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第一章
第十五話 記憶の断片
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エレナの部屋まで来ると、早速と言わんばかりに話し出す。
「あの男と目が合った瞬間に、全てが分かった。まるで当然のように
あの時の記憶を取り戻したの。」
彼女が不安がっている様子はない。
ここは聞きに徹するか。アシュベルが続きを促す。
「それで?」
「あの男、セーデル伯父さんは母上の従兄だった。
王宮のひと部屋には母上と父上、母上に抱かれながらぐずる私。そしてそこにセーデルがいた。
幸いだったのは別室でお付きに守られながら眠っていた私の双子の妹。」
その時のことを辿るようにエレンは続ける。
「勿論、部屋の外には精鋭の護衛がついていたけれど、事はいきなり起きた・・」
ズキッ。
そ
の先を口にしようとすると頭に激しい痛みが襲った。
ん・・痛い。
それに体がぴりぴりする・・指先まで。
こんな事は初めてだ。
頭を押さえながら話をつづける。
「兎に角セーデルは突然私目掛けて剣を振り下ろしたの。でも・・私を抱いていた
母上が私を庇って切られた。」
アシュベルは彼女の背に手を置く。
16歳の少女が語るにはあまりに辛い話だ。
「ありがと、大丈夫」
彼女は気丈にも微笑んで見せる。
「母上が切られたとき、あまりの事に悲鳴が上がらなかった。わたしは床に落ちたけれど
不思議と泣かなかった・・気がする。セーデルは止まらず床に転がる私を執拗に斬りかかろうとした。でもそれを止めようとした父上を切ったの。」
この話をすると頭が痛い・・全て思い出したつもりだったが
何故床に放りだされて泣かなかったのか・・・。
他は鮮明に思い出せるのに、靄がかかったようにぼやけてしまう。
まだ何か大切な事を思い出していない・・?
取り敢えずつづきの説明を。
「母上も父上もセーデルには心許していたようで、父上は剣を置いてしまってて防御も取れずあっという間に殺されてしまった」
「なるほどねぇ。セーデルは王や王妃にかなり取り入っていたとみえる」
憎々しげにアシュベルが親指の爪を噛む。
そんな癖あったのか。
「さすがに物音が尋常じゃないと、おじい様が飛び込んできた、その惨状を見て
おじい様がどう思ったかは分からない・・・」
頭ががんがんする。
これは私の中の警告?・・私は一体何を思い出してないというのだ・・?
「おじい様は、即座にわたしを抱きかかえると、3階の窓から飛び降りた」
エレナは今思うと疑問に思う。
「おじい様は英雄と称される御仁、おそらく父上と母上殺しはセーデルだと見破ったはず、ではなぜ
彼を討たなかったのかな?」
あの時の事・・覚えているはずなのに理由が見つからない。
そして思い出そうとすると、体に電気が流れるような感覚が走る。
何か・・あの時何か。
そう、私を見るセーデルの驚きの瞳、それは次の瞬間憎悪になっていた。
だめだ・・・。
記憶の辿ろうとすると何かが、邪魔をしてくる。
「あの英雄がヒメちゃんの言う通りの方なら、そこには理由があったはずじゃないかな。」
そうか、おじい様は先を見据えた人だった、今考えるべきはそこじゃない。
全身がぴりぴりとした感じが薄らいだ。
「たまに良い事を言うね、アシュベルは。」
「たまに・・か」
へらっと苦笑いを彼は返す。
いつもの笑み、なのに何故か今はそれが嬉しい。
「おじい様は全てを知っていたんだな。」
エレナは伏し目がちになる、銀のまつげに黒い瞳が覆われる。
「ヒメちゃん・・」
「いやぁ、ちょっと救われた気がして。」
「でも勿論父上と母上が殺された雪辱は晴らしたい、だからい今朧げな記憶の部分は、必ず思い出す。」
