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第二章
第34話 騎士見習いを連れて
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フォンテインの故郷に行ったら、お話の通りの田舎だった。
そこの郷士だった男で、割りと優秀な騎士だったそうだ。
とにかくラッキーな男だったそうだ。
実力はフツーなのに、次々に手柄を上げる機会に恵まれて、あれよあれよと騎士になった。
だが実力が追いついていなかったので、今回の戦場で風車の騎士に敗れた。
風車の騎士はクリプタナと言う名前で、野心家なんだそうだ。
今回の戦争を企画したのもこの男だとか。
「史実に言う風車の魔王はこのクリプタナで間違いないな」
「アベルは歴史にも詳しいのか! 私も詳しいぞ!」
「しーっ! 葬儀の間はお静かに!」
注意されてしまった。
俺たちはフォンテインのお葬式に参加している。
彼が今まで成し遂げてきた業績は、どう聞いても普通の人間がやってきた程度のものだ。
何よりモンスターに関わる業績がない。
これはおかしい。
エリカはすっかり、不信感の塊になっていた。
「なあドルマ。これはつまり、フォンテインはフォンテインじゃないんじゃないか」
「俺もそうだと思うよ。フォンテインの名を騙った何者かが、この後のフォンテイン伝説を作り上げていくんじゃないか」
「やっぱり。私はその人を応援したいな……! なあトニー」
「うっ、フォンテインさん……! おで、おでがもっどつよげれば……」
騎士見習いトニーはズビズビーっと鼻水をすすった。
涙とか色々な汁でぐちゃぐちゃな顔をしているな。
俺はポケットから適当な布を出して、トニーの顔を拭った。
「弱いと守れないのは仕方ないだろう。強くならねばな。だが強くなるためにくさい息とか身につけるとやっぱり人は周りからいなくなっていく……」
「ドルマさん、何言ってんだ……?」
葬儀はつつがなく終わった。
トニーは騎士見習いになるため、実家を飛び出してきたから帰るところが無いという。
ところが、騎士フォンテインが死に、一代限りの騎士爵であった彼の地位と領地は召し上げということになった。
トニーは騎士見習いとしては正直全然有能ではなかったため、どこも引き取ってくれない。
ということで、プーになったようだ。
「お、俺はどうしよう」
「なんだトニー、フリーなのか! じゃあ私たちと来い! 私たちはフォンテインナイツ! 騎士フォンテインのような大騎士を目指すために活動しているグループなんだぞ!」
「な、なんだってー!?」
「一緒にするな」
驚くトニーと、顔をしかめるアベル。
一匹狼大好きなアベルだが、過去の世界だと俺たちとはぐれたらヤバいと思っているようで、こうしてついてきている。
「俺は、そこの青魔道士が元の時代に帰る鍵を握っていると睨んでいるからな。おい、早く俺を元の時代に戻せ」
「ところが、このタイムリープという力を使ってみても全然発動しないんだ」
「なんだと? いつまでもこの時代にいるつもりか! 俺は向こうでやるべき事が……あるわけではないが、それでもまあ元の時代の方がいいのだ」
「アベルも曖昧な感じで生きていたのか……」
「竜騎士として戦うべき相手もいない時代だからな……」
竜騎士は遠い目をした。
「そうなのか!? 平和なところから来たんだな……。こっちはずっと戦争とか、恐ろしいモンスターが現れたりで大変なんだ。今も、戦争やってるどころじゃなくて、地の底のどろ魔人が次々モンスターを送り込んできてるんだけど……」
「「「どろ魔人?」」」
俺とエリカとアベルが首を傾げた。
聞いたことがない。
だが、地の底の魔人と言うと……。
「フォンテインの伝説に語られる冒険の一つだな。本物のフォンテインが死んだ以上、もうこの冒険が果たされることはない。よし! 私たちで一つ、やっつけてやろうじゃないか!」
「おお、賛成ー」
「気軽に決める連中だ。だが、なるほど……。フォンテイン・サーガにある地の底の魔人……。元の時代では既に存在していなかったということは、ここで俺が仕留めるということかも知れんな。面白い……!」
アベルもやる気だ。
トニーは俺たちをきょろきょろ見回していたが、すぐにハッとした。
「お、お、オレも行くぞ!! オレこそがフォンテインさんの遺志を継ぐんだ!」
「なにっ! フォンテインの遺志を継いで大騎士になるのは私だぞ!!」
「うるせえ! オレだ! エリカは引っ込んでろよ!」
「引っ込まない! なぜなら私の心はもう騎士だからだ!!」
どん!
エリカが胸を張ったら、近くにいたトニーがふっ飛ばされ、「ウグワー!」とごろごろ転がった。
「やたら張り合ってくる少年だな。生意気ではあるが元気でいい」
元気が無いと冒険の途中で死ぬからね。
アベルはあまり、トニーに興味は無いようである。
「おい、情報収集に行くぞ。どろ魔人がどんなものなのか知っておいた方がいいだろう。この手で仕留めるにしても、余計な犠牲など出したくはあるまい」
「そりゃそうだ」
そういうことで、俺たちフォンテインナイツは動き出した。
標的は、フォンテインの伝説が謳う最初の冒険、地の底の魔人。
ところでどろ魔人って、いどまじんと何か響きが似てる気がしない……?
