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勇者、拾っちゃいました。
喉に詰まらないようご注意を
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「おい、こいつサクヤの知り合いか?」
目と身体をしっかりと後ろから拘束されたリノレイが、やや疲れ気味に聞いて来た。
全力で拘束を解こうと抵抗していたが、ついに諦めたらしい。まぁ、いくら全力を出した所で、グリンダ様の力には敵わないだろう。
「グリンダ様はこの世界の神様よ」
「グリンダ?神はティスーリアにはミーキート様しかいないだろ??」
それがいるんですよね。だってここ、ティスーリアじゃないし。
リノレイの世界は唯一神だったのか、彼は首を傾げるばかりだ。
そんな様子をみたグリンダ様は可笑しそうに笑うばかり。いや、笑ってばかりじゃなくて、説明してよ色々と。
「いやぁ、こういう反応がやっぱり良いよね。セラサクヤはだいぶ落ち着いてしまってたから」
「そりゃ、グリンダ様が来るの遅かったからでしょ」
「あっはっはっ!」
グリンダ様ってこんな人だっけ?
いや、人じゃなくて神様だけど。
「説明に来たんじゃないんですか、グリンダ様?それとも、言い訳をしに?」
グリンダ様は魅力的な瞳で私を見つめると、少しだけ憂いを帯びた顔で笑った。
「勿論、説明に来たのよ」
そう言うと、グリンダ様は神様らしく神々しい光を放ちながら、豊かな巻き毛から髪の毛を一本抜き、地面に落とした。
「聖なる勇者、リノレイ・シー。
君は異世界ティスーリアで不当な目に遭い、命が尽きようとしていた。
我々、異世界労働神連盟はあまりにも過酷な運命の君を助け、新しい人生を歩むサポートをすることを決議し、ここに召喚したのよ」
「はぁ?なんだよ、それ。ここはティスーリアじゃないってことか?」
私は思わず異世界労働神連盟って何それ?なんて聞きたかったけど、それよりも動揺しているリノレイに遠慮して、グッと言葉を飲み込んだ。
偉いぞ、私。正直凄い気になるけど、ここは我慢だ私。
そんな私を知ってか知らずか、グリンダ様の説明は更に続く。
「ここは異世界ティファンス。最後に神々が辿り着く、緩やかで穏やかな世界よ。
少なくとも、ここで君は君の意思で生きていけることは保証するさ」
「俺の意思・・・・・・」
顔の半分を覆われたままのリノレイの表情は、全く読めない。
グリンダ様はそんなリノレイを後ろから抱き締めながら、地面にそっと手をかざした。
すると、先程グリンダ様が抜いた髪の毛から突然葉っぱが生え出し、一気に成長して大きな花の蕾を幾つかつけた。
「突然召喚してしまった君には、なんの祝福も授けることが出来なかったから、代わりに私から幾つかプレゼントをあげる」
「プレゼント?」
「まずは言葉かしら?」
そう言って、グリンダ様はクルリと手を捻る。そうすると、蕾の一つが緩やかに開く。花の色は美しい水色だったが、その中心には何故か日本でよく見たことあるプルンとした一口サイズの固形物。いやいやまさか。
「やっぱり、味噌味だね」
「・・・・・・ミソ??」
彼の世界には、味噌は存在しないらしい。いや、それよりグリンダ様は、何故ピンポイントで日本の文化を知ってるんだ?
「グリンダ様、未来道具はちょっと・・・・・・」
「おや、コノハの報告ではポピュラーと聞いてのだけど」
コノハさん、貴女のせいか。
確かに、ポピュラーっちゃあポピュラーだけど。まだ現代科学では作られてないですからね!
しかし、そんなことなど一切知らないリノレイは、不安げにしている。
そんなリノレイに躊躇することなく、コンニャクを口に突っ込んだグリンダ様。いや、本当に神様じゃなきゃこんな酷いこと出来ない。
私でさえ、目隠しされた状態で謎のプルプルした物を口に無理矢理突っ込まれたら、幾ら慣れ親しんだ味とはいえ吐き出すだろう。
けど、リノレイはそれすらも許させることなく、グリンダ様に味噌味のそれを飲み込むまで押さえつけられ、何とか飲みきった頃には息が上がっていた。
あぁ、可哀想に。
そしてグリンダ様は、何事もなかったかのように笑った。神様って酷い。
「他にも祝福が必要かと思ったけれど、君は元々ティスーリアの神様に祝福されてるからね、必要ないかも」
「・・・・・・ミーキート様に?」
まだ息の上がっているリノレイが、思わず背後にいるグリンダ様を振り返る。
「元々、彼から異世界労働神連盟に打診があったのさ。リノレイ君を助けて欲しいって」
「ミーキート様が・・・・・・」
「彼も、精霊王のやり方に不満を持っていたみたいだよ。まぁ、止めれられなかったみたいだけど」
ちょっとだけ遠い目をしたグリンダ様が、仕切り直しとばかりに、パンっと手を叩いた。
すると、リノレイの胸の辺りから淡い光が浮かび上がり、驚く事にそこから小さな羽が生えてきた。
「あと、私に出来ることといえば、君の身体に封印されている彼女を解放するくらいかな?」
彼女、と呼ばれた羽の根元からだんだん光が強くなり、そこから小さな羽がさらに生えてくる。
大きな羽と小さな羽は、不思議な青い色の羽だった。まるで、南国の海をそのまま切り取ったような美しい羽は、そのまま大きく広がって、柔らかい胸毛の胴体が見えてくる。
それは、私が見た中で世界で一番美しい、グリフィンの姿だった。
目と身体をしっかりと後ろから拘束されたリノレイが、やや疲れ気味に聞いて来た。
全力で拘束を解こうと抵抗していたが、ついに諦めたらしい。まぁ、いくら全力を出した所で、グリンダ様の力には敵わないだろう。
「グリンダ様はこの世界の神様よ」
「グリンダ?神はティスーリアにはミーキート様しかいないだろ??」
それがいるんですよね。だってここ、ティスーリアじゃないし。
リノレイの世界は唯一神だったのか、彼は首を傾げるばかりだ。
そんな様子をみたグリンダ様は可笑しそうに笑うばかり。いや、笑ってばかりじゃなくて、説明してよ色々と。
「いやぁ、こういう反応がやっぱり良いよね。セラサクヤはだいぶ落ち着いてしまってたから」
「そりゃ、グリンダ様が来るの遅かったからでしょ」
「あっはっはっ!」
グリンダ様ってこんな人だっけ?
