召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
64 / 196
シクスゼクス帝国編

第64話 三人称視点・世界は広い

しおりを挟む
 マンティコアは不服だった。
 それは、このフィフスエレ帝国に召喚されたからではない。

『なぜわしが、門番のようなことをならねばならんのだ』

「まあまあ。順番ですから」

 パートナーである魔法使いになだめられるが、腹がムカムカとする。
 そう、フィフスエレ帝国は、強大な魔獣を召喚し、これをパートナーとなった魔法使いとともに運用する国だった。

 魔獣の扱いは良い。
 フィフスエレ帝国にとっての客人なのだから、そうもなろう。

 故に、マンティコアはこの国での暮らしに不満はなかった。

『わしが元いた世界では、人間どもはわしを恐れておった。ひ弱で力を持たぬ存在であった。わしはそいつらをいたぶり、惨たらしく死に至らしめるのが何よりの楽しみであった。だが、この世界は少々違うな。そう、まるで……古代魔法帝国があった遠い昔のようだ。わしがまだ、人間であった頃の……』

 懐かしさすら覚える。
 今は己の名すら忘れたマンティコアは、だが、かつて自分が魔法使いであった事だけを記憶している。

 己のパートナーとなった魔法使いは、マンティコアから見ればまだ未熟。
 それでも、いつかは己に追いつくかも知れぬと思えた。

『ただの人間であればわしが玩弄するおもちゃに過ぎぬが、魔法使いとなれば別よ。わしが一人前に育てる──』

 そういうモチベーションを持って、フィフスエレで暮らしてきたマンティコアであった。
 だが、そんな彼に門番の役割が回ってきた。

『わしは邪悪な知識の守護者ぞ!? それが門番とは、バカにしておる! アンドロスコルピオめに任せておけばよいのだ!』

「まあまあ。アンドロスコルピオの方々だと、大勢が詰めなければいけませんから。マンティコアさんなら、一人で役割が果たせるでしょう。一ヶ月。それだけ勤めればまた戻れますから」

『お主がそう言うなら仕方がないのう……』

 渋々、マンティコアは門番の任についた。

 パートナーの魔法使いは、メガネを掛けた小柄な女で、付与の魔法を得意としていた。
 マンティコアも付与の魔法には一家言あるため、異世界にて身につけた魔法の技を彼女に伝授していたのだ。

 そんな女が、ちょっと花摘みに向かったところで侵入者がやって来た。

 やれやれ、わしが門番をしているところに入ってくるとは、運の悪いやつだ。
 マンティコアは侵入者の元へと移動する。

 フィフスエレ帝国の入り口は、国境線全体に広がる森である。
 そしてここは、どこから入っても決まった場所へと誘導されてしまう、迷いの森になっていた。

 数体……あるいは数組の門番で守りは事足りる。

 やって来たのは魔導バギーだった。
 乗員をざっと魔力感知でスキャンする。

 強い魔力を持つ女が一人。

『あれは魔神だな。どうして魔神が人間とともにいる。たぶらかしておるのか?』

 強い魔力を持つ女が一人。

『あれはエルフだな。エルフは時折、人とつるむからな』

 全く魔力が無い男が一人。

『なんだあれは。クズではないか。よし、潰すか』

 そう決めた。
 マンティコアの価値基準の中で、魔力を全く持たない人間は、存在価値がないクズであるというものがある。
 なぜなら、魔力がないなら、それは獣と変わらないからだ。

 知性や悪知恵の働く、たちの悪い獣である。
 駆除せねばならない。

『待つが良い。ここから先はフィフスエレ帝国。魔獣が支配する国ぞ。人間の侵入は許さぬ』

 そう声掛けした。
 そして、ここからマンティコアは、己の全く知らない世界の住人と相まみえることになるのである。

 いくつか言葉を交わした後、こいつら舐めてるんじゃないかという結論に達したマンティコア。

『よし、殺そう』

 そう決意するのは無理もない。
 マンティコアが持っている情報で、眼の前の魔力がない男、コトマエ・マナビを正しく評価することなど不可能だからだ。

 だから、彼は身をもってその男の脅威を体感することになった。

『死ぬがよい!!』

 バーストサンダーという、着弾と同時に広範囲を攻撃する魔法を放つ。
 だがこれは、放った瞬間、その男がギリギリ範囲外へとスキップしながら移動してしまっていた。

『なにぃ……? 偶然か?』

 その間にも、いきなり現れた黒髪の女が魔導ガンでこちらを射撃してくる。
 ピチピチと肌の上で弾けるが、痛痒くて気になる。

 さきにあの女を潰すかと思ったら、女はトテトテっと走っていき、男の背中におぶさった。

『なにぃ!? 何のつもりか! 二人で自殺するつもりか? 良かろう、その望みを叶えてやる!』

 マンティコアは怒りとともに、バーストサンダーを連射した。
 これが、面白いように避けられる。
 全てギリギリ範囲外に逃れられているのだ。

『バカな! ならばこれでどうだ!』

 蠍の尾を振り回す。
 先端の毒針は、刺されば象であろうと一撃で倒す。

 だが、これもギリギリで回避する。
 しかも、毒針を見てすらいない。
 どこに来るかが分かっているのと、タイミングすら把握しているのか、ちょっと歩いて攻撃をすかすのだ。

