外れスキル「両替」が使えないとスラムに追い出された俺が、異世界召喚少女とボーイミーツガールして世界を広げながら強くなる話

あけちともあき

文字の大きさ
74 / 84
7・魔王が来たりて編

第74話 お久しぶりの男

しおりを挟む
 エムズ王国のみんなと再会を喜びあい、偉そうな奴らが壊滅した国をあげるということにして、俺はエヌール公国へ旅立つ。

『ま、執政経験がある者がおらん時点で、国を維持はできまいよ。エルトー商業国に売り飛ばすでいいじゃろうな』

「そうなんだ……!?」

『政治は難しいぞ。あとで商業国に連絡しておくからのう。ニトリア』

『はいはい』

 ニトリアがどこからか白い蛇を呼び出して、何か命令を与えて放した。

「何したの?」

『十頭蛇の十番目の子が商業国にいますからね。その子を中継にして、エムズ王国を管理してもらうんですよ』

「へえー! っていうか、いつの間に!」

 十頭蛇、どこにでもいるなあ。
 ミスティが、ニトリアから何か詳しいことを聞いている。

 十人目は商業国の議会に入り込み……というか普通に向こうに雇われて、秘書兼護衛みたいな事をやってるらしい。

『十頭蛇は入った順番に番号が振られてますからね。これ、強さはあまり関係なくって』

「へえー」

『まあ一番強いのは一番目のリーダーなんですけど』

「だよねー」

 ウーナギはでたらめだもんな。
 でも、今の俺なら多分いい勝負ができる。
 今度、魔王を倒したらリベンジだ!

『一番弱いのはわたくしです』

「直接戦えないもんね」

 もうミスティはニトリアへの理解度がかなり深い。
 君たち実は仲良しになってない?

 ずっと一緒に旅してるし、女子部屋だもんな。

『戦闘力に特化しとるのは、六番目のヒュージじゃろうな。だが、リーダーに次ぐ戦闘力なら四番目じゃないか?』

『そうですかねえ? リーダー、あまり強さを重視しませんから』

『リーダー一人いれば片付くからのう』

 ははははは、と笑い合うエグゾシーとニトリア。
 そう言えばいたなあ、ヒュージ!

 懐かしいなーと思っていたら。
 まさか、エヌール公国で再会するとは。

「うわあっ、お、お前!!」

「あっ、なんか見たことある人!」

 エヌール公国の外側に大規模なキャンプができていて、俺たちが近づいたらその男が出てきたのだった。
 革のコートを着込んだそいつの顔は、明らかに見たことがあった。

「前より背が伸びてるが、あの剣を作り出すガキだな!? 何しに来やがった!」

「あっ! あんたヒュージか! 久しぶり!」

「馴れ馴れしいな!?」

 わいわい騒いでいたら、俺の頭の上からエグゾシーがヒョイッと覗き込んだ。

『ヒュージ、これはリーダー直接の指示でな。こやつをフォローして、やって来る魔王と戦えという話になっとるのじゃ』

「エグゾシーさん!? マジっすか……!!」

 あっ、ヒュージが敬語になった。
 リスペクトしてるらしい。

「こいつ、やるんですか? まあ、俺も一回撤退してますけど……」

「ウーサー強くなってるよ! 前の百倍くらい!」

「なんだあ、この女……! あっ! この間の雇い主の狙いだったやつか!」

「ウーサーよりも、あたしの事を覚えていない!?」

 なんでショック受けてるんだミスティ。

『いやですねえヒュージさん。仕事の内容はある程度覚えてないと、後々痛い目を見ますよ』

「ニトリアまでいやがるのか! お前、なんてメンツを連れて旅してるんだ」

 ヒュージが呆れた。
 エグゾシーとニトリアと一緒にいたことは、彼にとって驚くべきことだったらしい。

 そんな感じで和気あいあいと会話していたのだが、

「和気あいあいじゃねえよ! っていうかお前、図太いなあ!?」

「いや、その、色々あったんで強くなったかもしれない」

「本当に色々あったんだな……。でかくなったのは体だけじゃないってことか。ま、同じ孤児院出身のよしみだ。リーダーの命令もあるし、手を貸してやる」

 そこへ、声を掛けてくるやつがいた。
 キャンプから出てきた、偉そうな太っちょのおっさんだ。

「お、おいヒュージ! その者たちはなんだ!? 敵か!?」

「ああ公王さん。こいつらは俺の同僚ですよ。つまり仲間です」

 偉そうなおっさんはおれを聞いて、不安そうだった表情を激変させた。
 すっごい笑顔にパアーっと変わる。

「ほ、ほ、本当か!! 余の国を取り戻す仲間が来てくれたのか! ありがたい! いやあ、ありがたいーっ!! 我が国を救って、次は友邦であるエムス王国を……」

 エムスだっけ?
 エムズじゃなかったっけ……?

『エムズ王国は滅びたぞい』

「わあっ! 骨の蛇が喋った! ……えっ!? い、今なんて言ったの」

 おっさんこと、公王が目を見開いている。
 エグゾシーは事務的に、さらりとダメ押しする。

『エムズ王国はここにやってきたみたいに魔将が来て、さっくり滅ぼされたぞい。すぐにエルトー商業国に吸収されるじゃろ』

「えっ、ええーっ!!」

 あまりの衝撃に飛び跳ね、着地後もガクガク震える公王。
 すっごいリアクションだな!

「公王さん、あんためちゃくちゃ運がいいよ。十頭蛇三人に加えて、リーダーが認めた実力者に運命を操るスキル能力者が揃ったんだからな」

「う、うむ! うむ、そうなんだろうな! よ、余は運がいいぞ!」

 コクコクと頷く公王なのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...