「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第一章

第1話 BSブレス(くさい息)炸裂! 敵は壊滅! 味方も壊滅!

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 俺は一度、死にかけたことがある。
 村の裏山に、謎の触手モンスターが出たということで騒ぎになり、近所の悪ガキ仲間と見物に行った俺。
 触手モンスターを見つけたので、近寄って棒でつついたら……。

 脳が痺れるほどくさい息を吐きかけられたのだ。
 俺は三日三晩、生死の境を彷徨った。
 なんか、全身が麻痺して毒にやられて、頭は混乱し、石化しかかっていたのだとか。

 今思うと、よく助かったな……?
 そしてその日を境に、俺のあだ名は『くさい息』になった。
 同時に、その日から俺には、特殊な能力が宿ったのだった。

 それは……。
 くさい息を吐ける力だ。

 こう、目を凝らすだろ?
 すると虚空に俺の名前が浮かんでいる。

 所有能力という欄があって、そこにくさい息の名が。


名前:ドルマ・アオーマーホウ
職業:すっぴん
所有能力:
・バッドステータスブレス

 なんだこれは。
 俺は混乱の中で幼少期を過ごした。

 ちなみに、あだ名がくさい息だった男の青春はまあまあ灰色だったぞ!
 そんな俺にも、転機が訪れる。

「おい、ドルマ! 俺たち、冒険者を目指そうと思うんだ」

 俺に声を掛けたのは、村長の三男イチモジ。

「くさい息を吐くだけのお前じゃ、村にいても仕方ないだろ? 俺らと行こうぜ!」

 鍵屋の息子、手先が器用なニバンテー。

「神のご加護は僕らにこそあります。ともに旅立ちましょう!」

 神父の息子、メガネのサンタナ。

「私たちには輝かしい未来が待っているんだから!」

 そして俺たちの世代のアイドル、薬師の娘で魔法が使えるシモーヌ!

「ああ、行こう!」

 俺は彼らの手を取った。
 そしてここから、俺たちの輝かしい冒険者ライフが幕を開ける……!!





 はずだった。

 今、俺たちは全滅しそうです。

「こ、このままじゃやべえ」

 パーティリーダーの戦士イチモジが呻いた。

「くそお、だから俺は言ったんだ! まだ俺たちのレベルには早すぎるって!!」

 盗賊のニバンテーが泣き言を言う。

「神に祈りましょう……せめて苦しまずに死ねるように」

 僧侶のサンタナはもう諦めていた。

「いや……私こんなところで死にたくない!!」

 叫ぶのは、我らがアイドルにして魔法使い、シレーヌ。

 状況をかいつまんで説明すると、初心者冒険者となった俺たちは、毎日楽しく薬草採集などしていたのだ。
 だがそこで、イチモジが呟いた。

「そろそろでけえ仕事がしてえなあ」

 これを聞きつけた先輩冒険者が持ちかけてきたのが、ゴブリン砦の攻略だった。
 俺たちに割り当てられたのは、ゴブリン暗殺部隊の相手……。

 暗殺部隊の相手!?
 そういうわけで、レッドキャップの大群に俺たちは追い込まれているのだ。

 レッドキャップというのは、赤い帽子を被ったエリートゴブリンね。
 未だに冒険者としての職業がない俺は、こういうのを調べて記録したり、マッピングする役割をしているのだ。

 そしてレッドキャップは……強い!
 少なくとも、俺たちみたいな薬草採取しかしてない初心者パーティが相手にできるようなモンスターじゃない。

「く、くそっ! このままじゃ……ウグワーッ!」

「イチモジーっ!!」

 イチモジが斧で殴られて転んだ。

「イヤアアアアーッ!!」

 シモーヌの悲鳴が響く。
 彼女もティンダーとか、ライトとか、初心者魔法しか使えないのだ。
 その魔力ももう尽きている。

 万事休す……。

「やるしかないのか……。ああ、今こそが、俺の力を解き放つ時だ!」

 俺は前に出る。
 みんなを……守ってみせるぜ!

「ドルマ!」

 心配そうなシモーヌの声。
 任せておけ。
 俺は振り返らず、サムズアップした。

 そして大きく息を吸い込む。
 バッドステータスブレスを使うには……それを意識するだけでいい。

 これまで長い間封印していたこのおぞましい技を……これから解き放つ!

『ギギギギギ!』

『ニンゲン、ワルアガキ! アキラメロ!』

 あっ、思ったよりもレッドキャップ知的!
 だが交渉不能!

『ギギギ!! シネーッ!!』

 俺を目掛けて飛びかかってきたレッドキャップ。
 その時には、俺の肺はバッドステータスブレス……つまりくさい息で満ちていた。

「行くぞ! ぶはあーっ!!」

 俺の口から溢れ出す、毒々しい紫とか緑色の吐息!
 それは凄まじい勢いで広がり、周囲一帯を包み込んだ。

『ナ、ナンダコレウグワーッ!?』

『ヒドイニオイウグワーッ!!』

『ニ、ニゲラレナ…ウグワーッ!!』

 レッドキャップたちが、次々に目と鼻と口と耳から血を吹き出しながらぶっ倒れていく。
 あれだけいたレッドキャップが全滅だ!

「やった! やったぞみんな! 見てくれたかみんなーっ!!」

 振り返った俺の目に映ったのは。

「ウグワーッ!」
「ウグワーッ!」
「ウグワーッ!」
「ウグワーッ!」

 目と鼻と口と耳から血を吹きながらぶっ倒れる仲間たちだった。

「あ、あれえー?」

 こうして俺は、仲間とモンスターたちを一掃したのである。



「お、お前は追放だドルマ!!」

 真っ青な顔をしているイチモジが、怒りで顔を真っ赤にして叫んだ。
 赤と青が混じり合って紫色に見える。

「バカな!? 俺はみんなを助けるために全力で戦っただけじゃないか!!」

「うるせえ! あんな全力があるか! ていうかあんなくさい息を出すとか人間じゃねえ!」

「くっそ、くそくそくそ、クソみてえな息しやがって!! 死ぬわ!!」

 怒鳴るニバンテー。

「天に召されるかと思ったじゃないですか!! 私はまだ死にたくないんですよ!!」

 なんかさっきと話が違うぞサンタナ!!

 そしてシモーヌ。
 俺と親しかった幼馴染の少女は、冷たい目を俺に向けた。

「くさい息とかサイッテー」

「えっ!?」

 俺はとても驚いた。

「俺を応援してくれていたのではないのかシモーヌ!」

「くさい息とかサイテーだし。ほんと、臭いがついたらどうするのよ。最悪!! レアな能力を持ってるみたいだから、そのうち成り上がるかなって思って唾つけておいたのに、くさい息じゃ話になんないじゃない!! 最低! クズ! カス! ゴミ! 消えろ、くさい息!」

「あ、あぁんまりだあー」

 俺は大変な精神的ダメージを受けた。
 こうして俺は、レッドキャップが死屍累々転がる戦場で、パーティから首になったのだった。
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