召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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凍土の王国編

第95話 決闘の終わりからまったりへ

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 ガガンがぶっ倒れ、決闘場を囲んでいたバーバリアンたちも衝撃波に飲まれてぶっ倒れている。
 そこよりも高いところに設けられた席に、バーバリアン王バルクとエルフの奥さんにしてルミイママのルリファレラ、そしてその息子たちに、ルミイとカオルンとアカネルがいる。
 たくさんひな壇みたいなところにいるな。

 で、衝撃波はバーバリアンをなぎ倒して収まったようで、ひな壇は無事なのだ。
 バルクは驚き、ひな壇を踏み倒しながら立ち上がった。
 豪快である。

「しょ……勝者、マナビ! 倒れたガガンを運べ! 手当をせねばならん!」

「あっ、わたし行きまーす」

 俺に呼ばれていたルミイが、口をもぐもぐさせながらピョンとひな壇を降りた。
 お肉などを食べつつ、倒れたガガンの横にしゃがみ込む。

「植物の精霊さん、ドライアドさん、お願いしますね。治しちゃって下さい」

 適当な感じの呪文が聞こえると、ガガンの破裂していた腕が治っていった。
 傷跡は完全には消えないが、元の形を取り戻している。
 あっという間だ。

「まあまあ! あの娘ったら精霊魔法の腕を上げているわ! こんな短期間で強くなるなんて、まるでそうしなければ生き残れなかったような状況をたくさんくぐり抜けてきたみたいじゃない?」

 ルリファレラ、大変鋭い。
 ルミイは俺を振り返ると、微笑んだ。

「マナビさんお疲れ様です! 勝ちましたねー。ま、わたしは絶対勝つって分かってましたけど」

「フフフ、俺は有言実行の男だからな」

「知ってます。じゃ、ご飯食べに戻りますね!」

 ピューッと去っていくルミイなのだった。
 うーん、やはり可愛い。

 俺が彼女の後ろ姿を見送っていると、ガガンが「うーん」とうめき声を漏らすところだった。
 彼は自分が地面に背中をつけて大の字になり、対する俺が悠然と立っていることに気づいた。

「オレは……負けたのか……?」

「そうだな。俺はご覧の通り無傷だ」

「くっ……! ま、負けた……! いや、モヤシ……! マナビとか言ったか! 俺が間違っていた。お前は弱くはない。お前は強い。どういう力を使ったのかは知らないが、ルミイがお前を好くのも無理はない」

 ガガンは状態を起こすと、その姿勢で精一杯頭を下げてきた。

「えっ、ルミイが俺を? やはり好感度が上がってるんだな……。もうちょいか」

「ぐううう……。オレは悔しい……! ガキの頃からルミイを手に入れるために必死に鍛えてきたのに……! 横からお前のような意味の分からない怪物に掻っ攫われるなんて」

「よくあることだぞ。というかガガン、お前の敗因はだな」

「オレの敗因……!?」

「ルミイをワンザブロー帝国にさらわせたことだ。そこであいつは俺を召喚し、俺はルミイとともに数々の冒険をくぐり抜けてめっちゃくちゃに絆を深めることになったのだ。まだ清い関係だがな」

 お風呂の件は言わないでおいてやる。
 武士の情けである。

「そこから……!!」

 愕然とするガガンなのだった。
 そりゃあそうだ。
 一番の危機の時に助けられなかったら、最大のチャンスを逃したことになるだろう。

 俺は吊り橋効果的なパワーで、ルミイの好感度を得たのだ。
 ……本当にそうか? なんかつい最近まで、ルミイは全然そんな気が無いようなキャラだったような。

「しかし、男を見ると人見知りするルミイがあそこまで変わるとは……。悔しいが、オレにはできなかった。マナビ、お前にルミイを託す……。オレ以外にもルミイへの求婚権を賭けて、次々に戦士が挑んでくるだろう。絶対に負けるな。ルミイをものにすると誓え」

「おう、全勝するわ」

 ガガンはちょっと涙目になりながら、手を差し出す。
 俺はその手を握り返した。

「うおおおーん! 悔しい! 悔しい! オレは弱い! ルミイを手に入れられなかった! 畜生ーっ!!」

 男泣きに泣き出したぞ。
 まだ立ち上がれないようなので、他の同年代の男たちがガガンを支えていった。

 大部分が、俺に恐怖の視線みたいなのを向けている。
 俺の戦い方が理解できなかったんだろう。

 そして明らかに強そうな連中は、俺を敵愾心むき出しで睨んでくる。
 まだまだ決闘は続きそうである。

 こうしてようやく、俺は飯にありついた。
 果物をパクパク食べていると、バルクが話しかけてくる。

「マナビよ、何をやった? ガガンは若手最強の戦士。あれをああも、見事にあしらうとは。闘気は無かった。魔法の類か? それも違う」

「俺は異世界召喚者でな。相手の戦い方を知って、攻略する能力がある」

「ほう! 異世界召喚者か! 道理で」

 すぐに納得するバルクだった。

「しかし、攻略する能力とは何だ。どういう仕組になっている? 異世界召喚者の力は無から生まれてくる。魔力を使うものも多いが、それでもその能力には始まりがない。突然出現した異能だ」

「俺も分からん。だが、俺はルミイを守って複数の異世界召喚者を倒してきたぞ。今のところノーダメージだ」

「そうか、そうか」

 バルクが笑みを見せた。
 なんというか、肉食獣が牙をむき出しにするような笑みだな。

「俺も試してみたいものだ」

「やる気じゃないかお義父さん」

「お義父さんと呼ぶな! 俺はまだお前を認めていない! だが、ほんの少しだけ認めたぞ」

 おっ!
 バルク篭絡フラグみたいなのが立ったか。
 ルミイママのルリファレラがニコニコしている。

「彼が他の男を認めることはあまりないわね。格下を褒めることはあっても、自分と戦える男だって口にすることはまずないもの」

「やめろルリファレラ。この男が調子に乗る」

 なんか夫婦がイチャイチャしているぞ。
 ええなあ、と眺めていると、あらかた食べ終わったルミイがくっついてきた。

「珍しいですねえー。パパとママが誰かを認めるってあんまりないんですよ! やっぱりマナビさんは凄いんですねえ。そのうちちゃんとパパに勝って下さいね」

「やっぱり攻略しないと駄目なのか。厳しいなあ」

 すると、カオルンが後ろにやって来た。

「何を言うのだマナビ! 戦えるチャンスがたくさんあるのはいいことなのだ! カオルン、この分かりやすい世界は気に入ったのだ。謀略とか考えなくて良くて、力だけが全てなのだ! ところでマナビ、さっきカオルンにけっこんしてくれーって言いに来たやつが何人もいたのは何だったのだ? ルミイじゃないのだ?」

「いかん!! カオルンにも危機が迫っている!!」

 俺は猛烈にやる気になった。
 俺の強さを、この王国の男たちに分からせねばならん。
 ハーレム計画を成就させるためにも、絶対にだ。

 ちなみにアカネルは、ルミイやカオルンほどモテモテではなかったので、ちょっと凹んでいたらしい。

「いいんですいいんです。当機能は機械ですから、お二人ほどの性的な魅力はね。機械ですからね」

 この国、立場や戦闘力で相手の魅力を測るっぽいからなあ。
 力が分かりづらいアカネルにはアウェーな環境なのであった。
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