召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
58 / 196
スリッピー帝国編

第58話 新たな閃きはヘルプ機能から

しおりを挟む
 スリッピー宮殿の地下迷宮を踏破する俺。
 出口まで矢印で最短ルートだ。
 サクサク進む。

 広いとは言っても、迷わず、罠にもはまらなければ大したものではない。
 チュートリアルの必要すらなく、どんどこ歩いていると、多分三十分くらい経過したのではないか。

「流石にちょっと休憩するか」

 一人呟いてみて、今は一人だったなと気付くのだ。
 最近、ずーっとルミイがいたし、途中からカオルンが加わって賑やかになってたからなあ。
 俺は孤独を愛するタイプだと思っていたが、気心が知れた仲間がいるというのはかなりいいものだったのだ。

 あと、色々眼福だったり役得があるし……。

「モチベーションが上がらんな。さっさとクリアしないと」

『モチベーションが上がらないとは、彼女たちがいないためですか』

 おや?
 いきなりヘルプ機能が起動した。
 しかも俺に質問をしてくるぞ。

 発動する罠をホイホイかいくぐって進みつつ、俺は首を傾げる。

「俺からは何も聞いてないと思うけど。っていうか、今はヘルプ機能が質問してきているのか」

『モチベーションが上がらないとは、彼女たちがいないためですか』

「おう、多分そうだな。ずっと孤独だった時は気にもしてなかったが、ああやって人肌的ぬくもりを知ると、そっちに戻りたくなる。俺は凡人だからな。人情ってのが捨てられないのよ」

『人肌、ぬくもり。当機能には存在しないものです』

「そうだな。というかついに会話できるようになったか……。これでヘルプ機能にボディがあれば、仲間みたいなもんなのにな……。そうか!」

 俺の脳内に電流が走る──!!

「ヘルプ機能。ボディを用意して、それに宿って旅に同行することは可能か?」

『当機能の端末をご用意いただければ可能です』

「今までなんでそれを教えてくれなかったの」

『聞かれませんでしたので』

 そうだった。
 ヘルプ機能は、キーワード検索をしないと機能しないんだった。
 だが、突如生えてきたおしゃべり機能。

 そう言えば、前々からファジーな質問に答えてくれるようになっていたと思っていたんだ。

 罠として起動した魔導ガンの斉射を物陰でやり過ごしながら、うんうん頷く。

「それは例えば、ボディの大きさに制限はある?」

『当機能を同行させるためには、小さいサイズである事が望ましいでしょう』

「小さい感じかあ。人間サイズとかはだめ?」

『必要に応じ、周囲の魔力を集積して作成する事が可能です。好みの外見を登録して下さい』

「あっ、虚空にキャラクリエイト画面が!! よし、じゃあ清楚系黒髪ロングで制服。生徒会長タイプだな。プロポーションは細身だけど、まあ出るところは出てる感じで……ルミイとカオルンの間」

『登録完了です。当機能の設定に適切な端末が、迷宮内迎撃ユニットのコアとなっています』

「よし、取りに行こうか」

 俺のモチベーションがむくむくと大きくなる。
 やるぞやるぞ。
 ヘルプ機能が仲間となって、常にいるようになるのだ。

「チュートリアル。今回はクリアじゃなくて、突破しての最深部突入だからな」

 くるり方向転換だ。
 マップを見ながら、目的地まで矢印を引く。
 それぞれに配置された、機械仕掛けの罠をチェックする。

 で、実際に赴いて体験してみるのだ。
 ふむふむ、ほうほう。

 どれもこれも単純な罠だ。
 ゲームみたいな複雑に組まれた罠なんか、普通はないからなあ。

 俺はヘルプ機能を活かしつつ、それぞれの罠を無効化しながら突き進む。
 機械仕掛けである以上、迷宮内のどこかに配線などがつながっているのだ。

 ゲイルハンマーで壁面をぶっ壊し、そこから配線をいじって罠を止める。
 あるいは、罠と罠を誤作動させて相殺させ、双方を破壊する。

「いやあ、多少手間は掛かるが、そう難しくはないな」

『試行回数を苦とも思わない精神性のためです』

「俺のことまで分かるのね。……あ。そう言えばヘルプ機能は俺のことをなんて呼ぶの」

『設定をどうぞ』

 一瞬考えた。

「じゃ、マスターで。ロボメイドみたい」

『了解しました、マスター』

 サクサク突き進み、ついに最深部に到着した。
 一時間半も掛かってしまった。

 罠一つあたり、五分くらいで無力化したのに。

「いやあ、疲れた。さっさと戻って風呂と飯を済ませて寝たい。それで、あれがコアか」

『そうです、マスター』

 マスターっていい響きだなあ。
 今は音声ではなく、文字で空中に浮かび上がっているけれど。

 ヘルプ機能はどんな声なんだろうな。

 ルミイの声は甘い感じで、ところどころ低い声も出せる系。
 カオルンはコロコロした声だな。変身すると割りと声色も変わる。

 生徒会長系の外見にしたから、ここは低めでセクシーな声がいいだろうか……。
 うーん、悩ましい。

 俺はニヤニヤしながら、迷宮最深部に到着した。

『侵入者、侵入者。ただちに迎撃を』

 周囲が赤く点滅する。
 侵入者を迎撃する、最終防衛システムが立ち上がろうとしているのだ。
 だが、既に遅い。

「残念だったな。その配線は入ってくる前にぶっ壊した。スタンドアローンなんだろうが、一箇所外と繋がってただろ。そこから線を辿って必要なのをを引っ張り出し、切っておいた。ほら、何も動かないだろ」

『機能が停止させられています。エラー、エラー』

 コアがなんか叫んでいる。
 こいつ、もともとは単独で魔力電池を用いて稼働し続けていたようなのだ。
 だが、長い年月を過ごす中でついに魔力電池が底をつき、周囲の迷宮に線を伸ばしてそこから魔力を拝借するようになった。

 俺はこいつを利用したわけだ。
 ヘルプ機能で一発だった。

 俺は悠然とコアに近づき、その中央に据えられたクリスタルみたいなのをぶっこ抜いた。

 途端に、赤い点滅が消え、警戒音声もなくなる。

「これでいい?」

『十分です。当機能の端末を、ディーヴァクリスタルへ移植します。しばらく持ったまま立っていてください』

「えーっ、立ちっぱなしかよ!」

 何もしないで立ってるだけというこの作業が、案外ハードだったりするのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

竹取物語異聞〜30歳まで独身でいたら赤ん坊になって竹の中にいたけど、絶対に帰りません〜

二階堂吉乃
ファンタジー
21XX年。出生率が0.5を切った日本では、異次元の少子化対策として「独身禁止法」が施行された。月出輝夜(30)は、違反者の再教育VRビデオを視聴中、意識を失う。目覚めると竹の中で赤子になっていた。見つけたのは赤髪赤目の鬼で、その妻は金髪碧眼のエルフだった。少し変わった夫婦に愛情深く育てられ、輝夜は健やかに成長する。15歳の時にケガレと呼ばれる化け物に襲われたところを、ライオン頭の男に救われたが、彼は“呪われた王子”と呼ばれていた。獅子頭のアスラン王子に惹かれていく輝夜。しかし平穏な日々は続かず、輝夜を迎えに魔王が来る。『竹取物語』+『美女と野獣』のSFファンタジー昔話です。全27話。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...