ヒメちゃんが気丈な方だというのは身に染みて知っている、が、王とお后様のくだりになると異様に瞳に地獄のような闇が映り込む。
「今はセーデルの動向に注意しよう、奴の行動は予想以上に早い・・
ヒメちゃんが王女だという事はばれていると思った方がいいだろう。」
そうだな・・・とエレナは頷く。
「・・・妹は?」
はっとアシュベルが息を飲む。
今はエレナにとっては唯一生存している肉親。
妹を案じるのは至極当然の事だ。
「ヒメちゃんの妹は成人式を迎えた、後見人はセーデルだ、お后様の従妹で
若くして公爵の地位を継いでいる。」
アシュベルは言いにくそうに続ける。
「公爵の地位を継いだ話にも曰くつきの噂が絶えない、
公爵の継承者をやれ毒殺したとか、闇討ちしたとか・・あいつに関してはいい話は聞かない奴だ。」
アシュベルは珍しくまじめな顔で、エレナに問う。
「ヒメ、この国の現状を知ってる?」
ヒメちゃんは辺境地であるこの国の端の端にある村に住んでいた。
そこにはこの国の内情が伝わっているとはとても思えない。
「えっと・・13年前からセーデルが幼い姫に代わって政治を取り仕切り始めた頃から
隣国に戦争を仕掛け無駄に兵士を失い、その煽りを受けて人々の生活に混乱が生じ、
小規模ながらも内乱が続き、政情は不安定、と。」
何て的確な答えだろう、アシュベルの顔が僅かにひきつる。
知らなーい、そんな答えを少し期待していた俺が情けなく思えてくる。
「全部おじい様の受け売りだけどね」
申し訳なさそうに、少し悪戯っぽく笑うエレナ。
俺はヒメに弱すぎる・・。
「でも、これは私が自分の立場が分かっていない頃だった情報、今は認識が全く違うよ。
そして妹にも会いたいのに・・・。」
それもそうだ・・妹君を思い起こすと二卵性双生児と言はいえど
面影が重なるところがある。
「妹君にはそのうち手はずを整え、会えるようにするよ。」
しかし、それは相当熾烈な難関を潜り抜けなければならないだろう。
なにせ、セーデルの隊が立ちはだかっているのだから。
それでもこの方に誓おう、必ず妹君のところへ連れて行くと。
「あの男と目が合った瞬間に、全てが分かった。まるで当然のように
あの時の記憶を取り戻したの。」
彼女が不安がっている様子はない。
ここは聞きに徹するか。アシュベルが続きを促す。
「それで?」
「あの男、セーデル伯父さんは母上の従兄だった。
王宮のひと部屋には母上と父上、母上に抱かれながらぐずる私。そしてそこにセーデルがいた。
幸いだったのは別室でお付きに守られながら眠っていた私の双子の妹。」
その時のことを辿るようにエレンは続ける。
「勿論、部屋の外には精鋭の護衛がついていたけれど、事はいきなり起きた・・」
ズキッ。
そ
の先を口にしようとすると頭に激しい痛みが襲った。
ん・・痛い。
それに体がぴりぴりする・・指先まで。
こんな事は初めてだ。
頭を押さえながら話をつづける。
「兎に角セーデルは突然私目掛けて剣を振り下ろしたの。でも・・私を抱いていた
母上が私を庇って切られた。」
アシュベルは彼女の背に手を置く。
16歳の少女が語るにはあまりに辛い話だ。
「ありがと、大丈夫」
彼女は気丈にも微笑んで見せる。
「母上が切られたとき、あまりの事に悲鳴が上がらなかった。わたしは床に落ちたけれど
不思議と泣かなかった・・気がする。セーデルは止まらず床に転がる私を執拗に斬りかかろうとした。でもそれを止めようとした父上を切ったの。」
この話をすると頭が痛い・・全て思い出したつもりだったが
何故床に放りだされて泣かなかったのか・・・。
他は鮮明に思い出せるのに、靄がかかったようにぼやけてしまう。
まだ何か大切な事を思い出していない・・?
