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第7話
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思いっきり転けたんだから、当たり前だけど地面に打ち付けた身体が痛い。
例えお城の中の絨毯のひかれた廊下とはいえ、固い地面にダイブしたんだ。自分でやったとはいえ、正直泣き出したいくらい痛い。
けど。
「あぁ!殿下!!フランツ様!大丈夫ですか?」
突然転んだ俺に動揺したのか、ロナルドが俺の手を離す。
今がチャンスだ。
ロナルドが倒れて俯いてる俺を起き上がらせる前に、驚くほどの早さで立ち上がり、痛む膝を無視してロナルドに背を向け全力で走った。
「え?あ、で、殿下!!ちょっと待って!!」
ロナルドが慌てて俺を追いかけてくる。
子供の足だ。あっという間に追いつかれるだろう。
でも、せっかく膝を痛めてまで飛び出したんだ。簡単に捕まったらつまらない。
俺は走り出しながら廊下の先の、先ほど朝食を食べた部屋に滑り込んだ。
そこでは俺たちの朝食の後片付けをささているメイドが何人かいて、驚いたように俺を見ている。
すぐ背後にロナルドが迫って来ている。迷ってる暇はない。
特に言い訳もなく、俺は部屋の窓から身を乗り出して、怪盗のごとく飛び出した。
今度こそメイドたちが悲鳴をあげる。
ロナルドも追いついたのか、窓から逃げ出す瞬間に、青ざめた顔で俺を見ていた。
なんだよ、そんな悲鳴を上げなくたっていいじゃん。
そう思ったのもつかの間、飛び出してすぐ地面に足が着くかと思ったら、何故か驚くくらいの浮遊感。
「え?」
まさか。
「ぎゃーーーーーーーっっっ!! 」
なんも考えないで飛び出したんだけど、ここ結構高い塔の上だったんですねぇええええ!
落下しながら、窓からロナルドが必死で手を伸ばしている。
恐らく彼自身も飛び降りようとしてるのか、周りのメイド達に必死に抑えられていた。
「きゃーーーっ!!!」
そして、何故か下からも悲鳴が。
もしかしたら、誰かいるのか。
巻き込んじゃったら申し訳ないけど、落下する体はどうにもこうにもならない。
てゆーかそんなこと気にしてる場合じゃないけどね!
ガツンと、体が大きく跳ねた。
地面よりも先に大きな木の枝にぶつかったらしい。
そしてそこから、まるでパチンコの玉のようにガツガツ体を木の枝にぶつけながら、悲鳴をあげる暇もなく地面に落ちた。
「ってぇー・・・・・・」
正直、痛いどころじゃないけど、無理矢理ゆっくり立ち上がる。
立ち上がれただけじゃなく、試しに腕を回して見ても、足をブラブラしても折れてる感じはしない。
空を見上げると、そこには約3階建てくらいの高さの窓から身を乗り出すロナルドの姿。
顔が必死で、思わず無事を証明したくて手を振ると、泣きそうな顔で窓から体を引っ込めた。恐らく、猛ダッシュでここまでやってくるつもりだろう。
そうなると、逃げ出した意味がない。
まぁ、ここまで逃走中みたいなことするつもりはなかったんだけどな。
つか、俺よく無事だったよね。普通、子供があの高さから落ちたら無事ではすまされない。もしかしたら、俺をこの世界に送った女神のチートとやらなのかもしれない。
「だ、だいじょうぶですの?」
俺が物思いに耽っていると、突然、木の影から女の子が心配そうに顔を出してきた。
ハニーブロンドとエメラルドの様な瞳を目一杯開いた整った顔の少女は、クマのぬいぐるみを抱き締めながら、怯えたようにこちらを伺っている。
それはよく見知った顔だった。
画面の中で、何度も似合わない歪んだ笑顔を浮かべた彼女。
まさか、こんなところで会うなんて。
「もしかして、クラリス?」
