最強の能力師は世界平和の為には頑張らない

秋桜

文字の大きさ
7 / 18
一学期

5,入学式当日② * 〜颯の力〜

しおりを挟む
入学式終了直後。

体育館前のクラス分け発表場所で蘭花は2人の男女に話しかけられていた。

周囲には蘭花達の会話に興味深そうに聞き耳立てている野次馬達がかなりの人数いる。

(うん。けど…プラン変更。この人達にはある程度話した方が良さそう。)

蘭花は覚悟を決めて、にぱっと笑う。
そして、葵依の『隠していたんでしょう?』という言葉に返事をする形で言った。

「…………うん…まあ…けどバレちゃったみたいだしもういいや…けど今夜お父様に一応報告しないとだから、教室に行きがてらなんで分かったか簡単でいいから教えてくれると嬉しいなー。私の渾身の探知妨害を見破ったんだもん2人もAクラスなんでしょ?」

私は場の空気を明るくする為におどけて言った。

「そうだぜ。」

「颯見たいな凄い探知は出来ないけど一応私もAクラスよ。」

「そっか、合ってて良かった!じゃあ、教室いこ!」

そう言って蘭花は2人の手を強引にとって歩き出す。

「あら…積極的ね。」

「そんなに引っ張るな。ちゃんと話すから。」


強引に手を引かれているのに少し嬉しそうな葵依と強引に手を引く蘭花をなんとも言えない表情で見ている颯。
周囲の野次馬達からは2人が対照的に見えた。

しばらく廊下を歩いたところで、もう手を離しても問題ないと判断して蘭花は手を離し、周囲にバレないように防音の結界をはってから2人に聞く。

結界をはった蘭花に颯は気づいた様だったが何の結界かも分かったようで特に何も言われなかった。

「で、なんでバレたの?私下手だった?前にプロの能力師資格持ってる人に褒められたこともあったのに…。」

蘭花が拗ねた顔をして颯を見ると、颯は真剣な顔をして言った。

「いや、今まで見た中で1番見事だったぞ、あんまり見事だったから俺半信半疑で確証なかったし。葵依があんな言い方するから俺が完全に見破ってたみたいになってたけどな。俺"確証ない"って言ったのによ…。」

「ご、ごめん。でも、颯今までこういうので外したことないから…それに、実際神代さんだったわ!………結果オーライ…ね?神代さん。」

葵依はそう言うと蘭花をみてにっこりと微笑んだ。

それを見て蘭花は長いため息をついた。

(なんと…さすが杠家のご令嬢…見事にしてやられたわけ…。)

蘭花は先程まで葵依の事を、はっきり言って舐めていた。
大勢の聞いてる所でみんなに聞こえる音量で転移をバラしたり、みんなが見てるところで隠していたんでしょう?と聞いてきたり…。
杠家のご令嬢にしては、配慮に欠けるんじゃないかと思っていた。
だが、先ほどの態度でしてやられたのは自分だと知り、評価を改めた。

(うん。『多分』とか『もしかして』とかつけながら自信なさげに訊かれてたら私確実に隠し通す方選んでた。そっちの方がめんどう無くて楽だし。)

蘭花にはさっきの会話の時に颯が、葵依の真意に気づいた上であの態度だったのか、気づいてなくて普通に注意していたのかが判断がつかなかったがわざわざ自分から『誤魔化すつもりでした』なんて言う気は無かったので無視して話を進めるとこにした。

(うーん…本当は2人の苗字知ってるけど…もう少し知らないフリしとこ…この2人侮れない。…………後で文句言われても、この2人から名乗られてないしお互い様。)

蘭花はもう少し、おバカな天然ちゃんを演じることに決めた。

「ん?その話から察するに私の能力見破った過程を知ってるのは…えっと…颯君だっけ!あなただけって事?」



「まあな…ちょっと信じられなかったから誰にも話さなかったんだよ…。俺、母さんから受け継いだ方の能力の関係でちょっと目の良さには自信があってな…見破れたのはそのおかげだ。……その…神代さんだけじゃ不公平だから俺も言うけど、ここだけの話にして欲しい。実は体内だけじゃなくて空気中のオルトも見えるんだ。まあ、俺はだけどな。」

颯はそう言った後に、蘭花の方をちらっと見てニヤリと笑った。

蘭花は颯のその笑いに何となく嫌な予感がして慌てて颯と私だけを囲んでもう一個防音の結界をはった。

それを見た颯がクスッと笑ったがバラす気はない様で口にすることは無かった。
そしてその代わりになのか、小声でさっきの言葉の続きを話す。

「俺は見えるだけだ。…な。」

颯の呟きの後、蘭花は思わず葵依の様子をみたが、どうやら最後の呟きは蘭花にしか聞こえてなかった様子で結界が間に合ったことを知って一安心した。

(……なんとも…面倒なことになってきた………あぁ、めんどくさい。)

蘭花は安心とこれからの説明の手間を考えてめんどうに思い、息をひとつはいた。

「見えるだけなんて謙遜して…。昨日からずっと颯らしくないわよ。」

(うん…本当に大丈夫みたい…もう、これ以上めんどうなことなんて要らない。)

蘭花は颯をじっと見た。

目が合うとオレンジの瞳がこちらを見つめ返してきた。

その視線が誰かに似ている気がした。

蘭花はしばらく見つめて、『もうさっきみたいな事言わないでね』という視線を颯に送ったあとに颯と蘭花の2人だけを囲んでいた方の結界だけを解いて、先ほどの仕返しに軽い脅しの意味も込めて颯に明るい声で言った。

「空気中のオルトが見える…なるほど…そういうこと!じゃあ、転移だけじゃなくてバレてるんだ…本当に目が良いんだね。敵には回したくないね。」

蘭花はわざとからかうように言った。

「俺としてはそっちの方のが信じられないんだがな…。」

「そっちは、バラされるといろいろ面倒なことになりそうだから本気で内緒にしててくれるととっても助かるなー。」

話についていけてない様子の葵依は蘭花と颯を交互にみて不思議そうな顔をしていた。

「だろうな。まぁ、言う気ないから安心していいぜ。俺神代さんに勝てる気しないし…もしバラしたら報復の方が怖いしな。」

(報復…?
そこまで言うって…これ……どこまでバレてるんだろう…本気でちょっと釘を指しとこ…。)

蘭花が一瞬だけ素に戻り無表情になる。
そのまま颯をじっと見て、 さっきまでの明るい声とは違い淡々とした口調でかえす。

「………そう、それは賢明な判断。」

それを見て目を見開いて驚く颯と葵依。

「神代さん…それが素?」

「まさかのクールビューティーキャラ…?」

蘭花は2人の反応を確認した後に外面モードに戻ってにぱっと笑った。

「えへへー、どうだろうねぇ。」

「……なぁ…………俺は……いや、今はまぁ、いいや。」

颯が何かを言いかけてやめた後に今まで空気を読んで比較的静かに後ろを着いてきていた葵依が重くなった場を変える為だろうか。
頬をふくらませて言った。

「さっきから颯ばっかり話してずるいわ。それに、昨日からずっと"あれ"とか"そっち"とかそんなのばっかり、なんの事よ颯!」
 
蚊帳の外にされてむくれる葵依に蘭花がフォローをする。

「葵依ちゃんだっけ?その話、後でもいい?」

「葵依でいいわよ?…それで、なんで後で?」

「教室着いちゃった。」

「あら、本当ね…じゃあ続きは入寮式の後ね!」

(後ねって…まだ…終わらないの?これ…。)

扉から1番近かった颯は葵依が納得したのを確認して何か言いたげな蘭花を無視して、教室のドアを開けた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

処理中です...