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第三章
第50話 戦争始まり、おかしな男との遭遇
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ゴブリン王国討伐は、冒険と言うか戦争だった。
武装した各国の義勇軍と、やはり武装したゴブリン王国軍がぶつかり合う。
始まって早々、大混戦の様相を呈していた。
「ここにくさい息を流し込めば敵味方もろとも一網打尽だなあ」
「やめろドルマ」
アベルが真顔で止めてきた。
「俺の仕事へ金を払う者がいなくなる」
「そっちを心配してたか」
アベル、基本的に個人主義なのだ。
うちのエリカはと言うと、顔をしかめている。
「こういうのは好きじゃないな。なんか嫌」
「そうかそうか。じゃあ、俺たちは別働隊で動こう」
そう言う話になった。
もともと、カイナギオとの話では、ゴブリンを一方的に叩きのめすのは現実的ではないという話だった。
彼らもたくさんおり、国を作っている以上、これを滅ぼすというのは簡単にできることではない。
カタクリーコ地方と国境を接する三国は、お世辞にも味方ではないし、それぞれの国も隙あらば国土を奪い取ってやろうと狙っている。
つまり、ゴブリンに全力を注ぎ込んだら横からやられるわけだ。
戦争をさっさと片付けなければ。
そのためには何が必要か。
この辺りを、ゴブリン王国側とやり取りして模索せねばという話だった。
カイナギオ、ゴブリン王国につてがあるのか。
今は戦場に出向いていていないが、あいつもモンスターだし、ゴブリンの仲間がいてもおかしくないかもしれない。
ぬおお、頭を使いすぎてクラクラしてきた。
「ドルマ、大丈夫か!? 顔が赤くなって頭から煙が出ているようにみえるぞ!」
「俺はもともと、難しいことを考えない人間だったのだが、最近妙に難しいことばかり起きるのだ……。うおお」
「これは、案ずるより産むが易しでござるな! 拙者らでちょっと戦場を覗いたりしてみるでござるよー!」
ホムラの意見があり、そうしようということになった。
とりあえず手近な戦場に動くと、俺のミサイルが無差別に降り注ぎ、アベルが上空から次々ゴブリンを攻撃し、エリカが蹴散らし、ホムラが武器を投げまくる。
あっという間に戦場は静かになった。
今回のテーマは、非殺傷。
運が悪ければ死ぬが、運が良ければ死なない。
カイナギオ発案の作戦で、これで俺たちの存在をゴブリン王国に印象付けるというものだ。
死なせてないのは、それなりに腕があるやつなら気付くんだと。
それくらの火力をイメージしてみんなで攻撃してみたぞ。
敵味方が死屍累々だが、戦場にぽっかり穴が空いた形になり、これはたいへん目立つ。
「ゴブリン王国に、こちらに通じようとするのがいれば、これで目立つはずだけど……」
大雑把な作戦ではある。
何も起きないかもしれないし、そもそもゴブリンは交渉可能な相手ではないかもしれない。
俺のイメージだと、人間に敵対するモンスターって感じだしな。
だが、相手はやって来た。
紫色のマントを纏ったやつで、なんと戦場をスゴイ勢いで跳躍したり疾走したりして、こちらに近づいてくる。
アベルに匹敵する動きだ。
「むっ。ジャンプ!」
アベルが跳躍した。
迎え撃つつもりである。
マント姿も跳躍して、アベルと激突した。
「むおっ!?」
突然風が吹き荒れ、アベルが体勢を崩される。
だが、竜騎士は慌てない。
すぐに着地のために降下していった。
その頭上をマント姿が通り過ぎる。
向かうは俺たちのところ。
「敵か!?」
「戦場を見渡しているでござるな。あと、跳躍が不自然に長いでござる」
確かに、マント姿、跳んだっきりなかなか降りてこない。
ついに俺たちの上までやって来たのである。
そして、こちらにだけ聞こえる程度の声で、
『我と出会う前の青魔道士たちか。なんとも懐かしい顔が揃ったものだ。どれ、挨拶をしてやる』
そう聞こえてきた。
あれ?
俺を知ってる?
