「スキル:くさい息で敵ごと全滅するところだった!」と追放された俺は理解ある女騎士と出会って真の力に覚醒する~ラーニング能力で楽々冒険ライフ~

あけちともあき

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第一章

第2話 こんにちは、理解のある女騎士(自称)です

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「はぁ~」

 失意のどん底に落ちた俺。
 どうにかヒッチハイクしながら拠点の街に戻ってはこれた。
 だが、パーティから追放されて一人。

 ここは商業都市ポータル。
 俺はぽつんと冒険者の店のカウンター席に腰掛けていた。

 既に、冒険者の店には俺の噂が広がっている。

「ドルマはくさい息を吐くぞ」

「あいつといると飯が不味くなるのではないか」

「男として息が臭いとかサイッテーよね」

「近づくなよドルマ」

「えんがちょ」

 誰も!
 そう、誰も、俺とパーティを組んでくれるような者はいなくなってしまったのである!

 俺は孤独だった。
 おかしい、村から仲間たちとともに、希望をいだいて飛び出してきたはずだったのに。
 気がつけば、村と同じくさい息と呼ばれて誰も近づいてこない状況に。

 あの場を生きて切り抜けるためには、あれしか無かった。
 未だ、冒険者としては職業:すっぴんである俺ができる唯一にして最強の手段だった。
 俺はどうすれば良かったというのだ……!

「くっ、マスター、もう一杯! ……一番安いエールをくれ」

「一杯飲むのに時間かけたね……。お金無いんでしょ」

 マスターは鼻にハンカチを当てながら、そーっとエールを出してきた。
 マスターまで俺のくさい息を警戒して!?

「確かに、このエールで俺は一文無しになる……。だが仲間もいない俺は、ろくな仕事も受けることができない……。マスター、パーティメンバーをどうにかして集められないかな……」

「いや無理……む、難しいんじゃないかな」

「無理って言ったよね。それにそのハンカチ……!」

「ギクギクッ!」

 ギクッ、じゃないよ!

「はあ……。やっぱりダメかあ……」

 ため息をつきつつ、今夜の宿代も無くなった俺は、これからどうしようかなんて考える。
 例え金があったとしても、宿は最低二人から。
 一部屋ぶんの金を払うだけでも大出費なのだ。

 世の中は独り者に厳しいのだ。

 だが!

「ねえ、君!! 一人なのか?」

 俺に声を掛けてくる者がいた。
 茶色い髪に緑の瞳をした少女だ。

「うっ!! み、見ての通りだよ……!! 一人だよ……!!」

「そう!? そうなの!? やった! まだフリーの人がいたんだ……!!」

 彼女は俺の隣まで移動してきて、腰を下ろした。
 ガッツポーズまでしている。
 
 その時、俺は気づいた。
 彼女は、カウンターの主だ。
 というのも、彼女は自称、世界一の騎士の孫娘であり、自分は騎士としての才能があるから自分をリーダーとした正義のためのパーティを求める!と店中に宣言したことがあるのだ。

「ただの冒険者はいりません! 正義の志を持った戦士! 黄金の指先を持つ盗賊! 才能に満ちた大魔道士はここに来なさい!」

 当然来なかった。
 彼女の腕前は全く分からない。
 強いのかもしれないし弱いのかもしれない。

  冒険者は無駄なリスクは取らないところがあるので、こういう訳のわからない娘はパーティに入れないのだ。
 パーティの人数分、食費も宿代もかかるしな。

 それに、彼女はリーダーでなければやらないと言った。
 実力も素性も分からない娘にリーダーをやらせるバカはいない。

 ということで、この娘はずっと一人で、カウンターの主になっていた。
 エッチなことを企む冒険者が彼女を仲間に引き入れようとしたが、そこはマスターがさりげなく断ったようだ。
 男前だなあマスター。

「カウンターの主よ。俺が何者か知って誘ってるの?」

 ここで断られたら再起不能なダメージを負うので、俺は牽制のジャブを放ってみる。

「カウンターの主とはご挨拶だね。私にはちゃんと名前があるぞ! エリカだ! エリカ・フォンテイン! かの大騎士フォンテインの孫なんだぞ!」

「えっ、本当か!? ……いやいや、フォンテインは大遠征の末に行方不明になっただろ? だから世の中にはフォンテインを名乗る奴がたくさんいるし。信じられないなあー」

 大騎士フォンテインの物語。
 それは田舎暮らしだった俺も知っているほどの、英雄伝説だ。

 地の底に潜んだ魔人との対決、ゴブリン砦の決闘、姫君を守っての旅、飛竜狩り、そして最後は、風車の魔王と戦うために旅立ち、戻っては来なかった。
 彼女がフォンテインの孫を名乗ったなら、それは誰も信用してくれないだろうとは思う。

 だが彼女は、真っ直ぐな目で俺を見るのだ。

「私の血を信じなくても構わないぞ! 私を信じろ!」

 言葉の意味はよく分からないが、とにかく凄い自信だ……!

「エリカ、あんたの何を信じろと? っていうか、俺を知ってるかどうかって話はどうなったの?」

 俺はヤケになっているので、安酒をあおりながら、据わった目で彼女をにらんだ。

「俺はくさい息のドルマ。バッドステータスブレスでモンスターと仲間を一度に攻撃する男だぞ」

 ああ、ついに言ってしまった。
 くさい息を恐れぬ者はいない。
 なぜならくさいからだ。

 だが……。
 彼女が俺に向ける目の輝きは、少しも薄れることは無かったのである。

「ああ、知ってる! 君は仲間を助けようとしてくさい息を使ったんだろう? そしてレッドキャップは倒された! まさに、英雄的行為だ! 君は普通の冒険者じゃない!」

 ……おや?

「すごい能力じゃないか……!! 未来の大騎士の仲間にふさわしいよ!」

 エリカは目をきらきらと輝かせた。
 よくよく見ると、彼女はかなりカワイイ。
 こんなにカワイイのに、大騎士になるとか言ってカウンターで一日中来るはずのない仲間を待ってるのか。

 ちょっと可愛そうになってきた。

「だけどさ、エリカ。どんなに凄い能力でも、仲間を巻き込むほどくさい息だったら意味がないんじゃないか?」

 でも、まだ気弱な俺なのだ。
 そんな俺の守りに入った心に、彼女はズドンと入り込んできた。

「いや、意味はある!!」

 エリカはカウンターをドン!と叩いた。

「なんだと……!?」

「私は、騎士だ!!」

「なんだと……!?」

「騎士は、強い!!」

「なんだと……!?」

「強いから、くさい息もがまんできる!!」

「なん……だと……!?」

 俺は息を呑んだ。

「本当か!?」

「騎士に二言はない!!」
「そう言って臭がったりしないか!?」

「うるさい! 行こう!」

 ドン!!

 その瞬間、俺のどんより濁っていた視界が、一気に晴れ渡った。
 世界が輝きに満ちて見える。
 中心で俺に手を差し伸べているのは、エリカだ。

「ああ、行こう!!」

 そういうことになった。
 こうして俺に、真の仲間ができたのである……!!
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