召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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シクスゼクス帝国編

第71話 糾弾返しと種明かし

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 ポカーンとしたコダルコダール村の連中の顔は見ものだった。
 誰一人として、俺が言ったことを理解できてない。
 いや、理解してるんだろうが、もう意味がわからないんだろう。

 なんで俺がそれを言うのか。
 この状況でそれを口にするのか。

 頭が真っ白になってしまった顔をしている。
 これが、人食いライカンスロープの集まりというのだから、メンタリティはまあ人間と変わらないよな。

「つまり、犯人はこの中にいる!!」

 大切なことだったので、俺は繰り返した。

「お、おお……」

 ようやく、村長が返事をした。

「うむ、つまり俺が、今回の事件の犯人を推理しようと言っているんだ」

「!?」

 村人たちがポカーンとした。
 よく言葉を失う人たちだ。

「それで、朝の集会で裁判まがいの事をするのか? しないのか?」

「や、やろう」

 村長がコクコク頷いた。
 どうにか、規定の流れに持っていこうとしているな。

 グフフフフ、こちらはお前たちの考えなどお見通しなのだ。

「マスター。昼間は念話が不可能になっていますから、事前に彼らが打ち合わせていた流れをお伝えします。まずあちらの男性がマスターを糾弾しますので」

「よし、先手を取ろう。お前が犯人だな!!」

 俺は叫び、糾弾役の男を指さした。

「おまっ、えっ!? 俺!? いや、俺はちが──!!」

「犯人はみんなそう言うんだ……。よし、カオルン、証言をするんだ」

「うむなのだ。カオルンは昨日の夜、外を散歩したりしたのだ! そしたらそこの人が外に出てうろうろしてたのだ!」

 これは本当。
 この村の人々は、襲撃役以外にも脱走防止役などを設けていて、この男は脱走防止の仕事をしていたというわけだ。

 裁判における糾弾役は、念話会議で毎晩決定される。
 持ち回りになっていて、獲物がうろたえたり絶望する様を真っ先に楽しめるので、人気になっているらしい。

「決まりだな……。やっぱりお前が犯人だったのか……。なんて酷いことをするんだ」

「ちょっと待て! そんな、証拠って、俺はただ外で脱走の防止役を……」

「脱走!? 村に脱走者が出るような何かとんでもない問題があって、脱走が頻発するからそんな役割を設けなくてはならないのか!? なんてことだ! ここはひどい環境ですね!!」

「お、おま……! ちょ……!」

 男性は口にする言葉にカウンターを掛けられて、何も反論できなくなった。
 口をパクパクさせたと思ったら、「ウグワーッ!」と叫んで過呼吸でぶっ倒れてしまった。

 レスバトルは俺の勝利だな……。

「マナビさん、よく口が回りますねえ……」

「俺は浅い人間だが、相手の揚げ足を取るのはかなり得意なんだ」

「うわあ、ろくでもない特技ですねえ」

「ろくでもない奴をぶっ倒すには最適だろう」

 俺はルミイ曰く、悪い笑みを浮かべたのだった。

 結局その日は、集会で吊るされるヤツは決定しなかった。
 俺が勢いと揚げ足取りで場を支配したので、このままでは村人が吊るされることになるからだ。

 村の連中が望んでいるのは、旅人が絶望して吊るされていく様だからな。
 身内がどんどん減っていくデスゲームではない。

 馬鹿め、そこが弱点なのだ。
 デスゲームが怖くて人狼ゲームができるか。いや、できるかもしれない。
 ということで、俺たち四人は昼間は、証拠を集めるという名目で村の中を好きに移動させてもらうことになった。

 なにせ、昼間の村人たちは普通の人間なのだ。
 完全に日が落ちない限りは、例え雨天や曇り空であっても、魔族の力を発揮できない。

「なるほど、こりゃあシクスゼクスの入り口にあるだけのことはあるな。入門編だ」

「マスター、上手いこと言ってやったと思ってませんか。入口にある村だから入門とか」

「アカネル、そう言う解説しちゃうのを無粋って言うんだぞ……!」

「マスターに言われたくありません。昨夜だってお風呂で手を洗うのが大変で」

「あっ、その節はどうも……。いやあ、大変興奮してしまっていまして」

 俺はペコペコ謝った。
 話題をそらされて反撃されたのだが、それはそれで、俺の心身が満たされた結果のあれだ。

「おっ! アカネルもマナビのしっぽを洗ったのだ? あれは面白いのだなー」

「ですねー。最後はフニャッとなりますもんね! かわいい」

「お二人ともピュア過ぎでは……!? あっ、マスターがいやらしい笑みを浮かべています」

 気付かれたか。
 そんな会話をしながら練り歩いた村の中だが、表向きは本当に普通の村だ。
 おかしいところなど一つもない。

「身一つで旅人を引き裂けるから、武器や物々しい施設はいらないというわけなんだろうな。アカネル、ヘルプ機能。コダルコダール村の秘密の施設」

「検索結果が出ません。存在しません。完全にこの村は、見たままの姿です。住民の存在そのものがギミックとなっています」

「やっぱりか」

 俺は村を見回す。
 俺と目があった村人は、強張った笑顔で会釈して、慌てて物陰に去っていった。

 なんか恐れられているな……。

「なんだか全然怖くなくなっちゃいましたねえ……。むしろ普段のマナビさんの方がおかしい……じゃなくて怖いですよねー」

「ルミイ、今本音を言ったでしょ」

「言ってませーん」

「言った言った」

「二人ともイチャイチャしないでください。確かに、知らないからこそコダルコダール村は恐ろしいところになりえるのでしょう。当機能と皆さんはこれを、一日で丸裸にしました。システムも企みも全て露見しているのですから、恐怖の生まれようがありません。恐怖とは未知だからこそ発生します」

「カオルンはすぐに全滅させてしまえるのだなー。だけど昨日戦ってみたら、全然弱いのだ! 魔族って大したこと無いのだ?」

 昨夜、カオルンは一瞬で襲撃役二名をバラバラにして戻ってきた。
 そのままにしてきたので、慌てて俺とルミイとアカネルで、バラバラな襲撃役を彼らの自宅まで運んだくらいだ。

「すぐに終わらせる事もできるけど、ここは、シクスゼクスの情報収集のためにもうちょっとだけ存在してもらおうじゃないか。まだまだ利用できる」

「あはは。こうやって、まさか人間が魔族を食い物にするなんて、みんな思ってないでしょうねえ」

 ルミイがしみじみと呟くのだった。
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