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13・若き冒険者たちのピンチ
第35話 助けに来たぞ
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コボルドは疲れていたようで、腹が膨れるとへそ天してぐうぐう寝てしまった。
無防備な犬のようだ。
「ナザル、なんつうかお前は変なのを寄せ付ける魅力があるな。リップルさんとか、永遠に年を取らないギルマスの奥方とか、コボルドとか」
「最後でいきなり嬉しくなくなったな。いや、リップルも今はそんなに嬉しくない……」
「長年連れ添った夫婦みたいなもんか」
「違うぞ!?」
思わず声を大きくしたら、寝ているコボルドがビクッと動いた。
いかんいかん。
犬が寝るのを邪魔してはいけない。
僕は先に寝かせてもらうことにする。
天幕の下で、大の字になって寝る。
日暮れから夜半過ぎまで寝て、そこからは火の番。
で、バンキンが夜半過ぎから朝まで眠れる。
これで六時間ずつくらい寝れるので、かなり疲れは取れるのだ。
なお、普段の僕らは町で八時間はたっぷり寝ている。
夢を見た。
前世で頑張りすぎたかぶっ倒れ、死ぬほど苦しい中で助けは来ず、ああ、なんか他人の尻を拭いてばかりで損な生き方で最後はひでえ終わり方だった、次に生まれ変わる時は好き勝手に生きたい……なんて考えながら意識が遠くなっていく夢。
で、突然呼吸が楽になったと思ったら。
僕の口から、「おぎゃあー!」なんて泣き声が出て、死ぬほど眩しくて目を開けてられなかった記憶がある。
シームレスに転生したよなあ。
死んで次の瞬間には生まれてた。
不思議だ。
不思議だ不思議だ、と思っていたら、ハッと目覚めた。
「おう! 起こしに行こうかと思ったら目覚めたか! 俺もいい加減眠くなってきてたところだ。ふぉああああ」
バンキンが大あくびをした。
「よし、選手交代。寝ろ寝ろ」
「そうさせてもらうぜ……」
バンキンの大きな体が天幕に潜り込んでいった。
僕は焚き火の前に移動する。
すると、コボルドがムクッと起き上がった。
あくびをしている。
「お前さんも目覚めたか。よく寝たか?」
コクリとコボルドは頷く。
「仲間、たくさん殺されてから。たくさん寝たのはじめて」
「なんだ、お前さんの仲間は誰かにやられたのか」
「やられた。人間」
「そうかあ……。モンスターと見れば殺してしまうような人間も多いからな」
「恐ろしかった。人間、あっちから来た」
指差す方向は、ファイブスターズへ向かう谷の道。
さては、都市国家郡はほうぼうに兵士を走らせており、それとコボルドの群れは衝突したのだな。
戦闘力に劣るコボルドでは、武装した兵士に勝てるはずもない。
命からがら逃げ出したというわけか。
彼の身の上を聞き、どうやら行く場所が無いらしいということも確認した。
コボルドは人間とは価値観の違う種族だが、実は共生が可能である。
群れから離れた彼らは、他の種族の従士となる場合が多いのだ。
まさに、パートナーとしての犬だな。
神話学的には、コボルドは犬が人となった種族であるとされている。
その割には、体に鱗が生えてたりするんだが。
あ、鱗は毛が変化したものだったっけ。
「よし、じゃあ今回の仕事は君に協力してもらい、その報酬として食事と今後の身の振り方の世話をしてやろう」
「かたじけない」
コボルドがぺこりと礼をした。
群れである彼らは群れの意思に従う。
だが、今は個である彼は、自らの生存のための手段を自力で模索せねばならない。
僕とともにあることが、一番生存率が高いと思ったのだろう。
「人間の名付けをしてほしい」
「そっか、コボルドの名前は僕らには発音できないんだったね。そうだな。じゃあ呼び名は……。焦げ茶色の毛並みだから、コゲタでどうだ」
「分かった。コゲタだ。コゲタはそう名乗る」
コボルドのコゲタが頷いた。
なんと意思疎通しやすいんだろう。
感情表現がシンプルなぶん、面倒な人間相手よりもよほど楽だ。
その後、彼が知っている人間の勢力の話などを詳しく聞いた。
