41 / 51
勇者、拾っちゃいました。
異世界人と異世界人
しおりを挟む
目が醒めると、一番最初に目の前に飛び込んできたのは美しい白い薔薇だった。
そして、私の身体を覆うウニャウニャした蔓。まるで、囚人のようにベッドに縛り付けられている。
「・・・・・・メリアローズ」
「あぁ!セラサクヤ!起きたのね!!」
声を掛けた途端、目の前の薔薇が起き上がり、その下にある可愛らしい顔を涙で濡らしたメリアローズが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
思わず頭を撫でようと手を動かそうとしたけど、蔓に抑えられた身体は微動だにしない。
「あの、メリアローズ?」
「心配したのよ!心配したのよ!!だって、だって!貴女、倒れたのよ!?」
興奮した彼女が、私の首に縋り付きながら叫ぶ。苦しくはないけど、うねりまくる蔓が気持ち悪いんだよねぇ。
「メリア」
「あぁ、本当に!本当に良かった!目が覚めて!目が覚めなければ、男を殺して貴女の魔力を戻そうと思ったのだけど、しなくて済んだわ!!」
「いや、せっかく助けたんだから殺さないでよ」
早めに目が覚めて、本当に良かった。
「貴女を助けるのに犠牲が必要なら、どんな犠牲でも厭わないわ!」
「・・・・・・厭ってください」
メリアローズならやり兼ねないので思わずそう言うと、可愛らしい顔が少し剥れた。
心配してくれるのは有難いけど、さすがにちょっと重いぜメリアローズ。
重いといえば、心配性のトムの姿が見えない。彼ならメリアローズと同じように私が目覚めるまで張り付いていそうだけど、今はいないようだ。
「とりあえず、トイレに行きたいから蔓外してくれない?」
「あら、そんなのここですればいいじゃない?」
「いやいやいやいや!さすがにそんなハードプレイ嫌だから!!」
触手プレイにお漏らしとか、本当に勘弁して下さい!私はそういうジャンル目指してないから!!
心配を拗らせたメリアローズを説得するのに、だいぶ時間はかかったけど、とりあえず人としての尊厳は守れたことだけは言っておく。
言う必要はないけどね!
無事にトイレも済ませて、速攻でメリアローズの元に戻ると、ベッドに張り巡らせていた蔓は大人しくドレスの中に仕舞われていた。
少し落ち着いたらしいメリアローズの様子にホッとしながら側に行くと、安心したように彼女は笑った。
どうやら、相当心配をかけたらしい。
慰めるように、今度こそ彼女の頭を撫でてやる。
素直に頭を預けてくるメリアローズは、どこか小動物のようで可愛らしい。
「そういえば、トムは?」
メリアローズとは、違った意味で心配なのがトムだ。
トムならせっかく助けた男の人に無体などしないだろうけど、私への説教が怖い。
「魔法の本は、男の世話をしているわ」
別に放っておけばいいじゃない、と拗ねるメリアローズを抱きあげる。
文句は出ないので、とりあえず機嫌は少し上昇したようだ。
人助けとはいえ、トムにも心配をかけただろう。意識を失う前にみた顔は、泣きそうだった。
これは、早めに謝るに越したことないと思い部屋を出ると、すぐ隣の客室から聞いたことのない男の人の怒声が聞こえた。
「トム!?」
トムは姿が変わっても、声だけは変わらない。
聞き覚えのない声は、おそらく私が助けた人だろう。
慌てて部屋に飛び込むと、そこにはトムが見たこともない怒りの形相で立ち尽くしている。
そして、目を覚ましたであろう男が、剣を持って構えていた。
お互いに傷はない。戦った訳ではないのだろうけど、二人の間には酷い緊張感が漂っていて、私は声をかけることもできなかった。
「お前らは、誰だ?」
男が喋る。
その声には疲れが滲んでいるけど、死にそうではない。
鎧は外されていて、上半身が裸だ。思ったよりも細マッチョなその身体に古い傷はあっても、真新しい傷はない。
どうやら、私の魔法は上手く発動したらしい。あんな呪文、というなお呪い、大声で叫ぶのは嫌だけど、治ったなら良かった。
「ここは、何処だ?
誰が俺の傷を治した?
お前らは」
誰だ?
男がもう一度、トムに問う。
けれど、トムは答えずに男を睨みつけたままだ。
「おい!!」
返事をしないトムに痺れを切らしたのか、男が叫ぶ。
そして、トムに向かっていた剣先が私に真っ直ぐ向かった。
その途端、メリアローズが殺気立ち、トムの髪が逆立った。
それでも、男は臆すことなく私を見つめる。その瞳の色は見たこともない深いエメラルドグリーンだ。
「もう一度、問う。
お前らは誰だ?
ここは何処だ?
