召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

文字の大きさ
72 / 196
シクスゼクス帝国編

第72話 偵察と先読み

しおりを挟む
 ぶらぶらと村の中を散歩する。
 途中で村人を発見し、話しかけてみた。

「シクスゼクス帝国について聞きたいんだが」

「ひい!」

 なんか悲鳴をあげられた。
 なぜだろう。

「マナビさんが妙に恐れられてますね。やっぱり、こんな変なことをする人がいままでいなかったからでしょうね」

「なんと人聞きの悪い事を言うんだ。変なことじゃないぞ。人狼ゲーム的なのを逆手に取って、システムをハックしたんだ」

 だが、それがどうやらライカンスロープたちにとっては恐ろしいことのようだった。
 妙にびくびくしながら、「なんですかね……」とか聞き返してくる。

「シクスゼクス帝国の日常とか、食べてるものとかさ。そう言うのを聞きたいんだが」

「そう言うのって言われても、俺らは村から出ることなんかほとんど無いし……」

 村の中のことしか知らなかったか。
 色々聞いてみた結果、ライカンスロープは夜になり、獣人化できない限りは村の外に出ないのだそうだ。

 人間の肉体で旅をするには、シクスゼクス帝国は危険過ぎる。
 ライカンスロープは、魔族としては最弱に位置する存在なのだ。

「そっか。魔法じゃないと傷つかない肉体でも、この時代は魔法文明時代だもんな。普通の獣人と変わらないわけか」

「そういうことです、マスター。彼らの恐ろしさは、ゲームのシステムに巻き込んで冷静な判断力を奪ってこそなのです。今はマスターが勝手に改変したゲームに彼らを巻き込み、ライカンスロープの冷静な判断力を奪っていますので。どうしてこういうこと思いつくんですか」

「俺は人が嫌がることを率先してやりたいタイプなんだ」

「言葉の意味が違うと思いますが」

 その場を離れ、また村の中を練り歩く。
 どう見ても普通の村だ。

 言われなければ、魔法文明時代であることが分からないくらい、普通のファンタジー世界の村だ。
 ちょっと違うのは、あちこちに枯れ木みたいな禍々しい形の樹木が生えていること。

「骸骨を吊るしてるのは入り口だけなんだな」

「そりゃあ、骸骨が家の近くに吊るされてたらちょっと気分悪いですもんねえ」

「ルミイの言う通りかも知れない」

 その後の聞き込みで、シクスゼクスが所有する有名な異世界召喚者の話を聞いたりなどした。
 タクル以外に、戦闘特化型みたいなのが何人かいるらしい。

 一人はこの辺りに来たことがあるそうで、ガウルという男なんだと。
 実体化するエネルギー体を自在に扱うヤツで、エネルギー体は巨人の姿になったり、武器の形になったりして敵を殲滅するとか。

 ははあ、応用が効くタイプの能力者だな。
 超能力バトルっぽくなってきた。

 他は、何か大きな任務のために三人ほど駆り出されているとか。
 結界を作るタイプとか、相手を問答無用で拘束するタイプとか、領域を展開するタイプとか。

 シクスゼクスで重用されるレベルの異世界召喚者は、全員がやべえ能力を持っていると考えて良かろう。
 そのうち戦うこともあるかもしれない。

「暇なのだー! 退屈なのだー!!」

「カオルンが暴れだした。どうしたどうした」

「お昼なら襲撃してくるかと思ったのに、何もしてこないのだー! カオルンはあてが外れたのだー! とっても退屈なのだー!」

「昼間はあいつら普通の人だからなあ……」

「うー、カオルンはもっと強いやつと戦いたいのだ。マンティコアはマナビがやっちゃったからカオルンは暇だったのだ。フラストレーションが溜まってるのだ」

「そうかー」

 それは問題だ。
 カオルンは魔神の心臓を持っているせいか、適度に戦ったりスリルを味わっておかないと気が済まないタイプだ。
 ここは何か任務を与えて……。

「おっ、そうだ。村長が慌ててただろ。今頃、秘密会議みたいなのやってると思うから調べに行ってくれ」

「村長を調査するのだ? 分かったのだ! カオルンに任せるのだー!」

 彼女はそう言うと、肌の色を変えた。
 おっ、周囲の背景の色が写ってる。
 カメレオンカラーだ。

「服まで色変わるの。脱がなくていいの?」

「マナビさん、なんですごく残念そうなんですか?」

「マスターはえっち過ぎるのではないですか?」

 純粋なルミイの視線と、猜疑心に満ちたアカネルの視線に挟まれてしまった。

「行ってくるがいい、カオルン。頼んだぞ!」

 俺はその場を誤魔化すのだった。

「行くのだー!」

 カオルンが、やはりカメレオンカラーの光の翼を羽ばたかせ飛び上がる。
 そうだった。
 飛べるんだよな、カオルン。

 全天候型の高い行動力と、極めて高い戦闘力と、変身による高い諜報力。
 さすが、ワンザブロー帝国皇帝ストライアスの懐刀だ。

 俺は普段、その凄まじい力を全然使ってもらわないまま、舐めプで世界を相手にしている……。
 それどころか、ルミイに至ってはなーんにもしてもらってないぞ。一緒にお風呂に入ってもらってるだけだ。