そこの郷士だった男で、割りと優秀な騎士だったそうだ。
とにかくラッキーな男だったそうだ。
実力はフツーなのに、次々に手柄を上げる機会に恵まれて、あれよあれよと騎士になった。
だが実力が追いついていなかったので、今回の戦場で風車の騎士に敗れた。
風車の騎士はクリプタナと言う名前で、野心家なんだそうだ。
今回の戦争を企画したのもこの男だとか。
「史実に言う風車の魔王はこのクリプタナで間違いないな」
「アベルは歴史にも詳しいのか! 私も詳しいぞ!」
「しーっ! 葬儀の間はお静かに!」
注意されてしまった。
俺たちはフォンテインのお葬式に参加している。
彼が今まで成し遂げてきた業績は、どう聞いても普通の人間がやってきた程度のものだ。
何よりモンスターに関わる業績がない。
これはおかしい。
エリカはすっかり、不信感の塊になっていた。
「なあドルマ。これはつまり、フォンテインはフォンテインじゃないんじゃないか」
「俺もそうだと思うよ。フォンテインの名を騙った何者かが、この後のフォンテイン伝説を作り上げていくんじゃないか」
「やっぱり。私はその人を応援したいな……! なあトニー」
「うっ、フォンテインさん……! おで、おでがもっどつよげれば……」
騎士見習いトニーはズビズビーっと鼻水をすすった。
涙とか色々な汁でぐちゃぐちゃな顔をしているな。
俺はポケットから適当な布を出して、トニーの顔を拭った。
「弱いと守れないのは仕方ないだろう。強くならねばな。だが強くなるためにくさい息とか身につけるとやっぱり人は周りからいなくなっていく……」
「ドルマさん、何言ってんだ……?」
葬儀はつつがなく終わった。
トニーは騎士見習いになるため、実家を飛び出してきたから帰るところが無いという。
ところが、騎士フォンテインが死に、一代限りの騎士爵であった彼の地位と領地は召し上げということになった。
トニーは騎士見習いとしては正直全然有能ではなかったため、どこも引き取ってくれない。
ということで、プーになったようだ。
「お、俺はどうしよう」
「なんだトニー、フリーなのか! じゃあ私たちと来い! 私たちはフォンテインナイツ! 騎士フォンテインのような大騎士を目指すために活動しているグループなんだぞ!」
「な、なんだってー!?」
「一緒にするな」
驚くトニーと、顔をしかめるアベル。
一匹狼大好きなアベルだが、過去の世界だと俺たちとはぐれたらヤバいと思っているようで、こうしてついてきている。
「俺は、そこの青魔道士が元の時代に帰る鍵を握っていると睨んでいるからな。おい、早く俺を元の時代に戻せ」
「ところが、このタイムリープという力を使ってみても全然発動しないんだ」
「なんだと? いつまでもこの時代にいるつもりか! 俺は向こうでやるべき事が……あるわけではないが、それでもまあ元の時代の方がいいのだ」
「アベルも曖昧な感じで生きていたのか……」
「竜騎士として戦うべき相手もいない時代だからな……」
竜騎士は遠い目をした。
「そうなのか!? 平和なところから来たんだな……。こっちはずっと戦争とか、恐ろしいモンスターが現れたりで大変なんだ。今も、戦争やってるどころじゃなくて、地の底のどろ魔人が次々モンスターを送り込んできてるんだけど……」
「「「どろ魔人?」」」
俺とエリカとアベルが首を傾げた。
聞いたことがない。
だが、地の底の魔人と言うと……。
「フォンテインの伝説に語られる冒険の一つだな。本物のフォンテインが死んだ以上、もうこの冒険が果たされることはない。よし! 私たちで一つ、やっつけてやろうじゃないか!」
「おお、賛成ー」
「気軽に決める連中だ。だが、なるほど……。フォンテイン・サーガにある地の底の魔人……。元の時代では既に存在していなかったということは、ここで俺が仕留めるということかも知れんな。面白い……!」
アベルもやる気だ。
トニーは俺たちをきょろきょろ見回していたが、すぐにハッとした。
「お、お、オレも行くぞ!! オレこそがフォンテインさんの遺志を継ぐんだ!」
「なにっ! フォンテインの遺志を継いで大騎士になるのは私だぞ!!」
「うるせえ! オレだ! エリカは引っ込んでろよ!」
「引っ込まない! なぜなら私の心はもう騎士だからだ!!」
どん!
エリカが胸を張ったら、近くにいたトニーがふっ飛ばされ、「ウグワー!」とごろごろ転がった。
「やたら張り合ってくる少年だな。生意気ではあるが元気でいい」
元気が無いと冒険の途中で死ぬからね。
アベルはあまり、トニーに興味は無いようである。
「おい、情報収集に行くぞ。どろ魔人がどんなものなのか知っておいた方がいいだろう。この手で仕留めるにしても、余計な犠牲など出したくはあるまい」
「そりゃそうだ」
そういうことで、俺たちフォンテインナイツは動き出した。
標的は、フォンテインの伝説が謳う最初の冒険、地の底の魔人。
ところでどろ魔人って、いどまじんと何か響きが似てる気がしない……?
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