何の目的があって俺を助けた?」
「誰かを助けるのに理由がいるの?」
吐き捨てるような言い方に、思わずそう答えると、男は驚いたように目を見開いた。
「あんた、言葉が通じるんだな?」
「どういうこと?」
「マスター、あまり喋らないで下さい」
トムは警戒したように、私に言った。
「彼は異世界人です。それも、マスターとは違う方法できた、ね」
私は思わず声を失って、目の前の異世界人を唖然と見つめてしまった。
そして、私の身体を覆うウニャウニャした蔓。まるで、囚人のようにベッドに縛り付けられている。
「・・・・・・メリアローズ」
「あぁ!セラサクヤ!起きたのね!!」
声を掛けた途端、目の前の薔薇が起き上がり、その下にある可愛らしい顔を涙で濡らしたメリアローズが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
思わず頭を撫でようと手を動かそうとしたけど、蔓に抑えられた身体は微動だにしない。
「あの、メリアローズ?」
「心配したのよ!心配したのよ!!だって、だって!貴女、倒れたのよ!?」
興奮した彼女が、私の首に縋り付きながら叫ぶ。苦しくはないけど、うねりまくる蔓が気持ち悪いんだよねぇ。
「メリア」
「あぁ、本当に!本当に良かった!目が覚めて!目が覚めなければ、男を殺して貴女の魔力を戻そうと思ったのだけど、しなくて済んだわ!!」
「いや、せっかく助けたんだから殺さないでよ」
早めに目が覚めて、本当に良かった。
「貴女を助けるのに犠牲が必要なら、どんな犠牲でも厭わないわ!」
「・・・・・・厭ってください」
メリアローズならやり兼ねないので思わずそう言うと、可愛らしい顔が少し剥れた。
心配してくれるのは有難いけど、さすがにちょっと重いぜメリアローズ。
重いといえば、心配性のトムの姿が見えない。彼ならメリアローズと同じように私が目覚めるまで張り付いていそうだけど、今はいないようだ。
「とりあえず、トイレに行きたいから蔓外してくれない?」
「あら、そんなのここですればいいじゃない?」
「いやいやいやいや!さすがにそんなハードプレイ嫌だから!!」
触手プレイにお漏らしとか、本当に勘弁して下さい!私はそういうジャンル目指してないから!!
心配を拗らせたメリアローズを説得するのに、だいぶ時間はかかったけど、とりあえず人としての尊厳は守れたことだけは言っておく。
言う必要はないけどね!
無事にトイレも済ませて、速攻でメリアローズの元に戻ると、ベッドに張り巡らせていた蔓は大人しくドレスの中に仕舞われていた。
少し落ち着いたらしいメリアローズの様子にホッとしながら側に行くと、安心したように彼女は笑った。
どうやら、相当心配をかけたらしい。
慰めるように、今度こそ彼女の頭を撫でてやる。
素直に頭を預けてくるメリアローズは、どこか小動物のようで可愛らしい。
「そういえば、トムは?」
メリアローズとは、違った意味で心配なのがトムだ。
トムならせっかく助けた男の人に無体などしないだろうけど、私への説教が怖い。
「魔法の本は、男の世話をしているわ」
別に放っておけばいいじゃない、と拗ねるメリアローズを抱きあげる。
文句は出ないので、とりあえず機嫌は少し上昇したようだ。
人助けとはいえ、トムにも心配をかけただろう。意識を失う前にみた顔は、泣きそうだった。
これは、早めに謝るに越したことないと思い部屋を出ると、すぐ隣の客室から聞いたことのない男の人の怒声が聞こえた。
「トム!?」
トムは姿が変わっても、声だけは変わらない。
聞き覚えのない声は、おそらく私が助けた人だろう。
慌てて部屋に飛び込むと、そこにはトムが見たこともない怒りの形相で立ち尽くしている。
そして、目を覚ましたであろう男が、剣を持って構えていた。
お互いに傷はない。戦った訳ではないのだろうけど、二人の間には酷い緊張感が漂っていて、私は声をかけることもできなかった。
「お前らは、誰だ?」
男が喋る。
その声には疲れが滲んでいるけど、死にそうではない。
鎧は外されていて、上半身が裸だ。思ったよりも細マッチョなその身体に古い傷はあっても、真新しい傷はない。
どうやら、私の魔法は上手く発動したらしい。あんな呪文、というなお呪い、大声で叫ぶのは嫌だけど、治ったなら良かった。
「ここは、何処だ?
誰が俺の傷を治した?
お前らは」
誰だ?
男がもう一度、トムに問う。
けれど、トムは答えずに男を睨みつけたままだ。
「おい!!」
返事をしないトムに痺れを切らしたのか、男が叫ぶ。
そして、トムに向かっていた剣先が私に真っ直ぐ向かった。
その途端、メリアローズが殺気立ち、トムの髪が逆立った。
それでも、男は臆すことなく私を見つめる。その瞳の色は見たこともない深いエメラルドグリーンだ。
「もう一度、問う。
お前らは誰だ?
ここは何処だ?
何の目的があって俺を助けた?」
「誰かを助けるのに理由がいるの?」
吐き捨てるような言い方に、思わずそう答えると、男は驚いたように目を見開いた。
「あんた、言葉が通じるんだな?」
「どういうこと?」
「マスター、あまり喋らないで下さい」
トムは警戒したように、私に言った。
「彼は異世界人です。それも、マスターとは違う方法できた、ね」
私は思わず声を失って、目の前の異世界人を唖然と見つめてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる