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シクスゼクス帝国編
第72話 偵察と先読み
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ぶらぶらと村の中を散歩する。
途中で村人を発見し、話しかけてみた。
「シクスゼクス帝国について聞きたいんだが」
「ひい!」
なんか悲鳴をあげられた。
なぜだろう。
「マナビさんが妙に恐れられてますね。やっぱり、こんな変なことをする人がいままでいなかったからでしょうね」
「なんと人聞きの悪い事を言うんだ。変なことじゃないぞ。人狼ゲーム的なのを逆手に取って、システムをハックしたんだ」
だが、それがどうやらライカンスロープたちにとっては恐ろしいことのようだった。
妙にびくびくしながら、「なんですかね……」とか聞き返してくる。
「シクスゼクス帝国の日常とか、食べてるものとかさ。そう言うのを聞きたいんだが」
「そう言うのって言われても、俺らは村から出ることなんかほとんど無いし……」
村の中のことしか知らなかったか。
色々聞いてみた結果、ライカンスロープは夜になり、獣人化できない限りは村の外に出ないのだそうだ。
人間の肉体で旅をするには、シクスゼクス帝国は危険過ぎる。
ライカンスロープは、魔族としては最弱に位置する存在なのだ。
「そっか。魔法じゃないと傷つかない肉体でも、この時代は魔法文明時代だもんな。普通の獣人と変わらないわけか」
「そういうことです、マスター。彼らの恐ろしさは、ゲームのシステムに巻き込んで冷静な判断力を奪ってこそなのです。今はマスターが勝手に改変したゲームに彼らを巻き込み、ライカンスロープの冷静な判断力を奪っていますので。どうしてこういうこと思いつくんですか」
「俺は人が嫌がることを率先してやりたいタイプなんだ」
「言葉の意味が違うと思いますが」
その場を離れ、また村の中を練り歩く。
どう見ても普通の村だ。
言われなければ、魔法文明時代であることが分からないくらい、普通のファンタジー世界の村だ。
ちょっと違うのは、あちこちに枯れ木みたいな禍々しい形の樹木が生えていること。
「骸骨を吊るしてるのは入り口だけなんだな」
「そりゃあ、骸骨が家の近くに吊るされてたらちょっと気分悪いですもんねえ」
「ルミイの言う通りかも知れない」
その後の聞き込みで、シクスゼクスが所有する有名な異世界召喚者の話を聞いたりなどした。
タクル以外に、戦闘特化型みたいなのが何人かいるらしい。
一人はこの辺りに来たことがあるそうで、ガウルという男なんだと。
実体化するエネルギー体を自在に扱うヤツで、エネルギー体は巨人の姿になったり、武器の形になったりして敵を殲滅するとか。
ははあ、応用が効くタイプの能力者だな。
超能力バトルっぽくなってきた。
他は、何か大きな任務のために三人ほど駆り出されているとか。
結界を作るタイプとか、相手を問答無用で拘束するタイプとか、領域を展開するタイプとか。
シクスゼクスで重用されるレベルの異世界召喚者は、全員がやべえ能力を持っていると考えて良かろう。
そのうち戦うこともあるかもしれない。
「暇なのだー! 退屈なのだー!!」
「カオルンが暴れだした。どうしたどうした」
「お昼なら襲撃してくるかと思ったのに、何もしてこないのだー! カオルンはあてが外れたのだー! とっても退屈なのだー!」
「昼間はあいつら普通の人だからなあ……」
「うー、カオルンはもっと強いやつと戦いたいのだ。マンティコアはマナビがやっちゃったからカオルンは暇だったのだ。フラストレーションが溜まってるのだ」
「そうかー」
それは問題だ。
カオルンは魔神の心臓を持っているせいか、適度に戦ったりスリルを味わっておかないと気が済まないタイプだ。
ここは何か任務を与えて……。
「おっ、そうだ。村長が慌ててただろ。今頃、秘密会議みたいなのやってると思うから調べに行ってくれ」
「村長を調査するのだ? 分かったのだ! カオルンに任せるのだー!」
彼女はそう言うと、肌の色を変えた。
おっ、周囲の背景の色が写ってる。
カメレオンカラーだ。
「服まで色変わるの。脱がなくていいの?」
「マナビさん、なんですごく残念そうなんですか?」
「マスターはえっち過ぎるのではないですか?」
純粋なルミイの視線と、猜疑心に満ちたアカネルの視線に挟まれてしまった。
