異世界ドM戦記 ~僕は美少女にどつかれて無双する~

あけちともあき

文字の大きさ
71 / 75
Mと最後の冒険編

第七十一話:ドMと歓楽の都と残念プリンセス

しおりを挟む
 旅をどんどん続ける。

「おっ、あんなところに廃墟があるぜ……。こいつはひでえ。まるで町が一つ隕石の雨に飲まれたみたいだぜ!!」

 御者担当の富田くんの言葉だ。
 うん、すまない。
 それは僕と新聞屋とエリザベッタ様がやった結果なんだ。
 反省はしていない。

「あっ、なんか懐かしいよね。ここでハリイとアミが初めてキスしたんだよね」

「えっ」「えっ」「えっ」「えっ」「……」「えっ」「えっ」

「ぎゃ、ぎゃわーっ!? な、なんでここでその話をぶちまけたっすかー!?」

 集まる視線に耐え切れず、新聞屋が荷馬車を飛び出した。
 凄い動きでガサガサガサーッと幌を登っていって真上に乗っかってしまう。

「うあー! うああー! せ、せっかく記憶が薄れていたところだったのにぃぃ!! 殺生すぎるっすよエリザベッタ様ああああ」

「エリザベッタ様は僕らのやってきた恥ずかしい事とか洒落にならない事を結構たくさん知ってるからなあ」

「うふふ、でも、あれももう半年以上前になるのね。本当にあっと言う間だわ」

「張井くんと新田さんがキス……!? ま、まさかそこまで関係が進んでいたなんて……! 不純異性交遊、うらやま……いえ、けしからんことだわ!」

 委員長がちょっと本音を漏らした。
 出羽亀さんなんかは面白そうな目をして、幌の上に逃げ込んだ新聞屋に声をかけている。

「ちょっと亜美~! どうして私に話してくれないのよ、水臭いわねえ! あんたやっぱり張井くんと付き合ってたんじゃない! 私とあんたの仲でしょー! 詳しい事教えなさいよー!」

「や、やめて欲しいっすー!? あっしが悪かったっすー!!」

「くっ」

「……」

 富田くんと熊岡くんが沈痛な面持ちをしている。
 そうか、二人ともまだなんだね……。
 ……!?
 馬井くんが余裕っぽい顔をしているぞ。何「さと子、かわいそうだからあまり言ってやるなよ」なんだ? ま、ま、まさか君も出羽亀さんとキスとかしてるのか!?
 くっ、なんて主人公っぽい奴なんだ……!

「張井、なぜ俺をそんな仇を見るような目で……」

「まあ、ちょっとショックと言えばショックよね……。未練があったんだわ」

 マドンナはケロッとしてたけど、さすが、新しい恋を見つけた女の子は強い。
 その分、委員長のダメージが凄いみたいだけど。なんか荷馬車の床の上でじたばたしている。

「くううっ、もうっ、もうっ、もうっ、リア充どもは死ねばいいのに! 死ねばいいのに! ああああ、また人を殺すビームの能力に目覚めそう!!」

 お願いだから目覚めないで!?
 その後ろで階さん。
 じーっと僕を見ている。

「張井くん」

「はい」

「聞きたい事があります」

「なに?」

「キスはどういう味がしましたか」

「ぶはっ」「ぶほっ」「ぐわーっ!」

 マドンナと委員長がむせて、上で新聞屋が断末魔の悲鳴をあげた。これは致命傷だったかも分からんね。

「実はキスなどという生易しいものじゃなかったんだよ。あの晩、新聞屋はひどく酔っていて……」

「ほうほう」「ごくり」「え、え、まさか、もっと先の大人の階段を……!? いやー!? 不潔! で、でも気になる!」「へえ、亜美がねえ」

 女子たちの反応は様々。
 男子はなんだかもじもじいづらそうにしている。

「ぐわわーっ!! こ、こうなったら、みんなを殺してあっしも死ぬしかないっすー!!」

「張井くん、亜美の魔力が膨れ上がっていくんだけど、あれを何とかしないと冗談抜きでこの世界が滅びるかもしれないわよ」

「ええー……。仕方ないなあ……”魔法カウンター”!」

 発動しかけていた、未知の大魔法を打ち消しておいた。
 そんな僕たちが向かう先は、歓楽都市アッバース。
 委員長やマドンナにとっても因縁の地なんだけど、幸いというか何というか、彼女たちに敵意を持っている人たちは全部新聞屋が消し飛ばしている。実は二人にとっても安全な都市になっているのだ。
 最近だと、ディアスさんの町ということでディアスポリスとか呼ばれてるみたい。呼びにくくない?

「よく言われますよ」

 出迎えてくれたディアスさんも同意していた。

「じゃあ、なんかディアスでポリスっていうのをもじって、ディアスポラとかなんとかいう名前にしておけばいいんじゃないですか?」

「お、それ呼び易いですな。それにしましょう」

 ということで、元アッバースの都はディアスポラという都に変わった。

「張井、お前、なんでこの都市の偉い人と対等に会話してるんだよ」

「あれ、言ってなかったっけ? この街の創始者が僕と新聞屋なんだけど」

「聞いてないよ!?」

 おお、富田くんが物凄く驚いている。


 ディアスポラは平常運転だった。
 この街を襲いに悪魔たちがやって来たようだったけど、傭兵を集めていたディアスポラは上手い事撃退したらしい。
 運よく、SMクラブを利用していた人に準勇者級の傭兵がいたそうなんだ。
 その人とはとても分かり合えそうな気がする!

