259 / 337
85・カレーライス誕生?
第259話 アーランよ、僕は帰ってきた!
しおりを挟む
船の旅はのんびりだった。
米が手に入ったので、僕は船員たちに漬け丼などを振る舞った。
生魚はちょっと……と抵抗を見せた船員たちだったが……。
「よく見るんだ。こうして塩っ辛いタレの中にずーっと漬け込んでおく。そうすると、魚の肉の中にまでこの塩辛さが染み込んでだな……。耐えられなくなった寄生虫が浮いてくる。というかこいつらも浸透圧で死ぬ!! ただのタンパク質だよ」
「恐ろしいお人だ……!!」「そうか、生魚はこうやって食えるようになるのか!」
高濃度食塩水は体についた寄生虫を取る効果があるからね。
ここで使用したのは船に積載されていた魚醤だ。
それを煮詰めてむちゃくちゃに塩辛くしてある。
「だがよナザルさん、こんなに塩辛いんじゃ食えたもんじゃないぜ」「そうだそうだ」「ビスケットじゃ受け止めきれねえ」
「任せてくれ。そのための米だ! 厨房係くん、炊き終わったかな?」
「へい! もうバッチリです! うわーっ、ナザルさんの言う通り炊いたら、こんなふっくらと炊きあがるのか! 最後に蒸らすんですねえ!」
ちょっと胚芽が混じっているとは言え、白い米がみちみちになった鍋を見て、他の船員たちもどよめいた。
「オー!」「なんだあれは!!」「俺達が食った米じゃねえ!!」「い、いや落ち着け!」「米なんか味がしなかったじゃねえか」
「ハハハハハ、それは君たち、米の真価を知らなかったんだ。こいつを皿に盛るだろう。そこに、この塩辛い魚醤タレに漬けた刺し身をこう並べていく……」
「あっ、タ、タレが白い飯に染み込んでいく!」「なんだ!? 妙に美味そうな気がしてくる……」「だが、真っ白に炊けた飯はどう食うんだ?」
「模範演技をみせてやろう! こうだ!!」
僕はフォークを使ってむしゃあっ!!と飯を食った。
塩辛い刺身ごとだ!
うんうん、本当なら醤油を使うべきなのだろうが、魚醤でも十分に美味い。
ファイブショーナンの魚醤はなんというか癖がなくて食べやすいな。
「まあ漬け丼と言っていいだろう。美味いぞ……!」
「あ、あんたほどの男がそう言うなら……」「食べる気か!?」「勇者だ!!」
一人の船員が進み出て、僕の真似をして米にガっとフォークを突き立てた。
「うおっ! 一気に掬える! すげえ粘りだぞ! これを魚といっしょに……」
ムシャアッと食べた船員は、もぐもぐやるうちに目の色が変わってきた。
「おっ、おっ、おぉっ!? う、美味いんじゃないかこれ!? 味が無い米が塩辛い魚をちょうどよく受け止めてて食べやすくなってる! それに……噛むとしょっぱくなっていた米が……甘い!?」
出たな食レポ。
これが知識神の加護であることはよく分かっているんだ。
仲間からの思わぬ好評を聞き、船員たちが我も我もと漬け丼に群がった!
「あっ、普通に美味い!」「生の魚でこんなに美味くなるのか!?」「未知と未知が組み合わさった未知の料理なのになんか食える!!」
そうだろうそうだろう。
僕は漬け丼をこの船に伝授した。
寄生虫は根気よく取り除く。そうすれば刺身も食えるようになる。
川魚よりは全然少ないしな。
ただし、まだ冷凍技術が普及してないからイカとかサケはやめておくんだぞ。
船員たちは競って様々な魚を釣り上げる。
これをみんなで捌く。
そして漬け丼にして食う。
何が美味いか、これは漬けに合う、こっちは漬けに合わない……などなど、知見が溜まっていったぞ。
あっという間にこの船の船員たちは、この世界で二番目に漬け丼に詳しくなった。
なお、この塩分の量でも大丈夫なのは常に労働し、汗をかくためだ。
地上で提供するなら、もう少し減塩しないとな……。
僕が広めるグルメは全て諸刃の刃である。
健康な運動習慣が無い限り、もれなく生活習慣病へといざなう。
美食とは厳しいものなのだ……!!
なお、漬け関係はコボルドにはちょっと塩分が多すぎるので、魚醤少なめの漬け丼を出すのだった。
「おおーっ! もちもちのおこめはじめてー!!」
ハムソンがむしゃむしゃむしゃーっと食べ、コゲタがそれを見て、ちょっと上品な感じで食べている。
年上の威厳を見せつけている!
なお、マキシフは他の船員たち同様、豪快に飯を食う。
「どう?」
「美味しいですね! 僕らコボルドは生肉も食べますが、その欲を存分に満たしてくれます。これは満腹度以上に、僕らの心を満たしてくれている気がします」
「頭のいい食レポだ!」
なお、漬け丼は脂っこくないのでリップルにも好評であった。
そしてダイフク氏は生魚をそのまま呑んだ。
「喉越しの人め」
「ハハハ、様々な喉越しが日々味わえて楽しいですぞ」
帰りの船は、すっかりあらゆる魚を漬けにする旅になってしまったな。
とても楽しく、そしてお米を堪能できた。
そして行きよりもずっと早い体感で、僕らは帰ってきたのである。
「アーランだー! アーランが見えるぞー!!」
銅鑼がジャーンジャーンジャーン!と鳴る。
舳先の向こう、水平線近くに見えたのは、周囲よりも盛り上がった遺跡の姿。
その上にあるのがアーランだ。
懐かしきホームタウン!
僕は帰ってきたぞ!