「行ってくるがいい、カオルン。頼んだぞ!」
俺はその場を誤魔化すのだった。
「行くのだー!」
カオルンが、やはりカメレオンカラーの光の翼を羽ばたかせ飛び上がる。
そうだった。
飛べるんだよな、カオルン。
全天候型の高い行動力と、極めて高い戦闘力と、変身による高い諜報力。
さすが、ワンザブロー帝国皇帝ストライアスの懐刀だ。
俺は普段、その凄まじい力を全然使ってもらわないまま、舐めプで世界を相手にしている……。
それどころか、ルミイに至ってはなーんにもしてもらってないぞ。一緒にお風呂に入ってもらってるだけだ。
「マスター。いよいよ勝負を仕掛けるわけですか。昼間に攻勢に出れば、こちらの勝利は確実と思われます」
「ああ、それは勝ち確だろう。だが、あえて夜まで待つ──」
「なぜですか!?」
「ライカンスロープたちは今、ゲームのシステムの根幹をぶっ壊された状態だ。襲撃してくるやつが真っ先に全員脱落した状況など、経験したことも無かったんだろう。それであの慌てぶりだ」
村人たちの驚いた顔を思い出すのである。
「今頃、あいつらは集まって会議をしている。そうでなければ、夜の襲撃には間に合わないからだ。念話は夜にならないと使えないから、集まるしか無い。俺たちに見つからず集まれる広い場所は、村長の家くらいだろう」
「そこまでの推理を……。普段の言動があまりにもアレだったので見くびっていましたが、さすがです」
「アカネル、俺を見くびってたのか……。まあ見くびられていた方が後々おふとんの上で下剋上した時の反応がうんぬん」
「マナビさんがショックを受けた顔をして……ませんね。なんかニヤニヤしてます!」
「ルミイ、これはマスターがえっちな事を考えている時の顔です」
「えっちなこと?」
「ルミイにはあとあと、当機能が色々お教えします。悪い男の毒牙に掛かる前に知識を得ましょう。とりあえずこの人が悪い男です」
俺を指差すんじゃない、アカネル。
「それから、夜を待つのは何故かと言うとだな。煮詰まった連中がいいアイディアなんか出てくるわけないだろう? 絶対にしょうもない事を考える。具体的には、総攻撃で俺たちを殺してゲームリセットだ。見てろ、あいつら絶対にやる。そこを正面からぶち倒す……」
「うわーっ、いい性格ですねえ!!」
そう言うルミイも、妙に嬉しそうなのだった。
途中で村人を発見し、話しかけてみた。
「シクスゼクス帝国について聞きたいんだが」
「ひい!」
なんか悲鳴をあげられた。
なぜだろう。
「マナビさんが妙に恐れられてますね。やっぱり、こんな変なことをする人がいままでいなかったからでしょうね」
「なんと人聞きの悪い事を言うんだ。変なことじゃないぞ。人狼ゲーム的なのを逆手に取って、システムをハックしたんだ」
だが、それがどうやらライカンスロープたちにとっては恐ろしいことのようだった。
妙にびくびくしながら、「なんですかね……」とか聞き返してくる。
「シクスゼクス帝国の日常とか、食べてるものとかさ。そう言うのを聞きたいんだが」
「そう言うのって言われても、俺らは村から出ることなんかほとんど無いし……」
村の中のことしか知らなかったか。
色々聞いてみた結果、ライカンスロープは夜になり、獣人化できない限りは村の外に出ないのだそうだ。
人間の肉体で旅をするには、シクスゼクス帝国は危険過ぎる。
ライカンスロープは、魔族としては最弱に位置する存在なのだ。
「そっか。魔法じゃないと傷つかない肉体でも、この時代は魔法文明時代だもんな。普通の獣人と変わらないわけか」
「そういうことです、マスター。彼らの恐ろしさは、ゲームのシステムに巻き込んで冷静な判断力を奪ってこそなのです。今はマスターが勝手に改変したゲームに彼らを巻き込み、ライカンスロープの冷静な判断力を奪っていますので。どうしてこういうこと思いつくんですか」
「俺は人が嫌がることを率先してやりたいタイプなんだ」
「言葉の意味が違うと思いますが」
その場を離れ、また村の中を練り歩く。
どう見ても普通の村だ。
言われなければ、魔法文明時代であることが分からないくらい、普通のファンタジー世界の村だ。
ちょっと違うのは、あちこちに枯れ木みたいな禍々しい形の樹木が生えていること。
「骸骨を吊るしてるのは入り口だけなんだな」
「そりゃあ、骸骨が家の近くに吊るされてたらちょっと気分悪いですもんねえ」
「ルミイの言う通りかも知れない」