未来の悪役令嬢、クラリス・フォン・ステフォードは、俺のセリフに不愉快そうに顔を歪めた。
例えお城の中の絨毯のひかれた廊下とはいえ、固い地面にダイブしたんだ。自分でやったとはいえ、正直泣き出したいくらい痛い。
けど。
「あぁ!殿下!!フランツ様!大丈夫ですか?」
突然転んだ俺に動揺したのか、ロナルドが俺の手を離す。
今がチャンスだ。
ロナルドが倒れて俯いてる俺を起き上がらせる前に、驚くほどの早さで立ち上がり、痛む膝を無視してロナルドに背を向け全力で走った。
「え?あ、で、殿下!!ちょっと待って!!」
ロナルドが慌てて俺を追いかけてくる。
子供の足だ。あっという間に追いつかれるだろう。
でも、せっかく膝を痛めてまで飛び出したんだ。簡単に捕まったらつまらない。
俺は走り出しながら廊下の先の、先ほど朝食を食べた部屋に滑り込んだ。
そこでは俺たちの朝食の後片付けをささているメイドが何人かいて、驚いたように俺を見ている。
すぐ背後にロナルドが迫って来ている。迷ってる暇はない。
特に言い訳もなく、俺は部屋の窓から身を乗り出して、怪盗のごとく飛び出した。
今度こそメイドたちが悲鳴をあげる。
ロナルドも追いついたのか、窓から逃げ出す瞬間に、青ざめた顔で俺を見ていた。
なんだよ、そんな悲鳴を上げなくたっていいじゃん。
そう思ったのもつかの間、飛び出してすぐ地面に足が着くかと思ったら、何故か驚くくらいの浮遊感。
「え?」
まさか。
「ぎゃーーーーーーーっっっ!! 」
なんも考えないで飛び出したんだけど、ここ結構高い塔の上だったんですねぇええええ!
落下しながら、窓からロナルドが必死で手を伸ばしている。
恐らく彼自身も飛び降りようとしてるのか、周りのメイド達に必死に抑えられていた。
「きゃーーーっ!!!」
そして、何故か下からも悲鳴が。
もしかしたら、誰かいるのか。
巻き込んじゃったら申し訳ないけど、落下する体はどうにもこうにもならない。
てゆーかそんなこと気にしてる場合じゃないけどね!
ガツンと、体が大きく跳ねた。
地面よりも先に大きな木の枝にぶつかったらしい。
そしてそこから、まるでパチンコの玉のようにガツガツ体を木の枝にぶつけながら、悲鳴をあげる暇もなく地面に落ちた。
「ってぇー・・・・・・」
正直、痛いどころじゃないけど、無理矢理ゆっくり立ち上がる。
立ち上がれただけじゃなく、試しに腕を回して見ても、足をブラブラしても折れてる感じはしない。
空を見上げると、そこには約3階建てくらいの高さの窓から身を乗り出すロナルドの姿。
顔が必死で、思わず無事を証明したくて手を振ると、泣きそうな顔で窓から体を引っ込めた。恐らく、猛ダッシュでここまでやってくるつもりだろう。
そうなると、逃げ出した意味がない。
まぁ、ここまで逃走中みたいなことするつもりはなかったんだけどな。
つか、俺よく無事だったよね。普通、子供があの高さから落ちたら無事ではすまされない。もしかしたら、俺をこの世界に送った女神のチートとやらなのかもしれない。
「だ、だいじょうぶですの?」
俺が物思いに耽っていると、突然、木の影から女の子が心配そうに顔を出してきた。
ハニーブロンドとエメラルドの様な瞳を目一杯開いた整った顔の少女は、クマのぬいぐるみを抱き締めながら、怯えたようにこちらを伺っている。
それはよく見知った顔だった。
画面の中で、何度も似合わない歪んだ笑顔を浮かべた彼女。
まさか、こんなところで会うなんて。
「もしかして、クラリス?」
未来の悪役令嬢、クラリス・フォン・ステフォードは、俺のセリフに不愉快そうに顔を歪めた。
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