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100・二世誕生
第306話 許嫁だぞカル!
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考えてみれば、初めてシャザクの家を訪れるのである。
貴族街にあると聞いていたが、どんなのだろうか。
アーランの貴族たちは、貴族街に屋敷を構えている。
ここを本邸とし、近隣の領土まで時々出張するのだ。
貴族の数は全部で二十人。
一番上が侯爵で二人、次が伯爵で美食伯たる僕を入れて五人、そして子爵が六人で、ここにシャザクと騎士団長たるフォーエイブル子爵がいる。で、最後に男爵が九人。
準男爵とか騎士爵みたいな一代貴族は含まないものとする。
このうち、領土を持っている貴族が僕を含めて五名。
他は官僚貴族なわけだね。
位が上がっても、土地がなければそこから税を取ることはできない。
つまり実入りは国からもらう給料ということになる。
官僚である。
シャザクはその官僚貴族であり、デュオス殿下こと公爵家の使いを務めている。
おっ、家があったあった。
庭の広いお屋敷だな。
庭師のじいさんが、木々の葉をちょきちょきやっている。
その他には、メイドみたいなのが一人、パタパタ走り回ってる感じか。
家の大きさから見るに……。
6LDKくらい?
平屋で一つ一つの部屋は広そう。
でも、貴族の邸宅という感じではない。
塀は鉄格子のようになっており、こちらから庭を覗けるが中には入れない。
そして門は固く閉ざされていた。
見た感じ、門番もいないもんな。
ひょっとすると、庭師のじいさんとメイドの人の二人しか使用人がいないんじゃないか。
あり得る……。
僕は扉に付けられたノッカーをガンガン鳴らした。
「はーいー」
メイドの人がのぞき窓をちょろっと開けた。
「あら! そのお姿は、御主人様がよく話をしてらっしゃるボルドスキー美食伯ではございませんか! お一人で?」
「ああ。僕の家に常駐してる使用人はいないからね」
門番などの守りも不要。
夫婦の戦闘力が突出しているからだ。
「シャザクいる?」
「御主人様はお出かけしておられますが、今日はちょっとした用事だそうなのですぐにお戻りになられるかと。中で待たれますか? 奥様がおいでですが」
「じゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
ということで入れてもらった。
アーランで唯一無二の風貌は、こう言う時に役立つなあ。
金髪に褐色の肌、緑の瞳をした者は他にいないからね。
僕がメイド氏に案内されて屋敷の中に入ると、庭に面したテラスで椅子に腰掛けている女性がいた。
お腹が大きい。
どうやら、赤ちゃんの服を編んでいるようだ。
「あらあら、意外なお客様ですね」
彼女は僕に気づくと、複雑そうな顔をした。
エリィである。
元、ギルドの受付嬢。
事ある毎に、僕を狙っていた肉食系女子だ。
だが、家族の薦めでシャザクとお見合いし、見事成婚。
お腹の中にいる子が女の子だと、リップルが魔法で看破したので今は女児向けの服を編んでいるところだ。
「ああ。大事な話をするつもりで来たんだよ。お腹大きくなったねー」
「ええ、お陰様で。もうすぐ生まれます」
そこだけは嬉しそうに、エリィはお腹を優しく撫でた。
「うちも子どもが生まれてさ、息子で」
「聞いていますよー。今や飛ぶ鳥落とす勢いの美食伯ともなれば、カルボナル様を放っておいてくれる貴族なんていないでしょう」
「全くその通り。昨夜と今朝に貴族たちから縁談が来た。全部蹴った」
「まあ!」
エリィは目を丸くした後、くすくす笑った。
「ナザルさんらしい。権力に気を使うけれど、その気になれば盾突きますもんね」
「そこら辺は僕の気分次第だからね……。そして今や権力も手に入れてしまった。堂々と真っ向から袖にできる」
「まあ怖い! 立ち話もなんですからそちらのソファにおかけになって下さい。お茶を淹れますから」
「奥様、私がやりますから」
「いいのいいの。こうやって意識して動かないと、すぐに足腰が弱くなってしまうんだから!」
エリィはパタパタ動いて、手慣れた感じでお茶を淹れてくれた。
そこに砂糖を二匙。
いい香りだ。
メイドさんが焼いたというクッキーと一緒にいただく。
うまいうまい。
そうこうしていたら、屋敷の主が帰ってきた。
「ただいま。客人かい?」
「あなた、ナザルさんよ。とっても大事な話を持ってきたんですって」
「なんだって!?」
エリィの声を聞いて、シャザクは上着を脱ぐ暇もなくバタバタやって来た。
「ナザル! いきなりの来訪だが、それで持って来る大事な話とはなんだ!? また美食関連か? 殿下はしばらく、ナザルは子育てに注力せよと仰られているが」
「うむ、子育て関係といえば子育て関係だ。シャザク、君んところの今度生まれるお嬢さんと、僕の家のカルボナルを許嫁にしないか?」
「えっ!? カルボナルくんとうちの子を!?」
「やっぱり! ねえあなた、素晴らしい提案だと思わない?」
エリィが目を輝かせる。
さすが大商人の娘。
これが得する取引だということが分かっているのだ。
子爵であるシャザクと、伯爵扱いである美食伯ナザル。
両家の婚姻関係は、地位的にシャザクが得をすることが多い。
「これは引き受けてもらっても?」
僕が問うと、シャザクはエリィと二人でぼそぼそ相談を始めた。
すぐに決着がつく。
「分かった! 二つの家で許嫁の関係を結ぼう!」
即断である。
エリィがガッツポーズをしている。
さすがたくましいなあ!