米が手に入ったので、僕は船員たちに漬け丼などを振る舞った。
生魚はちょっと……と抵抗を見せた船員たちだったが……。
「よく見るんだ。こうして塩っ辛いタレの中にずーっと漬け込んでおく。そうすると、魚の肉の中にまでこの塩辛さが染み込んでだな……。耐えられなくなった寄生虫が浮いてくる。というかこいつらも浸透圧で死ぬ!! ただのタンパク質だよ」
「恐ろしいお人だ……!!」「そうか、生魚はこうやって食えるようになるのか!」
高濃度食塩水は体についた寄生虫を取る効果があるからね。
ここで使用したのは船に積載されていた魚醤だ。
それを煮詰めてむちゃくちゃに塩辛くしてある。
「だがよナザルさん、こんなに塩辛いんじゃ食えたもんじゃないぜ」「そうだそうだ」「ビスケットじゃ受け止めきれねえ」
「任せてくれ。そのための米だ! 厨房係くん、炊き終わったかな?」
「へい! もうバッチリです! うわーっ、ナザルさんの言う通り炊いたら、こんなふっくらと炊きあがるのか! 最後に蒸らすんですねえ!」
ちょっと胚芽が混じっているとは言え、白い米がみちみちになった鍋を見て、他の船員たちもどよめいた。
「オー!」「なんだあれは!!」「俺達が食った米じゃねえ!!」「い、いや落ち着け!」「米なんか味がしなかったじゃねえか」
「ハハハハハ、それは君たち、米の真価を知らなかったんだ。こいつを皿に盛るだろう。そこに、この塩辛い魚醤タレに漬けた刺し身をこう並べていく……」
「あっ、タ、タレが白い飯に染み込んでいく!」「なんだ!? 妙に美味そうな気がしてくる……」「だが、真っ白に炊けた飯はどう食うんだ?」
「模範演技をみせてやろう! こうだ!!」
僕はフォークを使ってむしゃあっ!!と飯を食った。
塩辛い刺身ごとだ!
うんうん、本当なら醤油を使うべきなのだろうが、魚醤でも十分に美味い。
ファイブショーナンの魚醤はなんというか癖がなくて食べやすいな。
「まあ漬け丼と言っていいだろう。美味いぞ……!」
「あ、あんたほどの男がそう言うなら……」「食べる気か!?」「勇者だ!!」
一人の船員が進み出て、僕の真似をして米にガっとフォークを突き立てた。
「うおっ! 一気に掬える! すげえ粘りだぞ! これを魚といっしょに……」
ムシャアッと食べた船員は、もぐもぐやるうちに目の色が変わってきた。
「おっ、おっ、おぉっ!? う、美味いんじゃないかこれ!? 味が無い米が塩辛い魚をちょうどよく受け止めてて食べやすくなってる! それに……噛むとしょっぱくなっていた米が……甘い!?」
出たな食レポ。
これが知識神の加護であることはよく分かっているんだ。
仲間からの思わぬ好評を聞き、船員たちが我も我もと漬け丼に群がった!
「あっ、普通に美味い!」「生の魚でこんなに美味くなるのか!?」「未知と未知が組み合わさった未知の料理なのになんか食える!!」
そうだろうそうだろう。
僕は漬け丼をこの船に伝授した。
寄生虫は根気よく取り除く。そうすれば刺身も食えるようになる。
川魚よりは全然少ないしな。
ただし、まだ冷凍技術が普及してないからイカとかサケはやめておくんだぞ。
船員たちは競って様々な魚を釣り上げる。
これをみんなで捌く。
そして漬け丼にして食う。
何が美味いか、これは漬けに合う、こっちは漬けに合わない……などなど、知見が溜まっていったぞ。
あっという間にこの船の船員たちは、この世界で二番目に漬け丼に詳しくなった。
なお、この塩分の量でも大丈夫なのは常に労働し、汗をかくためだ。
地上で提供するなら、もう少し減塩しないとな……。
僕が広めるグルメは全て諸刃の刃である。
健康な運動習慣が無い限り、もれなく生活習慣病へといざなう。
美食とは厳しいものなのだ……!!
なお、漬け関係はコボルドにはちょっと塩分が多すぎるので、魚醤少なめの漬け丼を出すのだった。
「おおーっ! もちもちのおこめはじめてー!!」
ハムソンがむしゃむしゃむしゃーっと食べ、コゲタがそれを見て、ちょっと上品な感じで食べている。
年上の威厳を見せつけている!
なお、マキシフは他の船員たち同様、豪快に飯を食う。
「どう?」
「美味しいですね! 僕らコボルドは生肉も食べますが、その欲を存分に満たしてくれます。これは満腹度以上に、僕らの心を満たしてくれている気がします」
「頭のいい食レポだ!」
なお、漬け丼は脂っこくないのでリップルにも好評であった。
そしてダイフク氏は生魚をそのまま呑んだ。
「喉越しの人め」
「ハハハ、様々な喉越しが日々味わえて楽しいですぞ」
帰りの船は、すっかりあらゆる魚を漬けにする旅になってしまったな。
とても楽しく、そしてお米を堪能できた。
そして行きよりもずっと早い体感で、僕らは帰ってきたのである。
「アーランだー! アーランが見えるぞー!!」
銅鑼がジャーンジャーンジャーン!と鳴る。
舳先の向こう、水平線近くに見えたのは、周囲よりも盛り上がった遺跡の姿。
その上にあるのがアーランだ。
懐かしきホームタウン!
僕は帰ってきたぞ!
22
あなたにおすすめの小説
【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~
うみ
ファンタジー
恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。
いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。
モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。
そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。
モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。
その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。
稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。
『箱を開けるモ』
「餌は待てと言ってるだろうに」
とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる