召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
53 / 196
スリッピー帝国編

第53話 道案内は女性部隊から

しおりを挟む
 スリッピー帝国の荒野を疾走する魔導バギー。
 俺たちが乗ってた魔導カーよりデカくてパワフル。
 速度は変わらないけどな。

 運転席は金属製の天井と窓に覆われているが、俺たちが座る兵員輸送用的な場所は、幌だ。
 で、幌に半透明なところがあり、そこがペリッとめくれる。

 マジックテープでくっついてるじゃん……。
 魔法の世界なのに、地球みたいな技術が存在していて驚きである。

 そうか、魔法じゃなくて工学的な感じで作っていたから、スリーズシティは公害を垂れ流していたんだな。
 全部都市の外に放り出すので、今のところは都市内が臭いだけで済んでいる。
 対策はこれからということだろう。

 おお、窓から入ってくる風は普通だな。
 臭くない。

「マナビ氏は、軍にまで手を伸ばしていた強力なスパイを倒しましたが」

「お、おう」

 いきなり兵士から話しかけられてビクッとした。
 やめてくれ。
 俺は予想外のことに弱いんだ。

「マナビ氏は異世界召喚者だと聞きます。我々はあなたに対する警戒を完全には解いていないが……。それでも、異世界召喚者が本気を出せば並の兵士など相手ではないでしょう」

「お、おう」

 この話どういう展開になるの?

「チュートリア」

「マナビさん、人との会話でそれは意味ないですよ!」

「そうだった……」

 チュートリアルモードはコミュニケーションには使えないのだ。
 俺の弱点、露呈!!

「だが、今は感謝をしたい。ありがとう」

 兵士代表がこう告げ、続く兵士たちが皆うなずいた。

「お、おう」

「どんなに危機的な状況でもうろたえないマナビがうろたえてるのだー」

「俺はこういう普通の状況の方が困るんだ」

「あー、マナビさんっぽいですよねえ」

 俺っぽいって何だ。
 すると、話を聞いていた教授とおっさんがこっちの話に加わってくる。

「マナビくん、何を言われているか分からないだろうが、それは間違いないぞ。すぐに分かる。君は正しくこの帝国を救ったのだ」

「おうおう、女を支配しちまう能力者だったんだろ? それじゃあ、救国の英雄じゃねえか。ほんと、スリーズシティで事が片付いて良かったぜ」

「お、おう」

「マナビがうろたえているのだ! どこにうろたえる要素があるのだ? お礼を言われているだけなのだ」

「こうやってまともにお礼を言われたりしないから困ってるんですよ。人の善意がマナビさんの弱点なんですよー。正体を現しちゃいますからね」

 人をそういう妖怪みたいに言うんじゃない。
 で、教授たちが話した事がどういう意味なのか、すぐに分かってしまった。

 魔導バギーを迎えるように、魔導カーの部隊が走ってきたのだ。
 車っぽいのとバイクっぽいのが揃っている。

 で、乗員がみんな、教授よりも小さい。
 いや、教授がでかいだけなんだが。
 それでも、比較的小柄な兵士ばかりいる。

 そいつらがゴーグルを外すと、女であったことが明らかになる。
 なんと、これは女性ばかりの部隊だったのだ。

「ユニコーン部隊、お迎えに上がりました」

「お疲れ様」

 教授が鷹揚に返事をする。
 おや?
 この教授、軍でも偉い人なのではないか?

「分かったかね?」

「今のやり取りで何が分かったと言うんだ。俺は危機的な状況の察しと理解だけは非常に早く正確で予知とまで言われるレベルでやれるが、日常では何も分からないんだぞ」

 ルミイが嬉しそうに頷いた。
 どうやら俺についてのイメージが、俺の自己紹介と解釈一致だったらしい。

「つまりだな。皇帝直轄の部隊であるユニコーン部隊は、女性兵士で構成されているということだ。ここにかの能力者が接触したらどうなっていたかね?」

「全滅だな。で、皇帝まで直で届く」

「うむ。そうなれば帝国は終わりだ。相手の意志を保ったまま、思考の方向性を操る恐るべき能力者にとって、スリッピー帝国は実に与し易い相手であったろう。そして君があの男を倒した翌々日、彼女たちはスリーズシティを訪れる予定だったんだ」

「ははあ、ギリギリで帝国の終わりを免れたと。運がいいじゃない」

「ああ、全くだな」

「あんたが来なかったらどうなっていたことか!」

 教授とおっさんが笑った。
 ちなみに、ユニコーン部隊の女性兵士は、俺を胡散臭そうに見ている。

「この魔力を全く持たない男が、スリッピー帝国の救い主だと言うのですか? にわかには信じられません……」

「ですよねー」

 ルミイが嬉しそうにうんうんうなずいた。
 またも解釈一致か。

 この娘さん、俺に対する解像度が高すぎない?
 まだ俺と会って日が浅いカオルンは、話についていけずに首を傾げるばかり。

「魔力の有無って意味があるのだ? どんな凄い相手でも首を落としたり凄い攻撃を仕掛けたら死ぬのだ。最期は能力は関係なくなるのだ」

 血なまぐさい話をする人だ。
 だがそれは真実だよな。

 戦う時は、相手を侮ったやつから死ぬのだ。
 今まで全部これだったから間違いない。
 俺はずっと侮られてたし。

「彼はワンザブロー帝国を崩壊させた男だぞ」

「えっ、そ、そうなんですか!? 一体どうやって!?」

 女性兵士が、信じられない……という目を向けてくる。
 うむうむ、そうやって侮ってくれるのはありがたい。

 何かあった時、楽に勝てるからな。

 こうして魔導バギーは皇帝直轄部隊という護衛を得つつ、帝都に到着するのだった。
 なるほど、彼女たちがいれば楽に入国できるわけだな。

 合理的……!
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

竹取物語異聞〜30歳まで独身でいたら赤ん坊になって竹の中にいたけど、絶対に帰りません〜

二階堂吉乃
ファンタジー
21XX年。出生率が0.5を切った日本では、異次元の少子化対策として「独身禁止法」が施行された。月出輝夜(30)は、違反者の再教育VRビデオを視聴中、意識を失う。目覚めると竹の中で赤子になっていた。見つけたのは赤髪赤目の鬼で、その妻は金髪碧眼のエルフだった。少し変わった夫婦に愛情深く育てられ、輝夜は健やかに成長する。15歳の時にケガレと呼ばれる化け物に襲われたところを、ライオン頭の男に救われたが、彼は“呪われた王子”と呼ばれていた。獅子頭のアスラン王子に惹かれていく輝夜。しかし平穏な日々は続かず、輝夜を迎えに魔王が来る。『竹取物語』+『美女と野獣』のSFファンタジー昔話です。全27話。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...