俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
258 / 337
84・カズテスの遺跡

第258話 知識神、枕に立つ

しおりを挟む
 船はカズテスの島を発つ。
 もりもりと遠ざかっていくのだ。

 船員たちのテンションが高い。

「うおおおおまたアーランで遊ぶぞおおおおお」「一ヶ月も娯楽がない島で死ぬかと思ったぜ!!」「あの島、いいところなんだけどお姉ちゃんのいるお店もないし」「飯も質素なものしかないからなあ」「外で寝転がってても風邪引かないくらい温かいのはいいけどよお」

 まだ若い船員たちには退屈なことでしょう。
 あの島、老後に住もうと思ったら理想郷なんだよな。
 消化に良いものしかないし。

「いいところだったねえ」

 ほら、リップルが懐かしんでる!
 ハーフエルフとしての寿命を考えるとまだ折り返し地点のはずだが、ずっと人間社会で生きてきたので精神年齢はおばあちゃんなのではないだろうか。

 その足元で、マルチーズのハムソンがトテトテと走り回っていた。
 元気元気。

「うおーっ! うおーっ! うおーっ! これがおふね! えいぞうでみたことしかなかった! おふね! みずのうえをすすんでる! おふねーっ!」

「こらーっ! あぶないでしょー!」

 コゲタがハムソンを追いかける。
 年長者ムーブをするコゲタ、初めて見たな!

 そんな二人のコボルドを、船員たちがほっこりしながら眺めているのだ。

「可愛いが二倍になっちまったな」「癒やされる~」「マキシフは可愛いと言うよりは頼れる仲間だからなあ」

 そうだったな。
 船にはコボルドの船員もいたんだった。

 ということで、再びの船旅だ。
 お米は俵に詰めて、幾つも船底に積んである。
 それから苗にするための米も。

 ジャポニカ米とインディカ米が揃っているぞ。
 いやあ、これを育てるのが楽しみだなあ……。

「ご主人、にこにこしてる?」

「うわーはなせー」

 コゲタがハムソンをヘッドロックしながらやって来た。
 既に先輩として若輩者を分からせているのか。

「うんうん、アーランでお米を育てられるのが今から楽しみでね……!!」

「あー、コゲタもたのしみ! ご主人のごはんおいしいもんねー!」

 コゲタにっこにこだ。
 うんうん、コゲタのためにも、美味しい食事を作らなきゃな。

 では、帰ったらまず何を作る?
 知れたことである。

 カレーライスだ。

 カレールーがあるのに、ライスだけが無かったのだ。
 ギルボウの店でカレーライスを作ろう。
 それから殿下にご馳走しよう。

 資金を潤沢に注ぎ込んで、第四層を水田にしよう。
 大々的に米を育てるのだ。

 作業員も募集しないとな……。
 ここで僕はハッと気づく。

「米の育成方法!! 聞き忘れたーっ!! しまったな。こうなれば……困った時の知識神だ」

「ナザル、君は最近ちょっと短絡的になっているのではないかな……? 試行錯誤こそ知識神が望むものだったりしない?」

「うんうん言うことは最もなんだが、僕は生き急いでいるんだ。一刻も早くみんながカレーライスを食えるようにしたい!! そのためなら神にやり方を聞くというチート行為にも喜んで手を染めよう!!」

 ということで昼寝だ。
 早速客室まで急ぎ、ハンモックにスポーンと入って寝た。

 どうやら旅で体が疲れていたようで、すぐに眠ってしまったのだった。
 船の揺れとハンモックの揺れが、僕を深く深く眠りの世界へと誘ってくれる……。

 おお、もう夢の中だ。
 星空がどこまでも広がる世界。
 宇宙か?

 そこをふわふわと浮かんでいく。
 その先に、光り輝くものがあった。
 とんでもない大きさの樹だ。

 いや、光が樹の輪郭をかたどっていると言うべきか。

 この樹が見えたということは……。

『そう! 私だ! いかんぞナザル、気軽に私に頼っては。神は基本的に、みだりに人前に姿を現さないし助言をしたりも謎めいた感じで分かりづらくやるものなのだ』

「お、おまいう~」

『私は自由に助言をしたり地上に降臨したりしてもいいのだ。だって神だから』

「自由過ぎませんか知識神様。自由神のお株を奪っている」

『私がこうして自由に振る舞うことで、フリーダスが中途半端な自由を行使できなくしているのだよ。自由を司る神ならば、私よりももっと自由に振る舞うのだろう? さあ見せてくれ、どれくらい自由なんだ? というね』

「自由のハードルを上げていた!! なるほど、策でしたか」

『策半分、テンション上がってやらかし半分というところだ……。神々の集会が今度あるのだが、私に対して自重するように決議が出る予定らしい』

「あっ、やりすぎた……! 今このタイミングで夢枕をお願いしたのは正解でしたね」

『悔しいことに大正解だ。この機会を逃せば、私はまた百年ばかり神々の世界に行って降臨しないからな』

「やっぱりまずかったんですよあれは。宿の一角に神殿作ってそこに常駐する神様なんか聞いたこと無い」

『正直反省している。それで私に聞きたいこととはなんだ? 今、集会での答弁を考えていてお前の内心に注目できていないのだ』

 神様も大変だ。
 いや、身から出たサビなんだが。

「実はですね、ついに米を手に入れましたので」

『おお、つまり栽培の方法だな! いいだろう。お前の脳に直接流し込んでもいいのだが、こういうものはやはりレシピになっているのがいいだろう。ちょうどカズテスの遺跡でデータが集まっていたから、スケアクロウたちに書き写させているぞ。お前がアーランについた頃には製本して届けよう』

「ありがとうございます。思った以上に凄く至れり尽くせりだった……」

 そう言えば、知識神はカズテスと繋がりがあったりするんだろうか?
 聞いてみようと思ったら、神は忙しそうに遠ざかっていくところだったのである。

 相変わらず嵐のようなお方だ。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~

志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。 そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!? 個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!? これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥ 小説家になろうでも掲載しております。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

処理中です...