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修行編
第43話 逃避行 〜召集令状〜 その2
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『人の命は何よりも大切。どんな理由があろうと人を殺してはならない』
そんな平和で豊かな世界の道徳観が、この異世界で何処まで通じるのだろうか。それはカイルにも分からない。
今も彼自身、妹には偉そうに言っておきながら「レイラを犯罪者の妹にしたくない」と言う理由で、そして「卑怯者の妹として白い目で見られて欲しくない」と言う理由で、自らはその信念を覆し戦地へと赴く選択を受け入れようとしている。
人の信念など、たかだかこんなものだ。置かれた環境ですぐにひっくり返ってしまう。
この時カイルは、そんな中途半端な信念を妹にまんまと見透かされた様な気がした。
妹は、小さな胸にいっぱいの不安を抱えながら一心に兄を見つめていた。
「ごめんレイラ。確かにお前の言う通りだ。お兄ちゃんうっかり大事な事を忘れるところだった」
「良かった。じゃぁもう戦争に行くなんて言わない?」
「うん言わない。ありがとうな気が付かせてくれて――」
緊張で強張っていた妹の顔がパッとほころんだ。そして安堵の表情が戻ると同時に、その大きな瞳から大粒の涙がポロリと一粒こぼれた。
「カイル=バレンティン!」
役人の声は、相変わらず声高で威圧的に兄の名前を呼び続ける。しかし、幾度とない兄への呼びかけも、今となってはまったくの無意味である。彼の心はもう決まっているのだ。
カイルは妹の頬に溢れた涙をそっと手で拭ってやる。
「なぁレイラ。このままお兄ちゃんと一緒に剣の修行を続けたいか?」
「うん」
「そうか――でもそうなるとこの村を出ていかなくちゃならないぞ」
「別にいいよ。それでお兄ちゃんと一緒にいられるなら――」
生まれ育ったオルマル村を離れることに、妹は一切躊躇することなくキッパリと言い切った。
「よし分かった。じゃぁこのまま家には戻らずに今から出発しよう。」
「えっ今から?」
「そうだ。いま家に帰ったらお兄ちゃんはあのお役人に捕まっちゃうだろ?」
冒険の始まりと言うのは、ある日突然やって来る。きっかけは宝の地図か、それともさらわれた恋人を助け出すためか――。
この兄妹の冒険の場合、始まりは確かに用意周到とはいかなかったかもしれない。着の身着のまま、行くあてすら決まっていないまるで夜逃げ同然のスタートだ。しかし、行くあてなど無くてもこの兄妹にはドラゴン退治と言う夢があり、そして大義名分があった。
それは『千年九剣』を極める為の修行の旅――
日の暮れかかった裏山の頂上。二人は眼下に見えるオルマル村に向かって深々と頭を下げると、今まで自分たち兄妹に良くしてくれた村の皆への感謝と、幼い頃から慣れ親しんだオルマル村への別れを告げた。
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妹は、小さな胸にいっぱいの不安を抱えながら一心に兄を見つめていた。
「ごめんレイラ。確かにお前の言う通りだ。お兄ちゃんうっかり大事な事を忘れるところだった」
「良かった。じゃぁもう戦争に行くなんて言わない?」
「うん言わない。ありがとうな気が付かせてくれて――」
緊張で強張っていた妹の顔がパッとほころんだ。そして安堵の表情が戻ると同時に、その大きな瞳から大粒の涙がポロリと一粒こぼれた。
「カイル=バレンティン!」
役人の声は、相変わらず声高で威圧的に兄の名前を呼び続ける。しかし、幾度とない兄への呼びかけも、今となってはまったくの無意味である。彼の心はもう決まっているのだ。
カイルは妹の頬に溢れた涙をそっと手で拭ってやる。
「なぁレイラ。このままお兄ちゃんと一緒に剣の修行を続けたいか?」
「うん」
「そうか――でもそうなるとこの村を出ていかなくちゃならないぞ」
「別にいいよ。それでお兄ちゃんと一緒にいられるなら――」
生まれ育ったオルマル村を離れることに、妹は一切躊躇することなくキッパリと言い切った。
「よし分かった。じゃぁこのまま家には戻らずに今から出発しよう。」
「えっ今から?」
「そうだ。いま家に帰ったらお兄ちゃんはあのお役人に捕まっちゃうだろ?」
冒険の始まりと言うのは、ある日突然やって来る。きっかけは宝の地図か、それともさらわれた恋人を助け出すためか――。
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