ということは……。
『地形……ワールウインド』
突然強烈なつむじ風が起こり、俺たちを包囲した。
これってモンスター技じゃん。
「なんの、ワールウインド返し!」
風で風を弾く。
その間に、マント姿は俺たちの目の前に着地していた。
「よし、行くぞ!」
エリカが攻撃を仕掛けた。
彼女はバーサーカーなのだが、今回は非殺傷モードなのでグレイブソードの背を使っている。
これをマント姿に叩きつけた。
『地形……ストーンウォール』
いきなり、エリカの目の前に壁状の地面が盛り上がってきた。
「わっ、なんだ!」
エリカ、それを全力で粉砕する。
すぐに攻撃目標を切り替えられる辺りは流石だな。
そしてその間に、マント姿はさらに俺へと接近していた。
「ツアーッ!」
ホムラが石を投げる。
軽石なので、たくさんヒットしても運が悪くないと死なない。
だが、マント姿はこれを、念のために防ぐことにしたらしい。
『地形……ストーンブラスト』
足元から、石つぶてが吹き上がる。
それが多段ヒットする軽石と激突し、相殺した。
「地形の技? もしかして、伝説の職業の風水士か!」
エリカがハッとした。
マント姿が、笑ったようだ。
『いかにも。我は風水士』
俺の目の前に立ったそいつは、フードをおろした。
そこにいるのは、ゴブリンである。
しかも明らかに、ゴブリンジェネラルのような上位ゴブリンだ。
『貴様らにとっては初めてとなろう。だが、我にとっては久方ぶりの再会。さて青魔道士、この戦に落とし所を設けるため、共闘しようではないか』
武装した各国の義勇軍と、やはり武装したゴブリン王国軍がぶつかり合う。
始まって早々、大混戦の様相を呈していた。
「ここにくさい息を流し込めば敵味方もろとも一網打尽だなあ」
「やめろドルマ」
アベルが真顔で止めてきた。
「俺の仕事へ金を払う者がいなくなる」
「そっちを心配してたか」
アベル、基本的に個人主義なのだ。
うちのエリカはと言うと、顔をしかめている。
「こういうのは好きじゃないな。なんか嫌」
「そうかそうか。じゃあ、俺たちは別働隊で動こう」
そう言う話になった。
もともと、カイナギオとの話では、ゴブリンを一方的に叩きのめすのは現実的ではないという話だった。
彼らもたくさんおり、国を作っている以上、これを滅ぼすというのは簡単にできることではない。
カタクリーコ地方と国境を接する三国は、お世辞にも味方ではないし、それぞれの国も隙あらば国土を奪い取ってやろうと狙っている。
つまり、ゴブリンに全力を注ぎ込んだら横からやられるわけだ。
戦争をさっさと片付けなければ。
そのためには何が必要か。
この辺りを、ゴブリン王国側とやり取りして模索せねばという話だった。
カイナギオ、ゴブリン王国につてがあるのか。
今は戦場に出向いていていないが、あいつもモンスターだし、ゴブリンの仲間がいてもおかしくないかもしれない。
ぬおお、頭を使いすぎてクラクラしてきた。
「ドルマ、大丈夫か!? 顔が赤くなって頭から煙が出ているようにみえるぞ!」
「俺はもともと、難しいことを考えない人間だったのだが、最近妙に難しいことばかり起きるのだ……。うおお」
「これは、案ずるより産むが易しでござるな! 拙者らでちょっと戦場を覗いたりしてみるでござるよー!」
ホムラの意見があり、そうしようということになった。
とりあえず手近な戦場に動くと、俺のミサイルが無差別に降り注ぎ、アベルが上空から次々ゴブリンを攻撃し、エリカが蹴散らし、ホムラが武器を投げまくる。
あっという間に戦場は静かになった。
今回のテーマは、非殺傷。
運が悪ければ死ぬが、運が良ければ死なない。
カイナギオ発案の作戦で、これで俺たちの存在をゴブリン王国に印象付けるというものだ。
死なせてないのは、それなりに腕があるやつなら気付くんだと。
それくらの火力をイメージしてみんなで攻撃してみたぞ。
敵味方が死屍累々だが、戦場にぽっかり穴が空いた形になり、これはたいへん目立つ。
「ゴブリン王国に、こちらに通じようとするのがいれば、これで目立つはずだけど……」
大雑把な作戦ではある。
何も起きないかもしれないし、そもそもゴブリンは交渉可能な相手ではないかもしれない。
俺のイメージだと、人間に敵対するモンスターって感じだしな。
だが、相手はやって来た。
紫色のマントを纏ったやつで、なんと戦場をスゴイ勢いで跳躍したり疾走したりして、こちらに近づいてくる。
アベルに匹敵する動きだ。
「むっ。ジャンプ!」
アベルが跳躍した。
迎え撃つつもりである。
マント姿も跳躍して、アベルと激突した。
「むおっ!?」
突然風が吹き荒れ、アベルが体勢を崩される。
だが、竜騎士は慌てない。
すぐに着地のために降下していった。
その頭上をマント姿が通り過ぎる。
向かうは俺たちのところ。
「敵か!?」
「戦場を見渡しているでござるな。あと、跳躍が不自然に長いでござる」
確かに、マント姿、跳んだっきりなかなか降りてこない。
ついに俺たちの上までやって来たのである。
そして、こちらにだけ聞こえる程度の声で、
『我と出会う前の青魔道士たちか。なんとも懐かしい顔が揃ったものだ。どれ、挨拶をしてやる』
そう聞こえてきた。
あれ?
俺を知ってる?
ということは……。
『地形……ワールウインド』
突然強烈なつむじ風が起こり、俺たちを包囲した。
これってモンスター技じゃん。
「なんの、ワールウインド返し!」
風で風を弾く。
その間に、マント姿は俺たちの目の前に着地していた。
「よし、行くぞ!」
エリカが攻撃を仕掛けた。
彼女はバーサーカーなのだが、今回は非殺傷モードなのでグレイブソードの背を使っている。
これをマント姿に叩きつけた。
『地形……ストーンウォール』
いきなり、エリカの目の前に壁状の地面が盛り上がってきた。
「わっ、なんだ!」
エリカ、それを全力で粉砕する。
すぐに攻撃目標を切り替えられる辺りは流石だな。
そしてその間に、マント姿はさらに俺へと接近していた。
「ツアーッ!」
ホムラが石を投げる。
軽石なので、たくさんヒットしても運が悪くないと死なない。
だが、マント姿はこれを、念のために防ぐことにしたらしい。
『地形……ストーンブラスト』
足元から、石つぶてが吹き上がる。
それが多段ヒットする軽石と激突し、相殺した。
「地形の技? もしかして、伝説の職業の風水士か!」
エリカがハッとした。
マント姿が、笑ったようだ。
『いかにも。我は風水士』
俺の目の前に立ったそいつは、フードをおろした。
そこにいるのは、ゴブリンである。
しかも明らかに、ゴブリンジェネラルのような上位ゴブリンだ。
『貴様らにとっては初めてとなろう。だが、我にとっては久方ぶりの再会。さて青魔道士、この戦に落とし所を設けるため、共闘しようではないか』
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