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7・魔王が来たりて編
第73話 真の名前を言ってはいけない系の魔将
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見渡す限りの瓦礫の山。
スラムなんか、古くなった市街地だったからこうなれば跡形もない。
懐かしい光景はもう見られないなあ。
「うげー、宮殿だけ残ってる」
ミスティが顔をしかめた。
「そっか、ミスティはあそこで召喚されたんだっけ」
「そうそう。なんかね、おおげさな儀式をやってあたしを呼び出してね。みんな大喜びしてて……。んで、大臣のおっさんが迫ってきたでしょ? うわーっ、今思い出してもゾッとするわー」
「うわーっ、ぶっ飛ばしてやりたい」
『もう死んでるじゃろうなあ』
それはそうだ。
瓦礫の山で、半壊した宮殿だけが残っている状態なんかまともじゃない。
国の外側にいた人たちは、なんで避難しないのかと言うと……。
『まさかエヌール公国もついでに滅ぼされているとは』
「びっくりだよね。そりゃあ避難なんかできないよ」
エムズ王国とエヌール公国は、どちらも魔将によって滅ぼされてしまっていた。
どうしてこの二国を狙ったのかだけど、多分攻めやすかったんじゃないだろうか。
スキル能力者もいなかったし、魔将に対抗できる戦力を持っていない国だったはず。
エルトー商業国は、この二国に攻められても持ちこたえられていたわけで、守る力はずっと強い。
だから、魔将はあの二つの国を狙ったんだと思う。
「直接ぶん殴りたかったなー」
「ウーサーも勢いイイコト言うようになったじゃない!」
「あっ、今一瞬力に溺れそうになってた……」
『自省できる辺りは凄いやつじゃな』
『若いうちに天狗にならないのはお姉さん感心しませんね。得意になって失敗して傷心のところを慰める形でわたくしがパクっとウーサーくんの純潔をいただいちゃえるのですから』
「なんだとー!!」
あっ、宮殿の前でミスティがニトリアに掴みかかった!
喧嘩はやめるんだー!
そんな事をしていたら、宮殿の中から巨大な球体がボコッと浮かび上がってきた。
『は!? ここまで来て痴話喧嘩するとか、アホか! アホなのか!?』
大きな声で球体が叫ぶ。
その中心に切れ目ができたかと思ったら、上下に開いてとんでもなく大きな目玉になった。
球体のあちこちから触手が生えてくる。
『魔将が出たようじゃな。騒がしくしておれば、そりゃあ出てくるじゃろう。しかし今回の魔王は、魔将の他に手下の魔物を引き連れてこない主義らしいのう』
『ほう、その気配。在野の魔将だな? 俺は魔将ベアード。真の名前は別にあるが、事情があってそれは言えない。どうだ、お前も今からポンデリグ様の下につかないか』
『お断りじゃ。一応、わしの上に立つ魔王だったお人もこの世界で普通に暮らしているんでな』
『なんだと!? 二柱の魔王が同じ世界に存在することは許されん! その腑抜けた魔王はこのベアードが粉砕してくれようぞ!』
『お主には無理じゃろ』
『なにいーっ!!』
『お主はここで、ウーサーに敗れるからのう』
エグゾシーがベアードとやらとやり取りした後、全てを俺に押し付けた!
まあ、俺の肩の上にポンと乗っかってきたので、信頼あっての発言なんだけど。
「そのポンなんとかってのが魔王か。そいつをやっつければ、ミスティの能力を無くしてもよくなるんだな?」
『ふん! お前のような小僧が俺とやり合うのか! ふはは! わははははは!! まあ、どの世界でも魔王に抗う力を持つ者が自然発生するらしいからな。俺が先にお前を見つけられたことは幸運だったろう。ここでお前を排除してしまえばいいのだからな……不意打ちだくわーっ!!』
いきなり、ベアードが俺の方に向かって目玉を輝かせた。
『危ないですよウーサーくん! あーれー!』
ニトリアが俺を庇って立ち、動かなくなった。
……あれ!?
石になってる!
『回避したか。俺は七色の光線を放ち、様々な状態異常を操る魔将よ。俺の攻撃は光。回避することは敵わんぞ!』
「質問だけどさ。お前を倒したらニトリアは元に戻る?」
『わはははは! そんな事は知らん! 俺は倒されたことが無いからな!』
ここでミスティがぼそっと、「なんか戻りそう」と口にした。
よし!
じゃあ戻るんだな!