『なんだ! なんだこいつは!』

 前足を叩きつける。
 これも、ちょっと横に歩いて避けられる。

 避けた場所に魔力の矢、マジックミサイルを放つ。
 それは、手にした魔法のハンマーが風を起こし、迎撃された。

 最小限の動きで、こちらの攻撃に対処してくる。

『なんだ! なんなのだこの人間は!! わしの魔法が! わしの攻撃が通じぬ! ならば、呪いの魔法で動きを止めて……』

 そこに、男が手にした魔道具、スタンバトンの全力を使った麻痺攻撃がぶっ放された。

『ウグワーッ!?』

 麻痺の魔法というものは、対象の大きさがよほど極端で無い限り、全身に影響を及ぼすものである。
 マンティコアは運悪く、ギリギリ全身が麻痺の魔法の効果範囲に収まっていた。

 ビリビリ痺れて、動きが鈍くなる。

『ま、まずい! この男、これを狙って……』

 トコトコとマンティコアの足を駆け上がってきた男。
 背負っていた女は、いつの間にか消えている。
 いや、小さくなって男のポケットに収まっている。

『なんだ!?』

 意味がわからない状況に、マンティコアの頭は混乱状態になった。
 男を振り落とそうにも、体の自由が効かない。

 男はマンティコアの肩まで上って、手にしたハンマーを振り上げた。
 そこには、この一撃で決まる、という確信めいたものが見える。

 マンティコアは初めて、死の恐怖に震え上がった。

『わしの肉体はハンマーの一撃などではどうということはない! だが、わしの本能のようなものが、あれだけは食らうなと叫んでいる! だが体が動かぬ! なんだ! なんとしたことだーっ!!』

「うおわーっ! 待って! 待ってくださーい!」

 そこに割り込む、聞き慣れた女の声。
 花摘みを終えたパートナーが、猛烈なスピードで戻ってきたのだ。

「マンティコアから離れてーっ! でないと私が恐ろしいことをします! しますからね!!」

 マンティコアは、肩に乗っていた男から、やる気みたいなものがスーッと抜けていくのを感じた。
 助かった……。

 ホッとした自分を意識し、彼は思わず呻いたのだった。

『なるほど、世界は広い……』

 それは、事前に魔法使いの娘が言っていたことだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

鍵の王~才能を奪うスキルを持って生まれた僕は才能を与える王族の王子だったので、裏から国を支配しようと思います~

真心糸
ファンタジー
【あらすじ】  ジュナリュシア・キーブレスは、キーブレス王国の第十七王子として生を受けた。  キーブレス王国は、スキル至上主義を掲げており、高ランクのスキルを持つ者が権力を持ち、低ランクの者はゴミのように虐げられる国だった。そして、ジュナの一族であるキーブレス王家は、魔法などのスキルを他人に授与することができる特殊能力者の一族で、ジュナも同様の能力が発現することが期待された。  しかし、スキル鑑定式の日、ジュナが鑑定士に言い渡された能力は《スキル無し》。これと同じ日に第五王女ピアーチェスに言い渡された能力は《Eランクのギフトキー》。  つまり、スキル至上主義のキーブレス王国では、死刑宣告にも等しい鑑定結果であった。他の王子たちは、Cランク以上のギフトキーを所持していることもあり、ジュナとピアーチェスはひどい差別を受けることになる。  お互いに近い境遇ということもあり、身を寄せ合うようになる2人。すぐに仲良くなった2人だったが、ある日、別の兄弟から命を狙われる事件が起き、窮地に立たされたジュナは、隠された能力《他人からスキルを奪う能力》が覚醒する。  この事件をきっかけに、ジュナは考えを改めた。この国で自分と姉が生きていくには、クズな王族たちからスキルを奪って裏から国を支配するしかない、と。  これは、スキル至上主義の王国で、自分たちが生き延びるために闇組織を結成し、裏から王国を支配していく物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様、ノベルアップ+様でも掲載しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

処理中です...