こうして、カルボナルの縁談問題は片付いたのであった。
貴族街にあると聞いていたが、どんなのだろうか。
アーランの貴族たちは、貴族街に屋敷を構えている。
ここを本邸とし、近隣の領土まで時々出張するのだ。
貴族の数は全部で二十人。
一番上が侯爵で二人、次が伯爵で美食伯たる僕を入れて五人、そして子爵が六人で、ここにシャザクと騎士団長たるフォーエイブル子爵がいる。で、最後に男爵が九人。
準男爵とか騎士爵みたいな一代貴族は含まないものとする。
このうち、領土を持っている貴族が僕を含めて五名。
他は官僚貴族なわけだね。
位が上がっても、土地がなければそこから税を取ることはできない。
つまり実入りは国からもらう給料ということになる。
官僚である。
シャザクはその官僚貴族であり、デュオス殿下こと公爵家の使いを務めている。
おっ、家があったあった。
庭の広いお屋敷だな。
庭師のじいさんが、木々の葉をちょきちょきやっている。
その他には、メイドみたいなのが一人、パタパタ走り回ってる感じか。
家の大きさから見るに……。
6LDKくらい?
平屋で一つ一つの部屋は広そう。
でも、貴族の邸宅という感じではない。
塀は鉄格子のようになっており、こちらから庭を覗けるが中には入れない。
そして門は固く閉ざされていた。
見た感じ、門番もいないもんな。
ひょっとすると、庭師のじいさんとメイドの人の二人しか使用人がいないんじゃないか。
あり得る……。
僕は扉に付けられたノッカーをガンガン鳴らした。
「はーいー」
メイドの人がのぞき窓をちょろっと開けた。
「あら! そのお姿は、御主人様がよく話をしてらっしゃるボルドスキー美食伯ではございませんか! お一人で?」
「ああ。僕の家に常駐してる使用人はいないからね」
門番などの守りも不要。
夫婦の戦闘力が突出しているからだ。
「シャザクいる?」
「御主人様はお出かけしておられますが、今日はちょっとした用事だそうなのですぐにお戻りになられるかと。中で待たれますか? 奥様がおいでですが」
「じゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
ということで入れてもらった。
アーランで唯一無二の風貌は、こう言う時に役立つなあ。
金髪に褐色の肌、緑の瞳をした者は他にいないからね。
僕がメイド氏に案内されて屋敷の中に入ると、庭に面したテラスで椅子に腰掛けている女性がいた。
お腹が大きい。
どうやら、赤ちゃんの服を編んでいるようだ。
「あらあら、意外なお客様ですね」
彼女は僕に気づくと、複雑そうな顔をした。
エリィである。
元、ギルドの受付嬢。
事ある毎に、僕を狙っていた肉食系女子だ。
だが、家族の薦めでシャザクとお見合いし、見事成婚。
お腹の中にいる子が女の子だと、リップルが魔法で看破したので今は女児向けの服を編んでいるところだ。
「ああ。大事な話をするつもりで来たんだよ。お腹大きくなったねー」
「ええ、お陰様で。もうすぐ生まれます」
そこだけは嬉しそうに、エリィはお腹を優しく撫でた。
「うちも子どもが生まれてさ、息子で」
「聞いていますよー。今や飛ぶ鳥落とす勢いの美食伯ともなれば、カルボナル様を放っておいてくれる貴族なんていないでしょう」
「全くその通り。昨夜と今朝に貴族たちから縁談が来た。全部蹴った」
「まあ!」
エリィは目を丸くした後、くすくす笑った。
「ナザルさんらしい。権力に気を使うけれど、その気になれば盾突きますもんね」
「そこら辺は僕の気分次第だからね……。そして今や権力も手に入れてしまった。堂々と真っ向から袖にできる」
「まあ怖い! 立ち話もなんですからそちらのソファにおかけになって下さい。お茶を淹れますから」
「奥様、私がやりますから」
「いいのいいの。こうやって意識して動かないと、すぐに足腰が弱くなってしまうんだから!」
エリィはパタパタ動いて、手慣れた感じでお茶を淹れてくれた。
そこに砂糖を二匙。
いい香りだ。
メイドさんが焼いたというクッキーと一緒にいただく。
うまいうまい。
そうこうしていたら、屋敷の主が帰ってきた。
「ただいま。客人かい?」
「あなた、ナザルさんよ。とっても大事な話を持ってきたんですって」
「なんだって!?」
エリィの声を聞いて、シャザクは上着を脱ぐ暇もなくバタバタやって来た。
「ナザル! いきなりの来訪だが、それで持って来る大事な話とはなんだ!? また美食関連か? 殿下はしばらく、ナザルは子育てに注力せよと仰られているが」
「うむ、子育て関係といえば子育て関係だ。シャザク、君んところの今度生まれるお嬢さんと、僕の家のカルボナルを許嫁にしないか?」
「えっ!? カルボナルくんとうちの子を!?」
「やっぱり! ねえあなた、素晴らしい提案だと思わない?」
エリィが目を輝かせる。
さすが大商人の娘。
これが得する取引だということが分かっているのだ。
子爵であるシャザクと、伯爵扱いである美食伯ナザル。
両家の婚姻関係は、地位的にシャザクが得をすることが多い。
「これは引き受けてもらっても?」
僕が問うと、シャザクはエリィと二人でぼそぼそ相談を始めた。
すぐに決着がつく。
「分かった! 二つの家で許嫁の関係を結ぼう!」
即断である。
エリィがガッツポーズをしている。
さすがたくましいなあ!
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