召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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シクスゼクス帝国編

第87話 侵略中止と水着選択

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 ルミイに先導されたアビサルワンズが、やるぞー!と気勢をあげている。
 ヘプタゴンの力で魔族を撃破したので、乗りに乗っているのだ。
 これはいかん。

『こりゃまずいぞ。帝都まで攻め込めば、俺様の仕事がめちゃくちゃ増える。帝都最強の異世界召喚者も出てくる。あれが出ると俺様が出張らばならない。まず負けはしないだろうが面倒くさすぎる』

 オクタゴンが真顔になった。
 そして、ずももももっと邪神としての本来の姿に変身する。

『静まれ我が眷属よ! 俺様は帝都への侵攻など望んではおらぬ!』

「「「「「「おおー」」」」」」

 さすがはオクタゴン。
 アビサルワンズとヘプタゴンが一斉にひれ伏した。

 ヘプタゴンはでかいから、ひれ伏すとこの辺りの建物がなぎ倒されるな。

『こらこらこらこら』

 オクタゴンがちょいっと手を伸ばし、ヘプタゴンをつまみ上げた。
 でかい。

 ヘプタゴンが10mくらいだとすると、オクタゴンは40mくらいあるな。
 巨大化したときに、恐らく半実体みたいな状態になって街に被害を出さないようにしているのだ。
 この街並みは、オクタゴンの趣味そのものなんだろう。

『お前は戻れ。街が壊れてしまうだろうが』

『ウボアー』

 悲しげに吠えたヘプタゴン。
 空中に生まれた魔法陣の中に消えていった。

「良かったのか」

『後で精神的なケアはするから心配するな。俺様は部下のメンタルケアはしっかりやるんだ』

 オクタゴンは俺を手のひらに載せ、高いところまで持ち上げる。

『よいか。帝都侵攻計画は中止だ、中止。俺様はこの海上都市で惰眠を貪り続ける。それこそが望みだ。なに? また異世界召喚者に封印される? そう何回も俺様を封じられるほどの力を持つ召喚者どもが、徒党を組めるほど出現することがあると思うか。今回が例外だ。そして例外はこの男、我が友であるマナビによって打破された。拍手せよ眷属ども!!』

 アビサルワンズ一同、わーっと拍手した。
 オクタゴンの言うことなら何でも聞くのだ。

「オクタゴン、では俺の本懐を果たしてもらってもいいかな?」

『もちろんだ友よ。聞け、眷属ども!! 今までお前たちに作らせていた水着を纏えるものがついに現れた! なに? マナビのことか、だと? 男に着せてどうする。そっちだ。そっちにいる女子たちだ。体型を細かに測り、マナビの注文をよく聞いて作成するのだ』

 アビサルワンズから、うおーっという返事があった。
 よしよし。

 複数の異世界召喚者を相手取って戦い、邪神を解放した甲斐があった。
 これで女子の水着が手に入るぞ!

 俺は欲望を叶えるためならどんなことでもするのだ。

 こうして……。
 俺による女子たちの水着見たい欲と、邪神のものぐさにより、シクスゼクス帝都は救われた。
 俺たちに感謝するがよい。

「えっ、こっちなんですか? 測ってる間、食べ物くれるんですか? 行きます行きますー!」

 ルミイが連れて行かれる。
 俺も後をついていった。

 すると、水着デザインを一族で代々担当しているというアビサルワンズが出てきた。

「初代の頃はオクタゴン様とあまりにも価値観が違いすぎ、注文された品を作れませんでした。ですが、代を重ねるごとに感覚は洗練され、ついにオクタゴン様が望む水着を作れるようになりました。こちらです」

「おおーっ、全部ビキニだ。星条旗柄まである! あいつへそがみえる水着が好きだったんだな……。だが己が邪神だからそんなステディには出会えない。かわいそうなやつだ……」

 俺はちょっとホロリと来た。
 必ずや、あの朋友に嫁さんとなりうる神格を見つけてやると決意した。
 行くか、セブンセンス!

「ではこの中から組み合わせを選んで、彼女のための水着を決めて下さい」

「俺が選ぶの?」

「我々アビサルワンズの感覚は人間とは大きく異なります。我々が美しいと思う水着はこれなので」

「おー、なんか極彩色でコンブとかワカメみたいなのが大量に生えてるビキニ。これは特殊な趣味すぎる」

 俺は真剣な顔をして、水着を選んだ。
 後ろからルミイの「きゃはははは、くすぐったいですー! おー、胸の上と下でそんなに違うんですねえ。大したものです。えっ、そんなにお尻のサイズ大きくないですよ!? また大きくなってしまいましたー」という声が聞こえてきたので俺は冷静さを失おうとしています。

「くっそ、水色の髪の色なんだから水着も水色がいいだろ! これとこれをこう組み合わせて頼む……!!」

「了解しました」

 アビサルワンズは俺の葛藤など知ることもなく、事務的に水着を手にし、組み合わせた。

「こうでしょうか」

「そう、それ」

 トップの正面とかボトムの横が紐である。
 なんたる生地の少なさか。
 恐ろしい恐ろしい……。

 俺はおののいた。

「恐ろしい恐ろしい」

 戻ってきたら、今度はカオルンである。

「カオルンは裸でいいのだ」

「良くないのだ」

 ということで、渋る彼女の背中を押していく。
 文化的な事にあまり興味がない子だ。
 ここは文化の素晴らしさを俺が教えこんでいかねばならぬ。

「旧スク水で」

「それは一体……?」

 デザイナーのアビサルワンズが、無い首を傾げた。
 こいつら、胴体から頭が直接生えてる感じだもんな。

「見てろ、こうだ!!」

 俺はヘルプ機能を存分に活かしながら、スク水のデザインを模写した。
 一発目の絵が死ぬほど下手だったので、チュートリアルモードに入った。
 そこで半月くらい書き続ける。

 ついにスク水の描画をものにしたぞ。
 戻ってきた俺は、鬼気迫る感じでスク水を活写する!!

「おお、絵から気迫を感じます」

「マナビがまるで別人みたいなのだ! さっきの落書きはなんだったのだ!」

 ということで、カオルンは旧スク水にした。
 胸元には、ちゃんと日本語のひらがなで『かおるん』と書いてある。

「最後はアカネルだが……」

「当機能はマスターが頑張っている間にもうデザインを終わらせてきました」

「なん……だと……」

「マスター、紐だけの水着みたいなのを着せてきそうでしたから」

「心の中を読んだな。俺に全部任せてくれれば紐だけの水着みたいなのをあつらえてやったのに」

 俺が思わず呟いたら、アカネルが俺の肩を組み、足を引っ掛けて後ろに倒れ込んだ。
 頭を打つ俺。

「ウグワーッ!! 河津掛け!! こ、こんなプロレス技をなぜ!」

「当機能の怒りです」

 めっちゃ怒ってるじゃん。
 だが、アカネルが選んだという水着も楽しみである。

 俺は完成をワクワクしながら待つことにするのだった。
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