いを優先する。
これが上手く働いて、帝国の村々では開墾と新しい作物を育てる作業が急ピッチで進んでいるらしい。
何もかも安定すると、これが戦争に向かうわけだな。
準備がきっちり整った状態になってるから、戦争の規模だってでかくなるだろう。
メイオーが黙ってても大戦争が起きて、人がガンガン死ぬわけだ。
こりゃあいかん。
俺はあちこち見て回るのもそこそこに、速攻で帝都に行った。
2日ほど掛かった。
「オクタマ戦団の団長、オクノだ」
「あのオクタマ戦団の……!?」
帝国の騎士達が俺の名乗りを聞いて、緊張感を高める。
彼ら一人一人が、丘巨人の半分くらいの強さであろう。
つまり相手にならない。
間違っても突っかかってくるなよー。
騎士達に周囲を囲まれながら、城にやって来る。
そしてあっという間に謁見の間だ。
皇帝はいい年をしたじいさんで、しかしギラギラした目をしていた。
「その男の首を落とせ。余は王国と戦争をしているのだ。そこから来たものの話に耳を傾ける必要などない」
「ほうほう」
俺は頷きながら、時の呪法を使った。
「あ、いかん」
シーマが慌てて地面に這いつくばる。
よく分かってらっしゃる。
「クイックタイム!」
俺は再び、世界をぶっ飛ばして震撼させ、その隙に時間を操作した。
時間の流れが緩慢になり、俺だけが普段どおりの動きで騎士達の間を抜けた。
そして皇帝に辿り着くと、そこでクイックタイム終了だ。
「う、うおわあああああ」
世界が揺れる。
皇帝は悲鳴を上げ、玉座にしがみついた。
戦意を高揚させられると、精神的には不安定になるようだな。
よーし、では正気に戻してやろう。
「皇帝、歯を食いしばれ」
「は? 何じゃお前は、どうしてここに……!?」
「闘魂注入! 元気ですかーッ!!」
「ウグワーッ!!」
皇帝が玉座ごとひっくり返り、そのままゴロゴロ転がって壁に激突した。
周囲の連中は、何が起こったのかさっぱり理解できない。
だが、突然俺が皇帝に目の前に現れ、ビンタをしてぶっ飛ばしたことだけが分かったようだ。
「こ、皇帝陛下ーっ!?」
謁見の間全体で、あまりの衝撃に叫ぶ一同。
しかしみんな世界が震撼した後に腰が抜けており、立ち上がる事もできないのだ。
当の皇帝は、上下逆さになって壁に張り付いていた。
そして、ハッとする。
「あれ? 余はなんで今まで、あんなにカッカしていたのじゃ……? 頭の中が冴えておる……! 今まで、訳の分からぬ怒りに支配されていたというのに……」
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