俺は安心して、両替を開始する。
ベアードの攻撃は光。
光の速さで攻撃をしてくるということで、とにかく避けたりできないたぐいのものらしい。
じゃあどうする?
光に対抗するなら……。
反射だ!
「両替! ブロードソード+8!」
唯一呼び出していなかった、ノーマルな剣。
それの名を俺は呼んだ。
持っていた魔法の針が、ざらざらと集まってくる。
それは一瞬で形を成すと……。
そこには、鏡のように磨き上げられた刃を持つ剣が存在していた。
それなりに大きいんだけど……。
「うわっ、思い通りに振れる」
『そんな剣一本で何をする? それ、石化光線! これで終わりだ!!』
馬鹿の一つ覚えみたいに同じ攻撃を!
だけど普通なら、これで決まるもんな。
まあ、今の俺にはこの名前を知らない剣がある。
剣は俺が意識するよりもずっと速く、既に光が到達する場所に移動していた。
石化光線が剣に当たる。
そして、正確に反射された。
『なにっ』
それがベアードの最後の言葉だった。
やつは、自分の光線で石化した。
そのまま落下する。
瓦礫と激突し、ベアードは粉々になった。
『ああ、こりゃあ死んだのう。石化が解けるのはベアードが死んだ時だけなら、これでやつももとには戻れるが死んでいるという、完璧な対策じゃあ』
『ひえー……あれ? なんともありませんね』
ニトリアがきょとんとしている。
「良かった! もとに戻れたんだねえ!」
ミスティがニトリアに抱きついた。
『なんですかなんですか!? スキンシップでライバルを懐柔しようと言うのですか? その手には乗りませんよ、わたくしはノーマルな性癖で……あーっ、首に抱きついてくるくる回るのをやめてください、重心が、重心が』
ニトリアがミスティごと倒れ込んでいった。
『いやはや、瞬殺じゃったのう。魔将め、身に余る能力を身につけて勝手顔で振り回すからこうなるんじゃ』
カラカラ音を立てて笑うエグゾシー。
自分をも一撃で滅ぼす能力を持っていたベアードだった。
この鏡のような魔剣は、それに対して最適な武器だったんだろうな。
魔剣は何も言わずに消えていった。
光の速度に追いつき、正確に反射するような魔剣。
一体なんなんだあれは。
とにかく、エムズ王国はこれで問題解決。
次はエヌール公国だな。
スラムなんか、古くなった市街地だったからこうなれば跡形もない。
懐かしい光景はもう見られないなあ。
「うげー、宮殿だけ残ってる」
ミスティが顔をしかめた。
「そっか、ミスティはあそこで召喚されたんだっけ」
「そうそう。なんかね、おおげさな儀式をやってあたしを呼び出してね。みんな大喜びしてて……。んで、大臣のおっさんが迫ってきたでしょ? うわーっ、今思い出してもゾッとするわー」
「うわーっ、ぶっ飛ばしてやりたい」
『もう死んでるじゃろうなあ』
それはそうだ。
瓦礫の山で、半壊した宮殿だけが残っている状態なんかまともじゃない。
国の外側にいた人たちは、なんで避難しないのかと言うと……。
『まさかエヌール公国もついでに滅ぼされているとは』
「びっくりだよね。そりゃあ避難なんかできないよ」
エムズ王国とエヌール公国は、どちらも魔将によって滅ぼされてしまっていた。
どうしてこの二国を狙ったのかだけど、多分攻めやすかったんじゃないだろうか。
スキル能力者もいなかったし、魔将に対抗できる戦力を持っていない国だったはず。
エルトー商業国は、この二国に攻められても持ちこたえられていたわけで、守る力はずっと強い。
だから、魔将はあの二つの国を狙ったんだと思う。
「直接ぶん殴りたかったなー」
「ウーサーも勢いイイコト言うようになったじゃない!」
「あっ、今一瞬力に溺れそうになってた……」
『自省できる辺りは凄いやつじゃな』
『若いうちに天狗にならないのはお姉さん感心しませんね。得意になって失敗して傷心のところを慰める形でわたくしがパクっとウーサーくんの純潔をいただいちゃえるのですから』
「なんだとー!!」
あっ、宮殿の前でミスティがニトリアに掴みかかった!
喧嘩はやめるんだー!
