召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終末の王編

第163話 尋問からのウマ武装

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「なんでも話すよう! もう勘弁してくれよう!」

 ちょっとルミイが闇の精霊で頭の中をかき回したら、バーバリアンが濡れた子犬みたいに震えつつ服従したのだ。

「あんな強情っぽかったのが一瞬で堕ちたな」

「闇の精霊におまかせすれば簡単なんですよ。ちょいちょいっとトラウマを増幅させてですね、それを何回も繰り返したりするとどんな強い人でもポッキリ」

「こわいこわい」

 ルミイの恐ろしいところを見てしまった!
 そうか、相手が無抵抗なら、ちょっと抜けてるところがあるルミイでも問題なく、能力を発揮できるというわけだ。
 精霊の愛し子と言われているだけに、能力をちゃんと使えば、ルミイはヤバい。

 現にバーバリアンが完全にこっちに屈服した。

「じゃあコンボの達人とエリイについてだが。見た目はこう」

「あわわわわわわわわ」

 バーバリアンがまた震えだしたぞ。

「落ち着け落ち着け。よし、温かいお茶を飲め」

「ああっ、優しい……キュンとくる」

「やめろ」

 あやうくムキムキ男子のバーバリアンを落としかけたわ。
 どうやら、こいつにとってコンボの達人はトラウマの一つになっているらしい。

「お……俺たちの部族は何人かごとの班に分かれて帝国に忍び込んだんだ。そしたらこいつら魔法が使えなくなってて、略奪とかし放題だった。こりゃあいいって楽しんでたらあいつが現れた」

「ほうほう、どんな感じだった?」

「弱そうだったから、他の魔法使いみたいになぶり殺してやろうってつっかけたやつが、気がついたら空を飛ばされてた」

「さもありなん」

「ジャンプしたそいつが、吹き飛んだ仲間を冗談みたいな動きで、ポコポコ叩いたり蹴ったりしまくって、そしたらあいつは空中で粉々に……」

「あー、あまり手加減しなかったんだな。そりゃあ凄惨な光景だ」

 驚愕したバーバリアンたちはコンボの達人に襲いかかったが、全てが鎧袖一触。
 もはや空中コンボすら不要とばかりに、大攻撃からの三連コンボとかで雑に頭を飛ばされたり、胴体に風穴を空けられたりして全滅したようだ。

 こいつは襲いかかるのが一番遅かったので、相手が化け物だと気付けたわけである。
 そして必死に逃げて、他の班と合流した。

 で、俺たちと遭遇して襲いかかって、班を殲滅させられたわけだ。

「勘弁してくれようー! 帝国がくっそ弱くなってるって聞いたから来たのに、なんでこんな化け物に二回も当たるんだようー!!」

 おいおいと泣くバーバリアン。
 まあ、略奪とかひどいこととかしてたわけなので、因果応報とも言えよう。

 結局こいつはどうする? という話になり、こんなトラウマ抱えてるんじゃ今後も大変だし、戦力にもならないし、もしかすると一般ピーポーに危害を加えるかもということで。

「じゃあ行くのだー。えいっ」

「ウグワーッ!」

 カオルンが開きにしてくれた。
 カオルンソードの切れ味は抜群である。

 さて、バーバリアンたちがやって来たであろう方向をヘルプ機能で検索すると、街がある。
 ピンチアウトして拡大してみると、街は荒らされ放題で瓦礫の山である。

 今まで魔法を使って傲慢に振る舞ってきた帝国が、魔法を失った途端、蔑んできた蛮族に蹂躙される。
 ローマ帝国の凋落にも似ている気がするなあ。
 人は繰り返すのだ。

 俺たちは呑気な感じで、街に入っていった。
 あちこちから出てくるバーバリアン。
 当然のように襲いかかってくる。

 これを撃退、撃退、撃退である。
 向こうは分かりやすい肉弾戦で、こっちはドッカン超能力バトルみたいな戦いをしているわけだから、勝負になるわけがない。
 すぐ全滅させたので静かになった。

「マスター、ここにバーバリアンがいたということは、コンボの達人はいませんね。今検索したら反応がありませんでした」

「えーっ、早く言ってよ。無駄足踏んじゃった」

 街は完全に瓦礫の山であり、特に見るべきものは……。

「ひひーん!」

「どうしたラバー、何か見つけた? あっ、こ、これはーっ!!」

 ツーブロッカー帝国は、もともとは魔法によって強化されたチャリオットなどを使う国だった。
 つまり、馬を使っていたわけだ。

 そこにあったのは、馬の武装だった。
 固くて破壊できないし、扱いが難しかったのだろう。
 バーバリアンはそれらを適当に集めて、積み上げていたのだ。

「ラバー、装備したいか」

「ぶるる!」

「よーし、フル武装ラバーの誕生だ!」

 ヘルプ機能を見ながら、チャリオット装備をラバーにとりつけるのである。

 頭にくっつける、攻撃用のユニコーンヘッド。
 側面の相手を攻撃できる、ドリルつきのシールド。
 後ろからの攻撃を防ぎ、あわよくば反射する魔法のガード。

 フルアーマーアンデッドホースとなったラバーは、間違いなく世界最強の馬である。
 本人もテンションが高くなり、パカポコと駆け回る。

 おっ!
 崩れかけの柱をかすったら、それだけで粉砕したな。
 こりゃあ凄い。

「ひひーん!」

「おー、嬉しいか嬉しいか。よーしよしよしよしよしよし」

「マナビさんがラバーにすっごい愛情注いでます!」

「マスター動物好きだったんですねえ」

「ラバーもマナビの奥さんみたいなのだ」

 そんな感じかも知れない。
 ナルカは、フル武装ラバーの姿にちょっと感動しているらしい。

「アンデッドホースを武装させるって考えが無かったよ。この子たち、それだけでも強いし再生するからさ。見た目だって、本気を出したらおどろおどろしくなるだろ? 武装なんかさせたらそれを隠しちゃうと思ったけど……」

「うむ。見た目で威圧する前に武力で制圧する。これが俺流だ。強いアンデッドホースに強い武装を取り付けて強い戦術と強い騎手で運用する。強いに決まってるだろう」

「ぐうの音も出ないね……!!」

 なんかナルカが俺をリスペクトする目で見てきたぞ。
 ふふふ、尊敬するがいい。

「マスターマスター!」

「なんだねアカネル。俺は今、ナルカの好感度をかなり上げたところなのだが」

「ナルカは時間の問題じゃないですか。それよりもほら! コンボの達人が見つかりました! バーバリアンが乗っ取った魔法砦と、単身で戦ってるみたいです! あ、いえ、一人コンボの達人の隣にいます。多分エリイさんじゃないですか? コンボの達人が動きづらそうです」

「姉さん、ついにターゲットを捕まえたんですねー」

 コンボの達人、年貢の納め時か……!? 
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