「しかし、人魔大戦を乗り越えて、この都は一層栄えていくばかりですな!」

「はっはっは、あっしらの見る目は確かだったっすな! こうなる事を見越してアッバース……いや、ディアスポラにあっしらは投資していたっすよ!」

「おお、魔女ブンヤー様!! なんというご慧眼!」

 新聞屋が口からでまかせ、尻から屁まかせなことを言ってるのはディアスさんも分かってるみたいで、適当にノリを合わせてくれる。
 本当によく出来た人だなあ。

「あーっ、そ、そ、そこにいるのはへっぽこ魔術師!! お前ー!!」

 なんか甲高い声が聞こえた。
 見覚えのある女の子が、どだだだだっと凄い勢いで走ってくる。

「おやあ? あんたは誰だったっすかねえ? はっ、さてはあっしのファンっすね! ハハハ、人気者は辛いっすなあ」

「死ねえ!!」

「もぎゃーっ!?」

 あ、思い出した!!
 砂漠で出会ったお姫様で、ベレッタさんだ。
 育ちがいいのに、とても卑屈で卑怯なお姫様なのだ。どこか新聞屋に似てる。
 この二人、同族嫌悪で大変仲が悪い。

「おーまーえーがー!! 砂漠を密林にするからーっ!! 開拓が大変じゃありませんかーっ!!」

「ぐわーっ! マウントパンチぐわーっ!! 張井くん助けぐわーっ!!」

 おー、見事なマウントからの駄々っ子パンチだ。
 見れば、ベレッタさんと一族の人たちがこの街にやってくるところだったみたい。

「ちょっと資材の買い付けにきたのですわよ! あの密林に私たちの帝国を築くんですよ! この未来計画! さすが私ですね!!」

「……張井くん、なに、この人」

 出羽亀さんが自己完結するベレッタさんに、大変戸惑った様子で尋ねてきた。

「こういう人なんだ。深く考えてはいけないよ」

「な、なるほどね……。亜美が二人に増えたみたいだわ」

 委員長とマドンナも同意する。

「ベレッタさん、国の名前は決まったんですか?」

 僕が聞いたら、彼女はえっへんと薄い胸を張った。
 この世界の女の子は胸を張るのが好きだなあ。

「ガルム帝国ですわよ! もちろん! 私が初代皇帝ですよ!! さすがですね!」

「うおう……俺、あの女の子苦手だわ……」

 富田くんがげんなりした表情をしてる。
 馬井くんもあまりお近づきになりたくはないようだ。

「あら、どうしたんですか? さては、私の凄さに気づいてみんな押し黙ってしまったんですね! ふふふ!」

 彼女は得意げ。
 それを下敷きになっていた新聞屋が蹴り倒した。

「でえーい!! いつまで上に載ってるっすかー!!」

「ぎゃーす!」

 ベレッタさんのお付きの人たちも、なんか呆れた様子で見守っている。
 うんうん、命の危険があるわけじゃないし、この人ずっとこのノリなら、真面目に付き合い続けてたら過労死しちゃうもんね。
 結局彼女は、僕たちに自慢しに来た……わけではなくて、たまたま再会したので声をかけただけらしい。
 それだけでこの騒がしさ。恐ろしい。
 でも、僕たちが関わった元砂漠である密林も、何かと事態は進展しているみたいだ。
 きっと僕たちがいなくなっても、世界は動いていくし、変わっていくんだろう。


 夜になると、富田くんが熊岡くんを誘って外に出かけていった。
 あれだね。
 大人の男になりに行くんだね……!
 SMクラブは、いいぞう……!

「いやー。違うんじゃないっすかねー? あっしは違うと思うなー」

「そうよね、ハリイは趣味が特殊だもん」

「なんですって人聞きの悪い!」

 馬井くんは出かけて行きたそうだったけど、出羽亀さんが凄い目で睨んでくるので、夜の歓楽街に繰り出せないでいる。
 こう見えてディアスポラって、結構安全な街だ。
 国が運営してるわけじゃないから、この街にいる人それぞれがルールを守って暮らさないと、この都市を維持できない。
 だから、店の人も、住んでいる人たちも割りと意識が高い。プロ意識も高い。
 自警団があって、それが凄く細い路地まで、一晩中くまなく巡って歩いている。
 ということで、多分この世界でもトップクラスに安全なんだけど。

「なんだか、ねえ」

「いかがわしいわよね。ちょっと夜に出歩く勇気は無いわ」

 僕と新聞屋が築き上げた、現代日本なみの安全度なのに!
 欲求とかそういうのは、全部お店で発散できるので、道行く男の人たちはみんな賢者モードだ。
 お金がないとそもそも街に入れてくれないので、お金を使わずに女の子を襲うような人は入り込めない。
 ただまあ、女の子一人で出歩くのは良くないよね。それはちょっと危険かもしれない。

「え、瑠美奈が一人で出て行ったわよ」

「なんですって」

 階さんは何をしているのか!
 僕は慌てて彼女の後を追って飛び出した。
 幸い、興味深げに怪しいお店の様子を観察しているところを保護する事ができた。

「男女の生態を研究していたのです」

 平然とそんな事を言うけど、なんだなんだ。
 この間のキスの話といい、今日といい、もしや階さんにもついに思春期がやってきたとでも言うのだろうか?
 この局面で!?
 でも結局のところ、その後何も起こることは無かったのだけど。

「うーむ……私もそうなるのでしょうか。ちょっと想像がつきません」

 誰か階さんが気になる男性がいたり?
 いや、まさかね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...