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第2章 届かない想い
城を飛び出す決意①
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『将来、僕がリーを探して迎えにいくから、それまで待っててね。必ずだよ、絶対に探しだすから』
フレデリック様のことを考えながら、ソファーでうたた寝をしたせいで、6歳の時に一緒に過ごしたときの夢を見た。
あれから、もう16年も経っている。
それでもアレが昨日のことみたいに感じるのは、わたしの人生の色が、あの日以外、ほとんど変わらなかったから。
も~う、リックの嘘つき……。
探し出してくれるって言ったのに。
約束どおり待っていたのに、全然見つけてくれなかった。
それどころか、目の前にいても、全く分かってくれなかったわね。
わたしのことを思い出して欲しくて、リックとの思い出を毎日届けたんだけどな。
リックが好きだと言ったフィナンシエ。
あの時は、全く知らなかった。
母とリンゼーで2週間過ごし、王都の屋敷へ帰ってきた直後から、わたしはフィナンシエを見つけるために、色んな本を読み漁った。
だって、リックが言っていたフィナンシエは、このメレディス王国の本には載っていなかったんだもの。
大事なことも教えてくれないで、意地悪なんだから。
フレンツ語の勉強している時に偶然、それが、フレンツ王国のお菓子だと発見した。
それがきっかけで、父におねだりして、その国のお菓子作りの本を買ってもらった。
今でも覚えている。
フィナンシエを作るレシピ本が欲しくて、人生最大の我がままを父へ言ったんだから。
どの本に、フィナンシエの作り方が載っているか分からない。だから、とにかく一番厚くて高い本を強請ったんだ。
この時ばかりは公爵家に生まれて良かったって思った。
父は、ありとあらゆるコネを使って、レシピの載っている本を探し出してくれたんですもの。
せっかく本を買ってもらったのに、当時のわたしには、まだ、全然分からなかったフレンツ語。
それを読み解きながら、何度も失敗した。
作り方が分かっていないのか、作業が悪いのも分からなかった。
それに、それが本当にリックの言っているフィナンシエなのかも分からなかった。
だって、わたしが作る物以外、食べたことがないから。
いつか、リックに食べてもらいたかった。
リックが理想だと言った、魅惑的な女性に近づけたけど、全然駄目だった。
考えてみれば、誰からも綺麗だとか素敵な女性だとか言われたこともなかったんだから、そもそも自分に魅力がないのだと今にして思う。
結婚したわたしに見向きもしない夫は、妻を全く信用していない。
弟だって信じてくれないリーの話を、フレデリック様が信じるわけがない。
毎日フレデリック様のために作り続けたフィナンシエは、食べてもらえないどころか、箱も開けてもらえなかった。
試すようなことをして、申し訳なかったけど、一度もクッキーを否定してくれなかったわね。
中身を見れば、クッキーでないのは直ぐに分かるもの。
リックにリーだって気付いてもらいたかった。
「アリーチェ様? すごく顔色が悪いですよ、誤魔化そうとして、いつもより化粧が濃くなってますよ。今朝、フィナンシエを作りに行かなかったのも、体調のせいですか?」
いつも鋭い指摘のクロエは、わたしのことをよく見ている。母より少しだけ若そうに見えて、実は違う、一番頼りにしていた侍女だ。
「ただの寝不足だから、気にしないで」
この城で、わたしを気にしてくれる数少ない人達の中に、夫はいなかった。
フレデリック様のことを考えながら、ソファーでうたた寝をしたせいで、6歳の時に一緒に過ごしたときの夢を見た。
あれから、もう16年も経っている。
それでもアレが昨日のことみたいに感じるのは、わたしの人生の色が、あの日以外、ほとんど変わらなかったから。
も~う、リックの嘘つき……。
探し出してくれるって言ったのに。
約束どおり待っていたのに、全然見つけてくれなかった。
それどころか、目の前にいても、全く分かってくれなかったわね。
わたしのことを思い出して欲しくて、リックとの思い出を毎日届けたんだけどな。
リックが好きだと言ったフィナンシエ。
あの時は、全く知らなかった。
母とリンゼーで2週間過ごし、王都の屋敷へ帰ってきた直後から、わたしはフィナンシエを見つけるために、色んな本を読み漁った。
だって、リックが言っていたフィナンシエは、このメレディス王国の本には載っていなかったんだもの。
大事なことも教えてくれないで、意地悪なんだから。
フレンツ語の勉強している時に偶然、それが、フレンツ王国のお菓子だと発見した。
それがきっかけで、父におねだりして、その国のお菓子作りの本を買ってもらった。
今でも覚えている。
フィナンシエを作るレシピ本が欲しくて、人生最大の我がままを父へ言ったんだから。
どの本に、フィナンシエの作り方が載っているか分からない。だから、とにかく一番厚くて高い本を強請ったんだ。
この時ばかりは公爵家に生まれて良かったって思った。
父は、ありとあらゆるコネを使って、レシピの載っている本を探し出してくれたんですもの。
せっかく本を買ってもらったのに、当時のわたしには、まだ、全然分からなかったフレンツ語。
それを読み解きながら、何度も失敗した。
作り方が分かっていないのか、作業が悪いのも分からなかった。
それに、それが本当にリックの言っているフィナンシエなのかも分からなかった。
だって、わたしが作る物以外、食べたことがないから。
いつか、リックに食べてもらいたかった。
リックが理想だと言った、魅惑的な女性に近づけたけど、全然駄目だった。
考えてみれば、誰からも綺麗だとか素敵な女性だとか言われたこともなかったんだから、そもそも自分に魅力がないのだと今にして思う。
結婚したわたしに見向きもしない夫は、妻を全く信用していない。
弟だって信じてくれないリーの話を、フレデリック様が信じるわけがない。
毎日フレデリック様のために作り続けたフィナンシエは、食べてもらえないどころか、箱も開けてもらえなかった。
試すようなことをして、申し訳なかったけど、一度もクッキーを否定してくれなかったわね。
中身を見れば、クッキーでないのは直ぐに分かるもの。
リックにリーだって気付いてもらいたかった。
「アリーチェ様? すごく顔色が悪いですよ、誤魔化そうとして、いつもより化粧が濃くなってますよ。今朝、フィナンシエを作りに行かなかったのも、体調のせいですか?」
いつも鋭い指摘のクロエは、わたしのことをよく見ている。母より少しだけ若そうに見えて、実は違う、一番頼りにしていた侍女だ。
「ただの寝不足だから、気にしないで」
この城で、わたしを気にしてくれる数少ない人達の中に、夫はいなかった。
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