召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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フィフスエレ帝国跡編

第149話 超必殺と儀式と丸く収まった

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 超必殺技。
 コンボの達人が持つ、最大の武器である。
 ただまあ、普通の攻撃の数倍の威力ってだけらしいので、基本はコンボに組み込んで使うっぽいな。

 アカネルが見せてくれた遠景では、ルインマスターに向かって飛び込んでいく達人が見える。
 迎撃する黒竜は、過程をふっ飛ばしたチートな打撃を連打して粉砕しようとしてくる。
 こいつを、的確に読んで隙の少ない弱攻撃で相殺するコンボの達人。

 この辺りの読み合いの巧みさは、流石だな。
 世界最高クラスと言っていい。
 起こりが発生しない、全てがわからん殺し(分からない奴を即死させること)であるルインマスターの攻撃を、余さず捌ける者はこの世界で片手の指に数えられるだろう。

「双子はよくこれ凌いだね」

「僕らの時は、常にどちらかが防御に全力だった」

「三回まではどうにか防いで、そこでカウンターを決めて爪を剥いだんだ」

 すげえな!

「二人がかりなら、あんたらは現地人最強だろうなあ」

「二人合わせて、だけどね」

「一人一人じゃ半人前だよ」

 爽やかに笑う双子だが、半人前が二人がかりで最強のドラゴンを足止めできるわけないだろうが。

 さて、遠景に戻るが、コンボの達人は勢いを殺さないままにルインマスターの懐に入り込んだ。
 黒竜はとにかくでかい。
 当てる場所に困らない。

 この辺り、ルインマスターの失敗だな。
 人間サイズになってれば、まだ防御のしようがあっただろう。
 圧倒的な力で敵を叩き潰すことしかしてこなかったせいか、明らかに戦い慣れしていない。

 コンボの達人の空中十五連続弱パンチが炸裂、ルインマスターの結界……スーパーアーマーを剥がす。
 そして当たった十六発目のパンチで、黒竜が怯んだ。

 パンチであの化け物みたいなドラゴンを怯ませるんだぞ。
 あれはもう超常能力の域だろ。

 黒竜が怯んでいる間に着地したコンボの達人が、ピカピカっと光った。

 おおっ、地を滑るようにダッシュし、そこからパンチ、肘打ち、膝打ち、キック、鉄山靠からのジャンプアッパーカット。
 ルインマスターの巨体が宙を舞わされる!
 黒竜、信じられないものを見るような目をしてるな。

 既に、追撃のためにコンボの達人は跳躍してるぞ。
 ここからさらに、中キックと中パンチを決めて、またコンボの達人が光った。

 空中から斜めに襲来する飛び蹴りだ。
 炸裂と同時に、投げ判定が発生したらしく、達人は黒竜の頭を抱えながら、螺旋を描いて地面に激突した。

 バウンドする黒竜。
 さらに光るコンボの達人。
 超必殺技ゲージを全部使うつもりだ。

 達人の両手が光り輝く。
 生まれるのは、なんか力の間欠泉めいた波動みたいな光だ。
 極大化したこいつを叩き込み、

『ウグワーッ!?』

 なんと、ルインマスターが大ダメージを受けて叫んだ!

「いやあー、見ごたえあるなあ。じゃあ、儀式発動して」

「マスター、今さらっと指示を下しましたね!? 自然すぎて誰も反応できませんよ!」

「反応して! やれやれやれー!! 今しかチャンス無いぞー!!」

 俺は飛び跳ねて声を張り上げた。

 フィフスエレの生き残りたちは、慌てて儀式を開始する。
 呪文を詠唱し、儀式に定められた動きを行うのだ。

 すると、魔力も使っていないのに、帝都がキラキラと輝き出した。

「これなんですかあ!?」

 マンティコアの相棒、ピコルがびっくりして叫んだ。

「そりゃあほら、ルインマスターを呼び出した因果を逆に回してるわけだから、魔力なんか使わなくても過去に使われた魔力で儀式は実行できるわけよ」

「そんな理論知りませんけど!?」

「今までは無かった。だが、今生まれた」

「チートモードなのだ!」

 カオルンがニコニコする。
 うむ。
 俺の能力は、ちょっとずつ発展してきているな。

 チートモードを他人に対してももたらせるようになった。
 まあ限定的なものだし、絶対に俺が関わらないといけないわけだが。

 フィフスエレの住人と、帝都を触媒とする。
 で、ルインマスターが呼び出された因果を使って、過去に召喚のために使われた魔力を再利用。

 存在しないはずの消費済み魔力が使われたことで、逆説的に帝都に魔力が戻ってきて、するとルインマスターは召喚されてなかったことになって……。

『ぬおおおおおおおーっ!! わ、我の体が引き寄せられる! なんだこれはーっ!!』

 遠景にいたルインマスターが、空中に吸い上げられる。
 こっちに来るぞ。

「マスターの考えた理論、あまりにも難解過ぎます。見て下さい。ルミイは理解することを放棄してお弁当を食べ始めました」

「あの娘は難しいこと考えないからね。つまりな、世界を騙したんだよ。こんな儀式は行われなかった。だからルインマスターは元いた場所に戻る。いいね?」

「は、はい……」

 解せぬ、という顔で頷くアカネル。
 俺たちの眼の前で、世界の空に巨大な魔法陣が出現する。

 飛来した黒竜は、魔法陣に吸い付くと、ゆっくりと飲み込まれていった。

『何だというのだ!? 我はこんなものは知らぬ! これはまるで、我を元の場所に送還するような──!!』

 そこで、俺とルインマスターの目が合った。
 やつは何もかも理解したらしい。

『お前か……!! やってくれたな、お前!! ええい、口惜しい! 力ではなく、世界を騙す策略で我を破るか!』

「コンボの達人にやられてるのに、元気だなあ」

『あれしきの攻撃、あと三度は喰らわねば堪えぬわ!! だが……この策には我も抗えぬ……! 口惜しい、実に口惜しい! お前と! やり合いたかった……!!』

「こっちは御免被るぞ」

 俺はひらひら手を振った。
 ルインマスターは、なんとも言えぬ顔をしながら姿を消した。

 そして、魔法陣は一本一本の線が、動画の逆再生をするようにして消えていく。

 なお、滅びた帝都は元通りにはならないよ!
 あくまで俺が世界を騙したのは、ルインマスター関連のことのみだ。

 ピコルが、フィフス・シーが呆然としていた。

『なんということだ……。前代未聞の儀式で、フィフスエレが命運を捧げた大召喚をチャラにしてしまった……』

「何も捧げてないのに……。魔力だって使ってないのに……」

「その代わり、一度こっきりの手段だからな。二度は使えない。いやあ、良かったな! みんなこれで助かったな!」

 俺は二人の肩をポンポン叩いた。
 これにて、黒竜の件は片付いたのである。

 後はバーバリアン王バルクに、フィフスエレの今後について託すばかりとなるだろう。

 なお、ナルカはポカーンとしたまま空を見上げており、俺が脇をくすぐるまで呆然としていたのだった。

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