召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終章・始まりの王編

第192話 別れで準備で人間は愚か

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 シクスゼクスとの会談の準備が始まった。
 お互いの使者を国境線で会わせてやりとりするのである。

 向こうも、魔界神バリオスが手回ししているから対応が早い。
 サクサクと状況は進みそうである。

 そんな中、セブンセンス神官戦士団が帰ることになった。

 ガガンとアリスティアと別れを惜しむ。

「しばらく会えなさそうだな。アリスティアは次の法王になるんだろ? 頑張れよ」

「はい、頑張ります! それと、わたくしもルミイさんのように……」

「あっ、お話伝わってますか」

「ええ! おめでとうございます!」

「ありがとうございまあす!」

 俺とアリスティアでキャッキャと喜ぶのである。

「マスターが女子みたいな喜び方をしていてなかなか気持ち悪いですね」

 アカネル、ひどいことを言うものではない。

 ガガンが進み出てきて、俺と固く握手した。

「大して力にはなれなかったが……。またいつでも呼んでくれ! お前はオレの大恩人だからな! まだまだ恩は返し足りない」

「はい! セブンセンスにとって、マナビさんは救世主なのですから。遠く離れた同じ教えを持つ人々との繋がりを作ってくれて、さらに神々の帰還を助けてくれた。どうかまた、セブンセンスを訪れてください。大歓迎します。それと……」

 アリスティアがガガンに目配せした。
 ガガンがちょっと照れながらうなずく。

「次にお前に会ったときには、俺も父親になっている……つもりだ! 頑張るからな!」

「おう、頑張れ!!」

 ガガンの拳をペチペチ叩いた俺である。
 平和な世界になったのだ。
 やっぱ、産めよ増やせよだよな。

 こうして彼らも去っていった。
 で、オクタゴンたちもヌルっと帰っていった。
 ナルカは残った。

 当然だよな。
 うちの奥さんだし。

 あっ、ちなみにその夜はナルカと一晩たっぷり励みました。
 第二回ともなると慣れていて、六回戦いけた。
 ナルカも精根尽き果てて爆睡してしまったなあ。

 俺も流石に疲れた。

「マナビさん。スリッピーのご婦人方が、お腹に赤ちゃんがいてもできる方法というのがあると教えてくれたんですが」

「ほうほう、どういう?」

「お尻を……」

「アーッ。ご婦人方、なんてアブノーマルなエッチを可愛いルミイに教えるんだ。えっ、ルミイさんいけるんですか」

「やってみようじゃないですか!」

 ということで、俺たちの挑戦の日々は続くのだ。
 そんなこんなで緩く毎日を暮らしていたら、スリッピー・シクスゼクス間の会談の場所と日程が決定した。

 場所は国境線。
 そこに特設テントを作って、日取りは三日後。

 スリッピー帝国の魔導王対策本部は解体されたが、そのままここは国軍の総司令部として使われていた。
 俺も相談役としてアカネルとともにちょいちょい顔出しするが、みんながバタバタ忙しそうにしているのが分かる。

「そんな必死に準備なんかしなくても」

 俺が言うと、向こうの幹部の一人が苦笑いした。

「いや、そうは仰いますがマナビ名誉相談役。あなた方のような超人と違って、我々は凡人なのです。魔族は恐ろしい存在ですし、千年前からの不倶戴天の敵なのですよ」

「あ、そうか、そういうものだったっけ」

 ハッとする俺なのだった。
 魔族よりも遥かに強大な異世界召喚者とか神々と戦ってきたので、麻痺していたようだ。

「そうですね。魔族の平均的な戦闘能力は、人間三人分と言われています。ですから数は少なくても恐ろしい脅威になります。普通は」

「じゃあ、ナルカとかカオルンがいるとどうなるの」

「魔族がいくらいても物の数ではなくなりますね」

「なんということか」

 俺に人間側の恐怖や焦りが理解できるはずもなかった。
 なるほど、そりゃあシクスゼクスを滅ぼしたがるよな。

 だが、魔界神バリオスの気持ちも大変よく分かる。
 個体が強くても絶対数に劣る魔族は、減らされ過ぎるともう再生が困難になるのだ。
 どうにかして生き延びたいということであろう。

 バリオスの後押しがあったとは言え、会談に応じたのはその証拠である。

「マナビ名誉相談役、人間は弱いのです。だから備えたいし、可能であればあの脅威を排除したかった。それが叶わなくなってしまうことが、今後どんな禍根をもたらすか……」

 幹部氏が恨み言を言ってきたぞ。

「だが教授は強いだろ」

「あ、あの人は例外中の例外ですから」

「それに人間、そうやって脅威を排除したら何を始める? 平和に、記憶を消されてたフォーホースみたいにまったりと発展をやめて過ごすか? できないだろスリッピーは。絶対争う。魔族がいなくなったら、次は身内でだ。んで、腐敗する。俺はこのスタイル、よく知ってるぞ。お前だって知ってるはずだ」

「な、なんですと」

「お前らが次の魔法帝国になるんだよ。外敵がいなくなって発展し続ける単一勢力なんぞ、腐るに決まってる。で、バーバリアンを排除したり隷属させたり、モンスターを絶滅させたり、果ては身内で争い出す。俺は詳しくないが、何故かこれだけは断言できる」

「に、人間はそこまで」

「そこまで愚かに決まってるだろう。なので適度な緊張感は必要なの。ま、俺はスススス連合軍の解体に成功したから、この会談が終わったらフィフスエレ帝国改め、バルガイヤー森王国に戻るけどな」

 フィフスエレは、蛮神の名を冠した、人とエルフが収める王国に生まれ変わりつつあるのである。
 俺はそこで王の補佐をすることになる。
 で、王は誰になるんだ。

 まあ、ルミイパパのバルクだろうなあ。
 あいつが引退するなら、双子のどっちかだ。

 俺が空想していると、何故か横で、不敵に笑うアカネルなのだった。
 なんだ、何か俺の知らぬことを知っている風じゃないか……!
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