そんな事をしていたら、宮殿の中から巨大な球体がボコッと浮かび上がってきた。
『は!? ここまで来て痴話喧嘩するとか、アホか! アホなのか!?』
大きな声で球体が叫ぶ。
その中心に切れ目ができたかと思ったら、上下に開いてとんでもなく大きな目玉になった。
球体のあちこちから触手が生えてくる。
『魔将が出たようじゃな。騒がしくしておれば、そりゃあ出てくるじゃろう。しかし今回の魔王は、魔将の他に手下の魔物を引き連れてこない主義らしいのう』
『ほう、その気配。在野の魔将だな? 俺は魔将ベアード。真の名前は別にあるが、事情があってそれは言えない。どうだ、お前も今からポンデリグ様の下につかないか』
『お断りじゃ。一応、わしの上に立つ魔王だったお人もこの世界で普通に暮らしているんでな』
『なんだと!? 二柱の魔王が同じ世界に存在することは許されん! その腑抜けた魔王はこのベアードが粉砕してくれようぞ!』
『お主には無理じゃろ』
『なにいーっ!!』
『お主はここで、ウーサーに敗れるからのう』
エグゾシーがベアードとやらとやり取りした後、全てを俺に押し付けた!
まあ、俺の肩の上にポンと乗っかってきたので、信頼あっての発言なんだけど。
「そのポンなんとかってのが魔王か。そいつをやっつければ、ミスティの能力を無くしてもよくなるんだな?」
『ふん! お前のような小僧が俺とやり合うのか! ふはは! わははははは!! まあ、どの世界でも魔王に抗う力を持つ者が自然発生するらしいからな。俺が先にお前を見つけられたことは幸運だったろう。ここでお前を排除してしまえばいいのだからな……不意打ちだくわーっ!!』
いきなり、ベアードが俺の方に向かって目玉を輝かせた。
『危ないですよウーサーくん! あーれー!』
ニトリアが俺を庇って立ち、動かなくなった。
……あれ!?
石になってる!
『回避したか。俺は七色の光線を放ち、様々な状態異常を操る魔将よ。俺の攻撃は光。回避することは敵わんぞ!』
「質問だけどさ。お前を倒したらニトリアは元に戻る?」
『わはははは! そんな事は知らん! 俺は倒されたことが無いからな!』
ここでミスティがぼそっと、「なんか戻りそう」と口にした。
よし!
じゃあ戻るんだな!
俺は安心して、両替を開始する。
ベアードの攻撃は光。
光の速さで攻撃をしてくるということで、とにかく避けたりできないたぐいのものらしい。
じゃあどうする?
光に対抗するなら……。
反射だ!
「両替! ブロードソード+8!」
唯一呼び出していなかった、ノーマルな剣。
それの名を俺は呼んだ。
持っていた魔法の針が、ざらざらと集まってくる。
それは一瞬で形を成すと……。
そこには、鏡のように磨き上げられた刃を持つ剣が存在していた。
それなりに大きいんだけど……。
「うわっ、思い通りに振れる」
『そんな剣一本で何をする? それ、石化光線! これで終わりだ!!』
馬鹿の一つ覚えみたいに同じ攻撃を!
だけど普通なら、これで決まるもんな。
まあ、今の俺にはこの名前を知らない剣がある。
剣は俺が意識するよりもずっと速く、既に光が到達する場所に移動していた。
石化光線が剣に当たる。
そして、正確に反射された。
『なにっ』
それがベアードの最後の言葉だった。
やつは、自分の光線で石化した。
そのまま落下する。
瓦礫と激突し、ベアードは粉々になった。
『ああ、こりゃあ死んだのう。石化が解けるのはベアードが死んだ時だけなら、これでやつももとには戻れるが死んでいるという、完璧な対策じゃあ』
『ひえー……あれ? なんともありませんね』
ニトリアがきょとんとしている。
「良かった! もとに戻れたんだねえ!」
ミスティがニトリアに抱きついた。
『なんですかなんですか!? スキンシップでライバルを懐柔しようと言うのですか? その手には乗りませんよ、わたくしはノーマルな性癖で……あーっ、首に抱きついてくるくる回るのをやめてください、重心が、重心が』
ニトリアがミスティごと倒れ込んでいった。
『いやはや、瞬殺じゃったのう。魔将め、身に余る能力を身につけて勝手顔で振り回すからこうなるんじゃ』
カラカラ音を立てて笑うエグゾシー。
自分をも一撃で滅ぼす能力を持っていたベアードだった。
この鏡のような魔剣は、それに対して最適な武器だったんだろうな。
魔剣は何も言わずに消えていった。
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