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第一部 剣なんて握ったことの無い俺がでまかせで妹に剣術を指導したら、最強の剣聖が出来てしまいました。

第21話 カイル 明日のために…… その8

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 さて、妹の剣術の師匠たる俺は、ここに来て何でも出来ちゃう可能性と、いわゆる現実の狭間に悩まされていた。

 いや~俺さ。どうしても言ってみたい台詞ってのがあってね。それってさ、剣術の修行ならどうしても初期の段階にやっておかなければならないことなんだけど。

 どうしてもここら辺でやって置かないとさ。妹に簡単にクリアされちゃっても困るっていうか……。

 あれですよ。

 俺が言ってみたい台詞って。

『さあ。この岩を切ってみろ……』

 ってやつ。



 身の丈よりも大きな岩を前にしてね。さも当然のように俺が言うわけですよ。

 当然。妹はその圧倒的不可能を目の前にして「そんなの無理です……」って思うわけ。いや、もしかしたら声に出して言っちゃうかも知れないな~。


 でもさ。頑張っちゃう妹にはそれが出来ちゃうんだよなぁ~。この世界なら(多分……)


 雨の日も、風の日も、そして雪の日も……。幼い少女が、これと信じてただひたすら巨岩に立ち向かう……。

 う~ん。絵になるなぁ。


 もちろんそれは力押しじゃぁどうにもならない。超スピードで剣を振って『真空波!』なんてのも無理。だって妹はまだ身体を鍛える修行はしてないしね。

 身体鍛えてしまったら「あっ。出来ちゃった……」なんて言いかね無いだろう?俺の妹は。



 だからこそ俺は早く見つけ出さなければならないのだ。力が無くても岩を切る『俺理論』ってやつをさ。


 それにね。俺ってば待ちきれなくて、もう家の近くにそれっぽい石も見つけてあるんだ。もちろん町で古ぼけた剣も一本買ってきた。

 そして俺はね。決行は絶対に雪の降る日の朝って決めているの。


 むっちゃ雰囲気出ると思わない?

 俺さ。今からワクワクが止まらないよ。



 う~ん。でもこれって……。

 なんかあれと似てる……。



 子供の頃。ゲーム機をまだ買えてないのに、先走ってソフトだけ買っちゃった時の気持ちと……。


 うぐぐ……。ちょっと胸が苦しくなってきた……。

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