取り敢えずつづきの説明を。
「母上も父上もセーデルには心許していたようで、父上は剣を置いてしまってて防御も取れずあっという間に殺されてしまった」
「なるほどねぇ。セーデルは王や王妃にかなり取り入っていたとみえる」
憎々しげにアシュベルが親指の爪を噛む。
そんな癖あったのか。
「さすがに物音が尋常じゃないと、おじい様が飛び込んできた、その惨状を見て
おじい様がどう思ったかは分からない・・・」
頭ががんがんする。
これは私の中の警告?・・私は一体何を思い出してないというのだ・・?
「おじい様は、即座にわたしを抱きかかえると、3階の窓から飛び降りた」
エレナは今思うと疑問に思う。
「おじい様は英雄と称される御仁、おそらく父上と母上殺しはセーデルだと見破ったはず、ではなぜ
彼を討たなかったのかな?」
あの時の事・・覚えているはずなのに理由が見つからない。
そして思い出そうとすると、体に電気が流れるような感覚が走る。
何か・・あの時何か。
そう、私を見るセーデルの驚きの瞳、それは次の瞬間憎悪になっていた。
だめだ・・・。
記憶の辿ろうとすると何かが、邪魔をしてくる。
「あの英雄がヒメちゃんの言う通りの方なら、そこには理由があったはずじゃないかな。」
そうか、おじい様は先を見据えた人だった、今考えるべきはそこじゃない。
全身がぴりぴりとした感じが薄らいだ。
「たまに良い事を言うね、アシュベルは。」
「たまに・・か」
へらっと苦笑いを彼は返す。
いつもの笑み、なのに何故か今はそれが嬉しい。
「おじい様は全てを知っていたんだな。」
エレナは伏し目がちになる、銀のまつげに黒い瞳が覆われる。
「ヒメちゃん・・」
「いやぁ、ちょっと救われた気がして。」
「でも勿論父上と母上が殺された雪辱は晴らしたい、だからい今朧げな記憶の部分は、必ず思い出す。」
ヒメちゃんが気丈な方だというのは身に染みて知っている、が、王とお后様のくだりになると異様に瞳に地獄のような闇が映り込む。
「今はセーデルの動向に注意しよう、奴の行動は予想以上に早い・・
ヒメちゃんが王女だという事はばれていると思った方がいいだろう。」
そうだな・・・とエレナは頷く。
「・・・妹は?」
はっとアシュベルが息を飲む。
今はエレナにとっては唯一生存している肉親。
妹を案じるのは至極当然の事だ。
「ヒメちゃんの妹は成人式を迎えた、後見人はセーデルだ、お后様の従妹で
若くして公爵の地位を継いでいる。」
アシュベルは言いにくそうに続ける。
「公爵の地位を継いだ話にも曰くつきの噂が絶えない、
公爵の継承者をやれ毒殺したとか、闇討ちしたとか・・あいつに関してはいい話は聞かない奴だ。」
アシュベルは珍しくまじめな顔で、エレナに問う。
「ヒメ、この国の現状を知ってる?」
ヒメちゃんは辺境地であるこの国の端の端にある村に住んでいた。
そこにはこの国の内情が伝わっているとはとても思えない。
「えっと・・13年前からセーデルが幼い姫に代わって政治を取り仕切り始めた頃から
隣国に戦争を仕掛け無駄に兵士を失い、その煽りを受けて人々の生活に混乱が生じ、
小規模ながらも内乱が続き、政情は不安定、と。」
何て的確な答えだろう、アシュベルの顔が僅かにひきつる。
知らなーい、そんな答えを少し期待していた俺が情けなく思えてくる。
「全部おじい様の受け売りだけどね」
申し訳なさそうに、少し悪戯っぽく笑うエレナ。
俺はヒメに弱すぎる・・。
「でも、これは私が自分の立場が分かっていない頃だった情報、今は認識が全く違うよ。
そして妹にも会いたいのに・・・。」
それもそうだ・・妹君を思い起こすと二卵性双生児と言はいえど
面影が重なるところがある。
「妹君にはそのうち手はずを整え、会えるようにするよ。」
しかし、それは相当熾烈な難関を潜り抜けなければならないだろう。
なにせ、セーデルの隊が立ちはだかっているのだから。
それでもこの方に誓おう、必ず妹君のところへ連れて行くと。
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