召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第160話 魔導王復活からの戻る記憶

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 ついにこの時が来たというか、ユーリンはこれを待っていたとでも言おうか。

『数日前に、ワンザブロー帝国方面で大きな爆発が起こったようだ。魔力の星が落下してより、蛮族が流入して争っていたらしいが、それも今は沈静化しているそうだ』

 フォーホース帝国の斥候からの連絡だ。
 自ら変化しない、ロボットみたいな住民ばかりのフォーホース帝国だが、その中にはずっと斥候職を務める者たちもいる。
 俺が飢餓の騎士と戦った時、遭遇した兵士もその一部みたいなものだ。

 彼らはあらかじめ、ユーリンが復活した時に合わせて報告を送ってくるように命令されていたのだ。

「どういうことでしょう? ヘルプ機能で調べてみます」

 アカネル、大変理解が早い。
 彼女の頭上でウインドウがもりもり開いて、様々なキーワードが入力されているのが分かる。

【ワンザブロー帝国】
【ワンザブロー帝国 爆発】
【ワンザブロー帝国 魔力の星 落下跡】

 おうおう、検索結果がバンバン出てくる。

「どう?」

「動画が出てますね。誰かが目撃したみたいです」

「そんな機能あるのかあ」

「当機能が検索する限りにおいてですが、当該人物の過去の視界をジャックも可能です。それに、目撃者は大抵の場合……」

「あっ! マナビさん、なんか動いてますよ!」

 ウインドウの中にある映像は、嵐が吹き荒れる様を映し出している。
 誰かが「お……おお……! なんじゃあこりゃあ……!!」などと叫んでいる。
 これはバーバリアンだな。

 彼は嵐の中に降り立つ何者かを目撃していた。
 ここは、あれか。
 魔力の星が落ちた場所……クレーター状になっているところだな。

 クレーターの中心には、小山みたいなものがあり、採掘された跡がある。
 んで、嵐はその小山から巻き起こっているようだ。

 近づいていたバーバリアンたちはみんな死んでいる。
 小山に光るヒビが入り、バキバキと砕け散っていく。

 中から現れたのは、ギラギラ輝く衣装を纏った男だ。

『予想通り、パルメディアはろくでもない世界だったようだ。僕がばらまいた種が芽吹き、世界中はろくでもないことになった。こんな世界、存在している意味がないよねえ?』

「う、うがあああああああ!」バーバリアン仕掛けた!
 死亡フラグだ!
 男は指先をバーバリアンに向けた。

『パァン!』

 その叫びと同時に、動画の視界が破裂した。

「うわーっ」

「うわーっ」

「うわーっ」

「うわーっ」

「うわーっ」

 俺とルミイとカオルンとアカネルとナルカが驚いて、ひっくり返ったり全力後退したりした。
 いやあ、映像に没入してるところであれは驚くね。

「マナビさんが一番後ろに逃げてます!」

「尻餅をついた瞬間に尻移動してしまったな」

「とんでもない移動力だねえ……」

「マナビも怖かったのだ?」

「マスター、普段はチュートリアルでチェックしているから、無防備でああいうの見るの苦手なんですよね」

 アカネル、俺への理解度が深い。

「あれはつまり……。魔導王が復活した時の映像か。目撃者が最後に見たのが再現されてるんだな」

『魔力の星の中心は、魔法使いを鉱石化させて固めた、魔法石の塊だったのだろう。これを採掘させることで、己が復活する最後の切っ掛けにしていたのだな。人間は欲に駆られ、怪しいものであろうが手出しせずにはいられないと踏んでいたのではないか』

 魔力を使い過ぎなければ、魔力の星は落ちなかった。
 魔力の星に頼りすぎなければ、魔法使いは魔法を使えるままだった。
 魔力の星の中心……核に手出ししなければ、魔導王は復活しなかった。

 これを全てクリアすることで、魔導王はこの世界の住人がしょうもない連中であるという確証を得ることができるわけだ。
 で、そんなしょうもない連中を滅ぼすという大義名分で、行動を起こせる。

「この、性格が悪くてまだるっこしいのは何なんだろうな」

「ちょっとマナビさんに似てません?」

 ルミイが人聞きの悪いことを言った。
 
「似てないと思うなあ。俺はもっと人情に溢れている……」

「ワンザブロー帝国の滅びの塔で、向こうの人たちを煽ってた時は同じ顔してましたよ?」

「ほんと!?」

 最近、すっかり丸くなってしまったからなあ。
 俺もあんなだったか。

 つまり魔導王は、俺が一番性格が悪くて尖ってる感じを維持したままの相手ということだ。

「それは多分、一番強敵だなあ」

「そうなのだ? 魔法を使う相手なら、あの黒竜とか神とか、いろいろいたのだなー。オクタゴンだって強いのだ」

「それはな、カオルン。他の奴らは自分の力使って正面からくるんだ。正直で真っ直ぐだ。あ、技巧神は曲がりくねってたけどな。だが、性格が悪い強者ってのは最悪だぞ。その強い力が、どこで使えば最悪の結果になるかを考えて使ってくる」

「難しいのだ」

「難しかろうなー」

 性格が悪い、というのは、力が弱い物が使う武器だ。
 それを力が強いやつが自覚的に使うというのは、とにかく最低最悪なのだ。

『条件は満たされた。これよりフォーホース地方は最終戦闘態勢に移行する。所属者たちの知識、記憶、魔力を返却する。臨戦態勢に入れ。これは最後の戦いである。臨戦態勢に入れ』

 いきなりユーリンがそんな事を言い出した。
 なんだなんだと思っていたら、周囲を歩いていた人々がピタッと立ち止まるではないか。

 よく言えばのんびり、悪く言えばぼんやりしていた彼らの目に、生気が戻ってくる。

「思い……出した……!!」
「思い出した……!」
「覚えているぞ、これ……!」
「魔導王が帰ってきた!」
「やつが帰ってきたのか!!」

 何やら、帝都が活気づいてきたのだが……?
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