なるほどなるほど……。
間違いなく、都市国家の兵士だ。
武装はアーランの騎士よりは簡素で、それでもカッパー級の冒険者よりは優れている。
実力の程は、コボルドの群れを撃破するのはカッパー級パーティでも可能だからよく分からないな。
実際にやり合ってみないとだが、下手に交戦して国際問題になるのも良くない。
僕が注目されるからだ。
「つまり……影から襲うしかないな」
「ご主人」
コゲタは僕をご主人と呼ぶことにしたらしい。
「ご主人、悪い笑い方をしている。コゲタ、人間の表情わからない。でもわかる」
分かってしまうか……。
ということで。
僕らはバンキンの目覚めを待ち、朝食をとって出発することにする。
夜の間は、誰も襲っては来なかった。
ひょっとすると、遠距離から焚き火を見られていた可能性もある。
慎重に慎重に行こうじゃないか。
「ご主人」
コゲタが声を発した。
「風上から人間のにおい。コゲタの群れを襲ったのとは違う人間? 同じ人間混じってる。多い。人間たくさん。混じってる。ご主人と大きい人のにおい近い、人間」
「なんて言ってるんだ?」
バンキンが首を傾げた。
「簡単さ。都市国家郡の兵士たちがいて、そこにうちの冒険者が捕まってるってことだよ」
「ああ、なるほど! それで俺等に近いにおいか! よし、じゃあ助けに行くか」
「行こうか。コゲタ、影に隠れてて」
「ワオン! わかった。きをつけてご主人」
「うんうん、絶対生きて帰って君を新しい住処に斡旋してやるからな」
僕は犬は大事にするのだ。
こうして、僕とバンキンはのしのしと歩いていく。
途中、僕は岩場の影に油を走らせ、いつでもそこを滑って移動できるように準備しておく。
バンキンもフレームだけの盾を構え……。
「何者だ!! 止まれ!!」
向こうから、僕らを呼び止める声がした。
都市国家郡の兵士、およそ十人。
そしてその前で、縛られて歩かされている冒険者の若者が四人。
フルメンバーで生き残っていたか。
これは良かった!
「助けるぞバンキン」
「当たり前だ。搦め手は任せるぞナザル。新人どもを死なせるなよ」
「そっちは任せてくれ」
さて、国家間の問題にならないよう、この状況を片付けねばだ。
無防備な犬のようだ。
「ナザル、なんつうかお前は変なのを寄せ付ける魅力があるな。リップルさんとか、永遠に年を取らないギルマスの奥方とか、コボルドとか」
「最後でいきなり嬉しくなくなったな。いや、リップルも今はそんなに嬉しくない……」
「長年連れ添った夫婦みたいなもんか」
「違うぞ!?」
思わず声を大きくしたら、寝ているコボルドがビクッと動いた。
いかんいかん。
犬が寝るのを邪魔してはいけない。
僕は先に寝かせてもらうことにする。
天幕の下で、大の字になって寝る。
日暮れから夜半過ぎまで寝て、そこからは火の番。
で、バンキンが夜半過ぎから朝まで眠れる。
これで六時間ずつくらい寝れるので、かなり疲れは取れるのだ。
なお、普段の僕らは町で八時間はたっぷり寝ている。
夢を見た。
前世で頑張りすぎたかぶっ倒れ、死ぬほど苦しい中で助けは来ず、ああ、なんか他人の尻を拭いてばかりで損な生き方で最後はひでえ終わり方だった、次に生まれ変わる時は好き勝手に生きたい……なんて考えながら意識が遠くなっていく夢。
で、突然呼吸が楽になったと思ったら。
僕の口から、「おぎゃあー!」なんて泣き声が出て、死ぬほど眩しくて目を開けてられなかった記憶がある。
シームレスに転生したよなあ。
死んで次の瞬間には生まれてた。
不思議だ。
不思議だ不思議だ、と思っていたら、ハッと目覚めた。
「おう! 起こしに行こうかと思ったら目覚めたか! 俺もいい加減眠くなってきてたところだ。ふぉああああ」
バンキンが大あくびをした。
「よし、選手交代。寝ろ寝ろ」
「そうさせてもらうぜ……」
バンキンの大きな体が天幕に潜り込んでいった。
僕は焚き火の前に移動する。
すると、コボルドがムクッと起き上がった。
あくびをしている。
「お前さんも目覚めたか。よく寝たか?」
コクリとコボルドは頷く。