「マスター。いよいよ勝負を仕掛けるわけですか。昼間に攻勢に出れば、こちらの勝利は確実と思われます」

「ああ、それは勝ち確だろう。だが、あえて夜まで待つ──」

「なぜですか!?」

「ライカンスロープたちは今、ゲームのシステムの根幹をぶっ壊された状態だ。襲撃してくるやつが真っ先に全員脱落した状況など、経験したことも無かったんだろう。それであの慌てぶりだ」

 村人たちの驚いた顔を思い出すのである。

「今頃、あいつらは集まって会議をしている。そうでなければ、夜の襲撃には間に合わないからだ。念話は夜にならないと使えないから、集まるしか無い。俺たちに見つからず集まれる広い場所は、村長の家くらいだろう」

「そこまでの推理を……。普段の言動があまりにもアレだったので見くびっていましたが、さすがです」

「アカネル、俺を見くびってたのか……。まあ見くびられていた方が後々おふとんの上で下剋上した時の反応がうんぬん」

「マナビさんがショックを受けた顔をして……ませんね。なんかニヤニヤしてます!」

「ルミイ、これはマスターがえっちな事を考えている時の顔です」

「えっちなこと?」

「ルミイにはあとあと、当機能が色々お教えします。悪い男の毒牙に掛かる前に知識を得ましょう。とりあえずこの人が悪い男です」

 俺を指差すんじゃない、アカネル。

「それから、夜を待つのは何故かと言うとだな。煮詰まった連中がいいアイディアなんか出てくるわけないだろう? 絶対にしょうもない事を考える。具体的には、総攻撃で俺たちを殺してゲームリセットだ。見てろ、あいつら絶対にやる。そこを正面からぶち倒す……」

「うわーっ、いい性格ですねえ!!」

 そう言うルミイも、妙に嬉しそうなのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。 不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。 いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、 実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。 父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。 ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。 森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!! って、剣の母って何? 世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。 それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。 役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。 うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、 孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。 なんてこったい! チヨコの明日はどっちだ!

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

ざまぁされた馬鹿勇者様に転生してしまいましたが、国外追放後、ある事情を抱える女性たちの救世主となっていました。

越路遼介
ファンタジー
65歳で消防士を定年退職した高野健司、彼は『ざまぁ』系のネット小説を好み、特に『不細工で太っている補助魔法士の華麗な成り上がり』と云う作品を愛読していた。主人公アランの痛快な逆転劇、哀れ『ざまぁ』された元勇者のグレンは絶望のあまり…。そして、85歳で天寿を全うした健司は…死後知らない世界へと。やがて自身が、あのグレンとなっていることに気付いた。国外追放を受けている彼は名を変えて、違う大陸を目指して旅立ち、最初に寄った国の冒険者ギルドにて女性職員から「貴方に、ある事情を抱えている女性たちの救世主になってもらいたいのです」という依頼を受けるのであった。そして、そのある事情こそ、消防士である高野健司が唯一現場で泣いた事案そのものだったのである。

継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。 継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。 しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。 彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。 2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)

勇者パーティーを追い出された大魔法導士、辺境の地でスローライフを満喫します ~特Aランクの最強魔法使い~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
クロード・ディスタンスは最強の魔法使い。しかしある日勇者パーティーを追放されてしまう。 勇者パーティーの一員として魔王退治をしてくると大口叩いて故郷を出てきた手前帰ることも出来ない俺は自分のことを誰も知らない辺境の地でひっそりと生きていくことを決めたのだった。

【完結】腹ペコ貴族のスキルは「種」でした

シマセイ
ファンタジー
スキルが全てを決める世界。 下級貴族の少年アレンが授かったのは、植物の種しか生み出せない、役立たずの『種』スキルだった。 『種クズ』と周りから嘲笑されても、超がつくほど呑気で食いしん坊なアレンはどこ吹く風。 今日もスキルで出した木の実をおやつに、マイペースな学院生活を送る。 これは、誰もがクズスキルと笑うその力に、世界の常識を覆すほどの秘密が隠されているとは露ほども知らない、一人の少年が繰り広げる面白おかしい学院ファンタジー!

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...