その後の聞き込みで、シクスゼクスが所有する有名な異世界召喚者の話を聞いたりなどした。
タクル以外に、戦闘特化型みたいなのが何人かいるらしい。
一人はこの辺りに来たことがあるそうで、ガウルという男なんだと。
実体化するエネルギー体を自在に扱うヤツで、エネルギー体は巨人の姿になったり、武器の形になったりして敵を殲滅するとか。
ははあ、応用が効くタイプの能力者だな。
超能力バトルっぽくなってきた。
他は、何か大きな任務のために三人ほど駆り出されているとか。
結界を作るタイプとか、相手を問答無用で拘束するタイプとか、領域を展開するタイプとか。
シクスゼクスで重用されるレベルの異世界召喚者は、全員がやべえ能力を持っていると考えて良かろう。
そのうち戦うこともあるかもしれない。
「暇なのだー! 退屈なのだー!!」
「カオルンが暴れだした。どうしたどうした」
「お昼なら襲撃してくるかと思ったのに、何もしてこないのだー! カオルンはあてが外れたのだー! とっても退屈なのだー!」
「昼間はあいつら普通の人だからなあ……」
「うー、カオルンはもっと強いやつと戦いたいのだ。マンティコアはマナビがやっちゃったからカオルンは暇だったのだ。フラストレーションが溜まってるのだ」
「そうかー」
それは問題だ。
カオルンは魔神の心臓を持っているせいか、適度に戦ったりスリルを味わっておかないと気が済まないタイプだ。
ここは何か任務を与えて……。
「おっ、そうだ。村長が慌ててただろ。今頃、秘密会議みたいなのやってると思うから調べに行ってくれ」
「村長を調査するのだ? 分かったのだ! カオルンに任せるのだー!」
彼女はそう言うと、肌の色を変えた。
おっ、周囲の背景の色が写ってる。
カメレオンカラーだ。
「服まで色変わるの。脱がなくていいの?」
「マナビさん、なんですごく残念そうなんですか?」
「マスターはえっち過ぎるのではないですか?」
純粋なルミイの視線と、猜疑心に満ちたアカネルの視線に挟まれてしまった。
「行ってくるがいい、カオルン。頼んだぞ!」
俺はその場を誤魔化すのだった。
「行くのだー!」
カオルンが、やはりカメレオンカラーの光の翼を羽ばたかせ飛び上がる。
そうだった。
飛べるんだよな、カオルン。
全天候型の高い行動力と、極めて高い戦闘力と、変身による高い諜報力。
さすが、ワンザブロー帝国皇帝ストライアスの懐刀だ。
俺は普段、その凄まじい力を全然使ってもらわないまま、舐めプで世界を相手にしている……。
それどころか、ルミイに至ってはなーんにもしてもらってないぞ。一緒にお風呂に入ってもらってるだけだ。
「マスター。いよいよ勝負を仕掛けるわけですか。昼間に攻勢に出れば、こちらの勝利は確実と思われます」
「ああ、それは勝ち確だろう。だが、あえて夜まで待つ──」
「なぜですか!?」
「ライカンスロープたちは今、ゲームのシステムの根幹をぶっ壊された状態だ。襲撃してくるやつが真っ先に全員脱落した状況など、経験したことも無かったんだろう。それであの慌てぶりだ」
村人たちの驚いた顔を思い出すのである。
「今頃、あいつらは集まって会議をしている。そうでなければ、夜の襲撃には間に合わないからだ。念話は夜にならないと使えないから、集まるしか無い。俺たちに見つからず集まれる広い場所は、村長の家くらいだろう」
「そこまでの推理を……。普段の言動があまりにもアレだったので見くびっていましたが、さすがです」
「アカネル、俺を見くびってたのか……。まあ見くびられていた方が後々おふとんの上で下剋上した時の反応がうんぬん」
「マナビさんがショックを受けた顔をして……ませんね。なんかニヤニヤしてます!」
「ルミイ、これはマスターがえっちな事を考えている時の顔です」
「えっちなこと?」
「ルミイにはあとあと、当機能が色々お教えします。悪い男の毒牙に掛かる前に知識を得ましょう。とりあえずこの人が悪い男です」
俺を指差すんじゃない、アカネル。
「それから、夜を待つのは何故かと言うとだな。煮詰まった連中がいいアイディアなんか出てくるわけないだろう? 絶対にしょうもない事を考える。具体的には、総攻撃で俺たちを殺してゲームリセットだ。見てろ、あいつら絶対にやる。そこを正面からぶち倒す……」
「うわーっ、いい性格ですねえ!!」
そう言うルミイも、妙に嬉しそうなのだった。
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