「仲間、たくさん殺されてから。たくさん寝たのはじめて」
「なんだ、お前さんの仲間は誰かにやられたのか」
「やられた。人間」
「そうかあ……。モンスターと見れば殺してしまうような人間も多いからな」
「恐ろしかった。人間、あっちから来た」
指差す方向は、ファイブスターズへ向かう谷の道。
さては、都市国家郡はほうぼうに兵士を走らせており、それとコボルドの群れは衝突したのだな。
戦闘力に劣るコボルドでは、武装した兵士に勝てるはずもない。
命からがら逃げ出したというわけか。
彼の身の上を聞き、どうやら行く場所が無いらしいということも確認した。
コボルドは人間とは価値観の違う種族だが、実は共生が可能である。
群れから離れた彼らは、他の種族の従士となる場合が多いのだ。
まさに、パートナーとしての犬だな。
神話学的には、コボルドは犬が人となった種族であるとされている。
その割には、体に鱗が生えてたりするんだが。
あ、鱗は毛が変化したものだったっけ。
「よし、じゃあ今回の仕事は君に協力してもらい、その報酬として食事と今後の身の振り方の世話をしてやろう」
「かたじけない」
コボルドがぺこりと礼をした。
群れである彼らは群れの意思に従う。
だが、今は個である彼は、自らの生存のための手段を自力で模索せねばならない。
僕とともにあることが、一番生存率が高いと思ったのだろう。
「人間の名付けをしてほしい」
「そっか、コボルドの名前は僕らには発音できないんだったね。そうだな。じゃあ呼び名は……。焦げ茶色の毛並みだから、コゲタでどうだ」
「分かった。コゲタだ。コゲタはそう名乗る」
コボルドのコゲタが頷いた。
なんと意思疎通しやすいんだろう。
感情表現がシンプルなぶん、面倒な人間相手よりもよほど楽だ。
その後、彼が知っている人間の勢力の話などを詳しく聞いた。
なるほどなるほど……。
間違いなく、都市国家の兵士だ。
武装はアーランの騎士よりは簡素で、それでもカッパー級の冒険者よりは優れている。
実力の程は、コボルドの群れを撃破するのはカッパー級パーティでも可能だからよく分からないな。
実際にやり合ってみないとだが、下手に交戦して国際問題になるのも良くない。
僕が注目されるからだ。
「つまり……影から襲うしかないな」
「ご主人」
コゲタは僕をご主人と呼ぶことにしたらしい。
「ご主人、悪い笑い方をしている。コゲタ、人間の表情わからない。でもわかる」
分かってしまうか……。
ということで。
僕らはバンキンの目覚めを待ち、朝食をとって出発することにする。
夜の間は、誰も襲っては来なかった。
ひょっとすると、遠距離から焚き火を見られていた可能性もある。
慎重に慎重に行こうじゃないか。
「ご主人」
コゲタが声を発した。
「風上から人間のにおい。コゲタの群れを襲ったのとは違う人間? 同じ人間混じってる。多い。人間たくさん。混じってる。ご主人と大きい人のにおい近い、人間」
「なんて言ってるんだ?」
バンキンが首を傾げた。
「簡単さ。都市国家郡の兵士たちがいて、そこにうちの冒険者が捕まってるってことだよ」
「ああ、なるほど! それで俺等に近いにおいか! よし、じゃあ助けに行くか」
「行こうか。コゲタ、影に隠れてて」
「ワオン! わかった。きをつけてご主人」
「うんうん、絶対生きて帰って君を新しい住処に斡旋してやるからな」
僕は犬は大事にするのだ。
こうして、僕とバンキンはのしのしと歩いていく。
途中、僕は岩場の影に油を走らせ、いつでもそこを滑って移動できるように準備しておく。
バンキンもフレームだけの盾を構え……。
「何者だ!! 止まれ!!」
向こうから、僕らを呼び止める声がした。
都市国家郡の兵士、およそ十人。
そしてその前で、縛られて歩かされている冒険者の若者が四人。
フルメンバーで生き残っていたか。
これは良かった!
「助けるぞバンキン」
「当たり前だ。搦め手は任せるぞナザル。新人どもを死なせるなよ」
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