いや、人じゃなくて神様だけど。
「説明に来たんじゃないんですか、グリンダ様?それとも、言い訳をしに?」
グリンダ様は魅力的な瞳で私を見つめると、少しだけ憂いを帯びた顔で笑った。
「勿論、説明に来たのよ」
そう言うと、グリンダ様は神様らしく神々しい光を放ちながら、豊かな巻き毛から髪の毛を一本抜き、地面に落とした。
「聖なる勇者、リノレイ・シー。
君は異世界ティスーリアで不当な目に遭い、命が尽きようとしていた。
我々、異世界労働神連盟はあまりにも過酷な運命の君を助け、新しい人生を歩むサポートをすることを決議し、ここに召喚したのよ」
「はぁ?なんだよ、それ。ここはティスーリアじゃないってことか?」
私は思わず異世界労働神連盟って何それ?なんて聞きたかったけど、それよりも動揺しているリノレイに遠慮して、グッと言葉を飲み込んだ。
偉いぞ、私。正直凄い気になるけど、ここは我慢だ私。
そんな私を知ってか知らずか、グリンダ様の説明は更に続く。
「ここは異世界ティファンス。最後に神々が辿り着く、緩やかで穏やかな世界よ。
少なくとも、ここで君は君の意思で生きていけることは保証するさ」
「俺の意思・・・・・・」
顔の半分を覆われたままのリノレイの表情は、全く読めない。
グリンダ様はそんなリノレイを後ろから抱き締めながら、地面にそっと手をかざした。
すると、先程グリンダ様が抜いた髪の毛から突然葉っぱが生え出し、一気に成長して大きな花の蕾を幾つかつけた。
「突然召喚してしまった君には、なんの祝福も授けることが出来なかったから、代わりに私から幾つかプレゼントをあげる」
「プレゼント?」
「まずは言葉かしら?」
そう言って、グリンダ様はクルリと手を捻る。そうすると、蕾の一つが緩やかに開く。花の色は美しい水色だったが、その中心には何故か日本でよく見たことあるプルンとした一口サイズの固形物。いやいやまさか。
「やっぱり、味噌味だね」
「・・・・・・ミソ??」
彼の世界には、味噌は存在しないらしい。いや、それよりグリンダ様は、何故ピンポイントで日本の文化を知ってるんだ?
「グリンダ様、未来道具はちょっと・・・・・・」
「おや、コノハの報告ではポピュラーと聞いてのだけど」
コノハさん、貴女のせいか。
確かに、ポピュラーっちゃあポピュラーだけど。まだ現代科学では作られてないですからね!
しかし、そんなことなど一切知らないリノレイは、不安げにしている。
そんなリノレイに躊躇することなく、コンニャクを口に突っ込んだグリンダ様。いや、本当に神様じゃなきゃこんな酷いこと出来ない。
私でさえ、目隠しされた状態で謎のプルプルした物を口に無理矢理突っ込まれたら、幾ら慣れ親しんだ味とはいえ吐き出すだろう。
けど、リノレイはそれすらも許させることなく、グリンダ様に味噌味のそれを飲み込むまで押さえつけられ、何とか飲みきった頃には息が上がっていた。
あぁ、可哀想に。
そしてグリンダ様は、何事もなかったかのように笑った。神様って酷い。
「他にも祝福が必要かと思ったけれど、君は元々ティスーリアの神様に祝福されてるからね、必要ないかも」
「・・・・・・ミーキート様に?」
まだ息の上がっているリノレイが、思わず背後にいるグリンダ様を振り返る。
「元々、彼から異世界労働神連盟に打診があったのさ。リノレイ君を助けて欲しいって」
「ミーキート様が・・・・・・」
「彼も、精霊王のやり方に不満を持っていたみたいだよ。まぁ、止めれられなかったみたいだけど」
ちょっとだけ遠い目をしたグリンダ様が、仕切り直しとばかりに、パンっと手を叩いた。
すると、リノレイの胸の辺りから淡い光が浮かび上がり、驚く事にそこから小さな羽が生えてきた。
「あと、私に出来ることといえば、君の身体に封印されている彼女を解放するくらいかな?」
彼女、と呼ばれた羽の根元からだんだん光が強くなり、そこから小さな羽がさらに生えてくる。
大きな羽と小さな羽は、不思議な青い色の羽だった。まるで、南国の海をそのまま切り取ったような美しい羽は、そのまま大きく広がって、柔らかい胸毛の胴体が見えてくる。
それは、私が見た中で世界で一番美しい、グリフィンの姿だった。
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