婚約破棄なんて絶対にしません!

文字の大きさ
17 / 21

第16話

しおりを挟む
「って、クラリス嬢ってあの、数あるフランツ様の婚約者でも筆頭と呼ばれるクラリス嬢と会っちゃったんですか!?」
「うん、親切な言い回しありがとうなーロナルド」
 
 なるほど、オレって実はたくさん婚約者がいるのか。
 それで、クラリスはその中の一人で、かつ一番有力者ってわけか。具体的に何人いるのか気になるなー。
 ゲームの中ではそんな話は出てきてないけど、まぁ、ありがちっちゃ、ありがちだよな。
 けど、さすがに5歳にもみたない子供にそんなにたくさん婚約者はいらにいと思うんです。まじで。
 そんなことをぼんやり思っている横で、ロナルドがオロオロとしている。
 
「でも、なんでクラリス嬢と?」
「いやー・・・・・・なんか、落ちたらいて?」
「しかも、フランツ様のせいで倒れたって!?」
「あー、その、血?を見て、びっくりさせちゃったみたいで、ははは」
「ははは、じゃないですよ、殿下!」

  呑気に笑ってる場合じゃないとピシャリとロナウドに怒られた。
 ロナルドはだいぶ焦っているようだけど、そんなこと言われてもねー過ぎたことだし、しょうがなくない?
 てか、お前もオレが血だらけなの見て倒れたじゃん!
 
「クラリス嬢は王家に次ぐ由緒正しい公爵家の令嬢です。それを、もう・・・・・・フランツ様、あなたって人は」
「いや、一応名乗ってはないから王子ってバレてないと思うんだけどね、オレ」
 
 ヘラりとごまかすように笑うと、そういう問題じゃないと言いたげにロナルドは顔を顰め、アークは対照的ににこりと笑って言った。
 
「クラリス嬢はここに来てすぐ目覚めましたよ。軽い貧血のようだったけど、明日の準備で忙しいらしくって、気丈にもさっさと出て行かれたさ」
「怪我とかしてないなら良かったけど、明日の準備って何?」
 
 会えなかったのは残念だけど、とりあえず何にもなさそうでよかった。
 ホッとしてると、ロナルドはしかめっ面から一転、心配げにオレの顔を覗き込んだ。
 
「・・・・・・フランツ殿下、ご自身のお誕生日をもうお忘れになったんですか?」
「え、もしかして」
「そうですよ、明日の殿下のお誕生日に舞踏会が開かれます。そこで、クラリス嬢とダンスを踊る段取りになっていますが・・・・・・。
 ずいぶん前からあんなに絵姿を見て楽しみにしていたのに・・・・・・兄上、やっぱり殿下は頭を強く打ち過ぎたんじゃ?」
「あ、いやいや!大丈夫だから!ちょっと衝撃が強すぎて、一瞬忘れてただけだから」
 
 あぁ、そうっだった。ほんと、記憶混濁とかそういうの抜きで、すっかり忘れてたわ!
 明日は舞踏会じゃん!
 しかも、ゲームだとそこでヒロインに会うんだった。
 やばいやばい、対策練らないと。ここで失敗するとクラリスとのエンディングが迎えられないかもしれない。
 ロナルドはまだ少し心配そうに顔を顰めているので、取り繕うように笑って誤魔化す。
 まだ納得してなさそうだったけど、無理矢理丸め込み、納得させ、そうそうに医務室を出よう。
 そろそろお暇しようとベッドから降りようとすると、アークにそっと呼び止められてた。
 
「フランツ殿下」
「なに、アーク?」
 
 アークは相変わらず、笑みを浮かべてる。
 不思議に思ってアークの笑みを見つめると、最初に出会った頃のように花が綻ぶように笑った。
 
「やっぱり、なんでもないよ。あぁ、でも」
「でも?」
「殿下に、神様のご加護がありますように」
 
 そういってほほ笑んだアークは、まるで、全てを見通しているようで、腹の底から冷えるようにゾッとした。
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

婚約破棄の、その後は

冬野月子
恋愛
ここが前世で遊んだ乙女ゲームの世界だと思い出したのは、婚約破棄された時だった。 身体も心も傷ついたルーチェは国を出て行くが… 全九話。 「小説家になろう」にも掲載しています。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

悪役令息の婚約者になりまして

どくりんご
恋愛
 婚約者に出逢って一秒。  前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。  その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。  彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。  この思い、どうすれば良いの?

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...