召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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スリッピー帝国編

第56話 実は姫発言は見知ったヒロインから

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「驚いたな。魔導ガンの魔導バレットが飛び交う中を平気な顔で正面から歩いて行くから、どうなっているんだと思った」

 教授が驚き顔だが、俺が驚いたのはあんただよ。
 なんで素手でパワードスーツを正面からぶちのめせるんだ。

 だが、うちにはたったひとりでテロリストを壊滅させたカオルンがいるので、不問にしておこう……。
 化け物の上には化け物がいるものである。

 今はそれよりも、皇配たるベストールが重要だ。

「ベストールさん、じゃあ宮殿まで連れていけばいいか?」

「ああ、お願いできるかい? 実は僕の好きな研究者の論文の新刊が発売されたと聞いてね。宮殿に納められるのを待っていられず飛び出してきたんだ。まさかこんなことになるなんて……」

 そりゃあ、皇配が少ない護衛と一緒に歩いてたらな。
 それにしても、スリッピー帝国も治安が悪いな。

 魔導ガンが広く行き渡っているし、闇ルートでパワードスーツも手に入るようだ。
 魔法が使えない人間でも十分に暮らしていけるのだろうが、逆に言えばそういう人間でも魔法を使った犯罪をやれるということでもある。

 うーん、危険危険。

 そうこうしていると、治安維持部隊の応援がやって来た。
 大変遅い。

 治安維持側にもパワードスーツがあるんだな。
 これ、スリッピー帝国は本格的にサイバーパンク化して来ているんだな。

 こいつらの維持に魔法電池が用いられているらしいから、その生産がスリーズシティで止まると詰むと。
 なるほどはるほど。

 事後のやり取りを、教授と治安維持部隊がやっている。
 どうやらドンデーン教授は有名人だったらしい。
 治安維持部隊が敬礼して、敬語で会話している。

 そして、ベストールは俺たちに預けられることになったようだ。

 戻ってくると、ルミイがすぴすぴと寝息を立てていた。
 こ、このハーフエルフ~!

 いや、待て。
 俺の中の悪魔が囁く。
 今ならさり気なくボディタッチできるではないか。寝てるんだから分かりはしないさ。それにいつも頑張っている自分にご褒美だ!

 い、言われてみればそんな気が……。
 いやあ、仕方ないな。
 これは俺が英気を養うためだ。仕方ないんだ。どれどれ……?

「マナビ、ルミイの胸に触ろうとしてるのだ?」

「うわーっ!!」

 俺は横合いから投げかけられた、純粋なカオルンからの質問に打たれ、車内をゴロゴロ転がっていく。
 危ないところだった。

 悪魔の囁きよ、俺の中から去れ!!

 俺は正気に戻った。

「むおーん、なんですか? あっ、マナビさんとカオルン! 終わったんですねえ。外でカンカン言うリズミカルな音が心地よくて、すっかり寝ちゃいました」

「銃撃戦の音を子守唄に熟睡するとは、このハーフエルフ豪胆過ぎる」

 その後、皇配殿が乗ってきて、俺の隣に座った。
 そっか、俺たちの横並びな席、四人がけなのに三人しか座ってなかったからな。

「誰です? この人」

「ルミイからすると誰だか分からないだろうな。この国の皇帝の旦那」

「ほえー、大物じゃないですか。つまりわたしと一緒ですね」

「一緒なのかい!?」

 ベストールが驚いた。
 まさかこのふわふわしたハーフエルフの娘が、自分と同格とは! と思っているのだろう。

「わたし、バーバリアンの族長の娘なんですよー。周りからは姫様って呼ばれてました」

「おおっ、はるか南にある凍土のバーバリアンかい!? どうしてここまで……」

 俺からすると、ルミイが姫様と呼ばれていたのが驚きだがな……!
 しかし、確かにバーバリアンの長とハイエルフのリーダーの間に生まれた子どもなら、お姫様だろう。

 俺は今まで、お姫様の裸を拝んでいた……!?
 はわわわわ、ありがたやありがたや。

「お風呂でもないのにマナビがルミイを拝んでいるのだ。どうしてなのだー?」

 カオルンの純粋さは俺にザクザク突き刺さるな。
 概ね全部お風呂で見られる裸関連だよ!

 ベストールは皇配だが、出自もやんごとなき家柄であるとのことだ。
 なるほど、この国でも血統は大事なのだなあ。

 ルミイと皇配殿の会話にちょこちょこ混ざりつつ、時を過ごすのだ。
 魔導バギーが上り坂に差し掛かる。

「アップダウンがあるんだな」

 俺の感想に、ベストールが答えてくれた。

「低いところはダウンタウンと呼ばれているよ。活気があるところだけれど、ああいう良からぬ輩もちょこちょこいるんだ。いや、次からはもっと護衛を厚くして出掛けないとね。そしてこうやって上って行くと、山の手と呼ばれる貴人の住む地域になる。気付かなかったかもしれないけれど、魔法障壁でダウンタウンとは隔てられているよ。さらに、僕らが上っているこの坂だけれど……」

 ちょっともったいぶったな。

「なんだなんだ」

 俺が先を急かすと、彼は嬉しそうな顔をした。
 話を聞いてもらえて嬉しいんだな。

「対等に話を聞いてくれる相手がいなくてね。僕が皇配だというだけで、みんなへりくだって接してくるんだ。そうそう。坂の話だったね。この坂は、全てが魔法合金でできている。そして、坂の中に過去に使われていた様々な施設があるんだ。今は迷宮として封印されているけどね。つまり、山の手の土台は全て宮殿の一部なんだよ」

「なんだって」

 これは驚いた。
 早速ヘルプ機能を展開すると、帝都の中心部分は同心円状に盛り上がっているのが分かった。
 そしてこの盛り上がり全部が宮殿なのだ。

 都市の中心には、それっぽい宮殿もある。
 あれはあくまで、謁見などに使うための設備ということか。

 これは大歓迎されて贅沢なことになりそうだ!!
 俺は期待と下心に胸を膨らませるのだった。
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