召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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セブンセンス法国編

第111話 バトル・尊敬・神殿建立

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 チュートリアル後のバトル開始なんである。
 初手は魔法だとばかりに、衝撃波が次々飛んでくる。
 当然のようにこれは既に知っていたので、俺は体を横にして回避した。

 衝撃波は不可視だが、軌道が読みやすい。
 ホーミングしないんだよな、神聖魔法は。
 その代わり、アホほど速い。

「避けた!?」

「バカな!!」

 叫びながら、戦神の信者たちが襲いかかってくる。
 武器は棒である。

 これも、どう攻撃してくるかが全部わかっているので、最小限の動きで全部いなす。
 なんかこれをやりながら、格闘技の達人みたいなのがあまり動かないで戦う理由が分かってきた。

 ああ、つまりこれは無駄な動きをしてないわけね。
 最適化されると達人のような動きになるわけだ。

 リズムを掴んでいるから、もう相手を視認する必要すらない。
 俺は堂々とナルカに振り返りながら、背を向けたまま戦神信者たちの攻撃をさばいた。

 おお、驚いてる驚いてる。
 初めてだとびっくりするよな。
 俺が相手を見ないで、このタイミングで腕を振り上げると……。

「ウグワーッ!!」

 俺の腕に棒を跳ね上げられ、自分で自分の顔面を打った男がぶっ倒れた。
 次に横に足を差し出すと、突進してきたやつが引っかかり、自分の勢いでぶっ飛んでいく。

「ウグワーッ!?」

 相手が血気盛んだと、力すらいらないのだ。
 適切なタイミングで、適切な場所に体を置くだけでいい。
 こうして……。

 ものの三分ほどで戦神信者たちは全員戦闘不能になった。
 当然ながら、俺は無傷で、息すら上がっていない。

「これが技巧神の技だぞ。挑戦はいつでも受ける」

「つ……強い……!!」

 なんか、信者たちはちょっと尊敬が混じった目でこっちを見ている。
 いかん、争いの種を蒔くつもりが圧倒的にやりすぎたか。

「技巧神にこれほどの使い手が……? 戦い方が全く違う」

「ああ。あいつら正面から戦わないで、罠とか拘束武器を使ったりばっかりだもんな……」

 しまった、リサーチ不足だった!

 なんか爽やかな空気になってしまった。
 やってしまいましたなあ、と思いながら戻ってきた俺に、ナルカが駆け寄ってきた。

「す、す、凄いじゃないかあんた!! あいつらをまるで、子ども扱い……いや、障害とすら思ってないような戦い方で……! あたい、あんなの初めて見たよ!! む、胸がドキドキする!!」

 なんかそんなことを早口で仰りながら、俺をぎゅーっと抱きしめてきたのだ。
 うわーっ。
 俺よりでかい女に抱きしめられるのは初めてである。

 なかなか柔らかくて包容力をじかに感じられて大変良い。

「むおーっ!! ナルカ、マスターから離れて下さい! 奥さんの前で浮気はいけませんよーっ!!」

 おっと、アカネルが間にぎゅうぎゅう割り込んできた。
 顔を真っ赤にして怒っているぞ。
 機械だが嫉妬をするのだ。君絶対人間だろ。

「あっ、ごめんよ! そんなつもりじゃなかったんだ」

 ナルカは慌てて離れた。
 もしや彼女……ハグ癖があるのではないか?
 戦場に立つ同僚はアンデッドばかりだろうしな。

 なんか、アカネルがナルカにお説教を始めた。

 俺はその間に、とりあえず戦神の領域の一部制圧を確認した。
 よーし、ここにオクタゴンのちっちゃい神殿を作っておこう。

「おいオクタゴン」

『早いな! もうか!』

 人間サイズのオクタゴンが現れた。
 そして、ペンダントから資材などを出してくる。

『今なら戦神に気付かれても構わんぞ。この世界の神々は、信仰の衰退のせいで弱体化している。魔法文明様々だな』

 白化したサンゴとか、コケでぬめる石とか、ねじくれた貝殻とか。
 こういうのを、オクタゴンと二人でカチャカチャ組み合わせて作り上げるのである。

「ううっ、こうして見ているだけで、背筋が寒くなってくるよ……。恐ろしいものを作っているね……。ルサルカ様の加護を受けたあたいでもこうなんだから、普通の信者がこれを直視したら発狂しちまうね」

「そりゃあそうだろう。邪神が直々に作ってるんだぞ。ヤバさが違う」

『俺様とマナビの共同作業だから、ちょっと邪神みは薄まってるけどな』

「あ、だから俺が手伝ってるわけか。よく考えてるなあ」

 どんどん出来上がる神殿。
 途中、他の訓練所から戦神の信者たちがやって来た。

「あっ、みんな倒されている!」

「変なものを作ってるやつがいるぞ! こいつらがやったのか!」

「あれは邪神の神殿か!? 作らせるな! 壊せー!」

 状況を素晴らしい速度で把握して、攻めてきた。
 だが。

「よし、これで完成だ」

『いやあ、なかなかの出来だな。これを元に、小型神殿のキットを用意しておく。次回から簡単に組み立てられるぞ』

「オクタゴン、実は未来では接着剤なしで作れるプラモデルキットが出ていてな……」

『なん……だと……!?』

 俺たちが適当な話をしていたら、神殿を直視した戦神の信者たちが頭を抱えてのたうち回り始めたのだ。

「ウグワーッ!!」

「脳に何かが入り込んで……!!」

「ああ……潮騒が聞こえる……!!」

「海に……海に……!!」

 一人残らずおかしくなってしまった。
 存在そのものが防衛機構でもあるのか、オクタゴン神殿。

 なお、神殿とは言っても現代日本のちっちゃいお稲荷様みたいなもので、人が入ることができない。
 入り口をちょっとだけくぐって、御本尊に祈れる程度である。

『これで、俺様の支配領域が拡大した。見ろ、戦神の信者たちがアビサルワンズに変質していくぞ。これは俺様がいる状態で神殿にやってきてしまったので起こる変化なんだ』

「凄いことになってるな。なるほど、ルミイとカオルンを連れてこないはずだ」

 倒れた戦神の信者たちは、本当に全員アビサルワンズになってしまった。
 そして瞬く間に、神殿周辺が岩場に変わる。

 潮の香りがしてきた。

「こういうのをあちこちに作ってセブンセンスを混乱させつつ、内部にいるシクスゼクスの間者をあぶり出すわけだな。順調順調」

「あたい、なんだかとんでもないことに加担してるんじゃないかって気になってきたよ……。ルサルカ様、これでいいんでしょうか……?」

 どこからか、『手段は選んでいられません。いいのです』なんて声が聞こえてきた気がしたのだった。
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